このアプリケーションブリーフは、ミックスモードカラム Waters Atlantis PREMIER BEH C18 AX を、シンプルな逆相条件下で用い、陽イオン性界面活性剤分析が可能であることを示します。
第四級アンモニウム化合物は極性が高いため逆相モードでは保持が弱く、永らく分析が困難とされてきました。新規に開発したミックスモードカラム Atlantis PREMIERBEH C18 AX により、逆相条件下における陽イオン性界面活性剤の分離が可能になります。
界面活性剤は化粧品・医薬品・農産業など幅広い分野で抗菌剤や防腐剤として広く使われています。構造中に極性部位と非極性部位を併せ持つ両親和性ゆえに、分析が難しい化合物でもあります。
陽イオン性界面活性剤の多くは構造中に正にチャージした窒素原子(アミンまたは第四級アンモニウム)といくつかのアルキル長鎖を持っています。第四級アンモニウム化合物(Quaternary ammonium compounds, QACs)は最も広く使われている陽イオン性界面活性剤です¹。
HPLC は界面活性剤の分析で一般的に使われる手法ですが、従来の逆相系では、これらの化合物の高い極性のため、保持やピーク形状が悩みの種となることもあります。移動相にイオンペア試薬を添加した場合、カラムの平衡化や分析に長時間を要します。また、GC で分析する場合は、サンプルの誘導体化に時間がかかる上に前処理段階でエラーやばらつきを引き起こす可能性があります。
陽イオン性界面活性剤の分析における先述の課題が、ミックスモードカラム、すなわち、疎水基とイオン交換基を併せ持った固定相の開発につながりました²。
しかしながら、多くのミックスモードカラムにはバッチ間の再現性や加水分解への耐性が低いという問題があります。それを踏まえて Waters は、ハイブリッドパーティクルに官能基を修飾することによりバッチ間の再現性および広い pH レンジでの安定性に優れた新規の逆相-アニオン交換 (AX) ミックスモード固定相を開発しました。更に、この固定相は新規 MaxPeak High Performance Surfaces (HPS) カラムハードウェアに充填されています。MaxPeak HPS カラムには分析種とステンレス(カラム管)との相互作用を最低限に抑える設計が施されています3。
本技術資料では、陽イオン性界面活性剤(図 1 参照)の分析において良好な保持・ベースライン分離・ピーク形状を達成できたことをご紹介します。
測定には ACQITY UPLC H-Class PLUS に蒸発光散乱検出器(ELSD)を接続した LC システムを用いました。今回測定した化合物の一部は UV 吸収を持たないため、ELSD を使用しました。
図 1 に示した標準試料は Sigma-Aldrich 社(Poole, UK)より入手し、水で希釈して試料溶液としました。分析条件を表 1 に示します。
Atlantis PREMIER BEH C18 AX カラムにより、全ての化合物が分析時間 10 分でベースライン分離しました(図 2 参照)。また、保持やピーク形状も良好でした。保持時間・保持係数・テーリング係数について表 2 にまとめました。
ミックスモードカラム Waters Atlantis PREMIER BEH C18 AX は極性の高い第四級アンモニウム化合物の分析において、特に、誘導体化もイオンペア試薬も不要という点において、有用な分析カラムです。
同時に、このカラムを用いることで、従来分離が困難とされてきた化合物に対して簡便な分析ソリューションを与える可能性を示しています。
720006746JA、2020 年 3 月