ベンジルアルコールは、HPLC システムでインジェクターのキャリーオーバーを引き起こし、これによって規格外の値が生じ、最終的にバッチ内不良の結果になることがあることが知られています。この実験では、Waters Arc HPLC システムと、同等の他社製 HPLC システムで、同じ HPLC 分析法を使用しました。Arc HPLC システムで観察されたキャリーオーバーの割合は、他社製システムと比較してはるかに低い値でした。Arc HPLC システムによって、ベンジルアルコールのインジェクターキャリーオーバー問題を最小限に抑えることができることが、この実験で確認されました。
「キャリーオーバー」は、サンプル汚染の一種を説明するために使用する用語であり、これによって、後続する分析(たとえばブランク分析)で、実際には含まれていないサンプルのピークが再び現れます。インジェクターのキャリーオーバーに影響を与える可能性のある要因はいくつかあり、これには分析種の化学的性質、カラムのケミストリー、HPLC システムのインジェクターの設計などがあります。、
Arc HPLC システムは、製薬、食品、学術、およびさまざまなその他の業界でのルーチン検査に使用される新しい高速液体クロマトグラフィー(HPLC)システムです。Arc HPLC システムは、確立された HPLC 分析法を、オリジナルに開発された液体クロマトグラフィーのブランドとは無関係に実行することができ、これらの分析法のクロマトグラフィー保持時間の再現性を維持できる、頑健で信頼性の高い、最新の HPLC システムを求めているラボに適しています。このシステムにより、分析種キャリーオーバーが極めて低く、優れた注入精度で、5.0 mL/分で 9,500 psi の背圧耐性が得られます。
今回行った実験は、ベンジルアルコールのキャリーオーバーの問題を最小限に抑えるのに役立ちます。ベンジルアルコールは、保存剤としてアトロピン注入に使用されます。ベンジルアルコールの含有量は、通常、硫酸アトロピンよりも高く(20 倍)なっています。単一の注入による分析では、非常に高濃度のベンジルアルコールがカラムに注入されることは課題です。
システム: |
Arc HPLC システム(PDA 検出器を搭載) |
カラム: |
Inertsil ODS-3 3 µm |
カラム温度: |
35 ℃ |
流速: |
1.3 mL/分 |
移動相 A: |
バッファー、pH 4.0 |
移動相 B: |
100% アセトニトリル |
検出: |
254、210 nm |
サンプル濃度: |
ベンジルアルコール 1800 ppm |
注入量: |
50 µL |
パージ溶媒: |
水:アセトニトリル(9:1) |
ニードル洗浄液: |
水:アセトニトリル(1:1) |
分析時間: |
25 分 |
サンプル温度: |
25 ℃ |
この実験は、サンプル分析後のブランク注入でのベンジルアルコールのインジェクターキャリーオーバーを調べるために設計されました。Arc HPLC システムおよび同等の他社製 HPLC システムで、同じ分析法条件を使用しました。サンプルシーケンスには、サンプル分析前ブランク試料、サンプル(硫酸アトロピン 80 µg/mL およびベンジルアルコール 1800 µg/mL)、サンプル分析後ブランク試料が含まれています。
Arc HPLC システムの高度なフロースルーニードル設計により、分析中にサンプル注入ニードルの内部が継続的に洗浄され、インジェクターのキャリーオーバーを最小限に抑える役に立ちます。さらに、ユーザーが設定可能な洗浄設定により、「粘着性」化合物にすら対処でき、インジェクターのキャリーオーバー管理の成功が保証されます。
720007076JA、2020 年 11 月