UK Section 5 Driving Under the Influence of Drugs 法令をサポートするための血中薬物の分析
法中毒学目的のみに使用してください。
要約
このアプリケーションノートでは、Road Traffic Act 1988(1988 年道路交通法)の UK Section 5A の要件を満たすために開発された、サンプル前処理および UPLC-MS/MS 分析法の詳細について説明します1。
Waters Ostro パススルーサンプル前処理プレートを使用した、単一の頑健なサンプル前処理メソッドが開発されました。この前処理メソッドにより、この法規制に記載されているすべての分析種を、2 種類の UPLC-MS/MS 分析法のいずれかを使用して、この法令に記載した濃度よりも低濃度で定量できます。UPLC-MS/MS 分析法では、ACQUITY UPLC I-Class のクロマトグラフィー分離と Xevo TQ-S micro 質量分析計の感度を組み合わせることで、この分析のための簡素で頑健なプラットホームを提供する方法に、焦点が合わされています。
はじめに
多くの違法薬物や処方薬により、車両などの正常な運転ができなくなり、道路交通の事故の可能性が高くなることが報告されています2,3。 2015 年 3 月以降、既存の法律に変更が導入され、これによって、車両の運転者が、指定されている限界値(表 1)を超える血中濃度の特定の薬物(合法薬物を含む)を服用していることは、法律違反になりました1。 化合物は大きく次記の 2 つのグループに属します。第 1 グループには処方薬(医薬品)が含まれ、運転中に患者が処方薬を服用することを妨げないように、検出される血中濃度(しきい値)は比較的高くなっています。化合物の第 2 グループは違法化合物(乱用薬物)であり、しきい値の設定には「いかなる違反も許さない」アプローチが適用されています。
この法律をサポートするための分析試験では、さまざまな薬物クラスからの薬物パネルを定量する必要があります。このため、この試験にはモルヒネなどの極性物質から非極性の THC まで、広範な化学的特性が含まれます。この化学特性の多様性のため、関連するすべての分子を指定された濃度で最適に検出するための、簡単なワークフローを達成する、分析上の困難な課題が存在する可能性があります。
実験方法
コントロールとしてのヒト全血は Bio-IVT(Burgess Hill、West Sussex、UK)から供給を受けました。
対象の 17 種類の分析種の標準物質は、Merck(Poole、Dorset、UK)または LGC(Teddington、London、UK)から入手しました。これらは、メタノールまたはアセトニトリルのいずれかに溶解した個別の 1 mg/mL 溶液として供給されました。分析種を組み合わせて混合薬物スパイク溶液を調製し、さらなる希釈はメタノールを使用して行いました。分析種の安定標識内部標準試料も、同じ供給者から濃度 0.1 mg/mL で入手しました。これらの内部標準試料を組み合わせて、混合重水素化内部標準溶液(ISTD)を作成しました。すべての標準溶液を -20 ℃ で保管しました。
全血に混合薬物溶液をスパイクし、さまざまな濃度にしました。
コントロール血液またはスパイクした血液(100 μL)を、Ostro サンプル前処理プレートのウェル中の 100 μL の 0.1 M 硫酸亜鉛/酢酸アンモニウム溶液に追加しました。内部標準を添加し、このサンプルを短時間ボルテックス混合しました。これらのサンプルに溶出溶媒(600 μL の 0.5% ギ酸含有アセトニトリル)を追加し、プレートをさらに 3 分間ボルテックス混合しました。プレートをバキュームマニホールドに取り付け、溶出溶媒を完全真空下で Waters 2 mL 四角形ウェルコレクションプレート(製品番号 186002482)に吸引しました。
Ostro 溶離液の 2 つのアリコート(2 × 150 μL)を 1 mL の丸形ウェル回収プレート(製品番号 186002481)に移し、Ultravap Mistral エバポレーター(Porvair Sciences)を用いて乾燥させました。
乾燥したアリコートの 1 つ(THC 分析用)は、50 μL の 0.05% ギ酸含有 50% アセトニトリル溶液に再溶解しました。その他の乾燥したアリコート(他のすべての薬物の分析用)は、50 μL の 0.05% ギ酸含有 10% アセトニトリル溶液に再溶解しました。これらのサンプルを、以下に詳述する UPLC-MS/MS メソッドのいずれかを用いて定量しました。
いずれの UPLC-MS/MS メソッドも同じカラム(ACQUITY BEH C18、2.1 × 100 mm、1.7 μm)および同じ移動相(0.05% ギ酸水溶液(移動相 A)、0.05% ギ酸含有アセトニトリル溶液(移動相 B))を使用しましたが、それぞれのメソッドで異なるクロマトグラフィーグラジエントを使用しました。THC の分析での初期開始条件は 50% 移動相 B で、他のすべての薬物を定量するメソッドの開始条件は 2% 移動相 B でした。いずれのメソッドでも、Xevo TQ-S micro をエレクトロスプレーポジティブ(ESI+)モードで使用し、各分析種について 2 つの MRM トランジション、内部標準試料について 1 つの MRM トランジションをモニターしました。
結果および考察
効率的な THC の再溶解、およびモルヒネやその他の早く溶出する塩基性化合物に対して許容可能なクロマトグラフィーという課題を解決するため、2 つのアリコートの Ostro 溶離液を乾燥しました。最初のアリコートは、THC の分析に適した溶媒中に再溶解し、その他のアリコートはその他のすべての薬剤に適した溶媒中に再溶解しました。確実にハイスループットにするため、同じカラムおよび移動相を使用して 2 種類の UPLC-MS/MS メソッドを開発しました。1 つ目は THC を定量するため、もう 1 つはその他のすべての分析種を定量するためです。
図 1 に、THC 1 ng/mL でスパイクした全血のクロマトグラムが示されています。上記の THC プロトコルは、ヒドロキシ-THC、カルボキシ-THC、カンナビノール、カンナビジオールなど、他のいくつかのカンナビノイドの分析にも適しています。図 2 に、残りのすべての違法薬物および処方薬を濃度 10 ng/mL でスパイクした全血サンプルのデータが示されています。
結論
運転に対する薬物検査の増加により、これらの化合物を定量するための迅速で、正確で、信頼性が高く、頑健な分析法の必要性が強調されてきました。このアプリケーションノートでは、Ostro パススルーサンプル前処理プレートを用いる、血液中の広範な薬物パネルの測定に使用できる、完全なワークフローについて説明します。ここに説明されている手順では、わずか 100 μL の血液を使用します。これは、利用できるサンプルの量が限られていることがあるため、特にサンプルに複数の分析が必要な場合に有用です。
Xevo TQ-S micro 質量分析計の優れた感度により、法規制で定められた濃度の分析種を検出できます。その一方で、Ostro プレートを使用することにより、より高いサンプルスループットを求めるあらゆるラボで、サンプル前処理プロトコルを自動化できます。
参考文献
- The Drug Driving (Specified Limits) (England and Wales) Regulations 2014 (as amended, Road Traffic Act, England and Wales, 2015 No.2015.(2014)
- Honkanen, R et al.Role of Drugs in Traffic Accidents.British Medical Journal, 281, 1309–1312 (1980).
- Drummer, OH et al.The Involvement of Drugs in Drivers of Motor Vehicles Killed in Australian Road Traffic Crashes.Accident; Analysis and Prevention, 36, 239–248 (2004).
720007451JA、2021 年 12 月