• アプリケーションノート

BioResolve SCX mAb カラムを使用したモノクローナル抗体チャージバリアント分析法の開発

BioResolve SCX mAb カラムを使用したモノクローナル抗体チャージバリアント分析法の開発
  • Hua Yang
  • William J. Warren
  • Stephan M. Koza

  • Waters Corporation

要約

はじめに

モノクローナル抗体(mAb)を含むタンパク質医薬品の電荷不均一性(チャージバリアント)は、その生物学的活性、安全性および安定性に影響を及ぼす可能性があるため、詳細に解析し、モニタリングする必要があります1。 イオン交換クロマトグラフィー(IEX)は、タンパク質チャージバリアントの精製、特性解析、そして日常的なモニタリングに幅広く使用されてきました。陽イオン交換または陰イオン交換の選択においては、mAb が比較的高い等電点(pI)を持つため、陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)が mAb チャージバリアントの特性解析に最も適しています。本アプリケーションノートでは、CEX 用の固定 pH 塩グラジエント分析法を開発するために必要なファクターについて検討します。pH グラジエントの使用に関する追加情報は、別のウォーターズアプリケーションノートで紹介しています2。  

ウォーターズの高分離強陽イオン交換カラム(BioResolve SCX mAb など)およびAutoBlend Plus テクノロジーを使用することにより、塩グラジエント分析法開発を効率良く行い、再現性の高い堅牢な分離を実現することが可能です。

実験方法

サンプル調製

trastuzumab、adalimumab、bevacizumab は水で 5 mg/mL に希釈しました。cetuximab については水で 1 mg/mL に希釈しました。医薬品は使用期限経過後に分析しました。

LC 条件

システム:

ACQUITY UPLC H-Class Bio

サンプル温度:

10 ℃

分析カラム温度:

30 ℃

流量:

0.8 mL/分(特に記載がない場合)

注入量:

1~2 µL(カラム内径 4.6 mm)、0.2 µL(カラム内径 2.1 mm)

カラム:

BioResolve SCX mAb、3 µm、4.6 × 50 mm(製品番号:186009058)

BioResolve SCX mAb、3 µm、4.6 × 100 mm(製品番号:186009060)

BioResolve SCX mAb、3 µm、2.1 × 50 mm(製品番号:186009054)

検出:

ACQUITY UPLC TUV 検出器および 5 mm チタンフローセル、280 nm

サンプルコレクション / バイアル:

LCGC 品質証明透明ガラス 12 × 32 mm キャップおよびスリット入り PTFE/シリコンセプタム付きスクリューネックトータルリカバリー、容量 1 mL、100 個入り (製品番号:186000385C)

移動相 A:

100 mM MES 一水和物*水溶液

移動相 B:

100 mM MES ナトリウム塩*水溶液

移動相 C:

1 M NaCl

移動相 D:

4.6 × 50 mm カラムの典型的なグラジエント条件 (Auto•Blend Plus 使用)

このシステムは 20 mM MES バッファーで使用するように事前設定されています。

時間

流量(mL/min)

pH **

塩グラジエントカーブ

0

0.8

6.7

0

1

0.8

6.7

0

11

2

0.8

6.7

50**

6

4

0.8

6.7

50**

6

9

0.8

6.7

85**

6

10

0.8

6.7

700

6

10.1

0.8

6.7

0

11

25

0

6.7

0

11

* MES:2-モルホリノエタンスルホン酸

** pH およびグラジエント開始時と終了時の塩濃度は、mAb によって異なります。基本的に使用した最適化したグラジエント条件では、塩濃度が 5 分で35~40 mM に変化します。

データ管理: Empower 3 ソフトウェア

結果および考察

分析法開発ツール

塩グラジエントを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX)は、mAb のチャージバリアント解析を行うための標準的な分析法です。個別の mAb 用に最適化されることの多い分析パラメーターには、pH、塩濃度、グラジエント時間、流速、有機溶媒量、温度などが挙げられます。  さらに、充塡剤の特徴、充塡効率や安定性、あるいはリガンドの種類や密度など、市販されているカラムのばらつきも、分析法開発の成否を左右します。このような違いにより、一般的には各カラム毎に条件を最適化することが望ましいと言えます。最適化には、要因設計を使用し複数のパラメーターを同時に最適化する方法や、一度に単一の変数を直線的に最適化する方法などがありますが、ここでは、各パラメーターの影響を分かりやすく示すために、後者のアプローチを選択しました。

