COVID-19 を理解する：新型コロナウイルス感染症での分析科学

新型コロナウイルス感染症パンデミックは、科学リソースおよび専門知識の世界的な動員をもたらしました。ウォーターズの新型コロナウイルスイノベーション対応チームは、分析に取り組んでいるパートナー組織と協力して、新型コロナウイルスとの闘いを支援するために結成されました。これらの協力の結果、ウォーターズは、新型コロナウイルス感染症に対する分析科学者の取り組みに役立つ可能性のある技術情報を、照合および共有するためのリソースハブ www.waters.com/c19 を作成できました。このブリーフでは、新型コロナウイルス感染症関連の取り組みのためのさまざまな分析テクノロジーの使用について説明するために、いくつかの高レベルの状況について紹介します。

アプリケーションのメリット

新型コロナウイルス感染症との闘いに動員された LC テクノロジーおよび LC-MS テクノロジーの使用に関する理解

世界中の組織が、新型コロナウイルス感染症パンデミックと闘うという課題に向けて、立ち上がっています。これらの組織に役立つために、ウォーターズは、パートナーの分析上の課題を支援することを目的とする新型コロナウイルスイノベーション対応チームを結成しました。現在までに、ウォーターズは 38 の異なるプロジェクトで協力してきました。ウォーターズは、これらの協力から得られた課題と解決策に基づいて、新型コロナウイルスとの闘いの担い手になると確信する、多くのテクノロジーリソースを蓄積してまとめました。これらのリソースは、www.waters.com/c19 で入手でき、定期的に更新されます。これまで、ウォーターズの分析支援は以下の 5 つの極めて重要なアプリケーション分野にわたっています。

1. タンパク質ベースのワクチン
2. PCR ベースの診断
3. モノクローナル抗体
4. RNA/DNA ワクチン
5. 低分子治療薬

ここでは、これらのアプリケーションそれぞれにおける LC および/または LC-MS の役割について、選択したアプリケーションノートの例と合わせて、簡単に説明します。当社の望みは、新型コロナウイルス感染症リソースハブを提供することにより、組織が新型コロナウイルスに対する分析上の追求に役立つ関連知識に速やかにアクセスできることです。

タンパク質ベースのワクチン

新型コロナウイルス感染症に対抗する有望なアプローチとして、タンパク質ベースのワクチンが登場しました。この方法を用いて組換えタンパク質の抗原を発現および精製し、ワクチンとして投与できるように製剤化します。多くの場合、患者の免疫反応を促すためのアジュバントがこれに含まれます。

LC-MS による分析的特性解析は、ワクチンの特性、機能を理解し、ワクチン開発プロセスのすべての段階での迅速で信頼性の高い意思決定を促進するために不可欠です。より具体的には、これによって、タンパク質ワクチンの主要な品質特性（構造、内容物、同定など）の正確で頑健なモニタリングとコントロールが可能になり、頑健な構造開発が保証され、効率的なバイオ製造、精製、製剤開発の指針となります。

さらに、タンパク質抗原（ワクチン）と結合するターゲット候補の同定は、基本的な SARS-CoV-2 の構造生物学の研究に依存します。有望なターゲットの 1 つは、SARS-CoV-2 スパイクタンパク質です。モノクローナル抗体と同様に、LC ベースおよび LC-MS ベースの技法は、N-グリコシル化プロファイルを理解し、ペプチドマッピング、インタクト質量分析を実行し、抗原エピトープの同定に役立ちます。

詳細については、下記のウォーターズアプリケーションノートを参照してください。

Comprehending COVID-19: Rapid and Sensitive Characterization of N-Glycans from SARS-CoV-2 Spike Protein（『COVID-19 を理解する：SARS-CoV-2 のスパイクタンパク質からの N 型糖鎖の迅速で高感度の特性解析』）、720006914JA。

Comprehending COVID-19: Preliminary Examination of the SARS-CoV-2 Spike Protein by Peptide Mapping（『COVID-19 を理解する： ペプチドマッピングによる SARS-CoV-2 スパイクタンパク質の予備試験』）、720006909JA。

Comprehending COVID-19: Reversed-Phase Liquid Chromatography (RPLC) of Intact SARS-CoV-2 Spike Protein（『COVID-19 を理解する：逆相液体クロマトグラフィー（RPLC）を用いた SARS-CoV-2 のインタクトスパイクタンパク質の分析』）、720006907JA。

Enhanced Performance of the SYNAPT XS and Its Impact on Hydrogen Deuterium Exchange Mass Spectrometry (HDX MS) Data Quality（『SYNAPT XS の性能の向上と水素重水素交換質量分析（HDX MS）のデータ品質への影響』）、720006870EN。

