テトラヒドロフランおよびエバポレイト光散乱検出を用いた、ポリマー添加剤を 1 サンプルあたり 3 分未満で検出するアドバンスドポリマークロマトグラフィー逆相分析法
要約
テトラヒドロフラン(THF)を移動相として用いる、ポリマー添加剤の逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)分離は、多くの LC システムおよび検出器にとって困難な課題である可能性があります。LC システムおよび検出器は一般に、ポリマーサンプルの溶解に使用される THF およびその他の有機溶媒に適合しません。このアプリケーションでは、2 セットの既知の共溶出添加剤(Tinuvin 327 と 328、および Irganox 1010 と 1076)が含まれている 6 種類のポリマー添加剤の分離を実証します1,2。この 6 種類のポリマー添加剤の分離メソッドは、カラムカリキュレーターツールと C18 カラムファミリーを使用して、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)から超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)に、UHPLC から UltraPerformance 液体クロマトグラフィー(UPLC)に変更しています。エバポレイト光散乱検出(ELSD)が選択されており、その理由は有機溶媒との適合性、感度、および UV 活性でない可能性のあるサンプルに対する検出能力です3,4。
アプリケーションのメリット
- 6 種類のポリマー添加剤の 3 分間での RPLC 分離
- システムの THF との適合性
- 頑健で膨張しない BEH カラムテクノロジー
- カラムカリキュレーターソフトウェアツールによる、直感的な分析法開発
- THF に適合し、UV 活性に依存しない ELSD による検出
はじめに
ポリマーはこれまで、高温での合成、加工、天候、光への暴露による劣化の影響を受けてきました5。ポリマーの劣化を最小限に抑えるために、ポリマー添加剤を使用することは一般的な慣行です6。ポリマーとポリマー添加剤の混合物の最初のクロマトグラフィー分離では、大きな粒子が使用され、長い分析時間が必要でした。長年にわたってクロマトグラフィーテクノロジーは改善され、小さい分離粒子になり、分析時間が大幅に短縮されました7。HPLC を使用する従来の分離メソッドは、より高品質またはより迅速な結果を得るために、一般に、より高度な LC システムに更新されます。ポリマー業界では通常、サンプルの溶解に THF などの強い有機溶媒が使用されますが、多くの LC システムはこれらの強溶媒での使用に対応していません。
本アプリケーションノートでは、6 種類のポリマー添加剤の混合物を分離する一連のクロマトグラフィー分析法を紹介し、1 つの溶媒適合システムと 1 つのカラムファミリー(ポリマークオータナリーソルベントマネージャ(p-QSM)および ELSD、そして ACQUITY BEH C18 カラムを搭載した ACQUITY アドバンスドポリマークロマトグラフィー(APC)システム)を使用して、分析法を古い HPLC 手法からより高度な UHPLC 手法および UPLC 手法に変換する機能について説明します8,9。
実験方法
本アプリケーションノートには、分析法を 5 μm カラムから 2.5 μm カラムまで、2.5 μm カラムから 1.7 μm カラムまで変換する、3 つの実験が含まれています。各カラム実験には固有の装置パラメーターのセットがあります。
サンプル調製には、表 1 にリストされている 6 種類のポリマー添加剤が含まれており、それらを THF 中に 1.0 mg/mL に溶解した後、各溶液 100 μL を 2 mL LC バイアル(製品番号:186005660CV)に加え、600 mL の THF で最終濃度 0.5 mg/mL に希釈しました。実験 1、2、3 では、同じサンプルとサンプルトレイを、それぞれ対応するカラムで使用しました。グラジエント、注入量、流速は、カラムカリキュレーターソフトウェアツールの結果に基づいて、各実験に対して調整しました(図 1、2)10。
実験 1:LC 条件
LC システム: |
p-QSM を搭載した ACQUITY APC システム |
検出: |
ヘキサン/THF キットを取り付けた ACQUITY ELSD |
カラム: |
XBridge 18、5 μm、4.6 × 150 mm(製品番号:186003116) |
カラム温度: |
25 ℃ |
サンプル温度: |
20 ℃ |
注入量: |
14 μL |
流速: |
0.68 mL/分 |
移動相 A: |
THF(安定剤不含) |
移動相 B: |
脱イオン水 |
ニードル洗浄溶媒: |
50/50、v/v、THF/水 |
シール洗浄溶媒: |
イソプロパノール |
ELS ネブライザー温度: |
