双イオン性固定相および液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析を用いた食品中のアミノグリコシド類の分析
要約
移動相、pH、イオン強度(またはバッファー濃度)などのクロマトグラフィー条件が、Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラムでの 17 種の非常に極性の高いアミノグリコシド類(AMG)の分離に及ぼす影響を系統的に調査しました。この試験に含まれている AMG 類は、アミカシン(AMI)、アプラマイシン(APR)、ゲンタマイシン(GEN C1、C1a、C2/C2a)、ハイグロマイシン B(HYG)、カナマイシン(KAN)、カスガマイシン(KAS)、ネオマイシン(NEO)、ネアミン(またはネオマイシン A、NEO A)、パロモマイシン(PAR)、リボスタマイシン(RIB)、スペクチノマイシン(SPC)、ストレプトマイシン(STP)、ジヒドロストレプトマイシン(DSTP)、シソマイシン(SIS)、およびトブラマイシン(TOB)でした。pH 3.0 の水系 20 mM ギ酸アンモニウムと 0.1% ギ酸含有アセトニトリルを用いたバイナリー移動相によるグラジエント溶出により、これらの AMG 類を高い信頼性で適切に分離することができ、エレクトロスプレータンデム質量分析(ESI-MS/MS)で優れた感度が得られました。食品サンプルの抽出は、トリクロロ酢酸含有溶液を使用して行いました。固相抽出(SPE)とクリーンアップ手順は、Oasis HLB カートリッジを用いて最適化しました。この分析法を、牛乳、牛肉、豚肉、肝臓、およびハチミツの各サンプルについて評価しました。16 種の AMG 類について、感度、正確性、および精度に関して優れた性能特性が得られました。最適化された最終 HILIC-ESI-MS/MS 分析法は、食品中の AMG 類の測定において、信頼性、正確性、および感度が高いことが実証されました。
アプリケーションのメリット
- Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラムを使用した、17 種のアミノグリコシド類の信頼性の高い分離
- 主要な市場の規制要件を満たす高感度 HILIC-MS/MS 分析法
- 牛乳、筋肉、肝臓、およびハチミツ中の AMG 類の正確で信頼性の高い測定
- イオン対試薬や高濃度のバッファーを使用しない MS と相性の良い移動相
はじめに
アミノグリコシド類(AMG)は、ヒトおよび動物のグラム陰性細菌感染の治療に広く使用されている重要な抗生物質のクラスです。治療後の休薬期間を守らないなど、畜産において AMG 類の適応外使用が行われた場合、食品中の AMG 類の残留レベルが高くなる可能性があります。AMG 類には毒性やアレルギー性があり、そして細菌の薬剤耐性の原因となる可能性があることから、食品中に AMG 類が存在すると、消費者の健康にリスクが及びます。AMG 類の適切な使用と食品の安全性を確保するためには、食品中の AMG 類の含有量をモニターすることが重要です。動物由来の食品中の AMG 類の最大残留レベル(MRL)が、各国および国際機関によって設定されています(表 1 参照)1-5。
AMG 類は水溶性の極性化合物です。逆相液体クロマトグラフィーでの AMG 類の分析にはイオン対試薬が使用されています6,7。 ただし、平衡化に時間がかかることや、他の非イオン対アプリケーションへの悪影響などのイオン対試薬に関連する実用上の懸念から、この方法を用いられるアプリケーションは限られていました8。 別の方法として、AMG 類は親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)でも分析できますが、アミドやアミノプロピルを HILIC の固定相として使用すると、これらの化合物の分離の選択性が制限を受けます9。 アミドまたはアミノプロピルカラムよりも、双イオン性固定相の方が AMG 類の分離において優れた分離能を示すことが報告されていますが、一部の双イオン性 HILIC カラムでは移動相に高濃度のバッファー(最大 175 mM)が必要になります。これは LC-MS 分析に適した条件とは言えません9。
