• アプリケーションノート

Andrew+ ピペッティングロボットを用いたミディアム/ハイスループットの GlycoWorks RapiFluor-MS の自動前処理

Andrew+ ピペッティングロボットを用いたミディアム/ハイスループットの GlycoWorks RapiFluor-MS の自動前処理

  • Corey E. Reed
  • Stephan M. Koza
  • Steven Calciano
  • Waters Corporation

要約

Andrew Alliance の Andrew+ ピペッティングロボットを使用して、GlycoWorks RapiFluor-MS N 型糖鎖標識キット(24 および 48 サンプル用)の操作を自動化し、その性能を検証しました。検証要件には、同じサンプル数の手動での前処理と、合計面積で 25 % 以内の偏差、相対面積で 5 % 以内の偏差での同等性評価などが含まれます。また、前処理内の相対標準偏差において、同じ要件を満たす必要があります。最終的に、24 サンプルの自動プロトコルでは、合計面積で 12.3%、相対面積で 0.0% のばらつきがあることが分かりました。48 サンプルの自動プロトコルも、24 サンプルの手動前処理に同等であり、合計面積で 23.0%、相対面積で 0.0%のばらつきが見られました。また、48 サンプルの自動プロトコルでは、2 回の前処理にわたる合計面積の相対標準偏差が 11.6% および 15.2% で、優れた前処理内再現性が見られました。

アプリケーションのメリット

  • ミディアムスループットの N 型糖鎖分析
  • ハイスループットの N 型糖鎖分析
  • 費用対効果の高いロボットソリューション
  • コラボレーション型自動化
  • N 型糖鎖の迅速な標識
  • 分析法の移管の自動化
  • エンドユーザーの時間の節約
  • 効率の向上

はじめに

グリコシル化は、製造品質の均一性、製品の有効性、および製品の安全性の指標であるため、バイオ医薬品開発においては、重要品質特性(CQA)としてルーチンでモニタリングが行われています1,2。 従来の遊離 N 型糖鎖標識法では、完了までに数時間または数日かかる場合があり、標識の安定性が悪い場合も多くあります。また、従来の標識は、蛍光および質量分析の感度を同時に高められないため、ラボではいずれか 1 つの検出方法に制限されざるを得ない状況でした。

ウォーターズでは GlycoWorks Rapi Fluor-MS N 型糖鎖標識キットと関連プロトコルを導入することで、偏りのない標識化を実現するために必要な時間が大幅に短縮し(文書化済み)、同時に蛍光および質量分析の検出感度を向上することが可能になりました3。 サンプル数に応じて、標識化ワークフローおよび HILIC クリーンアップとサンプル回収を 1 時間以内に完了することができるようになります。また、この分析法はシンプルであり、自動化にふさわしいと考えられます4。 この手順の自動化により得られる主な利点は、試験者がサンプル前処理に費やす時間が短縮され、トレーニングや文書化の負担が軽減されて、ピペッティングの単調さ故に起こりうるミスが低減されることにあります。この点を考慮した上で、2018 年に Andrew Alliance ピペッティングロボット Andrew において、GlycoWorks RapiFluor-MS キットの操作を自動化しました5

この自動化プロトコルには、プロトコルを手動で実行した場合と同等のモノクローナル抗体(mAb)N 型糖鎖の完全な遊離と標識を実現するために、数回の最適化が実施されました。最終的なプロトコルでは、マウスのモノクローナル抗体の標準品から遊離させたメジャーおよびマイナーなグリコフォームについて、手動で前処理したサンプルと比較して、相対標準偏差 9 ~ 19% が達成できました。

2019 年、Andrew Alliance は、Andrew+ という名前の最新バージョンのピペッティングロボットをリリースしました(図 1)。このシステムは、ウェブベースの接続デバイスと、シングルチャンネルおよびマルチチャンネルの電子ピペットに対応するロボットアームを備えており、時間を節約できるだけでなく、より高いサンプル負荷にも対応できます。このアプリケーションブリーフでは、ミディアムスループット(24 サンプル)およびハイスループット(48 サンプル)の GlycoWorks RapiFluor-MS を用いた遊離 N 型糖鎖の分析における、この自動化プラットホームの適用を紹介します。

