• アプリケーションノート

UPLC-QDa による血清中ビタミン C の迅速で簡単な臨床研究分析法

UPLC-QDa による血清中ビタミン C の迅速で簡単な臨床研究分析法

  • Karl C.K. Lo
  • Fionn Quinlan
  • Mark Ritchie
  • Waters Corporation

要約

ACQUITY UPLC H-Class PLUS およびシングル四重極質量検出器 ACQUITY QDa を用いた、血清中ビタミン C 分析のための臨床研究分析法について説明します。トリクロロ酢酸(TCA)による簡単な除タンパクにより、UPLC-QDa によるビタミン C の分析に十分な選択性と分析感度が得られます。UPLC QDa は、脂溶性ビタミン1 から水溶性ビタミンまで、臨床研究目的のビタミン分析システムとして、適切です。

アプリケーションのメリット

  • 必要な血清量を 200 μL に削減
  • 簡単なサンプル前処理
  • 合計分析時間 6 分の血清中ビタミン C の正確で高感度な分析法

はじめに

ビタミン C(L-アスコルビン酸)は、水溶性ビタミンで、ヒトにとって必要不可欠な栄養素です。ビタミン C の血中濃度の研究分析法が開発されました。血漿中ビタミン C の分析には、電気化学検出器(ECD)または紫外線(UV)検出器を搭載した HPLC が、一般的に推奨されています2,3。 電気化学検出は、その固有の利点である簡便性、小型化の容易さ、高い分析感度、比較的低コストにより、電気活性分子種の検出には魅力的な方法です1。 ただし、ECD 検出法および UV 検出法のどちらにも、複雑なサンプル前処理、移動相、専用のカラム、長い分析時間が必要です。QDa 検出では、高い分析感度と選択性を持つだけでなく、UPLC に適合する速度および確認のための質量情報も提供されます。

実験方法

200 μL のサンプル(キャリブレーター、コントロール、または未知)を、清浄なマイクロチューブにピペッティングしました。600 μL の作業用内部標準試料(1.67 µg/ml のビタミン 13C6 含有 12% TCA(v/v))を添加しました。チューブにキャップを付け、1,000 rpm で 5 分間マルチチューブボルテックス混合をしてから、11,000 rpm で 5 分間遠心分離しました。上清 400 μL を、LC-MS 分析用のマキシマムリカバリーバイアルに移しました。Atlantis Premier BEH C18 AX カラム(1.7 μm、2.1 × 100 mm、製品番号:186009368)を装着した ACQUITY UPLC H-Class PLUS システムを使用し、95% 移動相 A(MP A)から 5% MP A までのグラジエント溶出を実行して、分離しました。注入間の時間は 6 分でした。

LC 条件

LC システム:

ACQUITY UPLC H-Class PLUS

バイアル:

12 × 32 mm アンバー色スクリューネックバイアル、キャップ付き、スリット入り PTFE/シリコーンセプタム、マキシマムリカバリー(製品番号: 600000755CV)

カラム:

Atlantis Premier BEH C18 AX カラム、2.1 × 100 mm、1.7 μm(製品番号: 186009368)

カラム温度:

40 ℃

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

3 μL

流速:

0.40 mL/分

移動相 A:

20 mM ギ酸アンモニウム水溶液

移動相 B:

20 mM ギ酸アンモニウム含有 MeOH

グラジエントテーブル

MS 条件(QDa パラメーター)

MS システム:

ACQUITY QDa

イオン化モード:

ESI-

取り込みモード:

SIR

キャピラリー電圧:

0.8 kV

コーン電圧:

チャンネルの詳細を参照してください

データ管理

LC-MS ソフトウェア:

MassLynx 4.2

結果および考察

図 1 に、処理済み血清中の 0.5 µg/mL ビタミン C のクロマトグラムが示されています。分析感度を調査し、血清中の 0.5 µg/mL ビタミン C の定量を達成できることが実証されました(%RSD < 20%、Bia < 15%、S/N > 10)。図 2 にこの分析法の検量線が示されています。この分析法は、0.5 µg/ml ~ 20 µg/ml の範囲で直線性を示しました。相関係数(r2)は 0.995 を超え、すべてのキャリブレーター残差は 15% 未満でした。 

図 1.  血清中の 0.5 µg/mL ビタミン C のクロマトグラムおよびビタミン C の検量線の例

5 日間にわたり、処理済み血清中で低濃度から高濃度まで 5 回の繰り返し抽出および分析を行い(n=25)、精度を評価しました。再現性および全体の精度は、試験した全ての濃度レベルについて CV 6% 以下でした。これは表 1 にまとめられています。試験サンプルとコントロールサンプルを比較する際に試験した一般的な内因性干渉物質の回収率の計算値は、すべて ±15% 以内でした。

表 1.  QC の総合精度と再現性。QC1:0.80 µg/mL、QC2:3.02 µg/mL、QC3:15.11 µg/mL

マトリックス係数の結果は、内部標準試料を使用して補正した分析者 6 名からの試験サンプルとコントロールサンプルの間で ±15% 以内でした(表 2)。ビタミン C について有意なマトリックス増強が観察されましたが、これも内部標準試料によって補正しました(調整したマトリックス係数は 1 に近い)。

表 2.  マトリックス試験の結果

結論

脂溶性ビタミンから水溶性ビタミンまでの臨床研究における、UPLC シングル四重極 MS システムである ACQUITY QDa 質量検出器の適用を詳しく調べました。調製が簡単で分析時間が短いことにより、従来の HPLC 分析法に比べて大きな利点が得られます。UPLC-QDa は、臨床研究分析でのビタミン分析システムとして適していることが、十分に実証されています。

参考文献

  1. Analysis of Vitamin A and E in Serum by UPLC-QDa for Clinical Research.Waters Corporation, 2021 https://www.waters.com/webassets/cms/library/docs/720007164en.pdf.
  2. Gazdik, Z.; Zitka, O.; Petrlova J.; Adam, V.; Zehnalek, J.; Horna, A.; Reznicek V.; Beklova, M.; Kizek, R. Determination of Vitamin C (Ascorbic Acid) Using High Performance Liquid Chromatography Coupled with Electrochemical Detection.Senors, 2008,8, 7097–7112.
  3. Robitaille, L; Hoffer, L, J. A Simple Method for Plasma Total Vitamin C Analysis Suitable for Routine Clinical Laboratory Use.Nutrition Journal, 2016, 15:40.

720007322JA、2021 年 10 月 改訂

トップに戻る トップに戻る