アフラトキシンは発癌性のマイコトキシンであり、汚染された食物・飼料を摂取するヒト・動物の健康に、有害な影響を与えます。幅広い食料品中の規制対象のアフラトキシンを高感度かつ選択的に測定するための分析法が開発されています。代表的な対象商品(ナツメグ、レッドチリ、黒コショウ、ココア、焙煎コーヒー、ドッグフード、漢方薬)からアフラトキシンを液-液抽出で抽出し、次に新しい AflaTest WB SR+ カラムでイムノアフィニティーカラムクリーンアップを行いました。クロマトグラフィー分離は、HPLC(Alliance)プラットホームおよび UPLC(ACQUITY UPLC H-Class PLUS)プラットホームの両方を使用し、蛍光検出器を使用して実証しました。プラットホームでの蛍光検出にはそれぞれ、ポストカラム誘導体化および大容量フローセルで対応しました。この分析法の性能は、7 種の異なるマトリックスのスパイクサンプルの繰り返し分析によって、評価しました。全体的な回収率は 82% ~ 119% と良好で、相対標準偏差は 8% 未満であることが示されました。ブランクサンプルで干渉ピークが観察されなかったことから、この分析法は特異的であることがわかりました。この分析法は、世界中の食料品中のアフラトキシンに規定されている規制限度への準拠のモニタリングに適していることが実証されています。
マイコトキシンは、生産、収穫、貯蔵、加工、輸送など、多くの汚染経路を介して食品および農産物中のカビによって生成される可能性のある有毒二次代謝物です。真菌の増殖とマイコトキシン生成は、生物学的(感染しやすい作物)要因と環境要因に依存し、特に植物の生長や収穫の間の地域の気候条件が大きく影響します。マイコトキシンは、ヒトや動物の健康に影響を与えることがよく知られているだけでなく、収益の大幅な減少やブランドや評判の毀損をもたらす可能性もあります。
マイコトキシンは、欧州の Rapid Alert System for Food and Feed(食品および飼料に関する緊急警報システム、RASFF)の通知の最高リスクカテゴリーに一貫して分類されており、多くの場合国境管理/入国港での引き渡しが拒否されます。食品や動物用飼料に一般的に見つけられるマイコトキシンの中で最も毒性が高く発癌性の高いグループは、ナッツ、ナッツ製品、トウモロコシ、穀物に通常存在するアフラトキシンですが、コーヒー、ココア、香辛料などのより広範な作物中や、ミルクなどの動物由来の食品にも存在することが報告されています。アフラトキシンは、世界の多くの国で規制されています。この分野で現在発表されている論文についての最近のレビューで、ヒトが消費する食品の規制限界である 20 μg/kg(米国)および 4 μg/kg(欧州連合)を超えるレベルでの、食品中アフラトキシン汚染が多数発生していることが示されています1。 このことから、田畑から消費者までのあらゆる段階でマイコトキシンの予防、コントロール、定期モニタリングを効果的に行うための戦略として、分析試験を増やすことの必要性が強調されます。
生産時点で使用できる使いやすい迅速試験から、より時間がかかるが汚染のレベルをより包括的に把握することが可能なラボベースのレファレンスメソッドまで、アフラトキシンの定量にはさまざまな試験ソリューションが存在します2。 アフラトキシンの定量は困難な作業です。サンプルマトリックスが複雑な(多くの場合脂質含有量が高い)場合があり、規制限界への準拠を検証するために、非常に低い濃度を測定できる必要があるため、ラボにはさらなる圧力がかかっています。抗体に基づくイムノアフィニティークロマトグラフィー(IAC)カラムを使用するクリーンアップと蛍光検出器を備えた HPLC による分析の併用は、必要な感度と選択性を達成するための前提条件となっており、アフラトキシンの規制限界への準拠を検証するための費用対効果の高い方法として長年使用されてきました3。 通常、有機抽出物は、IAC カラムに注入する前に水性溶媒で希釈する必要があり、それによって分析法の感度が低下します。