ペプチド MAM 分析用の新しい種類のインフォマティクスと組み合わせた BioAccord LC-MS システムの使用。
近年、臨床材質特性解析、安定性試験、QC 製品リリースなどの、製品ライフサイクルのさまざまな段階についてマルチ特性分析(MAM)を展開するための、製薬業界による協調した取組みが行われてきました。ただし、MAM の導入の成功は、システムレベルでの使いやすさ、分析法の頑健性、および分析用に導入されたシステムの信頼性などの課題によって制限されます。ペプチドの特性追跡、相対的定量、新規ピーク検出法(NPD)などのワークフローのステップも、厳しいコンプライアンスおよび有用性の要件に適合することが期待されています。このテクノロジーブリーフでは、コンプライアンス対応 waters_connect インフォマティクスプラットホームで動作する専用のペプチド MAM アプリケーションを装備した、BioAccord LC-MS システムの機能を拡張する新しい MAM ワークフローを紹介します。この新しいワークフローにより、組織では、pCQA(製品重要品質特性)の信頼性の高い相対的定量および潜在的な未知の不純物のペプチドレベルでの検出ができるようになります。統合されたエンドツーエンドのワークフロー設計により、ユーザーエクスペリエンス全体が、合理化された装置の動作および自動 MAM データ処理によって向上し、その一方で規制下ラボでも非規制下ラボでも統合されたデータ取り込み、解析、レポート作成が可能になります。
SmartMS テクノロジーを初めて搭載した製品である BioAccord LC-MS システムは、コンプライアンス対応 waters_connect インフォマティクスプラットホームで動作します(図 1)。waters_connect プラットホームは、インタクト質量分析から遊離糖鎖プロファイリング、ペプチド特性の解析とモニタリングまで、バイオ医薬品分析用の複数の統合されたアプリケーションワークフローに対応しています。図 1 に、ペプチド MAM 分析のワークフローステップが、LC-MS 分析法開発からペプチド特性のモニタリングおよび定量のための分析の実行まで示されています。ペプチド MAM アプリケーションは、慎重に設計され、システムスータビリティテスト(SST)注入から、ブランク、コントロール/レファレンス、分析サンプルの解析までのデータ解析の課題に対処します。SST により、分析ワークフローを実施するための LC-MS システムの準備状態が確保されます。このアプリケーションにより、さらに対象分析種のペプチド特性が追跡され、各サンプルの標的を定めた pCQA の相対 % 修飾のレベルが報告されます。ユーザーが定義できるスレッシュホールドをシステムスータビリティテストデータおよびペプチドモニタリングデータの両方に適用することができ、それらの事前定義した限界を超える特性や分析に明確にフラグ付けできます。純度評価では、新規ピーク検出アルゴリズムにより、分析サンプル中で、レファレンスと比較して大幅に変化している新しい種類の不純物やイオンが同定されます。
組織全体に MAM を展開できるかどうかは、システム内だけでなく、異なるオペレーターが操作するシステムにわたって再現可能なデータを生成する能力によって決まります。ペプチド MAM ワークフローの実行に関して、BioAccord システムと waters_connect プラットホームの性能を一緒に評価するために、次の一連のシステムスータビリティペプチドについて分析を行いました:1a) コントロールサンプル(NISTmAb レファレンスのトリプシン消化物)、1b) 定量的なペプチド混合物を添加したコントロールサンプル、2a) 過酷試験を実施したサンプル(熱および pH ストレスをかけた NISTmAb レファレンス標準試料およびトリプシン消化した NISTmAb レファレンス標準試料)、2b) 定量的なペプチド混合物を添加し、過酷試験を実施したサンプル。2 つの別個の BioAccord システムで、MAM 分析を 2 週間~3 か月の間を空けて繰り返しました。図 2 に 2 つのシステムの結果を示しています。モニターした % pCQA に対する相対標準偏差(% RSD)が 6% 未満というシステム間およびシステム内の再現性が得られており、MAM 試験は複数のシステムわたって全体的に再現できることを示唆しています。
バイオ医薬品の純度分析にこの分析法を使用する際、新規ピーク検出(NPD)はペプチド MAM 分析の必要不可欠な部分です。NPD 解析によって、分析サンプル中の、レファレンスと比較して大幅に変化しているまたは変化した新規の不純物にフラグが付けられます。新規ピーク検出の基準は、多くの場合ラボごとや分子ごとで変わります。このため、NPD のデータ解析には、スレッシュホールドパラメーターを設定するためのユーザー定義設定における柔軟性が必要です。データ解析の後、パラメーターをさらに変更し、新しいピークをフィルター処理して潜在的な偽陽性を除くことができます。新しく導入された % 同位体マッチ基準フィルターにより、これらの偽陽性検出が大幅に低減し、潜在的な不純物としてフラグ付けされたピークの信頼度が高くなります(図 3)。
ペプチドマッピング特性解析試験で定義される特性の追跡とモニタリングの pCQA は、「追加」または「インポート」機能によってペプチド MAM 解析法に導入することができます。ペプチドのモニタリングリストを統合する場合、「インポート」機能を用いると、最も合理化されたプロセスになります。それは、pCQA を、特性解析の実行で読み込んだ waters_connect サイエンスライブラリーから MAM 分析法に直接インポートできるためです。この統合されたプロセスは、データのトレーサビリティーおよび規制対象の組織からの潜在的な遵守期待事項にも対処します。また、複数のインフォマティクスプラットホームまたはベンダーシステムからの特性リストのインポートをサポートするために、.csv インポートファイル機能を使用して CQA ライブラリーをサイエンスライブラリーに読み込むこともできます(図4)。
新規の waters_connect インフォマティクスプラットホームと組み合わせた BioAccord LC-MS システムの機能を拡張する新しいペプチド MAM ワークフローの主要な要素を説明しました。特性解析およびモニタリング用の複数のアプリケーションが統合されている革新的なプラットホーム設計により、SmartMS を使用する BioAccord 装置システムの有用性が補完されます。このワークフローにより、結果の処理時間がさらに短縮され、より迅速で適切な意思決定のための高度の情報内容へのより広いアクセスが可能になります。
720006963JA、2020 年 7 月