• アプリケーションノート

自動分析陽イオン交換クロマトグラフィーを用いたモノクローナル抗体のチャージバリアントのフラクション回収および構造解析

自動分析陽イオン交換クロマトグラフィーを用いたモノクローナル抗体のチャージバリアントのフラクション回収および構造解析

  • Hua Yang
  • Stephan M. Koza
  • Waters Corporation

要約

このアプリケーションノートでは、インフリキシマブとトラスツズマブを BioResolve SCX mAb カラムで分離し、Waters フラクションマネージャー - 分析(WFM-A)を用いてチャージバリアントのフラクションを回収しました。フラクションを LC-MS によりさらに分析し、インタクト質量分析、サブユニット分析、ペプチドマッピング分析を行いました。

アプリケーションのメリット

  • BioResolve SCX mAb カラムによる陽イオン交換分離
  • Waters フラクションマネージャー - 分析(WFM-A)で陽イオン交換フラクションを回収
  • LC-MS で陽イオン交換フラクション(インタクト質量、サブユニット、ペプチドマッピング)を分析

はじめに

モノクローナル抗体(mAb)などのタンパク質医薬品の電荷不均一性(チャージバリアント)のレベルは、その生物学的活性および安全性に影響を及ぼす可能性があるため、多くの場合、重要品質特性(CQA)とみなされています1。 タンパク質チャージバリアントの精製、特性解析、およびルーチンモニタリングの一般的な手法の 1 つとして、イオン交換クロマトグラフィー(IEX)が使用されています。IEX は非変性技術であるため、CE や cIEF などの電気泳動法と比較して、IEX 分離によってチャージバリアントを回収できるだけでなく、追加のテクノロジーを用いて構造機能情報が取得できるという利点もあります。

このアプリケーションノートでは、インフリキシマブとトラスツズマブを BioResolve SCX mAb カラムで分離し、Waters フラクションマネージャー - 分析(WFM-A)を用いてチャージバリアントのフラクションを回収しました。フラクションを LC-MS によりさらに分析し、インタクト質量分析、サブユニット分析、ペプチドマッピング分析を行いました。

実験方法

陽イオン交換分離およびフラクション回収

サンプル調製

トラスツズマブ(21 mg/mL)およびインフリキシマブ(10 mg/mL)を希釈せずに直接 IEX カラムに注入しました。医薬品は使用期限経過後に分析しました。

LC 条件

システム:

ACQUITY UPLC H-Class Bio

追加

コンポーネント:

Waters フラクションマネージャ - 分析

(WFM-A)

サンプル温度:

10 ℃

分析

カラム温度:

30 ℃

流量:

0.8 mL/ 分

注入量:

1-50 μL

カラム:

BioResolve SCX mAb、3 μm、

4.6 × 50 mm

BioResolve SCX mAb、3 μm、

4.6 × 100 mm

検出:

ACQUITY UPLC TUV 検出器

5 mm チタンフローセル付き、280 nm

サンプルバイアル:

LCGC 認定透明ガラス 12 × 32 mm

スクリューネックトータルリカバリーバイアル(キャップ付き)

およびスリット入り PTFE/シリコンセプタム、1 mL

容量、100/pk

Auto•Blend Plus メソッド

移動相 A:

100 mM MES 一水和物水溶液

移動相 B:

100 mM MES ナトリウム塩水溶液

移動相 C:

1 M NaCl

移動相 D:

インフリキシマブの場合:

20 mM MES、10~45 mM NaCl、pH 7.0

10 分(長さ 100 mm のカラム)、

または 5 分(長さ 50 mm のカラム)

トラスツズマブの場合:

20 mM MES、50~85 mM NaCl、pH 6.7

10 分(長さ 100 mm のカラム)、

または 5 分(長さ 50 mm のカラム)

IEX フラクションのインタクト質量分析

サンプル調製

フラクションはカラムに直接注入しました。

LC 条件

システム:

ACQUITY UPLC H-Class Bio

サンプル温度:

10 ℃

分析

カラム温度:

80 ℃

流量:

0.4 mL/分

注入量:

10 µL

カラム:

BioResolve RP mAb Polyphenyl、

450 Å、2.7 μm、2.1 × 150 mm

検出:

ACQUITY UPLC TUV 検出器

5 mm チタンフローセル(214 nm)付き

Xevo G2–XS 質量分析計

サンプルバイアル:

LCGC 認定透明ガラス 12 × 32 mm

スクリューネックトータルリカバリーバイアル

(キャップおよびスリット入り PTFE/シリコンセプタム付き)、

1 mL 容量、100/pk

移動相 A:

0.1% (v/v) ギ酸水溶液

移動相 B:

0.1% (v/v) ギ酸アセトニトリル溶液

時間

流量(mL/min)

%A

%B

カーブ

0.0

0.4

95

5

-

0.5

0.4

70

30

6

1.0

0.4

70

30

11

3.5

0.4

60

40

6

4.5

0.4

5

95

6

5.0

0.4

5

95

11

5.1

0.4

95

5

11

10.0

0.0

95

5

11

IEX フラクションのサブユニット分析

サンプル調製

インフリキシマブフラクションは、分画分子量(MWCO)10 kDa の再生セルロース遠心フィルターを用いて予備濃縮しました。フラクションの濃度は 1.4~2.5 mg/mL の範囲でした。濃縮したインフリキシマブフラクションのサンプル 10 µg を、IdeS 酵素(タンパク質:酵素比 = 1:1)によって 37℃ で 30 分間消化し、消化フラクション 5 µg を DTT により 37℃ で 30 分間さらに還元しました。すべてのサンプルは最終濃度 3% ACN/0.1% ギ酸で急冷しました。

サンプル温度:

10 ℃

分析

カラム温度:

80 ℃

流量:

0.8 mL/ 分

注入量:

非還元サンプルは 2 µL、

還元サンプルは 4μL

カラム:

BioResolve RP mAb Polyphenyl、

450 Å、2.7 μm、2.1 × 150 mm

検出:

ACQUITY UPLC TUV 検出器

5 mm チタンフローセル付き、214 nm

Xevo G2–XS 質量分析計

サンプルバイアル:

LCGC 認定透明ガラス 12 x 32 mm

スクリューネックトータルリカバリーバイアル

(キャップおよびスリット入り PTFE/シリコンセプタム付き)、

1 mL 容量、100/pk

移動相 A:

0.1% (v/v) ギ酸水溶液

移動相 B:

0.1% (v/v) ギ酸アセトニトリル溶液

時間

流速

(mL/分)

%A

%B

カーブ

0.00

0.4

95

5

-

0.50

0.4

88

12

6

1.00

0.4

88

12

11

11.00

0.4

58

42

6

12.00

0.4

5

95

6

13.00

0.4

5

95

11

13.10

0.4

95

5

11

20.00

0.0

95

5

11

IEX フラクションのペプチドマッピング分析

サンプル調製

トラスツズマブフラクションは、分画分子量(MWCO)10 kDa の再生セルロース遠心フィルターを用いて予備濃縮しました。フラクションの濃度は 3.1~4.2 mg/mL の範囲でした。濃縮したトラスツズマブフラクションのサンプル 50 µg を、pH 6.0、37℃ でトリプシン(タンパク質:酵素比 = 25:1)および Lys-C(タンパク質:酵素比 = 25:1)で一晩消化しました。
サンプルはギ酸で急冷しました。

サンプル温度:

10 ℃

分析

カラム温度:

60 ℃

流速:

0.2 mL/分

注入量:

10 µL

カラム:

ACQUITY UPLC Peptide BEH C18

300 Å、1.7 μm、2.1 × 150 mm

検出:

ACQUITY UPLC TUV 検出器

5 mm チタンフローセル付き、214 nm

Xevo G2-XS 質量分析計

サンプルバイアル:

LCGC 認定透明ガラス 12 × 32 mm

スクリューネックトータルリカバリーバイアル

(キャップおよびスリット入り PTFE/シリコンセプタム付き)、

1 mL 容量、100/pk

移動相 A:

0.1% (v/v) ギ酸水溶液

移動相 B:

0.1% (v/v) ギ酸アセトニトリル溶液

時間

流量(mL/min)

%A

%B

カーブ

0.0

0.2

98

2

-

10.0

0.2

98

2

11

70.0

0.2

50

50

6

72.0

0.2

5

95

6

72.1

0.2

98

2

11

90.0

0.0

98

2

11

データ管理:

Empower 3
MassLynx v4.1
UNIFI v1.9

結果および考察

WFM-A による mAb チャージバリアントフラクションの回収

Waters フラクションマネージャー - 分析(WFM-A)は、UPLC(分散容量 < 20 μL)、UHPLC (分散容量 > 20 μL で < 40 μL)および HPLC (分散容量 > 40 µL)での分離によって生成する低容量ピークを回収するために特別に設計された分析用フラクションコレクターです(図 1)。低容量かつ切り替えの速いバルブを採用することで、ピーク拡散が減少し、シャープな UPLC ピークを正確に回収します2。 WFM-A は、生体適合性のある流路により、あらゆる生体分子に対応可能で、UPLC および HPLC システムへ簡単に接続できます。そのため、mAb チャージバリアントフラクションの回収に最適です。

図 1.Waters フラクションマネージャー - 分析(WFM-A)は、LC システムに容易に統合できます。

フラクションを回収する前に、ロード試験を行って、カラムへの最適なサンプルロードを決定することを推奨します。分析法の最適なロードとは異なり、ここでの目標は、許容可能な分離度が得られる最大ロード量を決定することです。この評価では、回収したフラクションで再びクロマトグラフィーを行うかどうかも考慮に入れることができます。図 2A は、BioResolve SCX mAb 4.6×50 mm カラムでのトラスツズマブのチャージバリアントの分離を示しています。予測されたように、サンプルロードが増加するにつれて分離度は低下しました。ロードが多くなると、保持時間が短くなることも分かりました。これは、粒子表面で利用できるリガンドの飽和度が増加するためです。さらに、早く溶出するピークほど保持時間のシフトが大きくなります。これは、これらの条件下では、より強く結合するチャージバリアントが、カラム先端の結合が弱いチャージバリアントを置換していることを示しています。この保持時間のシフトは、自動フラクション回収を使用する場合は、カラムに再現性の高いロードを行うことが重要であることを示しています。

図 2B に示すように、カラム長を大きくすることで、分離度の低下を緩和できます。グラジエント時間を 2 倍にすると、サンプルロードを 2.5 倍に増やすことで 50 mm カラムと同等の分離が得られ、精製効率が 25% 向上しました。全体として、結果から、BioResolve SCX mAb、4.6×100 mm カラムのロード容量が mAb 1~2 mg の範囲であることが示されています3。分離するタンパク質サンプルによって、ロード容量が大きく異なる場合があります。

図 2.サンプルロード容量試験。(A)さまざまな量のトラスツズマブ(21 mg/mL)を BioResolve SCX mAb、4.6 × 50 mm カラムにロードし、分離しました。(B)さまざまな量のトラスツズマブ(21 mg/mL)を内径 50 mm および 100 mm の BioResolve SCX mAb カラムにロードし、分離しました。

図 3A は、WFM-A によって回収されたインフリキシマブのチャージバリアントフラクションを示しています。次にフラクションをプールし、希釈し、BioResolve SCX mAb カラムに再注入しました。フラクションクロマトグラムの重ね書きを見ると、一つおきのフラクション(フラクション 2、4、6、8、10 など)がベースライン分離されていることが認められました(図 3B)。したがって、交互フラクションで一度に再びクロマトグラフィーを行うことが可能であり、時間を大幅に節約できます。図 3C は、低塩負荷条件で BioResolve SCX mAb カラムにいくつかのフラクションを再注入し、塩グラジエントの間に溶出したクロマトグラムを示しています。すべてのフラクションをローディングバッファー(比率 1:1)で希釈し、塩濃度を下げました。さらに、交互フラクションを溶出の逆の順序で注入しました。例えば、最初にフラクション 10 を注入し、次にフラクション 8、6、という順で注入しました。これにより、イオン強度の高いフラクションをロードする間に、保持力の弱いフラクションがカラムから溶出するのを防げます。ここで示されたように、1 回の分析で交互フラクションが十分に分離されています。

図 3.フラクションの回収および再精製。(A)WFM-A で回収したインフリキシマブのチャージバリアントフラクション。(B)個々のフラクションの再注入のクロマトグラムの重ね書き。(C)複数のフラクションの同時再精製。

mAb のチャージバリアントフラクションのさらなる分析

フラクションを回収して、様々な構造解析および機能解析で、タンパク質チャージバリアントの特性解析を行うことができます。選択したインフリキシマブフラクションのインタクトおよびサブユニット LC-MS 分析、および選択したトラスツズマブフラクションのペプチドマッピング分析を例として示します。

