ウォーターズは以前に、シュトゥットガルトの EURL SRM で確立された Quick Polar Pesticides (QuPPe) メソッドを用いた抽出、および陰イオン極性農薬カラムを使用した LC-MS/MS 分析に基づいて、さまざまな食品中の陰イオン性極性農薬を測定する方法を開発しました。このアプリケーションブリーフでは、ACQUITY UPLC システムと Xevo TQ-XS タンデム四重極型質量分析計を使用したラボ間試験による、この分析法の性能評価について説明します。QuPPe によるキュウリの抽出物に、グリホサート、AMPA、グルホシネート、MPPA、エテホンをスパイクし、ヨーロッパとインドの 8 つのラボに送りました。分析法の真度は、90 ~ 104% の範囲内と判定されました。各ラボ内の再現性およびラボ間の再現性がほぼ一致していることが観察され、いずれの場合も RSD は 7% 未満でした。
残留農薬に対する食品分析には、さまざまな多成分残留 LC-MS/MS 分析法が利用できますが、極性の陰イオン性農薬はかなり困難な課題のままです。QuPPe(Quick Polar Pesticides)メソッド1 により、多数の高極性農薬およびその代謝物を同時に抽出できます。QuPPe は通常 LC-MS/MS 装置で使用され、粗抽出物に関連する顕著なマトリックス効果(クリーンアップなしの場合)に対応するための高い感度を提供します。以前に当社は、陰イオン性極性農薬(グリホサートおよびさまざまな商品中のその代謝物など)の測定に向けた、QuPPe および陰イオン極性農薬カラムに基づく分析法の使用について報告しました2。
ラボ間試験は、分析法の性能特性を評価するための分析化学で、重要な役割を果たします。これらの試験では、経験豊富な複数のラボが、均質で安定した試験サンプルからの類似部分を受け取り、厳密に定義されたプロトコルに従って測定を行って、分析法の正確度、再現性などの機能を評価しました。ここでは、Xevo TQ-XS タンデム質量分析計を備えた ACQUITY UPLC システムで、陰イオン性極性農薬カラムを使用して行った、この LC-MS/MS 分析法の性能をさらに評価するためのラボ間試験の結果を報告します。
ラボに以下を提供しました。
ラボに、ブラケットキャリブレーションを用いて、スパイクした抽出物の繰り返し注入 (n = 5) から対象の分析種の濃度を測定するように、指示しました。さらに、エテホン以外のすべての分析種について、安定同位体類似体を内部標準試料として使用するように指示しました。ラボに、0.05 mg/kg のマトリックス添加標準試料を 15 回注入することも依頼し、クロマトグラフィー性能の安定性を評価しました。
各ラボでは、クロマトグラフィー分析法が正常に導入され、各対象化合物の保持時間はすべて、提供された予測基準値の 3% 以内でした。この分析法により SANTE ガイドライン5 に適合した保持が得られ、対称的なクロマトグラフィーピーク形状が得られ、保持時間の安定性も全体にわたって良好でした。図 1 に、0.01 mg/kg の分析種の典型的なクロマトグラフィーとレスポンスが示されています。
クロマトグラフィーは、0.05 mg/kg のマトリックス添加標準試料の 15 回の注入にわたって、安定していることが示され、保持時間に有意な変化はありませんでした(図 2)。レファレンスラボの値からの保持時間の偏差は 0.3 分以内であり、分析法のセットアップの容易さが示されています。各ラボ内の保持時間の再現性(RSDr)の値はすべて 0.15% 未満で、ラボ間再現性(RSDRL)はすべて 2.5% 未満でした。
1/x の重み付けでの線形回帰を用いてキャリブレーショングラフから、レスポンスの直線性が優れていることが示されました(図 3)。1 つのエテホンと 1 つの MPPA のグラフ中の高濃度のものを除き、r2は 0.99 を超え、残差は 20% 未満でした。0.1 および 0.2 mg/kg でのデータポイント(は、スパイクした抽出物中の濃度を計算する必要がなかったため、キャリブレーショングラフから除きました。
ラボにより、スパイクしたキュウリ抽出物中の陰イオン性極性農薬の定量の正確度が良好なことが、実証されました(表 1)。ただし、ラボの 1 つは、エテホンの結果を報告できませんでした。レファレンスラボから提供された割り当て値と比較して、真度が 90 ~ 104%、バイアスが 10% 未満であることが示されました。各ラボ内再現性(RSDr)およびラボ間再現性(RSDRL)の値はすべて 7% 未満でした。バリデーションの結果は表 1 に示されています。
いずれの場合も、マトリックス添加標準試料のイオン比と保持時間は、エテホン以外のすべての化合物について、SANTE ガイドラインに指定されている基準とよく一致しました。 ほとんどのラボでは、エテホンの示唆されたクオリファイアートランジション(m/z 143 > 79)について、高いバックグラウンドに苦戦しており、0.05 mg/kg の残基を同定する目的に使用できる十分なレスポンスが、このチャンネルで得られませんでした。
ラボ間試験を用いて、陰イオン性極性残留農薬の測定メソッドの性能を調査しました。各ラボでは、スタートアップガイドを用いてクロマトグラフィー分析法を正常に導入しました。これにより、各対象化合物の保持時間は、予測されるレファレンス保持時間と一致しました。クロマトグラフィーは安定しており、SANTE ガイドラインに適合していることが示されました。スパイクされたキュウリ抽出物中の陰イオン性極性農薬の定量精度が良好であることが、ラボによって実証されました。真度は 90 ~ 104%、バイアスは 10% 未満であり、ラボ内再現性およびラボ間再現性の値はすべて 7% 未満でした。
720007154JA、2021 年 2 月