• アプリケーションノート

Agilent 1290 LC システムで CORTECS カラムを使用することによる、選択性を維持したピークキャパシティの向上

Agilent 1290 LC システムで CORTECS カラムを使用することによる、選択性を維持したピークキャパシティの向上

  • Kenneth D. Berthelette
  • Jennifer M. Nguyen
  • Jonathan E. Turner
  • Waters Corporation

要約

表面多孔性粒子を充塡したカラムは多くの LC 分析法で使用され、ピーク形状の改善やサンプルスループットの向上をもたらしています。これらの利点は、粒子径とカラム寸法の適切な組み合わせが考慮されているかぎり、使用する LC システムに依存せずに達成できます。ここで紹介する研究では、Agilent 1290 LC システムを使用して、表面多孔性の CORTECS C18 カラムを同様の結合テクノロジーを採用した完全多孔質カラムと比較して、その利点を説明します。さらに、他社製表面多孔性カラムを試験しました。ピークキャパシティの比較により、同様の結合を採用した表面多孔性粒子テクノロジーや完全多孔性粒子テクノロジーに対して、分離能が向上し、選択性が維持される CORTECS C18 カラムの性能が、実証されています。

アプリケーションのメリット

  • 完全多孔性の CSH C18 と比較して、CORTECS C18+ カラムを使用することにより、ピークキャパシティが 10% 以上増加
  • 表面多孔性および完全多孔性の材質での同等の選択性により、分析法再開発の必要性が最小限に
  • Agilent 1290 LC システムで CORTECS C18+ カラムを他社製表面多孔性 C18 カラムと比較した場合、ピークキャパシティが増加

はじめに

表面多孔性粒子(SPP)は、液体クロマトグラフィーで使用される評判が良いテクノロジーになっており、完全多孔性の外層と不透過性の中心部で構成されています。この粒子設計は、イオンクロマトグラフィーで使用するために、Horvath によって 1960 年代半ばに初めて導入されました1。 そのとき以来、多孔質層の厚さの厳密な管理、多孔質層をソリッドコアに接着する方法、多孔質層と非多孔質層の化学的性質など、これらの材質の製造に大幅な改善が行われてきました。この粒子テクノロジーは、van Deemter 方程式の A 項(渦拡散)と B 項(縦方向拡散)の改善により、完全多孔質粒子のテクノロジーと比較して、カラム効率にメリットをもたらしています。A 項は、完全多孔性粒子と比較して、SPP の均一な粒子サイズの影響を直接受けます。粒子サイズが均一であることにより、粒子の周囲および粒子を通過する類似の流路の、ぎっしり充塡されたベッドが得られます。B 項はソリッドコアの影響を受け、これにより、粒子の全体的な透過性が制限され、分析種がアクセスして拡散するカラムのボリュームが減少します。

これらの材質の効率の向上は、面倒な分析でのクリティカルペアを分離する役に立ちます2。さらに、表面多孔性粒子が充塡されたカラムを使用して時代遅れのモノグラフ分析法を最新化することにより、分析法移管の汎用性を高めることができます。USP モノグラフ分析法の移管は、USP General Chapter <621> によって厳しくコンントロールされており、新しいカラムは、元の基準カラムの特定の範囲内で L/dp(長さと粒子サイズの比)または N(理論段数)のいずれかを維持する必要があります。これにより、分析法移管の新しいカラムの長さおよびサイズが制限される場合があります。ただし、表面多孔性粒子の場合は、多くの場合 N による移管法を採用することができ、分析時間を短縮して分離を強化し、これによってスループットを増加して溶媒消費量を最小限に抑えることができます3-5

本研究では、表面多孔性の CORTECS C18 カラムを用いて、6 種類のサルファ剤の分離を調査します。ここでは、このカラムを、他社製表面多孔性粒子カラムおよび完全多孔性粒子が充塡されたカラム(いずれも C18 リガンドで修飾)と比較して評価します。この比較は Agilent 1290 LC システムを使用して行っており、このシステムでは、CORTECS C18 カラムが他社製表面多孔性カラムすら上回って、ピークキャパシティが向上していることが実証されています。さらに、CORTECS C18 カラムには、試験した別のカラムと同様の選択性があり、カラム間の分析法移管を簡素化できる可能性があります。

実験方法

サンプルの説明

スルファジアジン、スルファチアゾール、スルファメタジン、スルファメトキシピリダジン、スルファクロロピリダジン、スルフィソキサゾールの標準試料の原液は、サンプル希釈液として水を使用して 13 μg/mL の濃度で調製しました。 

