法中毒学目的のみに使用してください。
このアプリケーションブリーフでは、ACQUITY QDa 質量検出器でウォーターズ STA 分析法を評価して、さまざまな生体マトリックス中の毒性学的類縁物質のスクリーニングを容易に行う方法を実証します。
ACQUITY QDa 質量検出器を使用した STA についての 2 部構成のシリーズのパート 1 では、従来のスクリーニング分析法の長所と短所を確認し、生体マトリックス中の毒性学類縁物質を検出するための簡略化されたスクリーニング手法について説明します。
全般的な未知試料のスクリーニングまたは体系的毒性学分析(STA)は、法中毒学ラボ内で適用されるワークフローの重要な要素です。この初期スクリーニング手法の主な目的は、陽性と思われるサンプル、つまり関連する薬物を含むサンプルを特定すると同時に、その後の分析から陰性サンプルを除去することです。通常、尿および血漿/血清が適切な検体です。
従来の手法には、免疫測定法(IA)、ガスクロマトグラフィーと質量分析の組み合わせ(GC-MS)、および紫外線(UV)またはフォトダイオードアレイ(PDA)を使用した液体クロマトグラフィー(LC)が含まれます。これらの手法は一般的に使用されていますが、表 1 に示すように、重大な制限事項がいくつかあります。
簡単に言うと、免疫測定法では通常、クラス固有のスクリーニング結果が生成されるため、主な薬物クラスの情報を提供するには複数のキットが必要になります。さらに、一部の薬物および薬物クラスに対してアッセイを使用できない場合があるため、このアプローチで得られるスクリーニング範囲は、非常に制限されます。また、偽陽性や偽陰性も免疫測定法の重大な欠陥であり、十分に立証されています¹。
長い間、ガスクロマトグラフィーと質量分析の組み合わせは「ゴールドスタンダード」で包括的なスクリーニングであると考えられており、多くの毒性学ラボの主力となっていました。生体外異物のデータを含む、電子衝撃(EI)イオン化に基づく大規模な市販ライブラリーが利用できることは、ユーザーにとって大きなメリットがあります。EI はハードイオン化手法と見なされ、過剰なフラグメンテーションが原因で一部の分析種が検出されないことがあります。感度を向上させるために、多くの場合、化学的誘導体化が使用されます。これには、時間がかかり、別の問題を引き起こす可能性があります。これらの理由により、過去 20 年以上にわたって、液体クロマトグラフィー技術は GC に着実に取って代わりつつあります。
GC とは対照的に、LC では、分子を化学的に変化させる必要なく、薬物を直接分析できるため、より幅広い薬物に適しています。LC と MS の組み合わせに基づく手法により、よりシンプルかつ感度の高いアプローチが得られます。また、PDA 検出や UV 検出よりも優れた選択性を提供する質量分析検出は、免疫測定法でのクラス固有のアプローチではなく、分析種固有の検出が可能になります。これらの利点を組み合わせることで、LC-MS は、法中毒学市場でのスクリーニングに最適なツールとなります。
ウォーターズは 2007 年に STA 用に LC と MS 検出の組み合わせを初めて導入しました²。その後の長い年月の間に、この分析法はウォーターズのテクノロジーの進歩を反映して進化を遂げ、現在では 1200 種の化合物を含むスペクトルライブラリーを検索できるようになりました3-5。
ウォーターズは 2013 年に ACQUITY QDa 質量検出器を導入しました。この装置は、医薬品と違法薬物のいずれの同定にも適用できることがすでに示されています⁶。
このテクノロジーブリーフでは、包括的な毒性学スクリーニングを目的として、同じアプローチを生体サンプルに適用する方法について説明します。
エレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用する LC-MS は、極性化合物、不揮発性化合物、および熱安定性が低い化合物に最も適しています。そのため、GC-MS とは異なり、サンプルを誘導体化する必要なく、多くの毒性学的類縁物質を迅速に同定する強力な手段が得られます。エレクトロスプレーはソフトイオン化手法であり、ポジティブモードでは主にプロトン化分子、ネガティブモードでは脱プロトン化分子が得られます。より特異的な構造情報を得るために、QDa のイオン源領域でこれらの分子イオンのフラグメンテーションを誘導することができます。そのためには、サンプリングコーンにかかる電圧を上げます。その後、分子イオンがイオン源領域で中性分子と衝突し、特徴的なイオンにフラグメント化されます。これは、イオン源内衝突誘起解離(CID)と呼ばれます。イオン源内 CID を使用すると、イオン源で印加されたコーン電圧の値に応じて、異なるフラグメンテーションパターンのマススペクトルを生成できます(図 1 を参照)。このプロセスにより、再現性のある LC-MS マススペクトルを使用して、マススペクトルのライブラリーを作成できます。
ウォーターズの ACQUITY QDa 質量検出器は、専門的なトレーニングや専門知識の必要なくセットアップが可能です。ここで用いられているすべての取り込みおよび解析メソッドは、Waters Marketplace から無料で入手できます。お使いの装置との統合が可能で、既存の装置の上に設置することも可能な唯一の質量検出器です。従来の質量分析計に比べ、設置スペースと使用エネルギーを節約できます。洗浄や日常的な保守点検は最低限で済むため、稼働時間を最大限にすることができます。UV や PDA など、他のウォーターズソフトウェアプラットフォームおよび検出手法と統合できます。
ChromaLynx は MassLynx 内のアプリケーションマネージャーであり、マススペクトルデータのデコンボリューションを実現し、データを自動的に解析して、(1200 種の化合物を含む)事前設定されたライブラリーと比較します。これによって、スペクトルライブラリー検索による同定が可能になります。物質の同定の信頼度を、平均一致係数(最大値 1000)として表しています。すべての化合物は、提供されるライブラリーの保持時間の 0.35 分以内に溶出する必要があります。お客様は、標準物質や真正物質のデータを用いて、独自のライブラリーを作成できます。さらに、新しいサンプルを調製する必要なく、更新されたライブラリーを使用して、以前に取り込んだデータを再解析することも可能です。
100 種の毒性学的類縁物質を、コントロール群のヒト尿とヒト血漿の両方に 200 ng/mL になるようにスパイクし、シンプルな Oasis PRiME HLB µElution メソッドを使用して調製して、Waters ACQUITY QDa 質量検出器でウォーターズの毒性学 STA スクリーニング分析法を使用して分析しました⁷。
この試験では、平均一致係数が 700 を超えており、ポジティブな結果が得られました。200 ng/mL になるようにヒト尿中にスパイクされた化合物の混合液について、ChromaLynx を使用して得られた結果の例を図 2 に示します。
このテクノロジーブリーフでは、液体クロマトグラフィーと ACQUITY QDa 質量検出の組み合わせにより、さまざまな生体マトリックス中の毒性学的類縁物質をスクリーニングするための迅速、シンプル、効果的な方法が得られることを示しています。この手法は、免疫測定法、GC-MS および LC-UV などの他の確立されたスクリーニング手法と比較して、費用の節約、速度、特異性の面で利点が得られます。Mistry らによって説明されているように、同じシステムを使用して、定量データを提供することもできます⁸。
720006725JA、2020 年 1 月