• アプリケーションノート

トリプトファンおよび代謝物の分析のための MetaboQuan-R

トリプトファンおよび代謝物の分析のための MetaboQuan-R

  • Billy J. Molloy
  • Waters Corporation

研究目的のみに使用してください。診断用には使用できません。

要約

さまざまなマトリックス中のトリプトファンおよびその代謝物 7 種を分析するための迅速な UPLC-MS/MS 分析法を開発しました。この分析法では、さまざまな化合物クラス(メタボロミクス、リピドミクス、プロテオミクスなど)に使用できる一般的で柔軟な LC-MS プラットホームを活用しています。これは、ターゲットマルチオミクスワークフローの一部としてこの分析法を連続して行い、一連の分析の一部として適用できることを意味します。

アプリケーションのメリット

  • 1 回の分析(分析時間 3 分以内)でトリプトファンとその代謝物 7 種を同時分析
  • より大きなサンプルセットを迅速に分析できるハイスループットな分析
  • 一般的な LC-MS 構成で 1 つの化合物クラスから他のクラスに切り替え可能な汎用性を実現

はじめに

トリプトファンは、アミノ酸の一種であり、その代謝物(図 1)とともに、脳の健康や心血管代謝の調節など、さまざまな生物学的機能において重要な役割を果たしています。このため、トリプトファン代謝の研究はバイオ医薬品研究において注目を集めており、トリプトファンおよびその代謝物のハイスループット分析法により、大規模なコホート研究の分析が可能になります。ここでは、柔軟な LC-MS プラットホームを用いたハイスループット UPLC 分析法を紹介します。この分析法は、ターゲットオミクスメソッドライブラリーに登録されている他の化合物クラスの分析法とともにシームレスに使用でき、ラボにおける分析法開発の負担を軽減しつつ、分析範囲を簡便に増やすことができます。

図 1.トリプトファンの代謝経路を示す概略図。

実験方法

サンプル前処理

ヒト尿

100 µL のヒト尿を LC-MS グレードの水 900 µL で 1:10 に希釈しました。次に、この希釈液 1 µL を UPLC-MS/MS システムに注入しました。

ヒト血漿

固相抽出(SPE)を用いて 150 µL のヒト血漿を抽出しました。抽出前に、SPE プレートをふさがないようにサンプルを遠心分離しました。各サンプル 150 µL を 450 µL の水で希釈した後、Oasis HLB PRiME µElution プレートにロードしました。次に、プレートを 150 μL の水で洗浄しました。分析種は、25 µL のメタノールを用いて SPE プレートから溶出しました。溶出液を 25 µL の水で 1:1 に希釈した後、UPLC-MS/MS システムに 1 µL 注入しました。 

LC 条件

UPLC 分離は、CORTECS T3、2.7 µm(2.1 × 30 mm)分析カラムを接続した ACQUITY UPLC I-Class システム(固定ループ)で行いました。1 µL のサンプルをカラムにロードし、流速を 0.45 mL/分とし、グラジエント条件で溶出しました。移動相 A は 0.01% のギ酸水溶液で、移動相 B は 0.01% のギ酸含有 50% イソプロピルアルコールのアセトニトリル溶液を用いました。最初の 0.75 分間移動相 B を 0% で維持した後、0~70% の移動相 B のグラジエントにより、トリプトファンおよびその関連代謝物を 0.95 分間かけてカラムから溶出させて分離し、続いて 98% の移動相 B で 1 分間カラムを洗浄しました。その後、カラムを初期条件で再平衡化しました。分析カラムの温度は60 °C に維持しました。

MS 条件

分析種は、Xevo TQ-S micro 質量分析計を用いた多重反応モニタリング(MRM)分析により検出しました。すべての実験は、エレクトロスプレーイオン化ポジティブ(ESI+)モードで実行しました。イオン源の温度とキャピラリー電圧は一定に保ち、それぞれ 150 ℃ と 2.0 kV に設定しました。コーンガス流量は 50 L/hr、脱溶媒温度は 650 °Cに設定しました。

インフォマティクス

分析法の情報は、MassLynx 内の Quanpedia 機能を使用して LC-MS システムにインポートしました。この拡張可能で検索可能なデータベースにより、化合物の定量用に TargetLynx で使用する LC メソッド、MS メソッドならびに解析メソッドを作成できます。

結果および考察

トリプトファンおよびその代謝物は、上記の LC-MS プラットホームおよび抽出プロトコルを用いて分離および検出しました。図2 に、分析法を使用して得られた、ヒト尿サンプルの分離のクロマトグラム例を示しています。分析標準試料を用いてピークを同定しました。表 1 に記載されているすべての分析種(メラトニンを除く)が、ヒト尿中で検出されました。3 つの分析種(セロトニン、トリプトファン、キヌレニン)が、ヒト血漿中で検出されました。表 1 には、一部の分析種について 1 つの MRM トランジションのみがリストされていますが、他の分析種については複数の MRM トランジションがリストされています。単一および複数の MRM のいずれにおいても、同程度の感度が得られました。特異性を高めるために、すべてのトランジションを使用しました。

図 2.MetaboQuan-R プラットホームを使用した、ヒト尿中のトリプトファンおよびその代謝物の代表的なクロマトグラム:(A)トリプトファン、(B)トリプタミン、(C)セロトニン、(D)キヌレン酸、(E)5-HIAA、(F)キヌレニン、(G)アセチル-5-ヒドロキシトリパミン。

表 1. トリプトファンおよびその代謝物の MS-MS 条件および保持時間

結論

さまざまなマトリックス中のトリプトファンおよびその代謝物 7 種を分析するための迅速な UPLC-MS/MS 分析法を開発しました。この分析法が、ヒトの血漿および尿におけるこれらの化合物の生理学的な濃度レベルでの分析に適していることが実証されました。この分析法では、さまざまな化合物クラス(メタボロミクス、リピドミクス、プロテオミクスなど)に使用できる一般的で柔軟な LC-MS プラットホームを活用しています。これは、ターゲットマルチオミクスワークフローの一部としてこの分析法を連続して行い、一連の分析の一部として適用できることを意味します。

720006667JA、2019 年 9 月

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