この試験では、BEH 粒子上に双イオン性スルホアルキルベタイン固定相を持つ Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラムを、エレクトロスプレータンデム質量分析(ESI-MS/MS)による食品中の 17 種の AMG 類の分析について評価しました。この試験に含まれている AMG 類は、アミカシン(AMI)、アプラマイシン(APR)、ゲンタマイシン(GEN C1、C1a、C2/C2a)、ハイグロマイシン B(HYG)、カナマイシン(KAN)、カスガマイシン(KAS)、ネオマイシン(NEO)、ネアミン(またはネオマイシン A、NEO A)、パロモマイシン(PAR)、リボスタマイシン(RIB)、スペクチノマイシン(SPC)、ストレプトマイシン(STP)、ジヒドロストレプトマイシン(DSTP)、シソマイシン(SIS)、およびトブラマイシン(TOB)です。これらの AMG 類の構造を図 1 に示します。クロマトグラフィー条件が AMG の分離および検出に及ぼす影響を体系的に評価しました。STP、DSTP、GEN、および NEO に元々使用していた固相抽出およびクリーンアップ手順を適用し、最適化しました10。 分析法の性能を、牛乳、筋肉、肝臓、およびハチミツの各サンプルについて評価しました。
実験方法
すべての食品サンプルおよび AMG の標準品は、ポリプロピレン(PP)製またはプラスチック製の容器や実験器具を使用して調製しました。
化学薬品および溶液
アミカシン、ハイグロマイシン B、リボスタマイシン硫酸塩、シソマイシン硫酸塩、ゲンタマイシン硫酸塩、ネオマイシン三硫酸塩水和物、トブラマイシン硫酸塩、カナマイシン硫酸塩は Sigma–Aldrich(米国ペンシルバニア州アレンタウン)から購入しました。ネアミン(またはネオマイシン A)塩酸塩、アプラマイシン硫酸塩、カスガマイシン塩酸塩、ストレプトマイシン硫酸塩、パロモマイシン硫酸塩、ジヒドロストレプトマイシン硫酸塩およびスペクチノマイシン二塩酸塩水和物は Cayman Chemical(米国ミシガン州アナーバー)から購入しました。GEN は、GEN C1、C1a、C2、C2a の 4 成分で構成されています。GEN C2 と C2a は立体異性体です。これらの AMG 類の構造を図 1 に示します。
AMG 類の標準原液(1 mg/mL)は、標準品を脱イオン水(18.2 MΩ∙cm 超)に溶解して調製しました。作業用標準混合溶液は、標準ストック溶液を脱イオン水と混合および希釈して調製しました。すべての溶液を、冷凍庫(-20 ℃)中の PP 容器中で保管しました。AMI を内部標準(IS)として使用しました。
10 mM 酢酸アンモニウム、0.4 mM エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、0.5 % NaCl、2% トリクロロ酢酸(TCA)を含む抽出溶液は以下のように調製しました。まず、500 mL メスフラスコに酢酸アンモニウム 0.385 g を入れ、約 450 mL の脱イオン水を加えて溶解します。試薬であるギ酸(FA)を用いて pH を 4.0 に調整した後、0.074 g のエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム二水和物、2.5 g の塩化ナトリウム、および 10 g の TCA をフラスコに加えます。よく混合して溶かし、印の位置まで脱イオン水を加えます。
サンプルの説明
牛乳、筋肉(牛肉と豚肉)、肝臓(鶏肉)、ハチミツのサンプルは地元の店で購入しました。この試験にハチミツを含めたのは、ミツバチの細菌感染治療に AMG 類が使用されているためです。ハチミツと牛乳のサンプルは冷蔵庫(0 ~ 4 ℃)に保管し、筋肉と肝臓のサンプルは冷凍庫(-20 ℃)に保管しました。
サンプルの抽出およびクリーンアップ
3 g のハチミツ、牛乳、または挽いた筋肉またはミンチした肝臓組織を、50 mL PP 遠心チューブ内で 20 mL の抽出溶液と混合しました。このチューブを高速(3200 RPM)で 2 分間ボルテックス混合した後、30 分間冷蔵庫に放置しました。サンプルを再度ボルテックス混合した後、4 ℃、3,200 g で 10 分間遠心分離しました。上清を、プラスチック製ピペットを使用して、別の 50 mL PP 遠心チューブに定量的に移しました。この上清を、キャリブレーション済みの pH メーターを使用して、塩基性溶液(50% KOH 溶液および 10% KOH 溶液)で pH 6.75 ± 0.25 に調整してから、固相抽出(SPE)およびクリーンアップを行いました。固相抽出カートリッジ(Oasis HLB SPE カートリッジ、6 cc Vac カートリッジ、500 mg 吸着剤、60 μm、製品番号 186000115)を、3 mL のメタノールと 3 mL の脱イオン水でコンディショニングおよび平衡化してから、すべての上清(約 18 mL)をこれにロードしました。ロード後、カートリッジを 3 mL の脱イオン水で洗浄し、真空下で 15 分間乾燥させました。分析種は、3 mL の溶出溶液(10 v/v% FA、5 v/v% イソプロパノール水溶液)で溶出しました。最終的な抽出物は、再溶解や希釈を行わずに、LC-MS/MS で分析しました。固相抽出クリーンアップ手順では、Waters 抽出(バキューム)マニホールド(186008998)と Otto SPEcialist 加圧マニホールド(725000682)の両方を使用し、同等の結果が得られました。また、コンディショニングおよび平衡化のステップを行わずに Oasis PRiME HLB カートリッジ(製品番号 186008718)を使用しても、同等の結果が得られました。