最近、VICAM が高濃度の有機溶媒に耐えられる新しい IAC 製品 AflaTest WB SR+ を発売したため、これにより希釈が不要になりました。AflaTest WB SR+ IAC カラムは、M1、M2、およびステリグマトシスチンに加えて、アフラトキシン B1、B2、G1、および G2 を保持します。この試験の目的は、2 つの独立 HPLC/UPLC プラットホームを使用して、標準化された試験手順で難しい食料品マトリックス(3 種の香辛料、ココア、焙煎コーヒー、ドッグフード)および漢方薬(TCM)中のアフラトキシン B1、B2、G1、G2 を測定するための、VICAM の AflaTest WB SR+ カラムの性能を評価することでした。
TCM であるツルドクダミ、香辛料(ナツメグ、レッドチリ、黒コショウ)、ココア、焙煎コーヒー、ドッグフードのサンプルは市販のものを入手し、ドッグフード以外は均質な粉末にすりつぶしました。
アフラトキシンのサンプル抽出およびクリーンアップの詳細の概要は、図 1 に示されています。各サンプルは、アセトニトリル/水(90/10、v/v)を用いて液体抽出し、ブレンダーで均質化しました。濾過した抽出物はバッファー溶液で希釈し、アフラトキシンに対する特定の抗体が含まれている AflaTest WB SR+ IAC カラムに注入しました。アフラトキシンはカラムで抗体に結合します。次にカラムを水で洗浄してカラムから共抽出物を除去してから、メタノールとアセトニトリルの混合液でアフラトキシンを溶出しました。その後の抽出物中のアフラトキシンの定量には、蛍光検出器付き HPLC/UPLC を使用しました(詳細は図 1 を参照)。AflaTest WB SR+ の使用の詳細については、こちらを参照してください。
キャリブレーション標準試料は、AFB1:AFB2:AFG1:AFG2 の比率が 5:1:3:1(Sigma 48487-U)および 0.3:1:0.3:1(Supelco #CRM46304)の 2 つの異なる作業用標準試料を用いて、アセトニトリル:メタノール:水(1:1:2 v/v)混合液中に調製しました。
HPLC 条件 |
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LC システム: |
Alliance e2695 |
検出: |
PhCR フォトケミカルリアクター付き多重波長蛍光検出器 2475(製品番号:600001222)、励起波長 360 nm:蛍光波長 440 nm |
バイアル: |
不活性アンバーガラス 12 × 32 mm、スクリューネックバイアル(製品番号:186000846DV) |
カラム: |
Nova-Pak C18、4 μm、3.9 mm × 150 mm(製品番号:WAT086344) |
カラム温度: |
25 ℃ |
サンプル温度: |
25 ℃ |
注入量: |
50 μL |
流速: |
0.8 mL/分 |
移動相 A: |
水(55%) |
移動相 B: |
メタノール(45%) |
分析時間: |
12 分 |
LC システム: |
ACQUITY UPLC H-Class PLUS(FTN サンプルマネージャを搭載) |
検出: |
大容量フローセル付き ACQUITY UPLC FLR 検出器(製品番号:205000609)、励起波長 360 nm:蛍光波長 440 nm |
バイアル: |
LCGC 認定透明ガラス製スクリューネックバイアル、12 × 32 mm、2 mL(製品番号:186000307C) |
カラム: |
ACQUITY UPLC HSS T3、1.8 μm、2.1 × 100 mm(製品番号:186009468) |
カラム温度: |
25 ℃ |
サンプル温度: |
25 ℃ |
注入量: |
3 μL |
流速: |
0.3 mL/ 分 |
移動相 A: |
水(55%) |
移動相 B: |
メタノール(45%) |
分析時間: |
8 分 |
クロマトグラフィーソフトウェア: |
Empower 3 |
