研究目的のみに使用してください。診断用には使用できません。
本アプリケーションノートでは、溶液中の 20 種類のアミノ酸を分析するための、Kairos アミノ酸分析キットの使用方法について説明します。Kairos アミノ酸分析キットはバイオメディカル研究用に設計されたフレキシブルなキットであり、ACQUITY UPLC/ACQUITY QDa システムを使用することにより、10 分以内で正常な生理学的濃度範囲にある 20 種のアミノ酸の正確な定量が可能です。
研究専用の Kairos アミノ酸分析キット(製品番号:176004379)は、バイオメディカル研究用に設計されており、最大 45 種の生物学的に関連のあるアミノ酸を 10 分以内で分析できます。キットのキャリブレーターは、使用可能なアミノ酸については、より高次の標準物質を用いて計量されており、結果の信頼性を高めています。Kairos アミノ酸分析キットキャリブレーター(製品番号:186009048)の計量計測トレーサビリティは、9 種類のアミノ酸については日本の計量標準総合センター認証標準物質(NMIJ CRM 6011a-6018a, 6022a)にトレーサブルで、さらに 8 種類のアミノ酸についてはアメリカ国立標準技術研究所(NIST SRM 2389a)にトレーサブルです。その他のアミノ酸は、使用可能な場合は Sigma-Aldrich 社製の TraceCERT スタンダードを用いて重量測定法で調製しました。
ここでは、溶液中の 20 種類のアミノ酸を分析するための Kairos アミノ酸分析キットの使用方法を説明します。ACQUITY UPLC I-Class システムで CORTECS UPLC C18 1.6 µm, 2.1 × 150 mm カラム(製品番号:186007096)を使用して、クロマトグラフィー分離を行った後、セットアップが自動化され、シンプルな設計の ACQUITY QDa MS検出器によって検出しました(図 1)。キットおよび分析システムの性能を溶液を用いて評価し、また、バイオメディカル研究用に NIST SRM 2389a 認証標準物質を分析しました。
使用したクロマトグラフィー条件により、ロイシンおよびアラニンの同じ分子量をもつ分析種を分離できました。
Kairos アミノ酸分析キット(製品番号:176004379)
システム: |
ACQUITY UPLC H-Class カラムヒーター (CH-A) |
ニードル: |
15 µL |
カラム: |
CORTECS UPLC C18 2.1 × 150 mm、1.6 µm(製品番号:186007096) |
プレカラム: |
ACQUITY UPLC カラムインラインフィルターキット (製品番号:205000343) |
移動相 A: |
0.1% ギ酸水溶液 |
移動相 B: |
0.1% ギ酸含有アセトニトリル |
ニードル洗浄液: |
移動相 B |
パージ溶媒: |
移動相 A |
カラム温度: |
55 ℃ |
注入量: |
2 µL |
流量: |
0.5 mL/分 |
グラジエント: |
表 1 参照 |
分析時間: |
9 分 |
システム: |
ACQUITY QDa MS 検出器 |
測定モード: |
シングルイオンレコーディング(SIR)(詳細は表 2 および 3 を参照) |
極性: |
ESI+ |
キャピラリー電圧: |
0.8 kV |
イオン源温度: |
120 °C |
脱溶媒温度: |
600 ℃ |
コーン電圧: |
10 V |
MassLynx v4.1 ソフトウェアおよび TargetLynx アプリケーションマネージャー
凍結乾燥させた Kairos アミノ酸分析キット試薬を再溶解する際には、取扱説明書(720005448EN)に従ってください。2 mL の 0.1 M HCl を室温で少なくとも 30 分混合し、すべての物質が完全に溶解したことを確認して、キャリブレーターおよび QC を再溶解しました。
2 mL の水を室温で少なくとも 10 分混合し、すべての物質が完全に溶解したことを確認して、内部標準を再溶解しました。バイアルの内容物を容量フラスコに移し、キットに含まれている10% スルホサリチル酸を使用して 10 mL としました。
Kairos アミノ酸分析キット、ホウ酸バッファー、AccQ•Tag Ultra「3X」誘導体化キットの試薬を調製する際には、取扱説明書(720005448EN)に従ってください。ホウ酸バッファーの調製:430 µL の 0.5 M NaOH 水溶液を、誘導体化キットに含まれている 6 mL のホウ酸バッファーに加えます(試薬 1)。有効期限: 3 ヶ月。保管:室温
AccQ•Tag Ultra 「3X」試薬:AccQ•Tag Ultra「3X」(試薬 2B)を 1.5 mL のアセトニトリル(試薬 2A)で再溶解します。55 °C で 10 分間加熱し、ボルテックスで混合します。有効期限:5 日。保管:室温AccQ•Tag Ultra 「3X」を再溶解した後は、デシケーター内で保存する必要があります。