LC 条件
LC システム: |
バイナリーソルベントマネージャを搭載した Arc Premier システム |
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MS システム: |
Xevo TQ-S microシステム |
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分析時間: |
10.0 分 |
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カラム: |
Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラム(2.5 μm、2.1 × 150 mm、製品番号:186009987) |
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カラム温度: |
50 ℃ |
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移動相: |
A:20 mM ギ酸アンモニウム水溶液(pH 3.0) B:0.1% ギ酸含有アセトニトリル |
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パージ溶媒: |
水:アセトニトリル(1:9 v/v)混合液 |
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注入量: |
6.0 μL |
グラジエントテーブル
MS 条件
ソフトウェア: |
MassLynx v4.2 SCN1017 |
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極性: |
ES+ |
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脱溶媒温度: |
600 ℃ |
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キャピラリー電圧: |
1.5 kV |
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コーンガス流量: |
50 L/時間 |
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イオン源温度: |
150 ℃ |
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脱溶媒ガス流量: |
1000 L/時間 |
結果および考察
1 Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラムでの AMG 類の分離
移動相中の水分含量、pH、およびバッファー濃度が、Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラムでの AMG 類の分離を最適化する上での主な要素です。
1.1 移動相の水分含量の影響
図 2 に、Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラム(2.1 × 100 mm、1.7 μm)でアイソクラティック溶出した際に、移動相中の水分含量が、選択した AMG 類の保持時間(RT)に及ぼす影響を示します。水系移動相 A は pH 3.0 の 20 mM のギ酸アンモニウム、移動相 B は 0.1% FA 含有アセトニトリルでした。図 2 から移動相中の水分含量が多いほど溶出が速くなる(RT が短い)ことが分かります。
1.2 移動相 pH の影響
図 3 に、Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラム(2.1 × 100 mm、1.7 μm)において、20% 移動相 A から 95% A まで 5 分間で増加させ、95% A で 10 分間保持するグラジエント溶出条件下で、移動相 A の pH が選択した AMG 類の RT に及ぼす影響を示します。移動相 A は、さまざまな pH の水系 20 mM ギ酸アンモニウムで、移動相 B は 0.1% FA 含有アセトニトリルでした。流速は 0.2 mL/分でした。カラム温度は 40 ℃ でした。図 3 から、遅く溶出する AMG 類の方がより高い pH 依存性を示すことが分かります。高 pH 条件では、AMG 類(弱塩基)のイオン化が抑制されて固定相との疎水性相互作用が強くなり、RT が長くなります。ピーク形状、ピーク強度、および分離も移動相 pH の影響を受けます。図 4 に、図 3 と同じ条件を用いて得られた選択した AMG 類のクロマトグラムを示します。pH が 9 から 3 に変わると、特に遅く溶出するピークの幅が狭くなり、より対称的で強度が高くなるとともに、分離がより良好になります。
