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Ostro サンプル前処理のための、自動式 Andrew+ ピペッティングロボットを用いたイタコン酸の正確な LC-MS バイオ分析定量化

Ostro サンプル前処理のための、自動式 Andrew+ ピペッティングロボットを用いたイタコン酸の正確な LC-MS バイオ分析定量化

  • Kathryn Brennan
  • Mary Trudeau
  • Waters Corporation



Andrew+ ピペッティングロボットについてもっと詳しく知りたいですか?

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要約

以下の研究では、サンプル前処理および抽出用の自動式リキッドハンドリング装置である Andrew+ ピペッティングロボットの機能を実証しています。Andrew+ を使用して自動的に前処理を行い、Ostro タンパク質沈殿およびリン脂質除去 96 ウェルプレートを用いてヒト血漿中のイタコン酸を抽出してから、ACQUITY Premier システムおよび Xevo TQ-S micro 質量分析計を使用して LC-MS 分析および定量を行いました。 

アプリケーションのメリット

  • 移管可能なメソッドにより複数のユーザー間のミスを低減
  • 特定の消耗品に適合する「ドミノ」を使用し、デッキ内を簡単に移動可能に
  • 使用しやすい OneLab ソフトウェアで、分析法の作成、移管、記録が可能に
  • 自動リキッドハンドリングで効率が高まり、ユーザーは他の作業に集中できる
  • リキッドハンドリング機能で、手作業による人的ミスのリスクを低減
  • OneLab ソフトウェアには、画像や動画のガイダンスを伴う[ユーザー操作]が組み込まれています。これにより、ユーザーは分析法の特定のステップ間を制御でき、特定のアプリケーションでのヒントが得られます。

はじめに

サンプル前処理は、分析前に生物基質のサンプルの抽出、精製、濃縮を行う全般的な LC-MS バイオアナリシスワークフローに不可欠なステップです。一般的なサンプル前処理法には、サンプル希釈、除タンパク(PPT)、液-液抽出(LLE)、固相抽出(SPE)などがあります。LC-MS 分析において、最適な感度、選択性、正確な定量を達成するためには、多くの場合、サンプルの精製およびクリーンアップのステップが必要になります。サンプルクリーンアップの最も簡単な方法の 1 つは PPT です。これには、生体サンプルを取り、タンパク質変性溶液(通常は有機溶媒を含む溶液)で希釈し、対象分析種をマトリックスから溶液に抽出するステップが含まれます。このワークフローは一見単純に思われますが、このステップの間に手作業が必要になるため、しばしばミスが発生します1。ミスの一例として、ユーザーがサンプルの移動または希釈のためにピペット操作を行う際に発生するミスが挙げられます。ユーザーがうっかり容量を間違えたり、間違ったサンプルを希釈したり、サンプル吸引中に跳ね返りが発生してコンタミネーションにつながったりする場合があります。更に、サンプル前処理ワークフローを改善するためには、手作業のミスの低減が不可欠になります。 

Andrew+ ピペッティングロボットは、サンプル前処理ワークフローにおけるピペッティングおよび抽出ステップを効果的に行うことのできる自動式リキッドハンドリングデバイスです。Andrew+ は、クラウドネイティブの OneLab ソフトウェア上で動作し、1 つのデッキ上で生体サンプルのリキッドハンドリングおよび抽出用の分析法を作成したり、真空装置によって送液を開始したりすることができます。組み立てが簡単なドミノを適切な位置に配置し、マグネットで接続することで、分析法のステップの実行時に定位置からずれないようにします。以下の研究では、Andrew+ が自動的に検量線および QC を作成し、それに続いて LC-MS で分析および定量するために、Waters Ostro PPT およびリン脂質除去プレートを用いて、ヒト血漿中のイタコン酸の簡単なパススルー抽出法を行えることを実証しています。 