冷却 |
ELS ドリフトチューブ温度: |
60 ℃ |
ELS ゲイン: |
500 |
ELS ガス送気: |
60 psi |
グラジエントテーブル 1
5 μm のカラムで最初の実験を完了した後、カラムカリキュレーターツールを使用して 2.5 μm のカラム実験のパラメーターを計算しました(図 1)。
実験 2:LC 条件
LC システム: |
p-QSM を搭載した ACQUITY APC システム |
検出: |
ヘキサン/THF キットを取り付けた ACQUITY ELSD |
カラム: |
XBridge C18、2.5 μm、3.0 mm × 75 mm(製品番号:186006034) |
カラム温度: |
25 ℃ |
サンプル温度: |
20 ℃ |
注入量: |
3 μL |
流速: |
0.58 mL/分 |
移動相 A: |
THF(安定剤不含) |
移動相 B: |
脱イオン水 |
ニードル洗浄溶媒: |
50/50、v/v、THF/水 |
シール洗浄溶媒: |
イソプロパノール |
ELS ネブライザー温度: |
冷却 |
ELS ドリフトチューブ温度: |
60 ℃ |
ELS ゲイン: |
500 |
ELS ガス送気: |
60 psi |
グラジエントテーブル 2
2.5 μm のカラムで 2 番目の実験を完了した後、カラムカリキュレーターツールを使用して 1.7 μm のカラム実験のパラメーターを計算しました(図 2)。
実験 3:LC 条件
LC システム: |
p-QSM を搭載した ACQUITY APC システム |
検出: |
ヘキサン/THF キットを取り付けた ACQUITY ELSD |
カラム: |
XBridge C18 1.7 μm、2.1 × 50 mm(製品番号:186002350) |
カラム温度: |
25 ℃ |
サンプル温度: |
20 ℃ |
注入量: |
1 μL |
流速: |
0.42 mL/分 |
移動相 A: |
THF(安定剤不含) |
移動相 B: |
脱イオン水 |
ニードル洗浄溶媒: |
50/50、v/v、THF/水 |
シール洗浄溶媒: |
イソプロパノール |
ELS ネブライザー温度: |
冷却 |
ELS ドリフトチューブ温度: |
60 ℃ |
ELS ゲイン: |
500 |
ELS ガス送気: |
60 psi |
グラジエントテーブル 3
データ管理
ACQUITY APC システムをコントロールし、データを解析するために使用するデータ管理システムは、Empower クロマトグラフィーデータシステム(CDS)3、FR 5 でした。本アプリケーションノートの「結果および考察」セクションに記載されているクロマトグラムおよびピーク品質の表は、サードパーティ製ソフトウェアを使用せず、Empower CDS で作成しました。
結果および考察
実験 1、2、3 のクロマトグラムは、下の画像 3、4、5 に示されています。受け入れ可能なクロマトグラフィーの分離度は 1 より大きい必要があり、各クロマトグラムの下の Empower CDS によって生成された表に、データの品質が示されています11。 逆相メソッドで最初に溶出するピークは通常マーカーピークであり、マーカーピークから得られるデータは、多くのピークの品質計算に使用されません。この実験ではマーカーピークは使用しません。このため、表の Tinuvin 328 の見出しの下のスペースは空白です。
図 3 に、実験 1 の 6 種類のポリマー添加剤混合物の 12 分未満での分離結果が示されており、この混合物の 6 回の個別注入での分離度が表 2 に示されています。Tinuvin 328 と Tinuvin 327 はベースライン分離されており、Irganox 1010 と Irganox 1076 も同様です。
図 4 に、実験 2 の 6 種類のポリマー添加剤混合物の 6 分未満での分離結果が示されており、この混合物の 6 回の個別注入での分離度が表 3 に示されています。Tinuvin 328 と Tinuvin 327 はベースライン分離されており、Irganox 1010 と Irganox 1076 も同様です。
図 5 に、実験 3 の 6 種類のポリマー添加剤混合物の 3 分未満での分離結果が示されており、この混合物の 6 回の個別注入での分離度が表 4 に示されています。Tinuvin 328 と Tinuvin 327 はベースライン分離されており、ピーク分離度は、質の高いクロマトグラフィー分離の基準として認められている 1 よりも大きい値です。Irganox 1010 と Irganox 1076 はベースライン分離されていませんが、それぞれのピーク分離は許容基準を超えています。
結論
