このアプリケーションブリーフでは、ミックスモードの Waters Atlantis Premier BEH C18 AX カラムが採用した MaxPeak HPS のメリットを示します。
MaxPeak High Performance Surfaces(HPS)は、サンプルの損失の原因となる悪影響を与える分析種/表面間の相互作用を最小限に抑えることで、分析種の回収率、再現性、感度を向上させるように設計された、新規の革新的なテクノロジーです。
化合物の分離および検出でのばらつきは、多くの要因によって引き起こされることがあります。1 つの要因は、化合物と分析カラムの分析種/表面間の相互作用です¹。このような相互作用は、特に非常に低い濃度の分析種で問題になることがあります。この問題に対処するため、ウォーターズは、MaxPeak High Performance Surfaces(HPS)を採用した新規のカラムハードウェアを開発しました。MaxPeak HPS は、サンプルの損失の原因となる分析種/表面間の相互作用を最小限に抑えることで、分析種の回収率、感度、再現性を向上させるように設計された革新的なテクノロジーです。MaxPeak HPS テクノロジーを初めて組み込んだクロマトグラフィーカラムである Atlantis Premier BEH C18 AX カラムは、逆相クロマトグラフィー条件下で極性酸性分析種の保持を向上しながら、化合物に対して悪影響を及ぼす分析種/表面間の相互作用を最小限に抑えるように設計されています²。
この研究では、Atlantis BEH C18 AX 吸着剤を使用し、金属の影響を受けやすい化合物、医薬品、生体代謝物を、MaxPeak HPS カラムハードウェアありまたはなしで、試験しました。
リン酸化合物はステンレススチールと相互作用して回収率を低下させ、さらにこの相互作用は、分子中に存在するリン酸基の数とともに増大することが知られています³。MaxPeak HPS カラムハードウェアのメリットを示すため、Atlantis Premier BEH C18 AX 吸着剤を使用して、MaxPeak HPS カラムハードウェアありまたはなしで、アデノシン 5’-一リン酸(AMP)およびアデノシン 5’-三リン酸(ATP)の標準溶液をクロマトグラフィー分離しました。図 1 は、90:10 ACN/H2O を用いて、10 mM 酢酸アンモニウム溶液から 100% 10 mM 酢酸アンモニウム溶液(pH 9.2)への 3 分間の線形グラジエントで分離した標準溶液の分析結果を示しています。MaxPeak HPS ハードウェアにより AMP のピーク面積が 1.5 倍に増加し、ATP のピーク面積が 19 倍に増加しました。これらの結果は、マルチリン酸化合物の分析で見られる傾向と一致しています。
新しいカラムハードウェアのメリットをさらに検討するために、それぞれに pH 3.0 の 10 mM ギ酸アンモニウムを含む水と ACN のグラジエントを使用して、医薬品および生体代謝物などの化合物をさらに試験しました。これらの化合物は、広範囲の分子特性および分子サイズにわたっています。試験した 4 つの化合物を図 2 に示しています。ジアゾキシド(抗高血圧薬)、ビカルタミド(抗アンドロゲン薬)、サルメテロール(喘息薬)、ゲンチジン酸(癌バイオマーカーの候補)は、MaxPeak HPS カラムハードウェアを使用した分析で、それぞれ 1.6 倍、1.6 倍、1.3 倍、1.5 倍のピーク面積の増加を示しました。ジアゾキシドおよびビカルタミドにはそれぞれに、金属と相互作用することがある二酸化硫黄が含まれています4,5。 実際、ジアゾキシドの考えられる作用機序の 1 つは、炭酸脱水酵素の Zn2+ 中心に結合して阻害剤として作用することです⁶。ゲンチジン酸には、カルボキシル基とヒドロキシル基が含まれており、サルメテロールには、特定の空間的配置でルイス塩基として作用して金属とキレートを形成する場合がある、ヒドロキシル基と窒素基が含まれています⁵。これらの結果は、一見無害な分子構成要素であっても、化合物の回収率、ひいては感度に影響を与える可能性があることを示唆しています。MaxPeak HPS は、不活性な表面を作成することでこれらの影響を緩和し、化合物の金属との相互作用を防ぎます。
本研究では、MaxPeak HPS を Atlantis Premier BEH C18 AX カラムに組み込むことのメリットを示しました。MaxPeak HPS を採用したカラムと採用していないカラムを比較した場合、LC-MS 条件でのクロマトグラフィーピーク面積が 1.3 倍から 19 倍の範囲で増加することが認められました。本研究で試験した多くのクラスの化合物(リン酸化合物、医薬品、生体代謝物など)で、このテクノロジーを使用するメリットが示されました。
720006745JA、2020 年 1 月