図 1. A) 8 サンプル用 GlycoWorks RapiFluor-MS プロトコルのための Andrew+ のセットアップ図。

B) 24 サンプル用 GlycoWorks RapiFluor-MS プロトコルのための Andrew+ のセットアップの OneLab 上面図。自動化デッキスペースの Domino は次の通りです:(1)50 ~ 1200 μL の Optifit チップを装着した Tip Insertion System Domino、(2)10 ~ 300 μL の Optifit チップを装着した Tip Insertion System Domino、(3)10 ~ 300 μL の Optifit チップを装着した Tip Insertion System Domino、(4)ウォーターズの MaxPeak HPS を採用した QuanRecovery 700 μL 96 ウェルプレートを装着した Storage Plate Domino、(5)GlycoWorks HILIC μElution プレートを装着した Microelution Plate Vacuum+ Domino、(7)12 チャンネルトラフ付き Axygen 12 ウェルリザーバーを装着した Deepwell Microplate Domino、(8)PNGase F 酵素、RapiFluor-MS 標識試薬、RapiGest-SF 界面活性剤用の Fisherband プレミアム 1.5 mL コニカル型マイクロチューブを装着した Microtube Domino、(11)Eppendorf twin.tec 96 ウェルスカート付き LoBind PCR プレートを装着した 96-PCR Plate Peltier+ Domino(分析用サンプルを含む)。

C) 48 サンプル用 GlycoWorks RapiFluor-MS プロトコルのための Andrew+ のセットアップの OneLab 上面図。自動化デッキスペースの Domino は次の通りです:(1)50 ~ 1200 μL の Optifit チップを装着した Tip Insertion System Domino、(2)10 ~ 300 μL の Optifit チップを装着した Tip Insertion System Domino、(3)10 ~ 300 μL の Optifit チップを装着した Tip Insertion System Domino、(4)10 ~ 300 μL の Optifit チップを装着した Tip Insertion System Domino、(5)ウォーターズの MaxPeak HPS を採用した QuanRecovery 700 μL 96 ウェルプレートを装着した Storage Plate Domino、(6)12 チャンネルトラフ付き Axygen 12 ウェルリザーバーを装着した Deepwell Microplate Domino(7)PNGase F 酵素、RapiFluor-MS 標識試薬、RapiGest-SF 界面活性剤用の Fisherband プレミアム 1.5 mL コニカル型マイクロチューブを装着した Microtube Domino、(8)Eppendorf twin.tec 96 ウェルスカート付き LoBind PCR プレートを装着した 96-PCR Plate Peltier+ Domino(分析用サンプルを含む)、(9)ウォーターズの GlycoWorks HILIC μElution プレートを装着した Microelution Plate Vacuum+ Domino。

結果および考察

Andrew+ システムでのロースループット(8 サンプル)GlycoWorks RapiFluor-MS プロトコルの最適化プロセスの詳細については、以前のアプリケーションブリーフで説明しました6。 ミディアムスループットおよびハイスループットのサンプル前処理プロトコルの処理にはさらに時間がかかるため、プロトコルの溶出および最終的なサンプル希釈のステップで使用する重要な試薬は、直ちには自動化デッキに追加されません。これは、試薬の蒸発を防ぐことで回避できる、容量の減少による分注ミスを防止するためです。これらの自動プロトコルの開発および試験中に、開発を迅速化するために高速分析法を使用しました。解析を簡素化するため、マウスのモノクローナル抗体の 4 つの主要ピークをモニターしました。図 2 には、ミディアムスループット(24 サンプル)自動プロトコルの検証結果を示します。

図 2.インタクト mAb 質量チェック用標準(製品番号 186006552)マウス IgG1 タンパク質の手動および自動による 24 サンプル前処理と自動による 48 サンプル前処理。データセットは、異なる日に 2 回の前処理を行った累積値です(24 サンプル前処理では合計 N = 48、48 サンプル前処理では N = 96)。

