研究目的のみに使用してください。診断用には使用できません。
臨床研究において、SARS-CoV-2 の検出および定量は、SARS-CoV-2 の影響1 および長期にわたるウイルス排出の意味を理解するために重要です2。
SARS-CoV-2 LC-MS キット(RUO)により、SARS-CoV-2 ヌクレオカプシド(NCAP)ペプチドの直接検出および定量が可能になります。Andrew+ ピペッティングロボットを使用することで、サンプル前処理プロセスが合理化および自動化され、実際に前処理にかかる時間が最小限に抑えられ、オペレーターのミスが減らせます。ACQUITY Premier カラムを搭載した ACQUITY UPLC I-Class を活用することで、標的ペプチドの迅速な分離が可能になります(サイクル時間 2.5 分)。Xevo TQ-XS 質量分析計により、3 amol/µL のウイルスペプチドの、高感度かつ選択性が高い正確な検出が可能になります(日間精度 ≤17.4% CV、日内精度 ≤17.1% CV)。この分析法では、3 ~ 50,000 amol/µLの範囲で直線性が示されました。
SARS-CoV-2 LC-MS キット(RUO)を使用することで、UPLC-MS の柔軟性と再現性を活用して、重要な SARS-CoV-2 についての研究を推進することができます。そして、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)で必要なターゲット分析種の増幅が不要な、SARS-CoV-2 のシグネチャー NCAP ペプチドの直接検出および定量が行えます。
Waters SARS-CoV-2 LC-MS キットは研究用途のみ(RUO)であり、診断への適用は意図していません。
臨床研究において、SARS-CoV-2 の検出および定量は、SARS-CoV-2 の影響1 および長期にわたるウイルス排出の意味を理解するために重要です2。
SARS-CoV-2 タンパク質のトリプシン消化ペプチドを検出するための LC-MS のアプリケーションが適切に実証されました3。 一方、これらの研究では、ウイルス輸送培地(VTM)などのサンプルマトリックスの構成成分に起因する干渉で生じるマトリックス効果に悩まされ、分析感度の限界も浮き彫りになっています。そのため、検出レベルを向上させるためには、サンプルのクリーンアップと濃縮が必要になります4,5。
安定同位体標準および抗ペプチド抗体による捕捉(SISCAPA)という濃縮手法を用いることで、複雑なマトリックス中の SARS-CoV-2 の分析において以下の 3 つの利点が得られます。
図 1 に示す SARS-CoV-2 LC-MS スターターキット(RUO)には、低濃度の SARS-CoV-2 ヌクレオカプシド(NCAP)ペプチドを定量するために必要なすべての試薬および消耗品が含まれています。SARS-CoV-2 LC-MS キット(RUO)には、秤量済みでロット間再現性のある試薬が含まれています。これにより、SARS-CoV-2 の臨床研究分析法の統合が促進され、縦断研究の過程にわたる結果の信頼性が高まります。
Andrew+ ピペッティングロボットを使用することで、サンプル前処理プロセスが合理化および自動化され、実際に前処理にかかる時間が最小限に抑えられるとともにオペレーターのミスが減らせます。Andrew+ ピペッティングロボットの制御に使用されるクラウドベースの OneLab ソフトウェアは、直感的に使用でき、自動化したメソッドのラボ間での迅速な展開を容易にします。
SARS-CoV-2 LC-MS キット(RUO)を利用することにより、ウイルスタンパク質の定量が可能になるため、感染バイオマーカーと合わせて、可能性のある予後バイオマーカーの同定や研究におけるウイルスの影響の調査が行えるようになります。
Waters SARS-CoV-2 LC-MS キットは研究用途のみ(RUO)であり、診断への適用は意図していません。
このアプリケーションノートに詳述した試験の実施には、SARS-CoV-2 LC-MS RUO キットを使用説明書(IFU)に従って使用しました。
キットのワークフローでは、3 種のペプチド(SARS-CoV-2 NCAP タンパク質に由来する AYNVTQAFGR(AYN)、NPANNAAIVLQLPQGTTLPK(NPA)、ADETQALPQR(ADE))の変性、消化、濃縮、および UPLC-MS/MS 分析について説明しています。サンプルを変性および消化して、トリプシン消化ペプチドを生成しました。濃縮プロセスを容易にするために、磁気ビーズに固定化した抗ペプチド抗体を用いて、3 種類の SARS-CoV-2 NCAP ペプチドを、関連する安定標識内部標準と共に、選択的に捕捉します。ペプチドは、洗浄し、結合していないマトリックス/サンプルからの干渉物を除去し、UPLC-MS/MS ですぐに使用できる濃縮されたきれいなサンプルとして溶出します。
SARS-CoV-2 ペプチドキャリブレーターを用い、ペプチドキャリブレーターサンプルを 3 ~ 50,000 amol/µL の範囲になるようにウイルス輸送培地(VTM、Liofilchem、イタリア)中に調製し、QC サンプルは、3、10、400、25,000 amol/µL になるように調製しました。
サンプル前処理は、Andrew+ ピペッティングロボットで、SARS-CoV-2 LC-MS キット(RUO)を使用して実施しました。