バリデーションは、ブランク試料と見なすスパイクサンプルの繰り返し分析によって実施しました。食品成分については、4、20、100 μg/kg の総アフラトキシン量の 3 つのスパイクレベルで 5 回繰り返し調製し、TCM サンプルは 5 および 20 μg/kgの総アフラトキシン量でスパイクして 3 回繰り返し調製しました。スパイクに使用する標準溶液は、上記と同じでした。感度、選択性、真度、ラボ内再現性(RSDr)の 3つのパラメーターを評価しました。
アイソクラティック条件を使用した代表的な HPLC クロマトグラムが、図 2 に示されています。2 μm 未満の多孔性粒子を採用した ACQUITY UPLC カラムにより、クロマトグラフィー効率が向上し、したがって感度、分離度、速度が向上しています。図 3 に、UPLC で達成したアフラトキシンの 7 分以内の効率的な分離が示されています。両方のカラムで、すべての分析種について優れた保持とピーク形状が得られ、対象のアフラトキシンすべてが完全に分離されました。
アイソクラティック条件を使用した HPLC-FLD 分析は、多くの場合アフラトキシンを誘導体化した後に AFB1 および AFG1 の感度を上げるために、長年にわたってアフラトキシの検出に使用されてきました4。 ヨウ素セルや Kobra セルとは異なり、オンラインのポストカラム連続光分解誘導体化により、移動相にさらに化学物質を追加せずに、光化学反応による誘導体化が実行されます。このアプローチは、トウモロコシおよびピーナッツ中のアフラトキシンの測定用に、AOAC 分析法としてバリデーションされています5。 Waters ACQUITY UPLC FLR 検出器内で大容量フローセルを使用することにより、ポストカラム誘導体化が無価値になり、アフラトキシンの定量限界が非常に低くなりました6。 上記クロマトグラム中のピークに対する S/N 比からわかるように、両分析法の感度は、世界中の最大規制限界への準拠の確認に適しています。
適合しないサンプルが偽陽性と報告される可能性のあるブランクサンプルのほとんどからの抽出物で、シグナルは検出されませんでした。例えば、図 4 の黒コショウの分析のクロマトグラムを比較すれば、例外はナツメグサンプル中のアフラトキシンの検出でした。4 μg/kg のスパイクからのデータは、ナツメグ中のアフラトキシンの存在によって大きな影響を受けたため、結果の完全なセットは最低レベルでは報告されませんでした。10 μg/kg(n = 2)のスパイクによって、より高いレベルのデータセット全体に追加できる性能が示されました。スパイクサンプルでの濃度の計算には、ブランク補正を使用しました。
回収率によって表される真度を、スパイクサンプルの分析からの HPLC データを使用して評価しました。回収率の平均値は 82 ~ 119% で、3 つの値が CODEX7 および欧州委員会8 によって規定されている要件をわずかに上回っていましたが、AOAC9 で規定されている範囲内でした(表 1 および図 5 を参照)。再現性(RSDr)は、平均値 0.8% ~ 9.5% で優れていました(表 2 および図 6 を参照)。推奨値は多くの場合 Horwitz の式から導出されるため、これらの非常に低い濃度では RSDr の推奨値は 14.5% です。表 3 に、栄養補助食品および植物性食品の AOAC 基準を使用した TCM の分析結果が示されています10。
90% アセトニトリル抽出物を AflaTest WB SR+ IAC クリーンアップカラムで分析することにより、複雑な食料品の分析においてもマトリックス共抽出を解消でき、回収率と精度が向上します。UPLC オプションにより、分析時間を短縮する可能性を得ることができ、蛍光検出器に大容量フローセルを使用することで、ポストカラム誘導体化の必要性が解消されます。この分析法には、幅広い農作物や食料品中のアフラトキシンの規制限界への準拠の検証に使用する、必要な感度、選択性、全体的な性能が備わっています。
720007280JA、2021 年 6 月