A)クロマトグラフィープロファイルからモニターした 4 つの主要なグリコフォームの合計面積の比較。

B)同一の 4 つのグリコフォームの相対面積の比較。

自動の 24 サンプル前処理では、ロボット工学プラットホームによるプロトコル検証について設定した 25% という偏差の限度範囲内の結果が得られ、経験豊富なユーザーが手動で実施した場合と比較して、87.7% の標識糖鎖回収率が達成できました(表 1)。また、相対面積の比較では、手動前処理したサンプルと比較した場合の偏差が 0% でした。全体として、自動のミディアムスループット GlycoWorks RapiFluor-MS ソリューションは手動のソリューションと同等でした。

表 1. 図 2 に示された自動と手動で前処理したサンプルの比較において、両方のデータのエミッション単位(EU)における合計面積カウントおよび相対面積カウント(%)。

図 2 には、ハイスループット(48 サンプル)自動プロトコルの検証結果も示されています。はじめに自動の 48 サンプルプロトコルと手動の 48 サンプル前処理との比較を試みましたが、数回試行した結果、経験豊富なユーザーが手動で実施した場合、これほど大量のサンプルを効率的に処理することができませんでした。一方、ここでは Andrew+ ロボットでこのようなハイスループットの手順を自動化する利点が示されます。2 回の前処理を平均すると、ロボットの標識 N 型糖鎖回収率はミディアムスループット法と同等であり(図 2)、ミディアムスループットの手動前処理したサンプルからの偏差は、合計面積で 23%、相対面積で 0% でした(表 1)。

全体的には、自動前処理の合計面積の相対標準偏差は、経験豊富なユーザーが手動で実施した場合よりもわずかに大きくなっています(表 2)。自動による 24 サンプル前処理では、11.3% を超える相対標準偏差は認められておらず、自動による 48 サンプル前処理では 15.6% を超える相対標準偏差は認められませんでした。相対面積については、すべての前処理(自動および手動)の平均相対標準偏差は約 0.5% で、ここでも GlycoWorks RapiFluor-MS プロトコルが、偏りのない標識化を維持するという点で頑健性が証明されています。

表 2. 図 3 に示されている手動および自動の 24 サンプルと自動の 48 サンプルの GlycoWorks による前処理の間での相対標準偏差の比較。

結論

自動化したミディアムスループット(24 サンプル)およびハイスループット(48 サンプル)の GlycoWorks RapiFluor-MS プロトコルを、Andrew+ リキッドハンドリングプラットホームで開発しました。ネットワークからダウンロードできるこれらの自動化ソリューションにより、Andrew+ システムを実行するために必要な OneLab ソフトウェアで利用できる GlycoWorks スクリプトのラインナップが完成します。いずれのスクリプトも、手動で実行するプロトコルと優れた同等性を示しており、合計面積では手動サンプル前処理の 25% 以下、相対面積では 5% 以下というばらつきの要件を満たしています。

参考文献

  1. Fournier, J. A Review of Glycan Analysis Requirements.2015
  2. Dahodwala, H.; Sharfstein, S. T. Biosimilars: Imitation Games; ACS Publications, 2017.
  3. Lauber, M. A.; Yu, Y.-Q.; Brousmiche, D. W.; Hua, Z.; Koza, S. M.; Magnelli, P.; Guthrie, E.; Taron, C. H.; Fountain, K. J. Rapid Preparation of Released N-Glycans for HILIC Analysis Using a Labeling Reagent That Facilitates Sensitive Fluorescence and ESI-MS Detection.Anal.Chem. 2015, 87 (10), 5401–5409.
  4. Koza, S. M.; McCall, S. A.; Lauber, M. A.; Chambers, E. E. Quality Control and Automation Friendly GlycoWorks RapiFluor-MS N-Glycan Sample Preparation (720005506EN).Waters Corporation May 2020. 
  5. Reed, C. E.; Fournier, J.; Vamvoukas, N.; Koza, S. M. Automated Preparation of MS-Sensitive Fluorescently Labeled N-Glycans with a Commercial Pipetting Robot.SLAS Technol.Transl.Life Sci.Innov. 2018, 23 (6), 550–559.
  6. Reed, C. E.; Koza, S. M.; Calciano, S. GlycoWorks RapiFluor-MS Automation Using the Andrew+ Pipetting Robot (720006971EN).Waters Corporation August 2020. 

720007008JA、2020 年 9 月

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