• アプリケーションノート

ACQUITY QDa 質量検出器を用いた体系的毒性学的分析(STA)パート 2:生体サンプル中の生体外異物の迅速でシンプルな OASIS PRiME SPE メソッドの評価

ACQUITY QDa 質量検出器を用いた体系的毒性学的分析(STA)パート 2:生体サンプル中の生体外異物の迅速でシンプルな OASIS PRiME SPE メソッドの評価

  • Nayan S. Mistry
  • Robert Lee
  • Michelle Wood
  • Waters Corporation

法中毒学目的のみに使用してください。

要約

このアプリケーションブリーフでは、UPLC 分離と Waters ACQUITY QDa 質量検出を使用した、ヒトの尿または血漿にスパイクした毒性学的類縁物質のスクリーニングが可能になる、シンプルなサンプル前処理メソッドの応用について説明します。

アプリケーションのメリット

2 部構成のシリーズのこのパート 2 では、生体マトリックス中の化合物の前処理のためのシンプルな固相抽出(SPE)プロトコルと、ウォーターズの STA スクリーニング分析法および ACQUITY QDa 質量検出器でのその使用について説明します。

はじめに

LC-MS スクリーニング分析法を成功に導くためには、分析法が効率的で頑健であると同時に、マトリックスからできるだけ多くの分析種を抽出できるサンプル前処理プロトコルの使用が重要になります。シンプルさと迅速さを重視して設計された Waters Oasis PRiME HLB では、吸着剤のプレコンディショニングや平衡化が不要になると同時に、従来のサンプル前処理ソリューションよりも迅速なワークフローが可能になり、よりきれいな抽出物が得られます。

このアプリケーションブリーフでは、ウォーターズの STA スクリーニングアプリケーションを用いた UPLC 分離および ACQUITY QDa 質量検出器と組み合わせた、Oasis PRiME HLB の使用について説明します1-3。 関連するライブラリーは 10 年以上前に導入されて以来、拡張が続けられ、1200 種の毒性学的類縁物質が含まれるようになりました。本研究の目的は、ACQUITY QDa 質量検出器(図 1)で STA 法を使用して、生体マトリックス中の毒性学的類縁物質を定量するための、法中毒学ラボで使用できるシンプルで高感度かつ低コストの定性的スクリーニングツールを提供することの実現可能性を評価することでした。

図 1.  ACQUITY UPLC H-Class PLUS システムおよび ACQUITY QDa 質量検出器

実験方法

試料

100 種の分析種のレファレンス物質(表 1)は Sigma-Aldrich(英国、プール)から入手しました。通常、個々の薬物は濃度 1 mg/mL で提供されました。6 つの異なる尿サンプルはボランティア(英国、ウィルムスロー)から入手し、6 つの異なる血漿サンプル(フッ化ナトリウム/シュウ酸カリウム入りチューブを使用して採取)は、BIOIVT(英国、ウェスト・サセックス)から購入しました。

表 1.  評価した 100 化合物のリスト

スパイク済みマトリックスの調製

分析種を複数の混合液に混合し(各混合液には最大 10 種の分析種が含まれる)、アセトニトリル中に濃度 25 µg/mL の混合スパイク溶液を調製しました。

各混合液を個別にブランクマトリックスにスパイクし、最終濃度を 200 ng/mL および 500 ng/mL にしました。

サンプル前処理 - 迅速でシンプルな固相抽出(SPE)

スパイク済みマトリックス(150 µL)を 150 µL の脱イオン水に添加し、サンプルを 60 秒間ボルテックス混合して遠心分離しました。200 µL のスパイク済みマトリックス/水混合液を、Oasis PRiME HLB µElution プレート(製品番号:186008052)にロードしました。ロード後、ウェルを 200 µL の 5% メタノールで洗浄しました。1% ギ酸を含む 50 µL のアセトニトリル/メタノール(90/10、v/v)で 2 回、分析種を 800 µL の丸型コレクションプレート(製品番号:186002481)に溶出しました。

