• アプリケーションノート

クオータナリーソルベントマネージャーとエバポレイト光散乱検出器を備えたアドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)を用いたグラジエントポリマー溶出クロマトグラフィー

クオータナリーソルベントマネージャーとエバポレイト光散乱検出器を備えたアドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)を用いたグラジエントポリマー溶出クロマトグラフィー

  • Jennifer Gough
  • Will Martin
  • Neil J. Lander
  • Waters Corporation

要約

QSM を搭載した APC は、ポリマー業界で使用される強力な溶媒向けに特別に設計されたものです。Waters ACQUITY アドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)システムは、THF、クロロホルム、ジメチルスルホキシドなどの強溶媒を使用して、一貫して動作するように設計されています。業界で認められている APC システムにクオータナリーポンプの柔軟性を追加することで、ポリマー分析技術は HPLC テクノロジーに制限されなくなりました。

アプリケーションのメリット

  • 高い溶媒適合性備えた、設定不要の p-QSM。
  • 逆相や順相、およびサイズに基づく分離により、柔軟な分析が可能に。
  • p-QSM を搭載した低拡散 APC は、HPLC や GPC よりも溶媒消費量が少なく、環境により優しくなっている。
  • 粒子径 3 µm 以下の BEH カラムテクノロジーが高分離能を実現。

はじめに

図 1 のグラジエントポリマー溶出クロマトグラフィー(GPEC)クロマトグラムは、Alliance HPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムを使用しており、分析時間に 30 分かかります。このメソッドを超高速高分離液体クロマトグラフィー(UPLC)システムに移管すると、分析時間を大幅に短縮できます。一方、大半の UPLC システムはテトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒に適合しておらず、100% の有機溶媒を頻繁に使用できるだけの堅牢性を備えていません。

Waters ACQUITY アドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)システムは、THF、クロロホルム、ジメチルスルホキシドなどの強溶媒を使用して、一貫して動作するように設計されています。APC システムは元々、アイソクラティックポンプを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)用に設計されました。グラジエント溶出用のポリマークオータナリーソルベントマネージャー(p-QSM)とエバポレイト光散乱検出器(ELSD)を APC システムに接続することで、GPEC を 10 分以内に完了できます(図 1)。

図 1.HPLC および UPLC 分析時間の GPEC による比較。

実験方法

システム:

p-QSM 搭載 APC

カラム:

XBridge BEH C8、XP、2.5 µm、3.0 × 100 mm(製品番号:186006047)

移動相 A/B:

メタノール

移動相 C/D:

テトラヒドロフラン

流量:

0.7 mL/分

カラム温度:

40 °C

注入量:

1 µL

サンプル濃度:

PMMA(1 mg/mL)、PS(0.12 mg/mL)、PBD(0.5 mg/mL)

グラジエント:

シリアル番号

時間

流量(mL/分)

%A

%B

%C

%D

カーブ

1

初期条件

0.700

100.0

0.0

0.0

0.0

初期条件

2

1.00

0.700

60.0

0.0

40.0

0.0

11

3

2.00

0.700

35.0

0.0

65.0

0.0

11

4

3.00

0.700

15.0

0.0

85.0

0.0

11

5

4.00

0.700

15.0

0.0

85.0

0.0

11

6

5.00

0.700

0.0

0.0

100.0

0.0

6

7

6.00

0.700

100.0

0.0

0.0

0.0

6

8

7.00

0.700

100.0

0.0

0.0

0.0

11

カラムにポリマーを沈殿させるには、グラジエント混合溶媒におけるポリマーの溶解度を決定する必要があります。文献で一般に認められている方法は、濃度既知のポリマー溶液(10–2 ~ 10–3 mg/mL)を非溶媒(貧溶媒)で滴定することです。滴定が進むと、ポリマーが凝集して沈殿するため、ポリマー溶液は濁って見えます。ポリマーは非溶媒によってはじかれ、ポリマー分子の凝集が進みます。非溶媒の体積分率は、式 1 を使用して計算されます。ここで、ファイ(Ф)は曇点(CP)を 100 で割った値に等しく、非溶媒の体積(Vns)をポリマー体積、良溶媒体積、および非溶媒体積の合計(Vp + Vs + Vns)で割った値に等しくなります。この手法は、曇点測定と呼ばれます4,5

式 1F = CP/100 = Vns / Vp + Vs + VNS

再現性のあるピーク面積を達成するように線形グラジエントを最適化できない場合、ステップグラジエントが必要になることがあります。この実験では、ポリスチレン(PS)、ポリブタジエン(PBD)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の 3 つのポリマーの GPEC 分析を行いました(表 1)。線形グラジエントでは、PS および PMMA のピーク面積の再現性が低く、PBD は溶出しません。