6 種のポリマー添加剤の混合物の分離は、HPLC での分析時間 19 分から、UPLC での分析時間 3 分への開発に成功し、1 時間あたりの注入回数が 5 倍に増加しました。p-QSM、ELSD、および ACQUITY BEH C18 カラムテクノロジーを搭載した ACQUITY APC システムでは、これらの頑健なシステム、検出器、カラム粒子により、テトラヒドロフランを移動相としてグラジエントに使用できます。5 μm 粒子カラムを使用する従来の HPLC 分析法を、1.7 μm カラムメソッドに開発する能力が、カラムカリキュレーターソフトウェアツールと、さまざまな LC 分離メソッド用に設計されたカラムファミリーを使用することで、直感的に実現しました。
参考文献
- Michael Jones, Jennifer Gough, Marian Twohig.Comparison of HPLC and UHPLC Analysis of Polymer Additives with Elucidation of Mass Detection, Waters Posters, 2017. https://www.waters.com/waters/library.htm?locale=101&lid=134956804&cid=511436.
- Claudia Lohmann, Damian Morrison, Jennifer Gough.Polymer Additive Analysis Study Using Tetrahydrofuran and Advanced Polymer Chromatography and Gradient Elution, Waters Apllication note 720006707EN, 2019.
- Waters ACQUITY UPLC ELS Detector, https://www.waters.com/waters/en_US/ACQUITY-UPLC-ELSD/nav.htm?locale=en_US&cid=514219.
- ACQUITY UPLC Evaporative Light Scattering Detector Getting Started Guide, https://www.waters.com/webassets/cms/support/docs/71500109303rd.pdf.
- Tolinski, M. Additives for Polyolefins: Getting the Most Out of Polypropylene, Polyethylene, and TPO, 2nd ed.; William Andrew: Oxford, 2015.
- Bolgar, Michael; Hubball, Jack; Groeger, Joseph; Meronek, Susan; Handbook for the Chemical Analysis of Plastic and Polymer Additives, CRC Press, Boca Raton, U.S.A., 2016.
- Beginners Guide to UPLC, Waters Corp. U.S.A., https://www.waters.com/waters/en_US/UPLC---Ultra-Performance-Liquid-Chromatography-Beginner%27s-Guide/nav.htm?cid=134803622&locale=en_US#:~:text=Introduction,and%20sensitivity%20in%20liquid%20chromatography.
- ACQUITY APC p-QSM System, Waters Specification Sheet, 720006702EN.
- BEH (Bridged Ethylene Hybrid) Technology, Waters Corp. U.S.A., https://www.waters.com/waters/en_US/BEH-(Ethylene-Bridged-Hybrid)-Technology/nav.htm?cid=134618172&locale=en_US.
- Waters On-Line Tool Box, “Column Calculator Tool”, https://www.waters.com/waters/promotionDetail.htm?id=134694974&locale=101.
- Chromatography Fundamentals, Part VIII: The Meaning and Significance of Chromatographic Resolution, https://www.chromatographyonline.com/view/chromatography-fundamentals-part-viii-meaning-and-significance-chromatographic-resolution.
720007432JA、2021 年 11 月