LC 条件

LC システム:

Agilent 1290 Infinity II

検出:

DAD を使用した254 nm での UV 検出

バイアル:

TruView LCMS 認定透明ガラスバイアル(製品番号:186005668CV)

カラム:

CORTECS C18+、2.1 × 50 mm、2.7 μm(製品番号:186007395)

XSelect CSH C18、2.1 × 50 mm、2.5 μm(製品番号:186006101)

他社製表面多孔性 C18、2.1×50 mm、2.7 μm

カラム温度:

30 ℃

サンプル温度:

室温

注入量:

1 µL

流速:

0.33 mL/分

移動相 A:

0.1% ギ酸水溶液

移動相 B:

0.1% ギ酸アセトニトリル溶液

グラジエント:

表を参照

グラジエント

データ管理

クロマトグラフィーソフトウェア:

Empower 3 Feature Release 5

インフォマティクス:

Empower 3 Feature Release 5

図 1.6 種類のサルファ剤の化学構造

結果および考察

表面多孔性粒子は、同等のシステム背圧での効率の向上など、同等サイズの完全多孔性粒子と比較して、UHPLC 分離に多くの利点をもたらします。表面多孔性粒子の 1 つの利点は、製造上の性質により、粒子のサイズがより均一であることです。これにより、カラムにより効率的に充塡できます1。 最適化された充塡は、van Deemter 方程式および表面多孔性粒子対完全多孔性粒子のプロットで説明されるように、カラムの効率に大きな影響を与えます6-8。 これは、表面多孔性粒子が充塡されたベッドで均一性が向上していることによるものであり、カラムの効率に直接影響します。

van Deemter 方程式を使用して、カラム内拡散の経験的な追加ソースを評価します。この方程式は、3 つの項(A:渦拡散、B:縦方向拡散、C:質量トランスファー)で構成されています。表面多孔性粒子充塡の進歩により、カラム内に均一な流路が形成されることによって、A 項に関連する拡散へのこれらの寄与が減少します。表面多孔性粒子を使用すると、不浸透性のソリッドコアによって拡散に利用可能なボリュームが低減されるため、最適な線速度で B 項も大幅に減少します。低分子の場合、C 項、つまり質量トランスファーは大きな影響を及ぼしませんが、高分子の分析では、C 項はより大きな影響を及ぼします9

これらの利点の例は、2 つの異なる表面多孔性粒子カラムおよび完全多孔性粒子カラムを用いた、6 種のサルファ剤の分析に見られます。試験したカラムはすべて 2.1 x 50 mm で、粒子径は 2.x μm でした。表面多孔性粒子は 2.7 μm、完全多孔性粒子は 2.5 μm です。使用した移動相は水およびアセトニトリルで、それぞれ 0.1% ギ酸が含まれていました。流速 0.33 mL/分、カラム温度 30 ℃ を使用しました。グラジエントの詳細については、「メソッド」セクションを参照してください。

図 2.XSelect CSH C18、CORTECS C18+、および他社製表面多孔性(SPP)C18 の 3 つのカラムで得られた 6 種のサルファ剤の分離。ピーク同定:1)スルファジアジン、2)スルファチアゾール、3)スルファメタジン、4)スルファメトキシピリダジン、5)スルファクロロピリダジン、6)スルフィソキサゾール 

一見したところ、3 つのカラムの間で分離は同等のようです。スルファジアジンと比較した相対保持時間(表 1)により、3 種の材質の選択性が非常に類似していることが確認されます。表面多孔性粒子カラムは、完全多孔性粒子カラムと比較して相対保持時間が長くなっていますが、CORTECS C18 カラムおよび XSelect CSH C18 カラムの値は、他社製 SPP カラムと比べて、互いにより近接しています。これは、3 つのフェーズの間のカラムケミストリーの違いに起因する可能性があります。ただし、相対保持時間に差異が認められますが、クロマトグラフィーでは全体的な選択性が類似しています。 

表 1.レファレンスピークとしてスルファメタジンを使用した相対保持時間(α値)

6 つの分析種のピーク幅を 4.4% のピーク高さで調べ、それらの値を使用してピークキャパシティを決定することによって、この分離での最も顕著な差異がわかります。ピークキャパシティは、式 1 で説明されているように計算しました。ピークキャパシティの結果は表 2 に示されています。 