1.3 バッファー濃度の影響
図 5 に、Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラム(2.1 × 150 mm、2.5 μm)において、流速 0.7 mL/分、カラム温度 50 ℃ の条件下で、水系移動相バッファー(ギ酸アンモニウム)濃度が選択した AMG 類の分離に及ぼす影響を示します。移動相 A は pH 3.0 のさまざまな濃度(5 mM、10 mM、20 mM、40 mM)の水系ギ酸アンモニウム溶液で、移動相 B は 0.1% FA 含有アセトニトリルでした。溶出のプログラムは「実験方法」セクションに示したものと同じです。最良のピーク強度は、バッファー濃度 20 mM で得られました。
1.4 その他の要因
カラム温度や移動相 B の FA 濃度などのその他の要因が、ピーク強度、ピーク形状、クロマトグラフィー分離に及ぼす影響は限定的です。粒子サイズが異なる Atlantis Premier BEH Z-HILIC(1.7 μm および 2.5 μm)カラムでも、さまざまなクロマトグラフィー条件(組成、pH、バッファー濃度など)において同じ傾向が見られました。粒子径 2.5 μm のカラム(2.1 × 150 mm)では、粒子径 1.7 μm のカラム(2.1 × 100 mm、流速 0.2 mL/分)より高流速(0.7 mL/分)が得られ、分析時間の短縮に役立ちます。最適化された最終分析法では、粒子径 2.5 μm のカラム(2.1 × 150 mm)を使用しました。
2. 分析の選択性
ブランクの筋肉サンプルでは SPC に対する干渉ピークの存在が明らかになりました。当初は、他の報告でも使用されている MRM トランジション 351>98 および 351>207 を使用しました9。 今回の試験では、ブランクの筋肉サンプル中に、SPC のピーク(RT 1.56 分)と重なる RT 1.62 分の不明なピークが存在することが分かりました。この不明なピークのイオン比も SPC のイオン比とは異なっていました。この不明なピークからの干渉を回避するために、SPC の別の MRM トランジション(351>333 および 333>140)を使用したところ、ブランクサンプルからの干渉ピークは見られませんでした。
また、DSTP の MRM トランジションを最適化して、同位体置換した STP からの干渉も低減しました。STP(MW 581 Da)と DSTP(MW 583 Da)は類似の化学構造を有し、フラグメンテーションパターンが同じです。STP には、DSTP と同じ質量を持つ相対存在量が 5.8% の同位体ピークがあり(m/z 581 のモノアイソトピックピークに対して)、これが DSTP の定量の妨げとなる可能性があります。同位体置換した DSTP のプロトン付加イオンを含む DSTP の別の MRM トランジション(MRM 585>263、586>247)を使用したところ、これにより、DSTP に対する感度を十分に保ちつつ、STP から DSTP への干渉が 1% 未満に低減しました。STP の同位体分子種からの干渉を完全に排除することは困難です。
3. マトリックス効果
図 6 に、AMG 類の LC-MS/MS 分析におけるマトリックス効果を示します。マトリックス効果の評価には、固相抽出クリーンアップ後に 1,000 μg/kg になるように標準品をスパイクしたブランクサンプル抽出物と、固相抽出溶出溶液中に含まれる 1,000 μg/kg の標準品から得られたピーク面積の比を使用しました。これらの AMG 類について、強いイオン化抑制(20% を下回る低い比率)から強いイオン化促進(170% を上回る高い比率)まで、さまざまなレベルのマトリックス効果が見られました。AMG の定量には、マトリックスマッチド検量線が必要です。
4. 固相抽出の回収率
回収率は、サンプル前処理時にスパイクしたブランクサンプルと、固相抽出クリーンアップ後にスパイクしたブランクサンプルから得られたピーク面積の比によって計算しました(図 7 を参照)。スパイク濃度は 1,000 μg/kg でした。5 つのサンプル(ハチミツ、牛乳、牛肉、豚肉、肝臓)すべてにおいて、ほとんどの AMG 類(KAS を除く)の回収率は約 40 ~ 100% で、類似の食品マトリックスにおいて報告されている結果と同等でした7,9。 KAS は回収率が悪いことが分かりました。これは、pKa 値が約 7 以上の他の AMG 類と比較して、pKa 値が低い(pKa1 が 3.23)ことと関係しています。KAS は固相抽出のロード溶液(pH を 6.75 ±0.25 に調整)中でイオン化形態で存在し、Oasis HLB 吸着剤によって保持されません。
