• アプリケーションノート

Arc HPLC システムで得られる信頼性・頑健性の高いインジェクター精度および直線性

Arc HPLC システムで得られる信頼性・頑健性の高いインジェクター精度および直線性

  • Tirupateswara Rao Boyidi
  • Bheeshmacharyulu S
  • Dilshad Pullancheri
  • Dr. Padmakar Wagh
  • Waters Corporation

要約

精度と直線性は、HPLC インジェクターがざまなクロマトグラフィー条件下で適切に動作するかを判定する 2 つの測定可能な特性です。100% 有機性の希釈剤を使用する分析法は、サンプル送液システムに大きな影響を与えることがあります。本研究では、サンプル希釈剤が 100% 有機性であっても、分析用 HPLC の広範囲の注入量にわたって、直線性で再現性のあるサンプル注入が実現することを実証しています。

アプリケーションのメリット

  • カフェインおよびアセナフテンの注入の直線性について観察された相関係数(R2)は、注入量 0.5 ~ 20 µL について 0.999 を超えています。
  • 水性サンプル希釈剤と 100% 有機性のサンプル希釈剤を使用した場合、カフェインとアセナフテンのそれぞれについて、0.5 ~ 20 µL の注入量すべてにわたる注入精度の面積 %RSD は 0.73% 未満です。

はじめに

HPLC 分析の結果は、サンプル送液システムの性能に大きく依存します。装置の性能が事前に決定された一連の基準の範囲内に維持され、システムによって生成されたデータの品質が、信頼できることを確認する必要があります。性能は、サンプルマネージャー(インジェクター)の機能をテストすることによって確認できます。このアプリケーションノートでは、インジェクターの精度やインジェクターの直線性という 2 つの主要な性能特性がクロマトグラフィー結果に及ぼす影響について説明します。

Arc HPLC システムではフロースルーニードル(FTN)インジェクター設計が使用されており、これによって分析する注入容量の範囲にわたって高い注入精度が実現します。Arc HPLC システムにより、高効率の分離を達成し、最も厳しい規制要件に高い信頼性で適合する高品質データを得ることができます。さらに、Arc HPLC システムでは、データ品質を損なうことなく、既存の LC 分析法の性能を容易に再現および向上できるため、旧式あるいはあまり効率的でない LC システムによる負荷を減らすことができます。

製薬会社の社内プロトコルによって異なりますが、品質管理ラボでは 5 回から 6 回の繰り返し注入を実施して、装置の精度を確認します。USP General Chapter 621 により、5 回繰り返しの RSD の合否基準は、特に指定されていないかぎり、0.73% 以下であることが求められます。

図 1. Waters Arc HPLC システム

結果および考察

Arc HPLC システムではフロースルーニードルインジェクター設計が使用されており、これによって、サンプル希釈剤とは無関係に、分析する注入容量の範囲にわたって高い注入精度が実現します。注入の精度と直線性を実証するため、カフェイン標準試料およびアセナフテン標準試料を 0.5 ~ 20 μL の範囲のさまざまな注入量で、分析カラム(4.6 × 50 mm)に繰り返し注入しました。標準の 100 μL シリンジおよび 50 μL サンプルループを使用して構成した Arc HPLC システムのサンプルマネージャーの注入精度特性は、水性希釈剤を使用したカフェインの標準溶液および 100% 有機性希釈剤を使用したアセナフテンの標準溶液を、0.5 ~ 20 μL 注入して測定しました。各注入量におけるカフェインおよびアセナフテンのピークの面積 %RSD を評価しました(n = 5)。図 2 および 図 3 に示すように、面積 %RSD は注入量の範囲にわたって 0.73% 未満でした。

図 2. 注入量範囲 0.5 ~ 20 µL でのカフェインのピークの面積 %RSD
図 3. 注入量範囲 0.5 ~ 20 µL でのアセナフテンのピークの面積 %RSD

このアプリケーションブリーフに記載された実験は、Arc HPLC システムのサンプルマネージャーが、異なる注入量を送液するようにプログラムされている場合に、正確な量のサンプルを送液することが確認できるように設計されています。図 4 および 図 5 に示すように、カフェインおよびアセナフテンの平均面積を注入量に対してプロットした結果(n = 6)、優れた注入の直線性が得られました。ピーク面積と注入量の間の相関係数(R2)により、オートサンプラーの注入量における直線性範囲の目安が得られます。この注入量範囲にわたる R2 値は、0.999 を超えています。

図 4. 0.5 ~ 20 μL の場合のカフェインピークについての注入量の直線性
図 5. 0.5 ~ 20 μL の場合のアセナフテンピークについての注入量の直線性
図 6. 注入量 10 µL の場合のカフェインピークの面積 %RSD
図 7. 注入量 10 µL の場合のアセナフテンピークの面積 %RSD

結論

ルーチン分析では、正確な定量のために、異なる注入量にわたって再現性が高く直線性が得られるオートサンプラーがラボで必要です。Arc HPLC システムは、課題となる分析法に対する厳しいシステムスータビリティ要件に適合し、厳しい規制環境下で必要な性能効率を発揮します。

720007082JA、2020 年 11 月

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