QSM を搭載した APC は、ポリマー業界で使用される強力な溶媒向けに特別に設計されたものです。Waters ACQUITY アドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)システムは、THF、クロロホルム、ジメチルスルホキシドなどの強溶媒を使用して、一貫して動作するように設計されています。業界で認められている APC システムにクオータナリーポンプの柔軟性を追加することで、ポリマー分析技術は HPLC テクノロジーに制限されなくなりました。
図 1 のグラジエントポリマー溶出クロマトグラフィー(GPEC)クロマトグラムは、Alliance HPLC(高速液体クロマトグラフィー)システムを使用しており、分析時間に 30 分かかります。このメソッドを超高速高分離液体クロマトグラフィー(UPLC)システムに移管すると、分析時間を大幅に短縮できます。一方、大半の UPLC システムはテトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒に適合しておらず、100% の有機溶媒を頻繁に使用できるだけの堅牢性を備えていません。
Waters ACQUITY アドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)システムは、THF、クロロホルム、ジメチルスルホキシドなどの強溶媒を使用して、一貫して動作するように設計されています。APC システムは元々、アイソクラティックポンプを使用するゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)用に設計されました。グラジエント溶出用のポリマークオータナリーソルベントマネージャー(p-QSM)とエバポレイト光散乱検出器(ELSD)を APC システムに接続することで、GPEC を 10 分以内に完了できます(図 1)。
システム: |
p-QSM 搭載 APC |
カラム: |
XBridge BEH C8、XP、2.5 µm、3.0 × 100 mm(製品番号:186006047) |
移動相 A/B: |
メタノール |
移動相 C/D: |
テトラヒドロフラン |
流量: |
0.7 mL/分 |
カラム温度: |
40 °C |
注入量: |
1 µL |
サンプル濃度: |
PMMA(1 mg/mL)、PS(0.12 mg/mL)、PBD(0.5 mg/mL) |
シリアル番号 |
時間 |
流量(mL/分) |
%A |
%B |
%C |
%D |
カーブ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1 |
初期条件 |
0.700 |
100.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
初期条件 |
2 |
1.00 |
0.700 |
60.0 |
0.0 |
40.0 |
0.0 |
11 |
3 |
2.00 |
0.700 |
35.0 |
0.0 |
65.0 |
0.0 |
11 |
4 |
3.00 |
0.700 |
15.0 |
0.0 |
85.0 |
0.0 |
11 |
5 |
4.00 |
0.700 |
15.0 |
0.0 |
85.0 |
0.0 |
11 |
6 |
5.00 |
0.700 |
0.0 |
0.0 |
100.0 |
0.0 |
6 |
7 |
6.00 |
0.700 |
100.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
6 |
8 |
7.00 |
0.700 |
100.0 |
0.0 |
0.0 |
0.0 |
11 |
カラムにポリマーを沈殿させるには、グラジエント混合溶媒におけるポリマーの溶解度を決定する必要があります。文献で一般に認められている方法は、濃度既知のポリマー溶液(10–2 ~ 10–3 mg/mL)を非溶媒(貧溶媒)で滴定することです。滴定が進むと、ポリマーが凝集して沈殿するため、ポリマー溶液は濁って見えます。ポリマーは非溶媒によってはじかれ、ポリマー分子の凝集が進みます。非溶媒の体積分率は、式 1 を使用して計算されます。ここで、ファイ(Ф)は曇点(CP)を 100 で割った値に等しく、非溶媒の体積(Vns)をポリマー体積、良溶媒体積、および非溶媒体積の合計(Vp + Vs + Vns)で割った値に等しくなります。この手法は、曇点測定と呼ばれます4,5。
式 1F = CP/100 = Vns / Vp + Vs + VNS
再現性のあるピーク面積を達成するように線形グラジエントを最適化できない場合、ステップグラジエントが必要になることがあります。この実験では、ポリスチレン(PS)、ポリブタジエン(PBD)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)の 3 つのポリマーの GPEC 分析を行いました(表 1)。線形グラジエントでは、PS および PMMA のピーク面積の再現性が低く、PBD は溶出しません。
そのため、ステップグラジエント法を使用して、ポリマーがグラジエントの不溶性領域で費やす時間を抑えます。グラジエントテーブルおよび得られたクロマトグラム(図 2)を見てわかるように、グラジエントプロファイルの不溶性領域 (11) には急勾配曲線が使用されますが、可溶性領域には勾配が緩やかな曲線 (6) が使用されます。
Empower 3 CDS カスタム計算およびレポート機能を使用する場合、データを別のスプレッドシートにエクスポートする必要はありません。図 3 のレポートは、Empower 内で計算されたピーク面積比とグラジエント比を示しています。完全な GPEC プロジェクトおよび詳細な GPEC ガイドは、Waters の Web サイトおよび Empower マーケットプレースから入手できます。
GPEC と GPC は異なるものです。図 4 のクロマトグラムの例では GPC 分離を使用しており、化学的性質の異なる 3 種のポリマーが流体力学的容積が類似しているために共溶出しています。これらのポリマーを分離するために逆相分離を使用した場合、ポリマーは分離全体にわたって一部が溶けた状態のままとなり、ベースライン分離せず、一部が重なります。GPEC 分析法は、良溶媒のグラジエント比がポリマー溶解点に達するまで、意図的にポリマーをカラムまたはカラムフリットに沈殿させ、カラムの表面からポリマーを除去します。GPC でのサイズに基づく分離の代わりに、GPEC ではポリマーは化学的溶解度に基づいて分離されます。GPEC は、GPC アプリケーションとはまったく異なる LC アプリケーションです1。
GPEC 用に設計された APC システムは新しい構成を採用しています(図 5)。ポリマーアイソクラティックソルベントマネージャー(p-ISM)は、100% 有機溶媒によるグラジエント溶出に対応するために、ポリマークオータナリーソルベントマネージャー(p-QSM)に変更されました。RI はグラジエント溶出に適合しないため、示差屈折率(RI)検出器は、エバポレイト光散乱検出器(ELSD)に変更されました。すべてのポリマーが紫外線を吸収するわけではないため、フォトダイオードアレイ(PDA)検出器は、このアプリケーションでは使用しません2,3。
GPEC は、ポリマー混合物の比率の測定において共溶出ピークが干渉する場合に、GPC を補完するための分析法です。この特別な分析手法は何十年も使用されてきましたが、従来の HPLC 装置に制限されていました。UPLC 装置には溶媒適合性の制限があり、GPEC などの分析オプションが制限されることがあります。QSM を搭載した APC は、ポリマー業界で使用される強力な溶媒向けに特別に設計されたものです。業界で認められている APC システムにクオータナリーポンプの柔軟性を追加することで、ポリマー分析技術は HPLC テクノロジーに制限されなくなりました。
720006705JA、2019 年 11 月