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ヒト血漿/血清内の 14 種類の内因性ステロイドの半定量分析のための、迅速なターゲット UPLC-MS/MS 分析法が開発されました。この分析法は、ヒト血漿/血清における生理的な濃度レベルの分析種の分析に適していることが実証されました。この MetaboQuan-R 分析法は、胆汁酸、アミノ酸、遊離脂肪酸、トリプシンペプチド、アシルカルニチン、トリプトファン代謝物、および様々な脂質など、多様な化合物群の分析に以前から活用されていた、同様に汎用性の高い LC-MS プラットホーム上で最適化されています。この新しいステロイド分析では、MetaboQuan-R の一連の分析を拡張し、ターゲットマルチオミクスワークフローで連続操作することで、その他の代謝物や脂質などが分析できます。
ステロイドホルモンおよび関連化合物は、非常に重要な生物活性分子であり、数多くの重要な生物機能に関与しています(図 1)。このような分析種は、その多くが類似した化学構造を持ち、複数の同重体干渉が生じるために、分析が困難になります。このような化学的類似性が存在するということは、つまり干渉する(同一分子量の)分子種のクロマトグラフィー分離が、選択的分析のために重要であるということです。これは通常、クロマトグラフィーの分析時間の延長、誘導体化、または複数ターゲット分析の使用により実現できます。
ここでは、誘導体化を必要としない、ヒト血漿/血清サンプル中の 14 種類のステロイドの半定量分析におけるハイスループット UPLC-MS/MS 分析法(MetaboQuan-R)を紹介します。また、以前に複数のその他の内因性化合物群で使用されている、一般的で柔軟な LC-MS プラットホームを使用しています。そのため、1 回の分析で、複数の代謝群のハイスループットな定量分析が実現できます。
ヒト血漿/血清サンプルは、前述の方法で前処理しました(図 1)。簡単に説明すると、サンプルは、酢酸エチル/ヘキサン混合液を用いて液-液抽出で前処理しました。蒸発乾固後、残留物をメタノール・水混液に溶解してから、UPLC-MS/MS による分析を行いました。
ACQUITY UPLC I-Class システム(固定ループ)に CORTECS T3 2.7 μm(2.1 x 30 mm)カラムを装着し、60 ˚C に維持して、UPLC 分離を実施しました。サンプル 5 μL をカラムに注入し、逆相グラジエント条件で溶出しました。ここで、移動相 A は 0.2 mM のギ酸アンモニウム含有の 0.01% ギ酸水溶液で、移動相 B は 0.01% のギ酸および 0.2 mM のギ酸アンモニウム含有の 50% イソプロパノールのアセトニトリル溶液です。最初の 2.7 分間、移動相 B を 15% で維持した後、4.3 分間の 15~40% の移動相 B のリニアグラジエントにより、ステロイドをカラムから溶出させて分離し、続いて 98% 移動相 B で、流量 0.45 mL/分で 1 分間、カラムを洗浄しました。その後、カラムを初期条件で再平衡化しました。
ステロイドは、Xevo TQ-S micro 質量分析計の多重反応モニタリング(MRM)分析を用いて検出しました。すべての実験は、エレクトロスプレーイオン化ポジティブ(ESI+)モードで実施しました。イオン源の温度とキャピラリー電圧を一定に保ち、それぞれ 150 ℃ と 2.0 kV に設定しました。コーンガス流量は 50 L/時間、脱溶媒温度は 650 ℃ でした。使用した MRM トランジションの詳細は表 1 に記載しています。
分析メソッドの情報は、MassLynx 内の Quanpedia 機能を使用して LC-MS システムにインポートしました。この拡張可能で検索可能なデータベースにより、化合物の定量用に TargetLynx で使用する LC およびMS メソッドならびに解析メソッドを作成できます。
LC システム: |
ACQUITY UPLC I-ClassFL |
検出: |
Xevo TQ-S micro |
カラム: |
CORTECS T3 2.7 µm(2.1 × 30 mm) |
カラム温度: |
60 ˚C |
サンプル温度: |
6 ˚C |
サンプル注入量: |
5 μL |
流速: |
0.45 mL/分 |
移動相 A: |
0.2 mM ギ酸アンモニウム含有 0.01% ギ酸水溶液 |
移動相 B: |
0.01% ギ酸および 0.2 mM ギ酸アンモニウム含有 50% イソプロパノールアセトニトリル溶液 |
グラジエント: |
最初の 2.7 分間、移動相 B を 15% で維持した後、4.3 分間の 15~40% の移動相 B のリニアグラジエントを適用し、続いて 98%の移動相 B で 1 分間カラムを洗浄しました。その後、カラムを初期条件に再平衡化しました。 |
MS システム: |
Xevo TQ-S micro |
イオン化モード: |
ESI + |
キャピラリー電圧: |
2.0 kV |
表 1 に一覧されている 14 種類のステロイドが、本書に記載された UPLC-MS/MS プラットホームと抽出プロトコールを用いて抽出、分離、検出されました。14 種類のうち、5 セットの化合物(下記の一覧を参照)については、構造的類似性を持つため分子量が同一であり、その結果、質量分析計内で干渉し合います。
セット A – テストステロン、アンドロステンジオン
セット B – 11-ケトテストステロン、11-ケトアンドロステンジオン
セット C – アルドステロン、コルチゾン、18-ヒドロキシコルチコステロン、コルチゾール
セット D – コルチコステロン、11-デオキシコルチゾール、21-デオキシコルチゾール
セット E – 11-デオキシコルチコステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン
14 種類のステロイドすべてを選択的に分析するには、これらのセットの同一分子量のステロイドのクロマトグラフィー分離が必要となります。MetaboQuan-R プラットホームを使用して開発された UPLC 分離により、5 セットのステロイドを互いに分離するのに成功し、すべての分析種について特定の分析を行うことができました。図 2 は、これら 5 つの主な同一分子量のステロイドのセットを含む 14 種類のステロイドの UPLC 分離を示しています。
図 3 のクロマトグラムは、2 つのステロイド(17-ヒドロキシプロゲステロンおよび 11-デオキシコルチコステロン)の間の同重体干渉を示しています。ここで、2 つのステロイドが同一のプリカーサーイオンおよびプロダクトイオンを有することが分かります(MRM トランジション 331.2 > 97.0)。図 3 の一番上のクロマトグラムは、抽出したヒト血漿サンプルのプールから得られたものであり、17-ヒドロキシプロゲステロンのピークおよびその他のバックグラウンドピークが見られます。これは、ステロイド分析には良好なクロマトグラフィー分離が必要であることを示しています。この MetaboQuan-R クロマトグラフィー分析法は、17-ヒドロキシプロゲステロンのピークを他の対象ステロイドの干渉物(11-デオキシコルチコステロン)から良好に分離できただけでなく、少なくとも 6 つの他の未知の内因性同重体による干渉からも分離できています。
ヒト血漿および血清中に存在する 14 種類の内因性ステロイドを調査分析するための迅速な UPLC-MS/MS 分析法が開発されました。この分析法が、ヒト血漿および血清中のこれらのステロイドの生理的な濃度レベルでの分析に適していることが実証されました。この分析法では、様々な化合物群(胆汁酸、遊離脂肪酸、トリプシンペプチド、アシルカルニチン、脂質など)の分析で利用できる柔軟な逆相 UPLC-MS/MS プラットホームを活用しています。そのため、幅広い特性の化合物をカバーするターゲットマルチオミクスワークフローの一部としてこの分析法を連続して行い、一連の分析の一部として使用することができます。
720006936JA、2020 年 6 月