実験結果は、定性的および定量的に評価しました。議論の対象となる定量的性能の特性解析には、ピークキャパシティ(Pc*)およびピークバレー比(p/v)の 2 つが含まれます。

Pc* は以下のように計算されます:

ピークキャパシティ = 1+ (最後のピークの保持時間 – 最初のピークの保持時間)/ピーク幅

計算式に示されるように、Pc* の式にはピークが溶出した時間を使用します。  

ピークバレー比(p/v)はベースラインからのピーク高さとベースラインからの谷の高さの比として定義されます。谷はピークの前(p/vstart)あるいはピークの後(p/vend)にあります。

移動相 pH

移動相 pH は最も重要で、分析法開発プロセスにおいて、一般的には最初に最適化されるパラメーターです。これは、pH によって選択性が大幅に変化する場合があるためです。図 1A-1D は、trastuzumab と cetuximab の CEX 分離における移動相 pH の影響を示しています。CEX では、pH の上昇に伴って保持時間が減少します(図1A および1C)。  

図 1.mAb チャージバリアントの分離における pH の影響

A および B:Trastuzumab、20 mM MES、50~155 mM NaCl /15 分のグラジエント。C および D:セツキシマブ、20 mM MES バッファー、25~110 mM NaCl / 10 分のグラジエント。矢印は、拡大図を示しており、低含量ピークの分離の詳細が示されています。

これは、pH が高いと、分析種の正電荷が減少し、負に荷電した固定相とのイオン的相互作用が弱まるためです。

pH 変動がある場合、通常は、酸性化合物と塩基性化合物のピーク分離に妥協を強いられることになります。trastuzumab および cetuximab の両方において、pH が上昇すると、ピークバレー比は酸性化合物のピークで増加し、塩基性化合物のピークで減少します。これらの分離に pH が与える影響は、観察される酸性化合物と塩基性化合物のピーク分離のバランスによるため、サンプルによって異なり、堅牢な pH 条件を選択する際には、選択性の違い、積分の再現性、チャージバリアントの定量性など、複数の要因を考慮する必要があります。  

塩グラジエントの傾き

塩濃度

CEX 分離において、塩グラジエントの傾きは、もう一つの重要なパラメーターです。図 2A および2B に示したように、分析種が溶出する条件について大まかに知るため、グラジエントの開始および終了塩濃度を幅広くとり、1 回目の分析を行いました。この結果、グラジエントの傾きは急勾配になります。グラジエントの開始および終了塩濃度の幅が狭くなるにつれ、分析時間に影響を及ぼすことなくグラジエント勾配はなだらかになり、分離度(Rs)およびピークバレー比(p/v)で示したように、チャージバリアントの分離が改善されます。

グラジエントの傾きは Δ mM 塩 / カラム容積(CV)で示されます。計算式は以下の通りです。

カラム内径= 4.6 mm

カラム長 = 50 mm

流速 = 0.8 mL/分

グラジエント時間 = 5 分

カラム容量(CV) = 3.14 * (4.6 mm/2)2 * 50 mm * 10-3 = 0.83 mL

グラジエントの傾き = (グラジエント終了時の塩濃度–開始時の塩濃度)/(流速 x グラジエント時間/カラム容量) = (200–0)mM NaCl / (0.8 mL / min) *5 min/ 0.83 mL = 42 mM NaCl/CV

図 2.mAb チャージバリアントの分離における塩濃度の影響

A:Trastuzumab、B:Cetuximab、20 mM MES、pH 6.0、グラジエント時間 = 5 分

図 3 はグラジエントの開始塩濃度の影響を示しています。予測されたように、開始時の塩濃度が高いほど、adalimumab のチャージバリアントの保持時間が短くなります。この例では、グラジエント勾配が一定に保たれているため、分離の状態が大きく変化することはありません。

図 3.adalimumab のチャージバリアントの分離におけるグラジエント開始時の塩濃度の影響 20 mM MES、pH 5.7、グラジエント時間 = 5 分

グラジエント時間

グラジエント時間もまた、カラム容量の点からグラジエント勾配を変化させます。図 4A-Cは、グラジエント時間が、trastuzumab と bevacizumab のチャージバリアントの分離に及ぼす影響を示しています。trastuzumab の場合、ピークキャパシティ(Pc*)はグラジエント時間が増加しても、あまり変化しませんでした。Bevacizumab では、グラジエント時間の増加に応じてピークバレー比(p/v) およびピークキャパシティ(Pc*)にわずかな増加がみられました(図 4C)。  

