ビタミン分析はビタミン強化食品のラベル付けのためにきわめて重要です。食品メーカーにとってこの試験は不可欠である一方で、食品マトリックスは複雑であることが知られており、多くの場合、高レベルの望ましくない干渉物が含まれているため、食品メーカーに困難な課題をもたらします。さらに悪いことに、各ビタミンは化学特性が異なっており、サンプルのクリーンアッププロセスが一層複雑になります。このアプリケーションブリーフでは、迅速なパススルー固相抽出(SPE)手法を用いる水溶性ビタミン分析のために、インスタントラーメンをクリーンアップする簡単で効果的な方法について説明します。
簡単で効果的な 1 ステップのパススルー SPE プロトコルが、インスタントラーメンサンプル中の水溶性ビタミンの分析用に開発されました。
ビタミンは、人や動物の全体的な健康と満足できる生活状態の維持で重要な役割を果たす栄養素です。牛乳や果物などの食品に天然に存在しますが、穀物やシリアルなどの強化食品に添加されることもあります。摂取量が不足すると、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。全般的な健康でのその重要性により、食品製造者は自社の食品に行っているビタミンのラベル表記を検証する責務があります。微生物学的評価や液体クロマトグラフィー(LC)は、食品中のビタミンレベルの測定に用いられる一般的な手法です。これらのそれぞれには長所と短所がありますが、LC ベースの分析法には、高速かつ正確で、1 回の分析でさまざまな形態のビタミンを同定できるという追加の利点があります1。 したがって、AOAC や USP の従来のレファレンス分析法では、LC ベースまたは LC-MS/MS ベースのソリューションを取り入れるように、ビタミン分析法の最新化に絶えず努力しています2,3,4,5,6。
LC ベースまたは LC-MS ベースの分析法は極めて有用ですが、データ品質を向上するためにサンプルの複雑さを低減し、カラム寿命を延ばし、システムの稼働時間を最大化するために、サンプルを注入する前に中度レベルのクリーンアップが必要です。サンプルのクリーンアップに関しては、SPE はそのような手法の 1 つであり、除タンパクや液-液抽出などのよく知られているクリーンアップ手法と比較して、より高いレベルの清浄さが得られることが知られています。ただし、SPE の 1 つの欠点は、上記の手法より多くの分析法開発が通常含まれることです。今回のインスタントラーメン中の水溶性ビタミンの分析では、SPE による簡単で迅速なパススループロトコルを用いて、タンパク質や脂肪が含まれているマトリックスのクリーンアップを試みています。このパススルー手順により、実施する分析法開発の程度が最小限に抑えられ、それでもなお効果的で迅速なサンプルクリーンアップが実現します。Oasis PRiME HLB カートリッジには、脂肪やリン脂質などの一般的な食品マトリックス干渉物を除去するのに役立つ吸着剤ケミストリーが含まれています。
水溶性ビタミンは、インスタントラーメン類の主要な原料である強化小麦粉中に存在します。この用途に対する Oasis PRiME HLB カートリッジの性能を評価するには、第一に重要なことは、マトリックスが存在しない状態で、このカートリッジによるビタミンの回収率を確認することです。そのためには、ビタミン B1、B3、B6、B12、C の標準試料を溶液中に調製し、メタノールを加えて Oasis PRiME HLB カートリッジに通します。回収率を、スパイク前およびスパイク後のピークレスポンスから計算します。図 1 に、パススループロトコルの最後の溶出液に存在するビタミン類のクロマトグラムが示されています。スパイク前とスパイク後の結果を比較して、上記の水溶性ビタミンの回収率が表 1 にリストされています。一般に、Oasis PRiME HLB を使用するこのパススループロトコルでは、試験した水溶性ビタミンのほとんどについて 80% を超える回収率が得られました。ビタミン C の回収率は 50% 未満であり、これはおそらく溶液中での安定性が原因です。
標準溶液で良好な回収率が得られたため、同じパススルー SPE プロトコルを用いて、インスタントラーメンサンプル中の強化ビタミンの検出の評価に進みました。簡単に説明すると、均質化したインスタントラーメンからビタミンを抽出し、抽出物にメタノールを加えてサンプル中に存在するタンパク質を除去しました。抽出ステップで、上清の上に脂肪層が浮遊しているのが観察されました。これは、油で揚げたインスタントラーメンマトリックスに脂肪が含まれていることを示しています。除タンパク後、懸濁液を遠心分離し、上清を取り除いてから、全体を Oasis PRiME HLB カートリッジにロードしました。この場合、図 2 に示されているように脂肪やその他のマトリックス中の干渉物を取り除き、溶出物を分析用に収集しました。図 3 に、ブランクインスタントラーメン中のビタミン B1 とビタミン B6 の検出結果が示されています。インスタントラーメンマトリックス中のビタミン B1 およびビタミン B6 の合計回収率は 80% を超えました。
Oasis PRiME HLB を用いる簡単なパススルー SPE メソッドが、インスタントラーメン中の水溶性ビタミンのクリーンアップ用に開発されました。この迅速で簡単なプロトコルにより、一般的 ビタミン B 類の回収率が 80% を超える結果が得られます。Oasis PRiME HLB カートリッジは脂肪やタンパク質などの干渉物を除去する役割を十分に果たすため、このプロトコルは、これらが高レベルで含まれる他のマトリックスでも再現できる可能性があります。
720007273JA、2021 年 6 月