表 1.GPEC 実験で使用したポリマー。

そのため、ステップグラジエント法を使用して、ポリマーがグラジエントの不溶性領域で費やす時間を抑えます。グラジエントテーブルおよび得られたクロマトグラム(図 2)を見てわかるように、グラジエントプロファイルの不溶性領域 (11) には急勾配曲線が使用されますが、可溶性領域には勾配が緩やかな曲線 (6) が使用されます。

図 2.PMMA、PS、PBD の GPEC 分析における Empower による重ね書き。

Empower 3 CDS カスタム計算およびレポート機能を使用する場合、データを別のスプレッドシートにエクスポートする必要はありません。図 3 のレポートは、Empower 内で計算されたピーク面積比とグラジエント比を示しています。完全な GPEC プロジェクトおよび詳細な GPEC ガイドは、Waters の Web サイトおよび Empower マーケットプレースから入手できます。

図 3.グラジエントカスタム計算を用いた 3 回の注入の GPEC 分析の Empower レポート。

結果および考察

GPEC と GPC は異なるものです。図 4 のクロマトグラムの例では GPC 分離を使用しており、化学的性質の異なる 3 種のポリマーが流体力学的容積が類似しているために共溶出しています。これらのポリマーを分離するために逆相分離を使用した場合、ポリマーは分離全体にわたって一部が溶けた状態のままとなり、ベースライン分離せず、一部が重なります。GPEC 分析法は、良溶媒のグラジエント比がポリマー溶解点に達するまで、意図的にポリマーをカラムまたはカラムフリットに沈殿させ、カラムの表面からポリマーを除去します。GPC でのサイズに基づく分離の代わりに、GPEC ではポリマーは化学的溶解度に基づいて分離されます。GPEC は、GPC アプリケーションとはまったく異なる LC アプリケーションです1

図 4.Alliance システムを使用した 3 種類のポリマーの GPC および GPEC。

GPEC 用に設計された APC システムは新しい構成を採用しています(図 5)。ポリマーアイソクラティックソルベントマネージャー(p-ISM)は、100% 有機溶媒によるグラジエント溶出に対応するために、ポリマークオータナリーソルベントマネージャー(p-QSM)に変更されました。RI はグラジエント溶出に適合しないため、示差屈折率(RI)検出器は、エバポレイト光散乱検出器(ELSD)に変更されました。すべてのポリマーが紫外線を吸収するわけではないため、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器は、このアプリケーションでは使用しません2,3

図 5.p-QSM および ELSD を搭載した APC システム。

結論

GPEC は、ポリマー混合物の比率の測定において共溶出ピークが干渉する場合に、GPC を補完するための分析法です。この特別な分析手法は何十年も使用されてきましたが、従来の HPLC 装置に制限されていました。UPLC 装置には溶媒適合性の制限があり、GPEC などの分析オプションが制限されることがあります。QSM を搭載した APC は、ポリマー業界で使用される強力な溶媒向けに特別に設計されたものです。業界で認められている APC システムにクオータナリーポンプの柔軟性を追加することで、ポリマー分析技術は HPLC テクノロジーに制限されなくなりました。

参考文献

  1. Uliyanchenko, E.; van der Walac, S.; Schoenmakers, P.J., Challenges in Polymer Analysis by Liquid Chromatography.Polym.Chem.2012, 3, 2313–2335.https://pubs.rsc.org/en/content/articlelanding/2012/py/c2py20274c#!divAbstrac.
  2. Waters ACQUITY UPLC ELS Detector, https://www.waters.com/waters/nav.htm?cid=514219.
  3. ACQUITY UPLC Evaporative Light Scattering Detector Getting Started Guide, https://www.waters.com/webassets/cms/support/docs/71500109303rd.pdf.
  4. Klumperman, B.; Cools, P.; Philipsen, H.; Staal, W. (1996), A Qualitative Study to the Influence of Molar Mass on Retention in Gradient Polymer Elution Chromatography (GPEC).Macromol.Symp., 110: 1–13.doi:10.1002/masy.19961100102, https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1002/masy.19961100102.
  5. Klenin, V. J.; Shmakov, S.L. Features of Phase Separation in Polymeric Systems: Cloud-Point Curves (discussion).Universal Journal of Materials Science 2013, 1 (2), 39–45.https://pdfs.semanticscholar.org/44cf/8e3fc4396d2d8bc6bc55 b5be0b2648e70619.pdf.

720006705JA、2019 年 11 月

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