180 µL のキャリブレーターおよび QC サンプルを 96 ウェルプレートに添加します。20 µL の変性剤(SARS-CoV-2 の場合は RapiGest)を各サンプルに添加し、プレートを振とうします。次に、96 ウェルプレートをシールして、56℃ で 15 分間加熱します。
20 µL のトリプシン溶液を各ウェルに加え、プレートを振とうし、インキュベーターまたはサーモミキサーに入れて、37℃ で 30 分間インキュベートします。さらなる消化を阻害するため、20 µL の TLCK 溶液を各ウェルに添加し、室温で 5 分間混合します。20 µL の安定同位体標識(SIL)NCAP ペプチド混合液を添加し、30 秒間混合します。
SARS-CoV-2 LC-MS 濃縮セット(RUO)を使用して、抗体・磁気ビーズ複合体 30 µL を各サンプルに添加し、AYN、ADE、NPA ペプチドを標的とする等量のビーズ複合体を含むようにしました。96 ウェルプレートを完全に混合してビーズを再懸濁してから、1 時間混合して全体的にビーズの懸濁が十分に維持されるようにします。次に、96 ウェルプレートを磁気プレートアレイに移し、1 分間放置してから水溶液を除去します。150 µL の洗浄バッファーを各ウェルに加え、30 秒間混合し、磁気プレートアレイに移し、1 分間放置して洗浄溶液を除去します。この洗浄ステップをもう一度繰り返します。50 µL の溶出バッファーを各ウェルに加え、5 分間混合します。次に、プレートを磁気プレートアレイに移し、1 分間放置した後、溶出溶液を QuanRecovery 96 ウェルプレートに移します。プレートをオートサンプラー磁気プレートに配置し、UPLC-MS/MS システムで注入を行います。
以下にパラメーターの例を示します。これらのパラメーターは SARS-CoV-2 LC-MS キット(RUO)の使用説明書(IFU)に記載されています。
LC システム: |
ACQUITY UPLC I-Class FTN |
サンプルニードル: |
30 µL |
カラム: |
ACQUITY Premier Peptide BEH C18、300 Å、2.1 mm × 30 mm、1.7 µm |
カラム温度: |
40 ℃ |
サンプル温度: |
8 ℃ |
注入量: |
20 μL |
流速: |
0.8 mL/分 |
移動相 A: |
0.1% ギ酸(v/v)水溶液 |
移動相 B: |
0.1% ギ酸(v/v)アセトニトリル溶液 |
分析時間: |
1.8 分 |
MS システム: |
Xevo TQ-XS 質量分析計 |
イオン化モード: |
ポジティブESI |
キャピラリー電圧: |
0.5 kV |
MS ソフトウェア: |
MassLynx v4.2(TargetLynx XS 搭載) |
検量線の範囲では、3 つのペプチドにわたり、3 ~ 50,000 amol/µL で直線性を示しました。1/x2 重み付け関数を使用した場合、5 回の別々の測定にわたる検量線の相関係数(r2)は 0.99 を上回りました。
VTM 中に 2、3、6、10、20 amol/µL になるように合成ペプチドをスパイクし、分析法の感度を 3 回評価しました。3 回の評価にわたり、5 回の繰り返し分析を行いました。定量下限(LLoQ)は、AYN、ADE、NPA について 3 amol/µL と判定され、この濃度では、精度が 20% 未満 、バイアスが ±20% の範囲内、S/N が 10:1 超(PtP)でした(図 2A~B)。
分析法の精度を、VTM にスパイクした NCAP 由来ペプチドと合成ペプチドの両者について、3、10、400、25,000 amol/µL の濃度で評価しました。サンプルは、5 回の別々の評価にわたり、5 回分析しました。この分析法の日間精度および日内精度は 17.4% 以下であることが示されました(図 3)。
QC サンプルは、再分析および以前に分析した検量線と比較したところ、オートサンプラーにおいて 10℃ で 48 時間安定であることがわかりました。
VTM をサンプルマトリックスの例として使用した場合、SARS-Cov-2 LC-MS キット(RUO)は、3 ~ 50,000 amol/µL にわたる濃度範囲において、NCAP ペプチドを CV 17.4% 以下の精度で定量下限 3 amol/µL まで定量できることが実証されました。
SARS-Cov-2 LC-MS キット(RUO)により、SARS-CoV-2 NCAP ペプチドの定量測定による直接検出が可能になり、複数の LC-MS システムやラボ間での結果の比較や統合に使用できるようになりました。 LC-MS 分析の重要な利点である一度に複数の分析種を検出および測定する性能を用いることで、このシステムおよびキットを使用して、SARS-CoV-2 ペプチドを直接検出および定量することや、研究用のバイオマーカーを 1 回の分析でモニターすることができます。
本研究に多大な貢献を頂いたサウサンプトン大学の Paul Skipp 博士およびチームの皆様、ロンドン大学ユニバーシティーカレッジの Kevin Mills 博士およびチームの皆様、レスター大学の Donald Jones 博士およびチームの皆様、マンチェスター大学の Andrew Pitt 博士およびチームの皆様、Viapath の Rachel Carling 博士およびチームの皆様、ウォーターズコーポレーションの Hans Vissers 博士に感謝いたします。
720007266JA、2021 年 5 月