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Kairos アミノ酸分析キットを使用した、バイオメディカル研究のための 45 種アミノ酸の UPLC-MS/MS 分析

Kairos アミノ酸分析キットを使用した、バイオメディカル研究のための 45 種アミノ酸の UPLC-MS/MS 分析

  • Padhraic Rossiter
  • Jaime Salcedo Dominguez
  • Jennifer Warren
  • Norma Breen
  • Lisa J. Calton
  • Waters Corporation

研究目的のみに使用してください。診断用には使用できません。

要約

本研究では、溶液中の 45 種類のアミノ酸を分析するための、Kairos アミノ酸分析キットの使用方法について説明します。ACQUITY UPLC I-Class システム、CORTECS UPLC C18 カラムを使用して、クロマトグラフィー分離を行った後、Xevo TQ-S micro システムで検出しました。

Kairos アミノ酸分析キットはバイオメディカル研究用に設計されたフレキシブルなキットであり、ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQ-S micro システムを使用することにより、10 分以内で正常な生理学的濃度範囲にある 42 種のアミノ酸の正確な定量が可能です。

利点

  • クロマトグラフィーによる選択性により、同じ分子量をもつ分析種の分離を実現
  • 迅速な分析時間(<10 分)
  • ピーク検出における信頼性
  • 優れた柔軟性により、他の分析にもシステムを使用可能

はじめに

研究専用の Kairos アミノ酸分析キットは、バイオメディカル研究用に設計されており、最大 45 種の生物学的に関連のあるアミノ酸を 10 分以内で分析できます。キットのキャリブレーターは、使用可能なアミノ酸についてはより高次の標準物質を用いて計測されており、結果の信頼性を高めています。Kairos アミノ酸分析キットキャリブレーターの計量計測トレーサビリティは、9 種類のアミノ酸については日本の計量標準総合センター認証標準物質(NMIJ CRM 6011a-6018a, 6022a)にトレーサブルで、さらに 8 種類のアミノ酸についてはアメリカ国立標準技術研究所(NIST SRM 2389a)トレーサブルです。その他のアミノ酸は、使用可能な場合は Sigma-Aldrich 社製の TraceCERT スタンダードを用いて重量測定法で調製しました。

ここでは、溶液中の 45 種類のアミノ酸を分析するための、Kairos アミノ酸分析キットの使用方法について説明します。ACQUITY UPLC I-Class システム、CORTECS UPLC C18 カラムを使用して、クロマトグラフィー分離を行った後、Xevo TQ-S micro システムで検出しました(図 1)。キットおよび分析システムの性能を溶液を用いて評価し、また、バイオメディカル研究を目的として NIST SRM 2389a 物質およびマトリックスサンプル(尿および血漿)を分析しました。

図 1.Waters ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQ-S micro システム

使用したクロマトグラフィー条件により、ロイシン、メチルヒスチジン、アラニン、アミノ酪酸で同じ分子量をもつ分析種を分離できました。

実験方法

試薬キット

Kairos アミノ酸分析キット(製品番号:176004379)

LC 条件

システム:

ACQUITY UPLC I-Class (FL) およびカラムヒーター (CH-A)

ニードル/ループ:

10 μL/10 μL

カラム:

CORTECS UPLC C18 カラム、1.6 µm、2.1 x 150 mm

プレカラム:

インラインフィルター

移動相 A:

0.1% ギ酸水溶液

移動相 B:

0.1% ギ酸含有アセトニトリル

弱洗浄溶媒:

移動相 A

強洗浄溶媒:

移動相 B

カラム温度:

55 ℃

注入量:

2 µL

流量:

0.5 mL/min

グラジエント条件

時間(分)

%A

%B

カーブ

初期条件

99

1

初期条件

1

99

1

6

2

87

13

6

5.5

85

15

6

6.5

5

95

6

7.5

5

95

6

7.6

99

1

6

表 1.アミノ酸分離のためのグラジエントテーブル

分析時間:9分

MS 条件

システム:

Xevo TQ-S micro

データ取得モード:

マルチプルリアクションモニタリング(MRM)(詳細は付録の表 A および B を参照)

極性:

ESI+

キャピラリー電圧:

2.0 kV

ソース温度:

150 ℃

脱溶媒温度:

1000 °C

コーン電圧:

30 V

データ管理

MassLynx v4.1 ソフトウェアおよび TargetLynx アプリケーションマネージャー

キット中の試薬の再溶解

凍結乾燥させた Kairos アミノ酸分析キット中の試薬を再溶解する際には、取扱説明書(品番:720005448EN)に従ってください。2 mL の 0.1 M HCl を室温で少なくとも 30 分混合し、すべての物質が完全に溶解したことを確認して、キャリブレーターおよび QC を再溶解しました。

2 mL の水を室温で少なくとも 10 分混合し、すべての物質が完全に溶解したことを確認して、内部標準を再溶解しました。バイアルの内容物を容量フラスコに移し、キットに含まれている 10% スルホサリチル酸を使用して 10 mL としました。

試薬の調製

Kairos アミノ酸分析キット、ホウ酸バッファー、AccQ•Tag Ultra「3X」誘導体化キットの試薬を調製する際には、取扱説明書に従ってください。

ホウ酸バッファーの調製:430 µL の 0.5 M NaOH 水溶液を、誘導体化キットに含まれている 6 mL のホウ酸バッファーに加えます(試薬 1)。有効期限:3 ヶ月。保管:室温

AccQ•Tag Ultra 「3X」試薬:AccQ•Tag Ultra「3X」(試薬 2B)を 1.5 mL のアセトニトリル(試薬 2A)で再溶解します。55℃ で 10 分間加熱し、ボルテックスミキサーで混合します。有効期限 5 日。保管:室温AccQ•Tag Ultra 試薬を再溶解した後は、デシケーター内で保存する必要があります。

サンプル前処理

ステップ 1    50 µL のサンプルを 1.5 mL のエッペンドルフチューブに添加します

ステップ 2    50 µM の内部標準 50 µL を添加します

ステップ 3    5 秒間ボルテックスで混合します

ステップ 4    50 µL の水を添加します

ステップ 5    5 秒間ボルテックスで混合します

ステップ 6    高濃度サンプルのみ – 1,000 µL の希釈液(0.1 M HCl)を添加します

ステップ 7    9,000 x g で 15 分間遠心分離します

ステップ 8    70 µL のホウ酸バッファーをマキシマムリカバリーバイアルに添加します

ステップ 9    10 µL の試料上清をホウ酸バッファーに添加し、ピペットで混合します

ステップ 10    20 µL の AccQ•Tag Ultra「3X」試薬を添加します

ステップ 11    5 秒間ボルテックスで混合します

ステップ 12    サンプルを 1 分間室温で放置します

ステップ 13    55 °C で 10 分間加熱します

ステップ 14    2 µL を注入します

精度および真度試験では、パネルサンプルを重量測定法で調製します。すべてのアミノ酸について0.1 M HCl で 20、150、400、700 µM の濃度に調製し、アラニン、グリシン、イソロイシン、フェニルアラニン、バリン、セリン、スレオニン、チロシン、グルタミンについては、追加の高濃度パネルとして 2,500 µM に調製します。

結果および考察

すべてのアミノ酸について、高濃度サンプルに続いてブランクを注入した場合に、顕著なシステムキャリーオーバー(検出器レスポンスがキャリブレーター1 の ≤20%)は観察されませんでした。 

精度は、パネルサンプルを調製し、3 日にわたって 5 回分析を繰り返し(n=15)算定しました。日内および日間精度(%CV)を、各パネルについて計算しました。表 2 に示したように、日内精度における各パネルの CV は ≤6.9% で、日間精度では ≤16.3% (アルギニノコハク酸が除外された場合には ≤13.9% )であり、日内および日間精度における平均CV%は、≤13.9% でした。

