• アプリケーションノート

食品分析における標準試料の前処理の自動化 - 実環境での評価

食品分析における標準試料の前処理の自動化 - 実環境での評価

  • Kai Liu
  • Ben Pointer
  • Jinchuan Yang
  • Nigel Skinner
  • Scott Toerber
  • Dennis Karote
  • Eurofins Nutrition Analysis Center
  • Waters Corporation



Andrew+ ピペッティングロボットについてもっと詳しく知りたいですか?

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要約

Andrew+ およびクラウドネイティブな OneLab ソフトウェアプラットホームは、当社の食品分析ラボにおいて、サンプル前処理や標準試料の混合、および連続希釈を含むル日常的なリキッドハンドリングの手法として評価されています。その性能は、サンプル前処理における正確度と精度の厳しい要件を満たしていることが分かりました。人間のオペレーターの場合の正確度 -5.0% ~ 4.2% と比べ、自動化ロボット操作の正確度は -2.8% ~ 3.0% でした。これにより、テクニカルスタッフは、空いた時間により高レベルの作業を行える上、完全なトレーサビリティーが得られ、反復運動過多損傷やミスのリスクを減らすことが可能になります。 

アプリケーションのメリット

  • 溶液の前処理における Andrew+ ロボットの正確度および精度は、手動での前処理以上
  • 分析者は時間のかかる繰り返し作業から解放され、生産性と分析作業の質が向上
  • Andrew+ および OneLab ソフトウェアのセットアップは簡単

はじめに

サンプル前処理には手間も時間もかかりますが、多くの化学分析では非常に重要なステップです。サンプル前処理には、ホモジナイズ、溶解、消化、誘導体化、抽出、濃縮、希釈、再溶解など、サンプルマトリックスの複雑さや対象となる分析物の特性によって、複数のステップで構成されることが多い。このプロセスでのミスは結果に影響を与え、費用も高額になります。サンプル前処理ステップの自動化により、人的ミスを減らし、分析の正確度と精度を向上させることができます。サンプル前処理全体の自動化は困難です。しかし、標準原液からのキャリブレーション標準試料溶液の調製など、サンプル前処理の一部は、比較的単純であり、簡単に自動化できます。

現在では複数のラボ自動化製品が市販されています。その多くは複雑で、使用方法を習得しづらく、場所を取ります。Andrew+ ロボットおよびクラウドネイティブの OneLab ソフトウェアは、簡単にセットアップでき、ラボの狭い場所に設置できるリキッドハンドリング自動化プラットホームです。このアプリケーションブリーフでは、実環境での標準試料およびサンプルの前処理に Andrew+ ロボットと OneLab ソフトウェアを使用した場合の広範な評価結果を紹介します。Andrew+ および OneLab ソフトウェアを用いた実際の食品試験についても説明します。 

結果および考察

今回の評価では、標準試料の連続希釈や混合、サンプル溶液の調製など、サンプル前処理における単純作業の自動化に注目して行いました。評価の適用範囲は、様々な手法や溶媒を含み、様々な分析種の幅広い分析を試験するように設計しました。分析種には塩やイオン(塩化ナトリウム)、ビタミン(レチノール、ビタミン D、葉酸)、糖(ガラクトース)、アミノ酸、その他の栄養分(カルニチン、コリン)が含まれます。評価対象とした分析手法には、イオンクロマトグラフィー電気伝導度検出(IC-CD)、液体クロマトグラフィー蛍光検出(LC-FLR)、液体クロマトグラフィー紫外線/可視分光法(LC-UV/Vis)、液体クロマトグラフィータンデム質量分析(LC-MS/MS)などのクロマトグラフィーベースの手法と、電気化学測定や微生物の濁度測定など、クロマトグラフィー以外をベースにした手法が含まれます。溶媒には、水、メタノール、アセトニトリル、ヘキサン等の食品分析ラボで一般的に使用されているものを含めました。ヘキサンは揮発性が高い溶媒であるため、ピペッティングが困難です。 

