法中毒学目的のみに使用してください。
この試験の目的は、シンプルなサンプル前処理手順を取り入れた単一の迅速分析法を開発して、一般的に使用されている 2 種類の免疫測定法に置き換わる可能性のある代替手法として ACQUITY UPLC H-Class/ACQUITY QDa システムを評価することでした。選択性は、保持時間、プリカーサーイオンおよびプロダクトイオン、イオン比のモニタリングによって得られます。この分析法の分析範囲は 2000 ng/mL まで拡張されており、定量性能も提供しています。
ACQUITY QDa 質量検出器は、免疫測定法の代替手法として大きな可能性があることが実証されました。
アンフェタミン類(メタンフェタミンとアンフェタミン)は、世界中で最も多く乱用されている違法物質の一種です。2016 年に、世界中で約 3,500 万人の成人がアンフェタミンを使用していると推定されました²。年間使用量が最も高い地域は北米であり、その数は全人口の約 2% にのぼりました。一方、ここ数年で、他の地域(特に東アジアおよび東南アジア)での消費の著しい増加が見られています。これらの地域では、最も懸念される薬物使用の脅威の 1 つとしてアンフェタミンが特定されています。さらに、西アジアではエクスタシー(3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、MDMA)の使用量増加が顕著ですが、エクスタシーと称される錠剤のうち、本当に MDMA が含まれているものは半分未満と推定され、通常はメタンフェタミンやアンフェタミン、ケタミンが含まれていることが判明しています²。
法医学ラボでは通常、ルーチンの尿分析に免疫測定法が利用されています。この手法は迅速でシンプルですが、多くの場合選択性の悪さにともなう欠点が存在することがあります。例えば、アンフェタミンやケタミンについて疑陽性の結果がさまざまな物質において報告されています3-5。 免疫測定法の結果が陽性であった場合のほとんどは確認試験(GC や LC-MS など)を必要とするため、アッセイの選択性が悪いために疑陽性の同定になると、結果として、ラボの効率が大きく損なわれる可能性があります。
この試験の目的は、2 つのクラスの一般的な乱用薬物の分析に用いる代替の分析手法として、UPLC-QDa システムを評価することでした。この手法では、クロマトグラフィー分離とシンプルな質量検出器を使用して、免疫測定法にともなう交差反応性およびラボの非効率性の問題に対処します。
認定レファレンス標準試料(1 mg/mL)および対応する重水素化内部標準(ISTD)(100 µg/mL)は Sigma-Aldrich(英国、プール、表 1)から購入しました。150 ng/mL のアンフェタミン、メタンフェタミン、ケタミンを含む市販の品質管理(QC)尿サンプル(Medidrug WDT Confirm U、-25% カットオフ、製品番号:27UQ01KE)は、Medichem(ドイツ)から購入しました。薬物が含まれていない真正尿サンプルをボランティアから収集し、プールしました。
分析の選択性および直線性を評価するために、プールした薬物が含まれていない尿に混合レファレンス標準試料をスパイクして、40 ~ 2000 ng/mL の一連のキャリブレーション試薬を調製しました。一連の社内 QC(75、150、600、1600 ng/mL)は、別々のバッチのレファレンス物質を用いて、プールした尿中に調製しました。
分析の前に、すべてのサンプルおよび QC を、濃度 500 ng/mL の ISTD を含む水溶液で 5 倍希釈しました。
ACQUITY UPLC H-Class システムで、ACQUITY UPLC BEH C18、1.7 µm、2.1 × 5 mm VanGuard プレカラムと接続した ACQUITY UPLC BEH C18、1.7 µm、2.1 × 50 mm カラムでの迅速な 3 分間のグラジエント溶出を用いて、クロマトグラフィー分離を行いました。ポジティブイオン化モードの ACQUITY QDa 質量検出器で、選択イオンレコーディング(SIR)を用いてデータを取り込みました。特定のコーン電圧でイオン源内衝突誘起解離(CID)を適用して、1 種類以上のプロダクトイオンを生成しました6,7。
データは、MassLynx ソフトウェアで取り込み、TargetLynx アプリケーションマネージャーで解析しました。陽性同定には、予想保持時間(±0.2 分)に、予想値 ±20% のイオン比で、プロダクトイオンとともにプリカーサーイオンが存在する、という基準を使用しました。レファレンスのイオン比は、プリカーサーのピーク面積レスポンスと関連するプロダクトイオンのレスポンスの比に基づいており、4 種類の QC 濃度にわたって得られた平均から算出しました。
すべての化合物で、調査した濃度範囲(40 ~ 2000 ng/mL)にわたって良好な直線性が示されました。図 2 に、ケタミンのレスポンスの例を示します。
市販の尿 QC(WDT -25%)の分析により、アンフェタミン、メタンフェタミン、ケタミンが正常に同定され、算出した濃度が予想濃度の 12% 以内であることがわかりました。
アンフェタミンまたはケタミンの免疫測定法に干渉することが知られている一般的な分析種の影響を評価するため、21 種の物質(表 2)を選択して調査しました。ブランク尿に、21 種の標準試料それぞれを濃度 10,000 ng/mL になるように個別にスパイクしました。調査した分析種のうち、アンフェタミン、メタンフェタミン、ケタミン、ノルケタミンについて疑陽性の結果になったものはありませんでした。さらに、同じ分析種を QC 尿(600 ng/mL)にスパイクすることによって可能性のある干渉について調査したところ、結果から、定量データの点で干渉はないことがわかりました。
Xevo G2-XS QTof に基づいて確立された高分解能質量分析スクリーニング手法を用いて、以前に特性解析した一部の真正尿サンプルを試験しました⁸。得られた結果から、2 つのアプローチは一致していることがわかりました。
LC-MS/MS は現在では、世界中の法中毒学ラボにおいて、違法薬物のスクリーニングおよび定量用に確立されています。この試験により、一部のアプリケーションでは、単一の四重極ベースの検出器で十分な分析感度とダイナミックレンジが得られることが示されました。ACQUITY QDa 質量検出器は、免疫測定法の代替手法として大きな可能性があることが実証されました。
薬物検査施設は、迅速かつ正確な結果を得るために絶え間ない努力を続けています。この試験の目的は、シンプルなサンプル前処理手順を取り入れた単一の迅速分析法を開発して、一般的に使用されている 2 種類の免疫測定法に置き換わる可能性のある代替手法として ACQUITY UPLC H-Class/ACQUITY QDa システムを評価することでした。選択性は、保持時間、プリカーサーイオンおよびプロダクトイオン、イオン比のモニタリングによって得られます。この分析法の分析範囲は 2000 ng/mL まで拡張されており、定量性能も提供しています。
720006595JA、2019 年 6 月