インフリキシマブのインタクト質量分析

インフリキシマブフラクション 5~10 を BioResolve RP mAb Polyphenyl カラムで分析し、Xevo G2-XS 質量分析計で測定しました。MassLynx データをインポートし、UNIFI ソフトウェアで分析しました。図 4 はインフリキシマブのスペクトルを示しています。予測どおり、フラクション 5、6、10 では COOH 末端のリシンの数が異なります(図 4A)4。 フラクション 7、8、9 では、データは、N 結合型糖鎖のシアル酸含量とコアフコース含量の差と一致しています(図 4B)。シアル酸含量の違いによってチャージバリアントが生じることがある一方、コアフコース含量の違いによって mAb の Fc ドメインの立体構造が変化することが分かっており5、IEX 分離において別々のピークになる可能性があります。これらのフラクションの遊離 N 型糖鎖解析により、追加情報が得られます。

図 4.インフリキシマブフラクションのインタクト質量分析。(A)フラクション 5、6、10 の MS スペクトル(B)フラクション 7、8、9 の MS スペクトル左パネル:生データ。右パネル:デコンボリューションしたスペクトル。

インフリキシマブのサブユニット分析

インフリキシマブのフラクション 5、6、10 はサブユニット分析のために IdeS 消化を行いました。その後、各サンプルのアリコートについても、DTT 添加によってジスルフィド結合を還元しました。非還元サンプルと還元サンプルの両方を BioResolve RP mAb Polyphenyl カラムで分離し、Xevo G2-XS 質量分析計で測定しました。

ジスルフィド結合が還元されていない場合、IdeS 消化 mAb には次の 2 つの主要なフラグメントが予想されます:半分の Fc フラグメント(scFc と呼ばれる)、ジスルフィド結合した Fab ドメインフラグメント(F(ab’)2 フラグメントと呼ばれる)。図 5A および 5B は、フラクション 5 の主要な RP サブユニットピークが 7.00 分にあることを示しています。このピークは、COOH 末端に予測リシンがない scFc フラグメントと質量が一致しています。フラクション 10 では、6.92 分に主要な RP サブユニットピークが得られ、COOH 末端にリシンを有する scFc フラグメントと質量が一致しました。フラクション 6 では、COOH 末端にリシンを含む scFc フラグメントとリシンを含まない scFc フラグメントが主に認められました。LC-MS のデータはフラクション 5、6、10 と一致しており、この 3 つのフランクションは主に、いずれの重鎖にも COOH 末端リシンがない mAb、片方の重鎖に COOH 末端リシンがある mAb、両方の重鎖に COOH 末端リシンがある mAb で構成されています。

還元条件下では、mAb には通常、scFc フラグメント、軽鎖(LC)、Fd’ フラグメントの 3 つのピークが予想されます。図 5C に示すように、すべてのフラクションについて、保持時間約 8.28 分のピークが LC として同定され、約 8.54 分のピークが Fd’ フラグメントとして同定されました。6.98 分から 7.26 分までの提案されたピークの同定結果を表 1 に示します。
これらは scFc フラグメントと同定されており、それぞれのリシンのジスルフィド結合の還元の程度が異なっていることがあります。図 5D および 5E には、サポート情報として、Fc フラグメントのピークのデコンボリューション後の質量の差を示しています。

全体として、サブユニット分析の結果では、フラクション 5、6、10 は COOH 末端のリシンの数が異なるというインタクト質量分析の結果と一致しています。

図 5.インフリキシマブフラクションのサブユニット分析。(A)非還元条件下でのフラクション 5、6、10。(B)非還元条件下でのフラクション 6。MS スペクトルから、6.92 分のピークは 7.02 分のピークよりもリシンが 1 つ多いことが分かります。(C)還元条件下でのフラクション 5、6、10。(D、E)還元条件下でのフラクション 6。MS スペクトルから、6.99 分のピークは 7.07 分のピークよりもリシンが 1 つ多く、7.07 分のピーク、7.26 分のピーク、7.29 分のピークでは、ジスルフィド結合の還元の程度が異なる可能性があります。
表 1.還元条件下でのインフリキシマブのフラクション 5、6、10 の提案されたピークの同定結果。

トラスツズマブのペプチドマッピング分析

図 6A は、BioResolve SCX mAb カラムでのトラスツズマブのチャージバリアントの分離を示しています。フラクションは WFM-A を用いて回収しました。フラクション 5(酸性ピーク)およびフラクション 7(メインピーク)について、ペプチドマッピング分析を行いました。フラクションをあらかじめ濃縮し、トリプシンおよび Lys-C で消化しました。ペプチドは BEH300 C18、1.7 µmカラムで分離しました。