Porvair サンプル濃縮装置を使用して、サンプルを 50 ℃、窒素流下で蒸発乾固させ、10% アセトニトリル含有 5 mM ギ酸アンモニウム(pH 3.0)40 µL に再溶解しました。コレクションプレートを Waters シリコン/PTFE 処理キャップマットで覆い、マルチチューブボルテックスミキサーに 3 分間かけました。図 2 に、サンプル前処理に使用した抽出プロトコルを説明する概略図を示します。

図 2.  サンプル前処理に使用した PRiME HLB ワークフローのプロトコル

スクリーニング分析法

以前に開発されたウォーターズの STA スクリーニング分析法を改変して、Waters ACQUITY UPLC H-Class PLUS システムおよび ACQUITY QDa 質量検出器と組み合わせて、サンプルを分析しました²。

15 分間のグラジエント溶出を使用してクロマトグラフィー分離を行いました。複数のコーン電圧のフルスキャンモードでデータを取り込み、イオン源内衝突誘起解離(CID)を使用して、ポジティブモードでスペクトルデータを生成しました。表 2 および 3 にそれぞれ LC 条件および ACQUITY QDa の設定を示します。

表 2.  LC グラジエントプロファイル。これには 300 µL のプレカラム容量が含まれます。
表 3.  ACQUITY QDa の条件

結果および考察

説明した Oasis PRiME HLB µElution メソッドによって前処理したスパイク済みサンプルを、ACQUITY QDa 質量検出器でウォーターズの STA スクリーニング分析法を使用して分析しました。取り込んだデータは、ChromaLynx アプリケーションマネージャー および MassLynx ソフトウェアを使用して自動的に解析し、作成されたライブラリーと比較しました。これにより、スペクトルライブラリーマッチングを用いて同定を行いました。物質の同定の信頼度を、平均一致係数(最大値 1000)として表しています。平均一致係数は、4 種類のコーン電圧それぞれで、取り込まれたスペクトルとライブラリーのスペクトルを比較することによって決まります。この試験では、推定陽性同定の平均一致係数は 700 を超えており、平均一致係数 600 ~ 700 の化合物は暫定同定に分類しました。さらに、ウォーターズの STA ライブラリーに指定されているように、保持時間はレファレンスの 0.35 分以内である必要があります。

この試験では、暫定同定または陽性同定された化合物を、検出済みに分類しました。200 ng/mL では、検討した分析種の 93% が尿中で、98% が血漿中で検出できました。図 3 に、両方のマトリックスにおける、200 ng/mL および 500 ng/mL での総検出数をまとめています。

図 3.  プールした尿および血漿における 200 および 500 ng/mL での化合物検出のサマリー

結論

このテクノロジーブリーフでは、Oasis PRiME HLB µElution を用いたシンプルなサンプル前処理メソッドを、UPLC 分離および ACQUITY QDa 質量検出と組み合わせることにより、ヒト尿中および血漿中の毒性学的類縁物質を迅速でシンプルかつ効果的にスクリーニングできることを紹介しています。

96 ウェルプレート型式の Oasis PRiME HLB µElution を用いることにより、サンプル前処理プロセスを自動化して、サンプルスループットを向上させることができます。

低コストで高感度かつ汎用的な ACQUITY QDa を UPLC クロマトグラフィー分離と組み合わせて使用することで、生体マトリックス中の毒性学的類縁物質を検出できます。

参考文献

  1. Goshawk J, Lee R. and Wood M. Evaluation of the Potential of the ACQUITY QDa Mass Detector for Use in Forensic Chemistry and Drug Control Laboratories.2017. Waters Technology Brief, 720006004EN.
  2. Lee R, Roberts M, Paccou A. and Wood M. Development of a New UPLC-MS Method for Systematic Toxicological Analysis.2009. Waters Application Note, 720002905EN.
  3. Rosano TG, Swift TA and Wood M. Postmortem Drug Screening by Non-Targeted and Targeted UltraPerformance Liquid Chromatography Technology.2011. Journal of Analytical Toxicology 35: 411-423.

720006726JA、2020 年 1 月

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