これらの結果から、分離を高めるためにグラジエント勾配を下げる場合には、実質的な限界があること がわかりました。これに対するいくつかの理由を考察する必要があります。一般的には、観察された大きなピークや小さなピークに、十分に分離されていない低含量のチャージバリアントが混ざっていることを認識することが重要です。これらの低含量のバリアントは、一般的でないバリアントであり、複数の修飾を受けている場合があります。さらに、完全に分離されないような、二次構造にわずかな 変化を持ったタンパク質によって、観察されるピークの幅が広くなることがあります。このような立体的なバリアントは、タンパク質製剤に存在することがあり、クロマトグラフィー分析法によって導入されている可能性もあります3。 バンドが広がる 3 つ目の理由として、粒子表面でのリガンドに対するタンパク質の配向が考えられ、ローディング条件によって影響を受ける可能性があります4。 

得られたピーク分離の程度に有意な向上があったかにかかわらず、長いグラジエントによって、ピーク積分の信頼性が改善し、より堅牢で移管しやすい分析法が確立できる可能性があることは注目に値します。

図 4.mAb チャージバリアントの分離におけるグラジエント時間の影響

A:Trastuzumab、20 mM MES、pH 5.7、50~85 mM NaCl。B:Bevacizumab、20 mM MES、pH 5.4、120~200 mM NaCl。矢印は、拡大図を示しており、低含量ピークの分離の詳細が示されています。p/v および Pc* におけるグラジエント時間の影響。グラジエント時間が長くなるほど勾配がなだらかになります。X 軸はグラジエント時間の増加の影響を示すために逆に表示しています。 

流速

流速が変化すると、グラジエント勾配も変化することがあります。図 5A-D は、流速が異なる 2 つのケースを示しています。

一つ目のケースでは、流速とグラジエント時間を変化させ、合計グラジエント容量は一定とし、グラジエント勾配を一定に保っています。(図 5A および B)。BioResolve SCX mAb カラムには非多孔性パーティクルが使用されており、粒子への拡散(物質移動)がないことから、ピークバレー比とピークキャパシティが流速によって大きな影響を受けることはないと予測されます。図5B に示したように、ピークバレー比およびピークキャパシティは、高い流速では、わずかな低下が見られます。これは、高流速によって増加したポストカラム拡散の結果、または、高い圧力がかけられたことによる、タンパク質構造のわずかな変化の結果である可能性があります5

二つ目のケースでは、流速を変化させる一方、グラジエント時間は一定に保っています(図 5C および D)。高い流速では、分離が良好になると予測されますが、これは、高い流速ではグラジエント勾配がなだらかになるためです。予測通り、流速の増加に伴い、大半のピークでピークバレー比が増加しています。ただし、グラジエント時間の増加において観察されたものと同様に、ピークキャパシティにはある程度の増加が見られたものの、一定のレベルまで増加すると、高い流速によって生成される、よりなだらかなグラジエントのためにプラトーに達します(図 5D)。

図 5.cetuximab のチャージバリアントの分離における流速の影響

A および B:グラジエント容量は一定。グラジエント勾配 = 8 mM NaCl/CV。C および D:グラジエント時間は一定

カラム温度

図 6A–C は温度を変化させた場合の実験結果を示しています。CEX は非変性下で行う分離技術であるため、温度は最高で 37 °C としました。

保持係数と温度の関係は、ファントホッフの式で表されます。

log k = -(ΔH / RT) + (ΔS / R) + log β

k は保持係数、T は絶対温度(単位:ケルビン)、ΔH は相間の分析種の移動に伴うエンタルピー変化で、ΔS はエントロピー変化、R はモル気体定数です。

log k 対 1/T のプロットは、直線関係になることが予想されます。また、エンタルピーおよびエント ロピーの情報は傾きと Y 切片からそれぞれ推定されます6。 図 6B に示したように、adalimumab で直線関係が得られました。一方、温度の上昇に伴い、保持時間の増加が見られましたが(図 6B、右側のプロット)、ピークバレー比、ピークキャパシティ、選択性には大きな変化が見られません でした(図 6C)。cetuximab、trastuzumab、bevacizumab、および文献に基づいた他の mAb でも同様の結果が得られました(データは示していません)7

