法中毒学目的のみに使用してください。
このアプリケーションブリーフでは、法中毒学向けに、全血中の合成フェンタニルアナログを、残留リン脂質を除去しつつ、UPLC-MS/MS 分析用に効率的に抽出するメソッドの開発について説明します。
合成フェンタニル化合物を、残留リン脂質を最小限に抑えつつ、全血から迅速かつ再現性よく分離しました。
ここ数年、合成フェンタニルアナログの乱用、およびこれに関連する過剰摂取と死亡者数が大幅に増加しているため、法中毒学向けに、血液中のこれらの化合物を分析する必要性が大幅に増大しています1。 分析上の主な課題の 1 つとして、血液サンプル中に通常存在するこれらの化合物の濃度が低いことが挙げられます。そのため、頑健で再現性のあるサンプル前処理メソッドが、必要な感度を得るために重要になる場合があります。感度に影響する可能性のある生体サンプルの成分の 1 つとしてリン脂質が挙げられます。従来のミックスモード陽イオン交換メソッドでは、他のイオン交換吸着剤と比較して、かなりの量のリン脂質が残留する傾向があります。全血を分析する場合、全血の最大 45% を赤血球が占め、血漿よりも多量のリン脂質を含むため、この点が特に重要になります。
このアプリケーションブリーフでは、Oasis PRiME MCX µElution プレートを使用した全血からのフェンタニルアナログの抽出の詳細を紹介します。抽出効率、マトリックス効果、リン脂質除去のすべてについて説明しています。さらに、固相抽出の前に全血サンプルを効率的に処理するために、サンプル前処理を最適化しました。
合成フェンタニル化合物を全血にスパイクしました。血液サンプル(100 µL)を硫酸亜鉛と酢酸アンモニウムの溶液(ZnSO4/NH4OAc)で処理して細胞を溶解し、続いて 50:50 アセトニトリル:メタノール(ACN:MeOH)を用いて除タンパクしました。遠心分離後、上清を 4% リン酸(H3PO4)で希釈し、Oasis PRiME MCX µElution プレートを使用して抽出を行いました。サンプルは、5% アンモニア含有 50:50 ACN:MeOH 溶液で溶出させました。抽出物は、ACQUITY™ UPLC I-Class/Xevo TQ-S micro システムを用いて分析しました。
図 1 に、全血からの合成フェンタニルアナログの回収率を示します。回収率は 67 ~ 91% の範囲で、平均 86.4% でした。これらの値は、3 種類の濃度(250、1000、10,000 pg/mL)について得られた平均値を表しています。回収率は一貫しており、%RSD はすべて 10% 未満でした。マトリックス効果を計算し、これも図 1 に示しています。マトリックス効果はすべて 10% 以内であり、RSD は 5% 以内であったことから、このメソッドに関連するイオン化抑制は発生していないことが示されました。回収率についてもマトリックス効果についても、濃度に依存するバイアスは認められませんでした。
Oasis PRiME MCX の新たな特性の 1 つは、リン脂質の除去に優れていることです。図 2 に、除タンパク、Oasis MCX による抽出、Oasis PRiME MCX による抽出の後における、全血サンプル中の残留リン脂質を比較しています。クロマトグラムおよび関連するグラフから、Oasis PRiME MCX を使用する場合、除タンパクと比較して 99% 超のリン脂質が除去され、Oasis MCX と比較して 97.4% のリン脂質が除去されていることがわかります。抽出液はすでにきれいな状態から、さらに大幅に改善されています。
合成フェンタニル化合物を Oasis PRiME MCX µElution プレートを使用して全血から抽出してから、法中毒学向けの UPLC-MS/MS 分析を行いました。すべての分析種について、マトリックス効果がほとんどなく、一貫した高い回収率が得られたことに加えて、残留リン脂質がほぼ完全に除去され、除タンパクと比較して 99% 超、Oasis MCX と比較して 97% 超が除去されていました。よりきれいな抽出液が得られることで、カラム寿命が向上し、MS のメンテナンスを最小限に抑えることができます。また、このアッセイで見られるように、マトリックス効果の抑制に寄与している可能性があります。このフェンタニルアナログ群は極性が広範囲に及んでいることから、このメソッドは、必要に応じて他のフェンタニルアナログに適用できると考えられます。
720006330JA、2018 年 7 月