式 1.ピークキャパシティの計算。ここで、Pc はピークキャパシティ、Wavg は 4.4% での平均ピーク幅、tg はグラジエント時間です。 
表 2.各カラムで得られた各分析種の平均ピーク幅(n=3)、およびグラジエント時間 6.30 分を使用して計算したピークキャパシティ

表面多孔性粒子カラムでは、完全多孔性粒子カラムよりも高いピークキャパシティが得られます。他社製 SPP カラムのピークキャパシティは、XSelect CSH C18 カラムより 3% 高く、CORTECS C18 カラムのピークキャパシティは約 11% 高くなりました。特筆すべきは、CORTECS カラムは、他の表面多孔性粒子カラムと比較して、分離のピークキャパシティをほぼ 7% 向上させることができたことです。これらのカラムに見られる差異は、2 つのカラムの充塡手順の違いや充塡剤ケミストリーの違いに起因する可能性があります。すべての分析法を示すものではありませんが、サルファ剤の分析は、CORTECS カラムを使用することで利点がもたらされる一例です。 

結論

表面多孔性シリカベース粒子を使用して構築された CORTECS LC カラムは、あらゆる LC システムに最適なカラムです。van Deemter 方程式の A 項および B 項からの拡散の追加ソースを低減することにより、表面多孔性粒子カラムの分離性能の改善とカラム効率の向上が達成されます。特に、表面多孔性粒子はカラム内に均一に充塡することができ、バンドの広がりの低減および効率の向上の理想的な条件が作り出されます。これらの利点すべては、表面多孔性粒子および完全多孔性粒子の van Deemter のプロットに目を向けることによって、より徹底的に調べることができます。表面多孔性粒子による分離効率改善の一例は、サルファ剤のグラジエント分離です。CORTECS C18 カラムにより、分離の選択性を維持しつつ、完全多孔性粒子カラムと比較して分離のピークキャパシティが向上しました。他社製 SPP カラムと比較した場合でも、CORTECS C18 カラムでのピークキャパシティの向上が実証されました。

参考文献

  1. Horvath CG, Preiss BA, Lipsky SR.Fast Liquid Chromatography: An Investigation of Operating Parameters and the Separation of Nucleotides on Pellicular Ion Exchangers.Analytical Chemistry.(39) 1967, 1422.
  2. Manns D, Mansfield AK. A Core-Shell Column Approach to a Comprehensive High-Performance Liquid Chromatography Phenolic Analysis of Vitis vinifera L. and Interspecies Hybrid Grape Juices, Wines, and Other Matrices Following either Solid Phase Extraction or Direct Injection.Journal of Chromatography A.(1251) 2012.111-121.
  3. Nguyen J, Swann T. USP Method Modernization Using “Equivalent L/dp” and “Equivalent N” Allowed Changes with CORTECS C8 and CORTECS UPLC C8 Columns­.Waters Application Note. 720005666EN, 2016.
  4. Berthelette K, Swann T. USP Method for the Impurity Analysis of Loratidine Using CORTECS C­Columns.Waters Application Note. 720005579EN, 2016.
  5. Nguyen J, Swann T. Examples of USP Method Modernizations Using “Equivalent L/dp” and “Equivalent N” Allowed Changes with CORTECS C8­ Columns.Waters Application Note. 720005988EN, 2017.
  6. Cabooter D, Fanigliulo A, Bellazzi G, Allieri B, Rottigni A, Desmet G. Relationship Between the Particle Size Distribution of Commercial Fully Porous and Superficially Porous High-Performance Liquid Chromatography Column Packings and Their Chromatographic Performance.Journal of Chromatography A.(1217) 2010.7074-7081.
  7. DeStefano J, Langlois T, Kirkland J. Characteristics of Superficially Porous Silica Particles for Fast HPLC: Some Performance Comparisons with Sub-2-µm Particles.Journal of Chromatographic Science (46) 2008.254-260.
  8. Waters T, Wyndham K, Shiner S, Walsh D, Okandeji O, Savaria M, Iraneta P, Turner J, Boissel C, McCall S. Advances in Particle and Packing Technology for Higher Efficiency Ultraperformance LC Columns.Waters Scientific Poster HPLC Conference 2013.
  9. Hayes R, Ahmed A, Edge T, Zhang H. Core-Shell Particles: Preparation, Fundamentals, and Applications in High Performance Liquid Chromatography.Journal of Chromatography A.(1357) 2014.36-52.

謝辞

Jennifer Simeone, Pat McConville, Mark Trahan

720007250JA、2021 年 10 月 改訂

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