図 6B はフラクション 5 およびフラクション 7 のペプチドマップの鏡像です。フラクション 5 では保持時間 30.24 分にピークが観測されましたが、フラクション 7 では同じ保持時間の吸光度はわずかでした。抽出イオンクロマトグラム(XIC)では、フラクション 5 の保持時間 30.26 分のピーク面積が大きく増えていることを示しています。UNIFI ソフトウェアによって、このピークの増大は、ペプチド ASQDVNTAVAWYQQKPGK の脱アミド化によるものと特定されました。非修飾ペプチドのピークは、保持時間 29.63 分に観測されました’(図 6C)。修飾されたピークと非修飾のピークの MS-MS フラグメントデータを比較すると、フラグメントにアスパラギン(N)が含まれていない場合、フラグメントイオンの m/z は同じであることが分かります。一方、アスパラギンを含むフラグメントは質量が 1 Da 異なり、ペプチドの脱アミド化結果と一致します(図 6D)。トラスツズマブの強制的な脱アミド化によって、フラクション 5 が大きく増えました。これにより、この酸性ピークの主成分が脱アミド化されたトラスツズマブであることがさらに示されます(データは表示していません)。

図 6.トラスツズマブフラクションのペプチドマッピング分析。(A)BioResolve SCX mAb、4.6 × 100 mm カラムから回収したトラスツズマブフラクション。(B)フラクション 5 および 7 のペプチドマップの鏡像。保持時間 30.24 分のピークは、フラクション 5 では、フラクション 7 と比べて大幅に増大していました(青色の矢印で表示)。(C)同定されたペプチドの抽出イオンクロマトグラム(XIC)。30.26 分のピークはペプチド ASQDVNTAVAWYQQKPGK が脱アミド化したものと同定されました。非修飾ピークの保持時間は 29.63 分です。(D)脱アミド化ペプチドおよび非修飾ペプチド ASQDVNTAVAWYQQKPGK の MS-MS フラグメントの比較。アスパラギンを含まないフラグメントの質量値は同じですが、アスパラギンを含むフラグメントの質量は 1 Da において異なります。

その他の可能な分析

以上に示したのは、イオン交換分離で回収した mAb フラクションを使用して行える分析の種類の例です。酸化分析や糖鎖分析などの他の種類の構造解析を行うこともでき、目的のピークの詳細情報が得られます。また、SPR、バイオアッセイ、さらには前臨床薬物動態試験を用いたチャージバリアントの機能評価により、バイオ医薬品タンパク質への理解がさらに深まります。

結論

ほぼすべての mAb で電荷関連の不均一性が見られます。これは、抗体の発現、あるいは抗体の製造や保管の間にもたらされる可能性があります。チャージバリアントは、品質、安全性、有効性に影響を与える可能性があるため、同定して特性解析を行う必要があります。一般的なアプローチとしては、IEX カラムで分離されたチャージバリアントフラクションを回収し、さまざまな構造解析および機能解析によって特性評価を行います。

このアプリケーションノートでは、BioResolve SCX mAb カラムでのサンプルロードの最適化、WFM-A を使用した精製戦略、および mAb の修飾に関する有用な情報を得るためのチャージバリアントのフラクションの分析例をいくつか説明しました。WFM-A と組み合わせた BioResolve SCX mAb カラムは、分析スケールの mAb チャージバリアントフラクションの回収および特性解析に最適であることが分かりました。

参考文献

  1. Khawli, L. A.; et al.Charge Variants in IgG1.mAbs.2010, 2(6), 613–624.
  2. Jablonski, J. M.; et al.Small Scale Peptide and Impurity Isolation Using the ACQUITY UPLC H-Class and Waters Fraction Manager-Analytical Systems.Waters Application Note, 720005500EN (2015).
  3. Lauber, M. A.; et al.Designing a new particle technology for robust charge variant analysis of mAbs.Waters Application Note, 720006475EN (2019).
  4. Jung, S. K.; et al.Physicochemical characterization of Remsima.mAbs.2014, 6(5), 1163–1177.
  5. Sakae, Y.; et al.Conformational effects of N-glycan core fucosylation of immunoglobulin G Fc region on its interaction with Fcγ receptor IIIa.Scientific Reports.2017, 7, 13780.

720006647JA、2019 年 8 月

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