ステップ 1 |
50 µL のサンプルを 1.5 mL のエッペンドルフチューブに添加します |
ステップ 2 |
内部標準 50 µL を添加します |
ステップ 3 |
5 秒間ボルテックスで混合します |
ステップ 4 |
50 µL の水を添加します |
ステップ 5 |
5 秒間ボルテックスで混合します |
ステップ 6 |
高濃度サンプルのみ – 1,000 µL の希釈液(0.1 M HCl)を添加します |
ステップ 7 |
9,000 x g で 15 分間遠心分離します |
ステップ 8 |
70 µL のホウ酸バッファーをマキシマムリカバリーバイアルに添加します |
ステップ 9 |
10 µL の試料上清をホウ酸バッファーに添加し、ピペットで混合します |
ステップ 10 |
20 µL の AccQ•Tag Ultra 「3X」試薬を添加します |
ステップ 11 |
5 秒間ボルテックスで混合します |
ステップ 12 |
サンプルを 1 分間室温で放置します |
ステップ 13 |
55 °C で 10 分間加熱します |
ステップ 14 |
2 µL を LC に注入します |
精度および真度試験では、パネルサンプルを重量測定法で調製します。すべてのアミノ酸について 0.1 M HCl で 20、150、400、700 µM の濃度に調製し、アラニン、グリシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミンについては、追加の高濃度パネルとして 2500 µM に調製します。
高濃度サンプルに続いてブランクを注入した場合に、顕著なシステムキャリーオーバー(検出器のレスポンスがキャリブレーター 1 の ≤20%)は観察されませんでした。
精度は、パネルサンプルを調製し、3 日にわたって 5 回分析を繰り返す(n=15)ことにより判断しました。日内および日間精度(%CV)を、各パネルについて計算しました。表 4 に示したように、日内精度における各パネルの CV は ≤12.0% で、日間精度では ≤14.7% であり、1 日内および日間精度における CV の平均値は ≤11.3% でした。
直線性を評価するために、3 日間にわたって、Kairos アミノ酸分析キットキャリブレーターの分析を行いました。回帰分析の結果、分析した 20 種 のアミノ酸について、全濃度範囲において 1/x の重み付けを使用し、線形回帰が得られました(表 5)。各アミノ酸について、決定係数(r2)は >0.99 であり、逆算されたキャリブレーターの濃度は理論値 の ±15% 以内でした(LLOQ を除く(±20% 以内))。少なくとも 75% のキャリブレーターがこの基準を満たしていました。
0.1 M HCl で調製したサンプルを 1~20 µM の範囲で、同日に 5 回繰り返し分析することにより、感度を評価しました。分析種のピークにおけるシグナル対ノイズ比が ≥10:1 で、併行精度が ≤20% CV の場合を用いて、各分析種の LOQ を決定しました。分析された 20 種すべてのアミノ酸の LOQ が ≤4 µM であり、結果を表 6 に示しています。
個別に調製されたパネルサンプルおよび NIST SRM 2389a の分析によって真度を評価しました。サンプルは分析前に 400 µM に重量測定法で希釈しました。すべてのパネルサンプルが ≤ ±12.3% バイアス( -10.2 ~ +12.3% の範囲)であり、表 7 に示したように、希釈された NIST SRM 2389a の計算濃度は ≤ ±8.9% バイアス(-8.9 ~ +6.2% の範囲)でした。
Kairos アミノ酸分析キットはバイオメディカル研究用に設計されたフレキシブルなキットであり、ACQUITY UPLC/ACQUITY QDa システムを使用することにより、10 分以内で正常な生理学的濃度範囲にある 20 種のアミノ酸の正確な定量が可能です。
AccQ•Tag Ultra 「3X」誘導体化キットを使用してサンプルを誘導体化することにより、アミノ酸のシンプルかつ頑健、そして高速での逆相 UPLC 分析が可能になります。また、移動相バッファーやイオンペア試薬は不要です。専用のシステムは必要なく、ACQUITY UPLC/ACQUITY QDa システムを、他の分析に使用することも可能です。誘導体化されたサンプルは安定で、10 分以内でクロマトグラフィーにより同じ分子量のアミノ酸の分離が達成されるため、ピーク同定の信頼性が高まります。
この研究専用の Kairos アミノ酸分析キットで紹介されている分析法を用いて、ACQUITY UPLC/ACQUITY QDa システムを使用した溶液中の 20 種のアミノ酸の分析を行うことにより、高い精度、直線性、感度、真度が得られます。
720006488JA、2019 年 1 月