図 1. Andrew+ ピペッティングロボットおよびクラウドネイティブの OneLab ソフトウェア 

2 つの主なステップについて評価を行いました。1 つ目のステップは、標準溶液の前処理のみでの Andrew+ ロボットの性能の評価です。連続希釈および混合の正確度を評価するために、ロボットが調製した標準溶液の検出器でのレスポンス比を、標準作業手順(SOP)に従った希釈で得られたレスポンス比と比較しました。結果は表 1 にまとめています。2 つ目のステップは、食品分析の実環境でのロボットの評価です。Andrew+ ロボットをサンプル前処理手順(標準試料溶液の連続希釈とサンプル溶液の最終希釈)に導入しました。ロボットで前処理した標準試料およびサンプル溶液を用いた食品分析の結果を、手動で前処理した場合と比較しました。結果は表 2 にまとめています。 

表 1. 様々な分析における標準溶液の自動連続希釈および混合の正確度 

表 1 から、人の操作よりも、ロボットの方が希釈溶液の正確度においてわずかに優れていることがわかります。ロボット操作の正確度の範囲は -2.8% ~ 3.0% で、人の場合は -5.0% ~ 4.2% でした。実環境での分析評価(表 2)では、ロボット操作時の結果は人の操作の結果と同等でした。LC ベースの分析法では、人の操作と比較した場合のロボット操作の相対差は -1.2% ~ 2.5% でした。ただし、1 つの結果(カルニチン)では人の操作との相対差が 6.7% でした。微生物の濁度測定など、LC ベースでない分析法では、相対差は -3.8% ~ 5.7% でした。これらの結果から、サンプル前処理手順に Andrew+ を導入することで、食品分析にバイアスがかかることはないことが実証されました。また、ロボットによる希釈および混合の精度も調査しました(表 3 を参照)。10 μL のサンプル溶液を 490 μL の水に希釈・混合した際に観察された相対標準偏差(RSD)は 2.0% で、100、250、2500 μL を様々なボリュームの水で希釈・混合した場合、RSD は 0.7% 未満となりました。 

表 2. 標準溶液の調製においてロボットと人が操作した場合の食品分析結果の相対差 
表 3. サンプル溶液の水への自動希釈および混合の精度(n=8)

評価の結果、OneLab ソフトウェアのユーザーインターフェースが非常に直感的であり、様々なプロトコル用に分析法を迅速に作成できることが分かりました。大半の分析法は 10 分以内で作成できました。自動化プラットホームにより、サンプル前処理のトレーサビリティーの面で、更なるメリットがありました。操作のステップがスクリプトに記載されているため、トラブルシューティングが必要になった場合に、標準溶液およびサンプルの前処理がどのように行われたのかを詳しくチェックできます。ロボットによる操作にかかった時間は、人による操作とほぼ同様でしたが、ロボットを使用することで、分析者の時間が自由になり、繰り返し作業の多い希釈や混合の手間が省けたことで、生産性が向上し、人的ミスの発生および筋疲労や怪我を防ぐことができました。液体のボリュームの正確な測定の結果、一部の前処理プロトコルでは溶媒量が減り、溶媒消費量や廃液を減らすことができました。 

結論

日常の食品分析ラボにおける Andrew+ および OneLab プラットホームの広範な評価により、サンプル前処理の正確度および精度において、性能要件を満たしていることが分かりました。分析の生産性、ラボの安全性、トレーサビリティーが向上し、人的ミスを減らすことができました。使いやすく、幅広い分析におけるサンプル前処理の一部として組み込むことができます。 

謝辞

Kai Liu、Ben Pointer(Eurofins Nutrition Analysis Center、Des Moines、IA)、Jinchuan Yang、Nigel Skinner、Scott Toerber、Dennis Karote(Waters Corporation、Milford、MA)のご協力に感謝いたします。

720007126JA、2021 年 1 月

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