陽イオン交換分離において、温度がタンパク質の保持に影響を及ぼすと考えられる一方、mAb のチャージバリアント間の選択性における差や分離については、ほとんど影響がありませんでした。そのため、温度の最適化は必須ではありませんが、保持時間の再現性を得るためには、分離の温度を制御することが推奨されます。

図 6.adalimumab のチャージバリアントの分離における温度の影響

20 mM MES、pH 5.7、140~175 mM NaCl /5 分

有機添加剤

有機添加剤は、IEX 分離の選択性や、分離における二次相互作用に影響を及ぼす場合があります。pH 5.4、6.0、6.6 の 3 種類の移動相に、少量のイソプロパノールまたはメタノールを添加しました。5% のイソプロパノールを添加したpH 6.0 の移動相で adalimumab を分離したクロマトグラムを図 7に示しています。  

図 7.adalimumab のチャージバリアントの分離における移動相添加剤(イソプロパノール)の影響

20 mM MES、pH 6.0、115~155 mM NaCl / 5 分

2 つのクロマトグラムはほぼ同一に見えますが、保持時間が異なっており、これは移動相中の 95% の塩のみが分析種を溶離しているためと考えられます。 

すべてのケースにおいて、有機溶媒添加の有無にかかわらず、ピーク面積がほぼ同じであり、また、有機溶媒混合比の増加に伴って、保持が増加することに留意する必要があります。この 2 つの結果から、分析種と固定相の間に、疎水性相互作用がわずかに存在していることが示唆されます。これは、カラム充塡剤に最小限の疎水性表面が必要となる、抗体薬物複合体(ADC)などの疎水性タンパク質および変性タンパク質の回収において重要です。

カラム長

mAb チャージバリアントの分離におけるカラム長の影響を図 8A-D に示しています。

上のクロマトグラムは、4.6 × 50 mm カラムにおける 5 分のグラジエントによる分離を、下のクロマトグラムは、4.6 × 100 mm カラムにおける10 分のグラジエントによる分離を示しています。グラジエント勾配のカラム容量は同じであるため、分離能の変化は、カラム長の影響によるものであり、選択性の変化によるものではありません。すべてのデータが示すように、100 mm カラムは 50 mmカラムよりも優れた分離を提供します。重要なのは、100 mm カラムでは、より小さなピークを分離できる点です。 

図 8A および B の中央のクロマトグラムは、4.6 × 50 mm カラムにおけるグラジエント時間 10 分での分離を示しています。グラジエント勾配は半分になっていますが、分離能は 4.6 × 100 mm カラムにおけるグラジエント時間 10 分の場合ほど高くはなく、短いカラムで長いグラジエントを実行するよりも、長いカラムを使用した方が、分離への影響が大きいことがわかります。

図 8.mAb チャージバリアントの分離におけるカラム長の影響

A:trastuzumab、20 mM MES、pH 6.7、50~85 mM NaCl B:bevacizumab、20 mM MES、pH 5.4、120~200 mM NaCl C:cetuximab、20 mM MES、pH 6.6、25~65 mM NaCl D:adalimumab、20 mM MES、pH 5.7、140~175 mM NaCl

カラム内径

図 9 は、2.1×50 mm カラムおよび 4.6×50 mm カラムによる adalimumab の分離を示しています。  LC システムには、グラジエントディレイボリュームが存在し、内径の小さなカラムに対してより大きな影響を及ぼすため、保持時間は内径 2.1 mm のカラムの方が長くなります。装置メソッドでグラジエントディレイボリュームを補正することで(中央のクロマトグラム)、両方のカラムの保持時間はほぼ同じなります。

内径については、塩基性化合物のピークの p/vstart や拡大したクロマトグラムのプロファイルで確認できるように、2.1 mm のカラムより 4.6 mm のカラムの分離能の方が高くなります。カラムアウトレットと検出器の間の配管は、内径 0.0025インチ、長さ 8.5インチ、TUV 検出器の流路は 5 mm です。生成されるピーク容量が小さくなることから、内径の小さなカラムの性能に対するポストカラム拡散の影響が、より大きくなると予測されます。

