このアプリケーションノートでは、AccQ●Tag 標識アミノ酸の、 手動による前処理と、Andrew+ リキッドハンドリングロボットでアミノ酸標準キットを用いた自動前処理との、同等性と堅牢性を実証します。
アミノ酸は、タンパク質を形成する上で最も基本となる成分であり、細胞培養培地および食品の重要な成分となっています。バイオリアクターの培地のアミノ酸成分をモニタリングおよび最適化することは、細胞増殖のための最善の状態を確認するために必要です。同様に、食品が要件を満たしていることを確認することが必要です。そのため、アミノ酸の分析は重要なルーチンプロセスとなります。
サンプルの前処理および分析には時間がかかり、科学者がラボで過ごす時間の大半を占める場合もあります。ラボの自動前処理システムにより、科学者が他の作業を行う時間の余裕と柔軟性が得られ、効率の良い時間管理ができるようになります。ウォーターズは、AccQ●Tag Ultra 自動誘導体化キット(製品番号:186009232)(図 1)およびアミノ酸標準キットと組み合わせた Andrew Alliance の Andrew+ プラットホームのための自動サンプル前処理プロトコルを作成しました。デッドボリュームの要件が増大したため、AccQ●Tag Ultra 自動誘導体化キットでは、自動化システムでの使用に必要な試薬の量をスケールアップしました。この試薬供給量により、最大 96 サンプルを 3 × 32 のサンプルフォーマットで前処理することができます。
食品・飼料キットには、21 種のアミノ酸が含まれ、アミノ酸の細胞培地標準試料キットには、26 種のアミノ酸が含まれています(表 1)。Andrew+ リキッドハンドリングロボットのプロトコルは、直感的で使いやすいグラフィックインターフェースを採用した、クラウドベースのソフトウェアである OneLab に保管されています。このアプリケーションノートでは、細胞培地および食品・飼料アミノ酸標準品を使用して、手動および自動のサンプル前処理で得られた結果を両方示しています。
このワークフローでは、手動または自動のサンプル前処理を行った後で、LC 分析および Empower ソフトウェアによるデータ解析を行いました。
AccQ●Tag 自動誘導体化キットに基づく Andrew+ リキッドハンドリングロボット用の 3 種類のサンプル前処理プロトコル(32、64、96 サンプル)を作成しました。また、検量線および試薬の前処理プロトコルは、接続しているデバイスのためのプロトコルを設計および実行するソフトウェアである OneLab で利用できます。検量線のプロトコルにより、標準試料を 500 µM~0.5 µM のレファレンス範囲(シスチン 250 µM~0.25 µM)に希釈する機能が得られます。次に、得られた希釈済み標準試料を、サンプル前処理プロトコルで 7 ポイントの検量線として使用できます。
試薬の前処理プロトコルを、コネクテッド電子ピペット Pipette+ と組み合わせて使用して、サンプル前処理および誘導体化プロトコル用の試薬と標準試料が調製できます。また、サンプル前処理の際、ノルバリン内部標準試料(製品番号:186009301)を含めるよう柔軟に選択できます。
AccQ●Tag 誘導体化キットを使用した手動でのアミノ酸サンプルの前処理は、Waters トータルリカバリーバイアルを使用して実施しました。これを自動化に対応させるため、トータルリカバリーガラスバイアルを 96-ウェル Lo-Bind PCR プレート(製品番号:0030129555)に換えました。この実験器具は、前処理の際、Shaker+、Peltier+、グリッパーデバイスとも適切に使用できました。実験器具の変更をサポートするために試験を行いましたが、製品の性能に及ぼす影響は認められませんでした。
食品・飼料および細胞培地標準試料の前処理において、手動および Andrew+ によるサンプル前処理を行いました。AccQ●Tag Ultra 自動誘導体化キットを、最低 2 つのカラムロットと AccQ●Tag Ultra 移動相溶離液とともに使用しました。食品・飼料および細胞培地用に、濃度範囲(10 µM、200 µM、400 µM)にわたる濃度の 3 種の溶媒パネル(0.1 M HCl)を作成しました。これらのパネルには、前処理の性能を評価するための関連するアミノ酸が含まれていました。
Andrew+ プラットホームを使用する自動前処理を評価し、頑健性と同等性について手動前処理と比較しました。3 つの濃度(10 µM、200 µM、400 µM)で性能の特性をモニターすることにより、実験結果の正確度と精度(保持時間、化合物のピーク面積、濃度)ならびに直線性を判定しました。AccQ●Tag Ultra の 32 サンプル用プロトコルを用い、各レベルにつき 6 つの調製物、合計 18 サンプルを評価しました。パネルの前処理は 1 回、注入は 2 回の繰り返しで行いました。1 回目の注入は、結果の計算に使用しました。 2 回目の注入は、装置で問題が発生した場合に備え、バックアップとして分析しました。 ノルバリン内部標準試料を全ての実験で使用しました。ノルバリン内部標準試料の使用により、サンプルの加水分解やアミノ酸分析中に生じるばらつきが最も良く補正できます。
自動サンプル前処理を手動の前処理と比較した場合の再現性を実証するために、各濃度レベルでの %CV を測定しました。細胞培地の Andrew+ および手動の前処理による全アミノ酸および全濃度レベルでの最大平均 %CV は、それぞれ 2.0% および 2.3% でした。食品・飼料の Andrew+ および手動の前処理による全アミノ酸および全濃度レベルでの最大平均 %CV は、それぞれ 1.7% および 2.8% でした。表 3 および表 4 のデータは、Andrew+ および手動の前処理による精度が同等であることを示しています。
表 3. 溶媒パネル 10 µM、200 µM、400 µM にわたる Andrew+ および手動で前処理した細胞培地の %CV
*解析エラーにより、2 回目の注入を使用しました
濃度 10 µM、200 µM、400 µM で、各濃度レベルについて、6 つの調製物を使用して正確度を評価しました。6 つの調製物の平均濃度を使用してターゲット値との差異を計算し、回収率を算出しました。細胞培地および食品・飼料のいずれの場合も、各アミノ酸の回収率はターゲット濃度 ±10% の範囲内でした(表 5、表 6)。回収率のデータから、手動によるアミノ酸誘導体化と比べて大幅な時間の節約ができる代替法として Andrew+ の適合性が実証されました。
直線性は、各アミノ酸について、0.5µM~500 µM(シスチン 0.25 µM~250 µM)の範囲にわたる 7 つの濃度に調製した細胞培地標準試料を使用して評価しました。すべての分析を直線性について評価したところ、すべて r2 が 0.995 未満という基準を満たしており、キャリブレーション試薬 2~7(2.5µM~500 µM)の予想濃度から 15%、キャリブレーション試薬 1(0.5 µM)の予想濃度から 20% をそれぞれ超えて逸脱した点はありませんでした。手動と自動の前処理法のデータには整合性があり、特定の傾向も観測されませんでした。
精度、正確度、直線性といった性能特性を用いて、Andrew+ による前処理と手動による前処理とが同等であるかどうかを判定しました。結果によると、UPLC アミノ酸分析ソリューション用の 2 つのサンプル前処理法の間で同等性が優れていることが示されましたが、比較分析を実施したところ、自動前処理には考慮すべき便利なメリットがあります:
Danielle Cullen, Niamh Stafford, Leanne Davey, Norma Breen (Waters Technologies Ireland Ltd); Steven Calciano, Ning Zhang (Waters Corporation, Milford, MA).
720007042JA、2020 年 9 月