結果および考察

Andrew+ により、0.5 ~ 100 ng/mL(n = 2)の範囲のヒト血漿中イタコン酸、0.75、7.5、75 ng/mL(n = 4)の品質管理サンプルについてそれぞれ検量線を作成しました。Ostro プレートと LC-MS 分析を使用した検量線の作成についての詳細情報は、ウォーターズアプリケーションノート 720006683 をご覧ください2。完全自動ワークフローと手動ワークフローでの正確度および精度を比較するため、Andrew+ および手作業により、低 QC 濃度および高 QC 濃度で回収率の実験を行いました。Andrew+ により血漿サンプルおよびタンパク質変性溶媒を Ostro PPT プレートにロードし、吸引して混合しました。次に、Andrew+ により -5 psi の一定圧の真空を 5 分間かけました。ソフトウェアでユーザー操作通知が導入され、沈殿したサンプルを手作業で除去し、窒素エバポレーターに移し、窒素を吹き付けて乾燥させてから Andrew+ に戻し、再溶解するように指示されました。図 1 に Andrew+ のデッキレイアウト全体を示します。分析には ACQUITY Premier システムおよびカラムを使用して分析種の金属キレート化を軽減し、カラムおよびシステムからのイタコン酸を確実に回収しました。低 QC および高 QC についての回収率は、手作業の回収率よりも高く、それぞれ 100% および 99% でした。Andrew+ 自動化ワークフローと手作業のワークフローでの回収率の比較を図 2 に示します。1 濃度につき n = 4 の品質管理サンプルの、日内での正確度と精度を表 1 に示します。正確度は 104.9 ~ 112.8% で、RSD は 1.3 ~ 3.6% でした。図 3 に示すように、200 倍の濃度範囲にわたり、R2 = 0.997 という優れた定量性能が得られました。 

図 1. Ostro PPT およびリン脂質除去 96 ウェルプレートを使用した、サンプル前処理およびイタコン酸抽出のための Andrew+ ピペッティングロボットのデッキレイアウト
図 2. Ostro PPT およびリン脂質除去 96 ウェルプレートを用いた、Andrew+ と手動でのサンプル前処理と抽出で得られた、ヒト血漿からのイタコン酸の回収率の比較 
表 1. ヒト血漿中のイタコン酸の QC サンプル(n = 4)についての、Andrew+ によるサンプル前処理、Ostro PPT とリン脂質プレートを用いた抽出、および LC-MS 分析における日内正確度および精度 
図 3. Andrew+ ピペッティングロボットを使用し、Ostro PPT およびリン脂質除去プレートで血漿から抽出したイタコン酸の LC-MS 定量性能 

結論

本研究では、Andrew+ ピペッティングロボットを Waters Ostro 96 ウェルプレートと併用して、サンプル前処理および PPT 抽出を適切に自動化できることを実証しています。手動でのワークフローと比較した場合、Andrew+ では回収率も RSD も向上し、より優れた日内 QC 正確度および精度が得られ、バイオアナリシス定量分析における推奨性能基準を満たしていました3。 Andrew+ を用いた分析法には、自動ピペッティングして完全な検量線を抽出する能力と優れた定量性能があることが実証されました。Andrew+ ピペッティングロボットおよび幅広い分野に適用できるバイオアナリシスワークフローは、使いやすい自動化したリキッドハンドリングおよび Ostro PPT およびリン脂質除去のための抽出ソリューションを提供しています。 

参考文献

  1. Chapter 5 Automation Tools and Strategies for Bioanalysis, in Progress in Pharmaceutical and Biomedical Analysis, David A. Wells, Editor 2003, Elsevier.p. 135-197. 
  2. Brennan K, et al. Bioanalytical LC-MS Quantification of Itaconic Acid: A Potential Metabolic Biomarker of Inflammation.Waters Application Note, 720006683, 2019, p.1–7. 
  3. Bansal S, DeStefano A. Key Elements of Bioanalytical Method Validation for Small Molecules.The AAPS Journal 2007, 9 (1), E109–E114. 

720007176JA、2021 年 2 月

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