表 2.45 種のアミノ酸の分析における日内および日間精度の平均値

直線性を評価するために、3 日間にわたって、Kairos アミノ酸分析キットキャリブレーターの分析を行いました。回帰分析の結果、分析した 45 種のアミノ酸について、全濃度範囲を通じて 1/x重み付けを使用した線形回帰が得られました(表 3)。各アミノ酸について、決定係数(r2)は >0.99 であり、逆算されたキャリブレーターの濃度は理論値の ±15% 以内でした(LLOQ を除く(±20% 以内))。キャリブレーターの少なくとも 75% がこの基準を満たしており、例外としては、赤色で表示されている三つの分析種(ヒドロキシプロリン、シスタチオニン、アルギニノコハク酸)が挙げられます。

表 3.Kairos アミノ酸分析キットの直線性

* LLOQ における偏差

0.1 M HCl で調製したサンプルを 1~20 µM の範囲で、同日に 5 回分析し、感度を評価しました。分析種のピークにおけるシグナルノイズ比が ≥10:1 で、繰り返し精度が ≤20% CV の場合を用いて、各分析種の LLOQ を決定しました。分析された 45 種すべてのアミノ酸が≤5 µM でしたが、例外としては、表 4 に示したようにS-スルホシステイン、アルギニノコハク酸(20 µM)、カルノシン(15 µM)が挙げられます。

表 4.ACQUITY UPLC I-Class および Xevo TQ-S micro システムを使用して測定した Kairos アミノ酸分析キットの感度

個別に調製されたパネルサンプルおよび NIST SRM 2389a の分析によって真度を評価しました。サンプルは分析前に 400 µM となるよう重量測定法を用いて希釈しました。テストした濃度範囲において、すべてのパネルサンプルが ≤ ±20.4% バイアス( -18.5 ~+20.4% の範囲)でしたが、例外としては、赤色で表示されている三つの分析種(ヒドロキシプロリン、シスタチオニン、アルギニノコハク酸)が挙げられます。希釈した NIST SRM 2389a の計算濃度は ≤ ±10.0% バイアス(-10.0 ~ +3.7% の範囲)でした。すべてのデータを表 5 にまとめています。

表 5.Kairos アミノ酸分析キットの真度

尿および血漿サンプルの分析により、生理学的レベルでのアミノ酸の分析が可能であることが分かりました。図 2 は血漿サンプル内に存在する 11 種のアミノ酸のトータルイオンクロマトグラム(TIC)を示しています。また、挿入図では、同一の血漿サンプルでのγ-アミノ酪酸、β-アミノイソ酪酸、α-アミノ酪酸のクロマトグラフィー分離を表示しています。

図 2.血漿サンプル中に内在する 11 種のアミノ酸のトータルイオンクロマトグラム(TIC)、挿入されたクロマトグラム同一の血漿サンプルでのγ-アミノ酪酸、β-アミノイソ酪酸、α-アミノ酪酸の分離を示したもの
図 3.クロマトグラムは、尿サンプル中のヒスチジン(188.5 µM)、アラニン(72.4 µM)、フェニルアラニン(13.7 µM)の定量データを示しています。シグナルノイズ比(SNR)およびピーク面積値を示しています。

結論

Kairos アミノ酸分析キットはバイオメディカル研究用に設計されたフレキシブルなキットであり、ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQ-S micro システム を使用することにより、10 分以内で正常な生理学的濃度範囲にある 42 種のアミノ酸の正確な定量が可能です。 

AccQ-Tag Ultra 「3X」誘導体化キットを使用してサンプルを誘導体化することにより、アミノ酸のシンプルかつ頑健、そして高速での逆相 UPLC 分析が可能になります。また、移動相バッファーやイオンペア試薬は不要です。専用のシステムは必要なく、ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQ-S micro システムを、他の分析に使用することも可能です。誘導体化されたサンプルは安定で、10 分以内でクロマトグラフィーによって同じ分子量のアミノ酸の分離が達成されるため、ピーク同定の信頼性が高まります。

この研究専用の Kairos アミノ酸分析キットで紹介されている分析法を用いて、ACQUITY UPLC I-Class/Xevo TQ-S micro システムを使用した溶液中の42 種のアミノ酸の定量分析を行うことにより、高い精度、直線性、感度、真度が得られます。キットに含まれている三つの分析種(ヒドロキシプロリン、シスタチオニン、アルギニノコハク酸)については、半定量分析でのみ使用します。

720006487JA、2019 年 1 月

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