農薬製剤中の活性成分や不純物、分解生成物などを含むすべての成分の検出、特性解析、定量は製品開発、品質管理、製品登録などを支えるために必要です。製剤サンプルのルーチン分析には、現在フォトダイオードアレイ(PDA)検出による液体クロマトグラフィー(LC)分析法が使用されています。UV 検出に質量検出器を追加することで、分析試験法の特異性および選択性が向上し、1 回の分析でサンプルについての補足情報が得られます。
このアプリケーションノートでは、2 つの活性成分(AI)、殺虫剤 AI 1 とトリアゾール系殺菌剤のテブコナゾール AI 2 を含む市販の農薬製剤の分析について紹介します。トリアゾール系殺菌剤は、さまざまな作物病害に対して強力な活性を持つ一般的な農薬です。
製剤の分析には、HPLC と UHPLC の両分離を実施できる 2 つの流路を持つ液体クロマトグラフィーシステムを使用し、UV と質量の検出を行いました。ACQUITY Arc システムは、既存の HPLC 分析法の再現が可能で、更により効率的なクロマトグラフィー分離目的に 3 μm 以下の粒子径を使用する UHPLC 分析法に移管することもできます。
Empower 3 ソフトウェアはデータ取得および解析に使用し、得られた結果から、指定された % 面積レベルを超える不純物に対しフラグを付けました。検出能力とデータ分析を組み合わせることにより未知成分の構造の初期特性が得られました。
作物保護製品により、作物の被害が減少し、豊富で高品質な食料供給が可能になります1。 農薬産業において、分析による農薬製品の品質管理は、ばらつきのない有効な製品が顧客に届くことを保証するために非常に重要です2。 製剤中の活性成分や不純物、分解生成物などを含むすべての成分の検出、特性解析、定量は製品開発、品質管理、製品登録などを支えるために必要です。製剤サンプルのルーチン分析には、現在フォトダイオードアレイ(PDA)検出による液体クロマトグラフィー(LC)分析法が使用されています2-4。UV 検出に質量検出器を追加することで、分析試験法の特異性および選択性が向上し、1 回の分析でサンプルについての補足情報が得られます。
このアプリケーションノートでは、2 つの活性成分(AI)、殺虫剤 AI 1 とトリアゾール系殺菌剤のテブコナゾール AI 2(図 1)を含む市販の農薬製剤の分析について紹介します。トリアゾール系殺菌剤は、さまざまな作物病害に対して強力な活性を持つ一般的な農薬です5。 製剤の分析には、HPLC と UHPLC の両分離を実施できる 2 つの流路を持つ液体クロマトグラフィーシステムを使用し、UV と質量の検出を行いました6。 ACQUITY Arc システムは、既存の HPLC 分析法の再現が可能で、更により効率的なクロマトグラフィー分離目的に 3 μm 以下の粒子径を使用する UHPLC 分析法に移管することもできます。
Empower 3 ソフトウェアはデータ取得および解析に使用し、得られた結果から、指定された % 面積レベルを超える不純物に対しフラグを付けました。Empower のカスタムフィールドで、個別に作成したカスタム計算結果から、さらに情報を引き出すことが可能になりました。検出能力とデータ解析を組み合わせることにより初期段階における未知成分の構造の特性解析結果が得られました。
すべての分析は、2998 フォトダイオードアレイ(PDA)および ACQUITY QDa 検出器を接続した Waters ACQUITY Arc システムで実施しました。Empower 3 ソフトウェアは、データの取得および解析に使用しました。
LC システム: |
ACQUITY Arc |
分離モード: |
グラジエント |
カラム: |
CORTECS C18+ 3.0×100 mm、2.7 μm |
溶媒 A: |
0.1% ギ酸水溶液 |
溶媒 B: |
アセトニトリル |
流量: |
0.80 mL/分 |
UV 検出器: |
2998 フォトダイオードアレイ(PDA) |
PDA 検出: |
210 - 400 nm |
カラム温度: |
50 ℃ |
注入量: |
5 µL |
グラジエント条件: |
0 分 20% B、10 分 80% B、11 分 90% B、12 分 90% B より初期条件に戻る |
MS システム: |
ACQUITY QDa |
イオン化モード: |
ESI+ |
キャピラリー電圧: |
0.8 kV |
コーン電圧: |
10 V |
脱溶媒温度: |
600 ℃ |
ソース温度: |
150 ℃ |
MS スキャン範囲: |
100 - 1000 m/z |