PCR ベースの診断

SARS-CoV-2 ウイルス感染の適時の診断は、依然として新型コロナウイルス感染症パンデミックを正しく管理するための最重要事項です。PCR ベースのアプローチにより、世界中の無数のラボで、SARS-CoV-2 ウイルスの遺伝暗号の定性的検出や定量的検出が促進されています。これらの診断は、増幅および検出時にプライマーおよびプローブとして機能する高品質で高純度のオリゴヌクレオチドに依存します。

LC テクノロジーまたは LC-MS テクノロジーによる品質管理は、オリゴヌクレオチドプローブおよびプライマーのアイデンティティーと純度を確保して、最終的に正確な診断結果を生成するために必要な品質基準を満たすために重要です。

モノクローナル抗体

新型コロナウイルス感染症との闘いでは、現在、確立された治療法としてモノクローナル抗体（mAb）が広く使用されています。すべてのバイオ医薬品と同様に、重要な品質特性の詳細な分析的特性解析は、それらの開発をガイドするために不可欠です。 中和抗体が、予防の選択肢を提供し、受動免疫付与のために開発されつつあります。さらに、サイトカインストームの影響を弱めることができる抗体が、新型コロナウイルス感染症の治療に重要な役割を果たすことが期待されています。

LC ベースまたは LC-MS ベースのテクノロジーは、高次構造分析、サイズバリアントとチャージバリアントの分析、ペプチドマッピング、N 型糖鎖分析、インタクト質量分析（ネイティブおよび変性状態）などの、これらの新型コロナ感染症関連のモノクローナル抗体を特性解析するための最も効果的なツールに属します。サブユニットプロファイリングや、SEC-MS および IEX-MS に基づくネイティブ LC-MS アプローチなど一部の代替バージョンの技法を適用することもできます。

詳細については、ウォーターズアプリケーションノート：Online IEX-MS of mAb Charge Variants Using a BioResolve SCX mAb Column, IonHance CX-MS pH Concentrates, and BioAccord System（『BioResolve SCX mAb カラム、IonHance CX-MS pH 濃縮液、BioAccord システムを用いたモノクローナル抗体チャージバリアントのオンライン IEX-MS』）、720006672EN を参照してください。

RNA/DNA ワクチン

核酸は、被投与者自身の体を利用してゲノム配列由来の抗原性タンパク質成分を転写および翻訳するために使用されています。mRNA およびベクターに組み込んだ DNA は、迅速なスケールアップが容易であることから、新型コロナウイルス感染症との闘いのために追求されている最新種類のワクチンです。ナノ粒子にカプセル化させた mRNA であれ、ベクターに組み込んだ DNA であれ、安全性と有効性を確保するにはこれらの新しい治療法の特性解析と QC 試験を行う必要があります。

現在、LC-MS などの最新の強力な分析技法が、mRNA /DNA ベースのワクチン候補、その成分、中間体の特性解析に適用されています。ウイルスの mRNA は、多くの場合、合成して製造されます。これらの高分子をエンドヌクレアーゼで消化することができ、そのフラグメントを LC-MS で分析できます。LC-MS 分析により、信頼性の高い mRNA 配列の同定と検証が実現します。さらに、LC-MS は、SNP などの低レベルの不純物配列を検出および定量できます。インタクト質量確認ワークフローを使用する追加例として、キャッピングされた mRNA フラグメントとキャッピングされていない mRNA フラグメントの比率（mRNA の安定性/翻訳に重要）の分析があります。

低分子治療薬

現在、多くの低分子化合物について、SARS-CoV-2 の複製と伝染を抑止する能力があるかないかについての調査が行われつつあるか、あるいはすでに行われています。これらの分子の範囲は、転用した抗マラリア薬や市販の胸焼け薬から、ポリメラーゼ阻害剤やプロテアーゼ阻害剤にまで及びます。

LC ツールおよび LC-MS ツールは、リリース試験、製剤試験、臨床段階のバイオアナリシス、および治療薬のモニタリングに利用されています。これらの各アプリケーションは、これらの医薬品有効成分の調製や有効性の実証、苦痛を感じている患者に対する特別な投与スケジュールの決定などの用途に、非常に重要です。

LC および LC-MS は、新型コロナウイルス感染症との闘いでの、さまざまな治療薬および診断薬の開発をサポートする、価値のある分析ツールです。数多くの協力の結果として、LC および LC-MS テクノロジーの極めて重要な使用法のこの簡単なサマリーを、ウォーターズは提供しています。この簡単な概要と組み合わせて、www.waters.com/c19 で入手できる特定のテクノロジーリソースにより、新型コロナウイルスに対する取り組みに必要な情報に分析科学者が速やかにアクセスできるものと、ウォーターズは考えています。