一方で、内径の小さなカラムを使用する方が有益な場合もあります。例えば、サンプル容量が少ない場合や、移動相の使用量を制限することにより、コスト面でのメリットを重視する場合です。もう一つの利点は、揮発性移動相を使用してエレクトロスプレーイオン化を用いた質量分析によって直接分析する場合に得られます。この場合、内径が小さなカラムでは、より適切な低流速で使用できるため、フロースプリットが不要になることがあります。

図 9.カラム内径 2.1 mm および 4.6 mm における adalimumab のチャージバリアントの分離。カラム内径 2.1 mm でのグラジエントディレイボリュームの補正なし(上)およびあり(中)。カラム内径 2.1 mm の流速 = 0.17 mL/分、カラム内径 4.6 mm の流速 = 0.8 mL/分

Auto•Blend Plus テクノロジー

このアプリケーションノートで紹介した分析はすべて、Auto•Blend Plus メソッドを使用して実施しています。Auto•Blend Plus テクノロジーは Empower ソフトウェアの機能の一つです。ACQUITY UPLC H-Class/H-Class Bio、ACQUITY Arc/Arc Bio システムを含むウォーターズのクオータナリーポンプで使用可能で、分析者はメソッドで pH および塩のモル濃度を直接プログラムできます(「実験方法」セクションのグラジエントテーブルを参照)。移動相の調製が大幅に簡素化されるので、分析法開発を素早く行うことができます。さらに、Auto•Blend Plus テクノロジーを使用することにより、開発された分析法の堅牢性がある範囲をより厳密に定義できます。

結論

分析法の開発は、陽イオン交換クロマトグラフィーによるバイオ医薬品タンパク質のチャージバリアント分析における重要な一歩であり、操作可能な多くのファクターが存在します。

  • 移動相 pH は酸性化合物と塩基性化合物のピーク分離に逆の影響を及ぼします。そのため、分離における最適な妥協点を判断し、分析に用いる pH の選択を慎重に行う必要があります。
  • グラジエント勾配は選択性および分離に影響を及ぼします。カラム容量で定義されるグラジエント勾配は、グラジエント時間または流速によって変化します。グラジエント勾配をなだらかにすると、分離能が高くなります。ただし、ある点を超えると、グラジエント勾配を更になだらかにしても、分離が改善されなくなります。
  • 温度が mAb チャージバリアントの選択性に与える影響はほとんどありません。ただし、再現性を高めるためにも、温度を制御することを推奨します。
  • 短いカラムでグラジエント時間を長くするよりも、長いカラムを使用する方が、分離に与える影響が大きくなります。
  • 最後に、BioResolve SCX mAb カラムでは、mAb の分離および回収における有機溶媒添加の影響はほとんどありませんでした。これは、分析種とこのCEX 固定相との間の疎水性相互作用が、ほとんどないことを示しています。

分析法開発の体系的なプロセスにより、有効な CEX 分離が日常的に開発できることをご紹介しました。AutoBlend Plus テクノロジーを使用し、高性能BioResolve SCX mAb カラムの利点を活用することにより、分析法開発プロセスの効率化が実現します。

参考文献

  1. Khawli, L.A.; et al.Charge variants in IgG1.mAbs.2010, 2 (6), 613–624.
  2. Wang, Q.; et al.Development of pH Gradient Mobile Phase Concentrates for Robust and High Resolution mAb Charge Variant Analysis.Waters Application Note, 720006491EN (2018).
  3. Hlady, V.; Buijs, J. Protein Adsorption on Solid Surfaces.Current Opinion on Biotechnology.1996, 7 (1), 72–77.
  4. Kittelmanna, J.; et al.Orientation of Monoclonal Antibodies in Ion-Exchange Chromatography: A Predictive Quantitative Structure-Activity Relationship Modeling Approach. J. Chrom.A.2017, 1510, 33–39.
  5. Lauber, M.A.; et al.Designing a New Particle Technology for Robust Charge Variant Analysis of mAbs.Waters Application Note, 720006475EN (2018).
  6. Fekete, S.; et al.Ion-Exchange Chromatography for the Characterization ofBiopharmaceuticals.J. Pharmaceutical and Biomedical Analysis.2015, 113, 43–55.
  7. Fekete, S.; et al.Method Development for the Separation of Monoclonal Antibody Charge Variants in Cation Exchange Chromatography, Part I: Salt Gradient Approach. J. of Pharmaceutical and Biomedical Analysis.2015, 102, 33–44.

720006477JA、2019 年 4 月

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