8 成分ポリマーブレンドの包括的 APC 2D 分析
要約
類似または同一のケミストリーあるいは分子量を持つ 8 成分で構成されるブレンドの分離は、単一の手法では達成できない場合があります。分離が不完全な場合、何らかの共溶出が起きています。複数の手法を組み合わせることで、分離効率が改善します。
アプリケーションのメリット
2D クロマトグラフィーでは、2 つの独立した分離手法を単一の分析に結合しています。1 次元目では、グラジエントベースの分離を適用して分析種をケミストリーによって分離します。2 次元目では、従来の(理想的には高分離能の)GPC で構成されており、個々の分析種の画分を流体力学的ボリュームによって 1 次元目から分離します。両方の次元を組み合わせることで、分離能力を大幅に向上させることができます。HPLC タイプの分離を 1 次元目にした方が、サンプルのロードの際に有利になります。2 次元目に入る画分の分析種濃度が低すぎると、2 次元目の検出器で検出できなくなるので、最初に高めのロード量にしておくことが必要になります。
はじめに
高分離能の高度な分離手法は、ポリマー業界だけでなく、より広い化学・材料業界の至るところで適用することができます。最近の材料科学におけるポリマーの応用に焦点を当てた研究開発は、ポリスチレンやポリエチレンなどの大きな直線状ポリマーから方向転換して、はるかに進化しています。ますます複雑化する環境において、用途によっては、単純なポリマーだけでは今日の需要に対応できなくなっています。ブロックコポリマー、グラフトポリマー、樹状突起構造、両親媒性材料など、あるいはより複雑なブレンドなど、多様で多機能のポリマー構造を模索する研究開発が進んでいますが、標準的な GPC や LC では、ポリマーやその構造および予測される特性について、不完全な情報しか得られない場合が多くなります。
標準的な GPC や LC のそれぞれの限界により、多次元クロマトグラフィーまたは 2D クロマトグラフィーがより高度な手法として注目されるようになり、近年ますます普及してきています。
装置の観点から見ると、図 1 に示すように、2D クロマトグラフィーは基本的に 2 つの同一のサンプルループが付いた 8 ポートバルブによって接続された 2 つの個別の分離システムで構成されています。一方のループは最初の分離システムの溶出液で満たされており、2 次元目のポンプが他方のループの内容物を 2 次元目の分離カラムに流し込みます。ソフトウェアで 2 つのループ間で切り替えると、1 次元目の分離の溶出液全体が 2 次元目のカラムで分析されます。
実験方法
分析条件
1 次元目:
表 1. 1 次元目のグラジエントテーブル
2 次元目:
ELSD: |
ゲイン:5 |
ドリフトチューブ: |
50C |
加熱: |
75% |
TUV: |
254 nm |
カラム: |
M&N Nucleodur 100-5(4.6 × 250 mm) |
すべての分離が 2 時間前後で完了しました。
結果および考察
8 PS(1,240k、130k、19.7k、1,306 Da)サンプルおよび PMMA(988k、202k、18.7k、2,380 Da)サンプルで構成されるポリマーブレンドの 2D 分析法を開発する最初のステップでは、両方の次元を個別に実行して、ピークの数とその溶出位置を調べます。システムは ELSD 検出器および UV 検出器を用いてセットアップされているため、両方の検出器からのトレースを集めて、図 2 に見られるような、異なる選択性から生じるクロマトグラムの違いを特定しました。検出器間の遅延はソフトウェアで補正しました。
いずれの検出器でも、わずかにピーク形状が異なる 3 つのベースライン分離した画分が検出されました。GPC 分析の検出モードに応じて 4 ~ 5 本のピークが検出されており、その一部はピーク形状が不規則です。ELSD トレース(黒線)では、溶出量 1.2 mL で溶出しているピークに、UV トレース(青線)にはないショルダーが見られます。UV 検出器では、ELSD トレースには見られない追加の小さなピークが検出されました。これらの違いは、化学的に異なる構造の存在を示しています。
次に、同じ検出器を用いて、CHCl3 から THF へのグラジエント分離を行いました。両方の検出器で得られたクロマトグラムの重ね描きを図 3 に示します。図 2 と同じく、3 つの主要なベースライン分離した画分が検出されました。低溶出量では、検出器間のトレースの違いはわずかです。溶出量 1.5 mL で溶出するピークには、追加の小さなピークが見られますが、このピークは ELSD トレース(黒線)には見られません。ELSD シグナルでは 4.3 mL のピークが示されましたが、このピークは UV トレース(青線)では見られません。2 種類の分離のいずれにおいても、混合物中の 8 成分すべてを分離することはできません。原因として、共溶出が考えられます。
2 次元の分析では、1 回のサンプル注入でまずグラジエントベースの分離が行われ、続いてアイソクラティック GPC モードで各溶出画分が分離されます。Polymer Standards Service の WinGPC で作成した等高線プロットに結果をプロットしました。図 4 に示すように、グラジエント分離での溶出量を Y 軸、GPC 分析での溶出量を X 軸にプロットしています。色は画分の量を示します。Y 軸と X 軸の横に、それぞれの分離について再構成した検出器トレースを参照用に示しています。
垂直方向に揃っている画分は、GPC で共溶出する同一の流体力学的サイズの画分を表しています。したがって、垂直軸に沿った分離は、化学構造の違いに基づいています。2 種のケミストリーの間で優れた分離が見られます。水平方向に揃っている画分は、サイズによって分離されています。3 つの明確なサイズが互いに分離されています。PMMA サンプルは Y 軸に沿って同じ溶出量であることから、グラジエント分離において互いに分離されていません。グラジエント分離において、PS サンプル間で若干の分離が見られ、グラジエント分離に分子量がわずかに影響したことを示しています。BEH XT カラムの分離可能範囲のため、4 番目の PMMA サンプルは分離されませんでした。
結論
等高線プロットから、それぞれの次元で共溶出が起きたことが分かります。ケミストリーによる分離とサイズによる分離を組み合わせることで分離能が向上し、4 本や 5 本ではなく 7 本のピークに分離することができました。
720007355JA、2021 年 9 月