ACQUITY APC システムは、p-QSM および ACQUITY BEH カラムテクノロジーを搭載することで、有機溶媒に適合する 100% 強溶媒による分離ソリューションを準備不要で利用できます。p-QSM ポンプには、アイソクラティックモードまたはグラジエントモードに対応する柔軟性があります2。 GPEC では、グラジエント溶出を使用して、溶解度とケミストリーによって分離が行われます。このグラジエント溶出技法を、逆相分離やサイズに基づく GPC 分離と混同しないでください。この方法では、相性の悪い溶媒を用いてポリマーを意図的にカラムに沈殿させてカラムと相互作用させず、その後、グラジエント中の相性の良い溶媒濃度でカラムから溶離させます。GPEC には、さまざまな移動相中のポリマーや発色団のない可能性のあるポリマーを検出できる検出器が必要です。ELSD は、このような条件下で、GPEC 技法に適合して良好に機能します3-5。このアプリケーションブリーフでは、グラジエントポリマー溶出クロマトグラフィー(GPEC)と、ポリマークオータナリーソルベントマネージャー(p-QSM)およびエバポレイト光散乱検出器(ELSD)を搭載した ACQUITY Advanced Polymer Chromatography(APC)システムを使用して、さまざまな立体構造を持つポリ乳酸サンプルを溶解度で分離することを目的としています。
メーカーや化学品供給業者からは、多種多様なポリラクチドやポリ乳酸(PLA)を入手できます。PLA のバリエーションには、分子量、立体構造、末端基終端、結晶化度などがあります1。 PLA のサンプルを製造してこれらの可変特性を管理するには、原材料、合成、合成後処理を管理する必要があります。研究、検査、最終製品合成の過程でポリマーを正確に測定するには、迅速で簡単な分析技法が必要です(このプロセスは図 1 の PLA ワークフローに記載されています)。ポリマーの品質と性能の一貫性を確認できるように、ワークフロー全体で頻繁に分析測定が行われます。
このアプリケーションブリーフでは、p-QSM および ELSD を搭載した ACQUITY APC の高い溶媒適合性によって、どのようにしてこの迅速で堅牢なソリューションを使用し、GPEC 技法を適用して PLA の立体構造を同定するかについて、実証します。
この実験では、Millipore Sigma から購入した PLA サンプルを使用しました。サンプルは、図 2 に示されているように、類似した分子量範囲内にあり、異なる立体化学構造のものを選択しました。プロセスの最初のステップは、ポリマーサンプルの溶解度の決定でした。PLA のゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)実験をポリマーサンプル溶解の出発点として使用し、表 1 に溶解度試験の結果を記載しました4。ポリマーの溶解度は、分子の対称性および結晶化度につながる会合性と関連している場合があります(図 3)。PLLA 型は PLDLA 型より対称性が高く、この対称性が会合を促進し、溶解を阻害してしまいます。
PLA サンプルは、濃度 5 mg/mL になるようにクロロホルムに溶解して原液とし、さらに別のバイアル中で 1 mg/mL に希釈してから、PTFE 0.2 μm、13 mm のシリンジフィルター(製品番号 WAT200556)でろ過します。ろ過したサンプルを、スリット入りセプタムキャップ(製品番号 186005666CV)付き Waters 2 mL 液体クロマトグラフィーバイアルに入れます。
サンプル前処理が完了したら、カラム(製品番号 186006046)を装着し、移動相を装置の上に配置し、Empower 装置制御ソフトウェアに装置設定を入力します。実験の詳細を表 2 に記載します。図 4 ~ 6 に、Empower 科学ソフトウェアでの ACQUITY APC システムの装置設定のスクリーンショットが示されています。
システム: |
p-QSM 搭載 APC(製品番号 176015030) |
カラム: |
XBridge BEH C8 XP カラム、130Å、2.5 μm、3×75 mm |
移動相 A/B: |
クロロホルム |
移動相 C/D: |
メタノール |
グラジエント: |
スクリーンショットを参照 |
流速: |
0.7 μL/分 |
分析時間: |
10 分 |
サンプル注入量: |
1 μL |
サンプル濃度: |
1 mg/mL |
検出器: |
ELS |
%A グラジエント、PLA(L)、および PLA(D,L) を選択すると、実験の結果データがレビューに入力されます。重ね描きビューを選択してプロットを重ねると、図 7 に示したようなクロマトグラムが表示されます。グラジエントの勾配は 2 です。これは、相性の良い溶媒のクロロホルムを非常に急速に添加したためです。クロロホルムを急速に加えることで、ポリマーがカラムから急速に溶離し、クロマトグラフィーピークが狭くなります。PLA サンプルは、溶解度、グラジエント溶媒比、立体構造により、異なる時間に溶出します。
p-QSM および ELSD を搭載した ACQUITY APC システムで、GPEC 技法を使用することで、立体構造が異なる 2 つの PLA サンプルが、溶解度によってクロマトグラフィー分離され、異なる保持時間で溶出します。この GPEC の分析例は、これからより大規模の研究として発表される一連の PLA 実験の最初の分析例です。このより大きなドキュメント資料では、さまざまな PLA 立体構造のサンプルの構造および特性を取り上げます。
720006942JA、2020 年 6 月