サンプリングレート: |
5 Hz |
ACQUITY Arc システムの、Dwell Volume を選択することが可能な Arc Multi-flow path™ テクノロジーを使用します。Arc Multi- flow path テクノロジーを使用することで、HPLC 分析法用の粒子径 3 µm から 5 µm に対応するだけでなく、併せて粒子径 2.5 µm から 2.7 µm を使用した迅速かつ効率的な UHPLC 分離もサポートすることが可能です。その結果クロマトグラフィー分離の柔軟性が増し、生産性が最大限に発揮されます6。農薬製剤サンプルのクロマトグラフィー分離は、CORTECS C18+ カラム(3.0×100 mm、2.7 µm ソリッドコアパーティクルテクノロジー、製品番号186007402)により UHPLC モードで実施しました。CORTECS 2.7 µm カラムは、HPLC および UHPLC 装置に適合します。このカラムは、HPLC の背圧で効率が高く、5 µm の全多孔性粒子を使用する現行の分析法より高い分離能で高速分析が可能です7。
Empower 3 ソフトウェアによる農薬製剤の分析、解析を実施しました。結果、Empower 解析メソッドに設定した 0.1% のレポートしきい値を超える未知の 2 成分が認められました8。 農薬製剤サンプルの分析 / 解析によって得られた、ACQUITY Arc UV クロマトグラム(220 nm)の Empower のレポートを示しました(図 2)。2 つの活性成分は同定され、未知成分はラベルされています。クロマトグラム下のピーク結果表には、成分名、面積、面積 %、保持時間、不純物レスポンスおよびレポートしきい値が示されています。UV および MS データから、未知成分 1 および未知成分 2 はテブコナゾール AI と共通の構造的特徴を有している可能性があることが示されているため(図 3)、Empower 3 のカスタム計算を使用してテブコナゾールに対するそれぞれの不純物の面積 % を計算しました(図 2)。 検出された不純物に関するデータを赤色で強調表示することにより、どちらの成分をさらに調査する必要があるかが容易に判断できます。
クロマトグラフィー、UV、および質量検出器の結果を Empower ソフトウェアで 1 カ所に集約することにより、データ解析の負担をさらに軽減できます。Empower 質量分析ウィンドウ(図 3)は 1 画面表示できるため、分析に使用したすべての検出器のクロマトグラフィーピークを、対応するスペクトルと関連づけることができます。UV クロマトグラムおよび UV スペクトルがトータルイオンカレント(TIC)クロマトグラム、抽出イオンクロマトグラム(XIC)、質量スペクトルと同一画面に表示されます。検出されたピークのスペクトルは、保持時間のアライメント後、クロマトグラム上のウィンドウに表示されるので、データ評価が迅速かつ容易になります。
質量分析ウィンドウのデータより、未知成分 2(ピーク 3)とテブコナゾール AI(ピーク 4)間の関係が示されました。UV スペクトルには類似の最大吸収値があり、テブコナゾールの [M+H]+ である m/z 308 と未知成分 2 は同一の m/z を有していることが質量スペクトルにより示されています。さらに、未知成分 2 の同位体パターンは、含塩素化合物の特徴を示し(図 4 参照)、AI の同位体パターンと一致します。1 回の注入分析のみで、未知成分 2 はテブコナゾールと類似の UV スペクトル、および同一の m/z と同位体パターンを有することが確認されました。これらの結果から、未知成分 2 はおそらくテブコナゾールの異性体であり、類似した構造組成および化学的性質を有する可能性があることが示唆されました。さらに、マスクロマトグラムにおける未知成分の検出感度は、特に目的とするピークに対応するイオンを TIC から抽出することで大幅に向上します。ACQUITY QDa による検出感度向上の結果、データ評価の信頼性が向上します。
未知成分 1(ピーク 2)の UV 最大吸収波長は、テブコナゾールに類似している可能性がある不純物である未知成分 2 とテブコナゾールの UV 最大吸収値と比較したところ、高い類似性を示しました。未知成分 1 の m/z は 281 であり、同位体パターンは、構造に塩素が存在することを示唆しています(図 4)。これらのデータをまとめた Empower スペクトルインデックスプロットのレポートを図 4 に示します。
720005663JA、2016 年 4 月