バイオ医薬品企業は、医薬品の品質システムの一環として、医薬品製造で一貫した正確な結果が得られる頑健な分析法に依存しています。バイオ医薬品の許容基準を決定することは、検出限界またはその付近で検出器を操作するときに、困難な場合があります。これは、光学活性および検出器の中を流れる溶媒の不均一性の影響を受けやすい LC ベースの紫外線検出器に、特に当てはまります。LC ベースのミキサーは、システムのダウンタイムが最小限で、グラジエントにほとんど影響することなく容易に交換できるハードウェアコンポーネントであり、溶媒組成の不均一性によるベースラインノイズを低減することにより、分析の再現性および正確度に重大な影響を与えます。最近ウォーターズは、340 μL の生体適合ミキサー(製品番号 700011554)をリリースしました。評価を受けたところ、光学性能に関してベースラインノイズが大幅に低減すると同時に、ピーク面積レスポンスと波形解析精度が向上することが分かりました。本実験では、標準の 50 μL ミキサーと 340 μL の生体適合ミキサーを使用し、専用の LC システムで同一のペプチドマッピングサンプルを分析しました。シグナル対ノイズ比が最大 50% 増加して実験値が 3 を超え、面積の %RSD は 5 分の 1 以下に減少して 2.0% 未満でした。これは、分析のダイナミックレンジおよび許容基準に影響する可能性があります。本研究により、ウォーターズの 340 μL 生体適合ミキサーを使用することで、最小限の装置構成変更で、クロマトグラフィー性能と検出器応答を最適化できるメリットが実証されています。
バイオ医薬品業界のいたるところでラボでは、紫外(UV)検出器を組み込んだ光学ベースの分析法が一般に使用されています。これは一部では、UV 検出器および UV 検出器に適した、タンパク質ベースの分子が示す固有の吸収/発光特性のためであり、容易にスケーリングして配置し、組織のニーズに対応できる費用対効果の高いテクノロジーです。サンプルが限られている場合や微量不純物をモニターする場合は、検出器のレスポンスを最大にして、分析から一貫した正確な結果が確実に得られることが重要です。LC ベースの分析では、グラジエント、温度、移動相組成、イオン対の種類などのパラメーターは、多くの場合、最適化プロセスの一環として評価されます。カラムは別にして、分析性能への LC ハードウェアの影響の評価は、多くの場合、生産性を維持するために最小限に抑えられます。これは特に、バリデーションプロセスの間に定義されたパラメーターおよびハードウェア構成に分析法が制限される規制環境に当てはまります。このため、溶媒ミキサーは、分析法の再バリデーションや検証を必要とせずに容易に変更することができ、その一方で分析性能に顕著な影響を与えます。
光学活性、および光学検出器中を流れる移動相の組成の不均一性によって、ベースラインノイズが高くなることがあり、これが検出限界(LOD)および定量精度に関して分析性能に悪影響を与えることがあります。この現象は、ペプチド分析の場合のように、流速の遅い緩やかなグラジエントを使用する分析法で、取り込む UV の波長が短い場合にさらに悪化します。グラジエントベースの分離で、ベースラインノイズを低減するための戦略の 1 つは、容量を大きくした溶媒混合チャンバーを取り入れて移動相組成の不均一性を低減することです。ウォーターズの LC 装置では、ユーザーはその設計の一環としてさまざまなミキサーから選択することができ、効率的な分析法開発が促進され、分析性能が最大化されます。本実験の目的は、より大きい容量を持つミキサーを使用してベースラインノイズを低減し、検出器のレスポンスと分析法の頑健性を向上させる方法を実証することです。
UV 検出器のベースラインノイズへのミキサー容量の影響を検討するために、本試験で使用する LC プラットホームおよび技法に関していくつかの検討を行いました。グラジエントベースの分離で最高の組成正確度を実現する LC プラットホームとして、ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio バイナリーシステムを選択しました。ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio バイナリーシステムでは、その設計の一環として、ティーアセンブリーを介して送液を混合することにより、2 台の別個のポンプから直接溶媒を混合します。次に、移動相の組成正確度を高めるために、カラムの前に混合チャンバーに導入します。システムの変動を最小限に抑えるため、ACQUITY UPLC H-Class PLUS Bio バイナリーシステムに同梱されている標準の 50 μL ミキサーを、340 μL のミキサー(製品番号 700011554)と比較しました。各データセットについては、ミキサーのみを変更して、同じ移動相、カラム、サンプルを同じクロマトグラフィーシステムで使用して分析しました、この実験では、グラジエントを使用する分析手法として業界で一般的に用いられている、逆相クロマトグラフィーを選択しました。移動相(MP)は、水(MP:A)とギ酸 0.1%(v/v)が含まれているアセトニトリル(MP:B)で調製しました。ウォーターズのトリプシン消化標準試料(製品番号 186009126)を使用して、ACQUITY UPLC Peptide CSH C18 カラム(130Å、1.7 µm、2.1 mm × 100 mm、製品番号 186006937)で分離を実施し、流速 0.200 mL/分で 1.7% B/分のグラジエントを用いて、標準的な 135 分間のペプチドマッピング分析法を実行して、波長 214 nm で UV 検出しました。ハードウェア交換後にベースラインレスポンスが安定していることを確認するため、ブランク注入 4 回で構成されるサンプルセットを実行し、その後トリプシン消化標準試料を 5 回注入しました。
図 1 に示すように、容量が大きい方のミキサーを使用することによって、ベースラインノイズが目で見てわかるほど低減しています(下図)。選択したピークを使用して、ピーク面積およびシグナル対ノイズ比(S/N)を計算し、分析法性能に対するミキサー容量の定量的影響を判定しました。上のクロマトグラムに示されているように、低容量である 50 μL のミキサーを使用した場合、選択したピークの S/N は 3 未満と算出され、この S/N 値は、「リアル」と考えられる分析のしきい値を下回っていると考えられます。ただし、容量が大きな 340 μL ミキサーを使用した場合、同じピークの S/N が 3 を超えていることが観察されました。この差は、分析法のダイナミックレンジや許容基準の定義に影響を与える可能性があります。さらに、一連の注入にわたってピークの波形解析の精度が向上したことにより、容量の大きいミキサーでは、面積の再現性が最大 8 倍向上しました(挿入図)。これらの結果は、混合量を大きくすることでベースラインノイズが低減して UV 検出器のレスポンスが最大化し、クロマトグラフィーシステムの最小限の変更で分析法性能が改善されることを示しています。
分析法開発の一環として、システム性能の最適化は、信頼できる一貫した結果を得るために必要です。光学ノイズの増加や移動相組成の不均一性による高いベースラインノイズは、ピークのシグナル対ノイズ比や面積の再現性に関して、クロマトグラフィー性能に悪影響を与えます。ウォーターズは、最小限の装置の変更でシステム性能の向上およびアプリケーションニーズへの対応が可能で、より頑健で再現性の高い分析法開発を可能にする、ミキサーのオプションのポートフォリオを提供します。
720007011JA、2020 年 9 月