5. LC-MS/MS 分析法の性能特性
最適化した LC-MS/MS 分析法を、牛乳、牛肉、肝臓、およびハチミツの各サンプルについて評価しました。各食品マトリックスにおける定量限界(LOQ)、決定係数(R2)、直線性範囲、RT、および RT の精度を表 3 に示します。LOQ 値は、低濃度(シグナル/ノイズ比(S/N)が 10 以上、または検量線の最低濃度のいずれか高い方)でスパイクしたブランクサンプル(固相抽出後スパイク)を使用して推定しました。これらの食品の LOQ 値は、表 1 に示す主要な市場で設定されている MRL よりもかなり低い値です。R2 値は、4 ~ 6 濃度レベルのマトリックスマッチド標準品(固相抽出後スパイク)から取得しました。ほとんどの食品マトリックスにおいて優れた直線性が得られました(R2 > 0.99)。RT の相対標準偏差(RSD)を、溶媒標準品、マトリックスマッチド標準品、スパイクサンプル(n=57、日内精度)から取得しました。すべての AMG 類について RT の再現性が優れていることが実証されました(RSD が 1.0% 未満)。図 8 に、2,500 g/kg になるようにスパイクしたブランク牛乳サンプル中の 17 種の AMG 類のクロマトグラムの重ね描きを示します。最も早く現れるピーク(KAS)のキャパシティーファクター(k’)は 2.6 でした。
この分析法の正確性は、濃度 200 g/kg になるようにスパイクしたブランクのハチミツ、牛乳、牛肉、豚肉、肝臓の各サンプルを測定して評価しました。正確性は、測定濃度とスパイク濃度の比率として計算しました(図 9)。AMI を内部標準として使用しました。1,000 g/kg の濃度でスパイクしたブランクサンプルを、対応するマトリックスのキャリブラントとして使用しました(1 点検量線)。5 サンプルの各 AMG の平均正確性と正確性の標準偏差(SD)も図 9 に示します。平均正確性は 86% ~ 122% の範囲で、SD は 4% ~ 23% の範囲です。これらの結果は、同様の食品マトリックスについて報告されている結果と一致しています7,9。 8 つの食品サンプルを分析しました。これらのサンプルに AMG は検出されませんでした。
6. 考察
AMG 類は構造が互いに類似しているため、分離することは困難です。Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラムにより、20 mM ギ酸アンモニウムを含む pH 3.0 の水系移動相を使用する最適化したクロマトグラフィー条件下で、17 種の AMG が良好に分離されました。他のスルホアルキルベタイン固定相では、MS 検出に適さないより高いバッファー濃度(最大 175 mM ギ酸アンモニウム)が必要です9。最適なバッファー濃度に差がある理由は不明ですが、シリカ粒子よりもシラノール活性が低い BEH 粒子の使用に関連していると考えられています。KAS は、固相抽出では十分保持されなかったため、最終的な分析法に含めませんでした。ただし、固相抽出クリーンアップの前の抽出物を使用して直接分析することができました。
結論
Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラムでの AMG 類の分離に、移動相組成、バッファー濃度、pH などのクロマトグラフィー条件が及ぼす影響を、系統的に調査しました。最大 175 mM の高濃度のギ酸アンモニウムを要する他の双性イオン性スルホアルキルベタイン固定相とは異なり、Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラムでは、pH 3.0 の水系 20 mM ギ酸アンモニウムと 0.1% FA 含有アセトニトリルを使用したグラジエント溶出の 10 分間の測定で、17 種の一般的な AMG 類について十分な分離と優れた感度が得られます。Oasis HLB SPE カートリッジにより、16 種の AMG 類について十分なクリーンアップと回収率が得られました。Atlantis Premier BEH Z-HILIC カラムおよび Oasis HLB カートリッジをベースにして最適化した LC-MS/MS 分析法を、牛乳、筋肉、肝臓、およびハチミツの各サンプルについて評価しました。その結果、優れた感度と高い正確性、そして精度がすべて得られました。これにより、この HILIC-MS/MS 分析法が食品中の AMG 類のスクリーニングおよび定量に適したソリューションであることが示されました。
参考文献
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