MaxPeak High Performance Surface を採用した ACQUITY Premier LC カラムを使用することで、リン酸化化合物の回収率が向上し、ピーク形状が改善することが示されています1。本研究は、MaxPeak Premier カラムの利点をさらに示すために 2 つの部分に分けて行いました。最初の部分では、ACQUITY Premier LC カラムにより、ウォーターズ以外の LC システムを使用する場合でも分離の質を向上できることが示されています。Agilent 1290 LC システムに設置された 4 本の C18 カラムを使用して、2 種のリン酸化化合物を含む低分子のパネルを分離しました。本研究のパート 2 では、2 μm 以下の粒子で得られた改善が 2.5 μm の粒子でも得られることを示します。標準 ACQUITY UPLC システムに 2 種類の C18 カラムを取り付け、同じ混合物について調べました。ACQUITY Premier カラムでは、リン酸化化合物の分析において、粒子径に関係なく、ステンレススチール製ハードウェアで構成されたカラムと比較して大幅な改善が見られました。
金属表面、特にカラムハードウェアへの吸着は、低分子分析ワークフローにおいて、陰イオン性官能基(カルボキシル基やリン酸基)と露出した金属との相互作用により発生する一般的な問題です。この現象は、一般に非特異的吸着と呼ばれてピーク面積の減少につながり、極端な場合は分析種が完全に失われる可能性があります。ピーク形状の乱れも発生する可能性があり、特にテーリングの増加が顕著です。メドロン酸のような不動態化添加剤を使用するなど、吸着効果を軽減する方法はありますが2、これらの軽減手法には時間がかかり、それぞれ固有の問題があり、必ずしも有効とは言えません。
各プローブの標準品の原液を作製し、記載の通りに混合しました。90:10 アセトニトリル:水のサンプル希釈液を使用して最終的なサンプル混合液を作製しました。チオ尿素(5 μg/mL)、メトプロロール酒石酸(300 μg/mL)、フタル酸ジプロピル(40 μg/mL)、アミトリプチリン(10 μg/mL)、プレドニゾン(10 μg/mL)、ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム(10 μg/mL)、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウム 10 μg/mL をシステムに注入しました。
LC システム: |
Agilent 1290 Infinity I(粒子径 2 μm 以下のカラム)、 ACQUITY UPLC H-Class(粒子径 2 ~ 3 μm のカラム) |
検出: |
254 nm での UV 検出 Agilent 1290 での DAD ACQUITY UPLC での PDA |
バイアル: |
TruView LCMS 認定透明ガラス(製品番号:186005668CV) |
カラム: |
ACQUITY Premier BEH C18、1.7 μm、2.1 × 50 mm ACQUITY Premier HSS T3、1.8 μm、2.1 × 50 mm XBridge Premier BEH C18、2.5 μm、2.1 × 50 mm A 社製 EC-C18、1.9 μm、2.1 × 50 mm A 社製 HPH-C18、1.9 μm、2.1 × 50 mm A 社製 HPH-C18、2.7 μm、2.1 × 50 mm |
カラム温度: |
30 ℃ |
サンプル温度: |
オフ |
注入量: |
2 μL |
流速: |
0.50 mL/分(2 μm 以下) 0.34 mL/分(2.x μm) |
移動相 A: |
10 mM ギ酸アンモニウム(pH 3.0) |
移動相 B: |
アセトニトリル |
グラジエント: |
表を参照 |
クロマトグラフィーソフトウェア: |
Empower 3 Feature Release 4 |
MaxPeak High Performance Surface(HPS)テクノロジーを採用した Waters MaxPeak Premier カラムは、金属に吸着しやすい化合物の吸着を回避するための頑健で有効なテクノロジーです。HPS テクノロジーを採用した MaxPeak Premier カラムは、Waters ACQUITY Premier システムだけでなく、ウォーターズの多岐にわたるカラムケミストリーにわたって取り揃えられています。MaxPeak Premier カラムと MaxPeak Premier システムを組み合わせることで最高のパフォーマンスが得られ、メーカーに関係なく、MaxPeak Premier カラムをどの LC システムと組み合わせても大きなメリットが得られます。この点を実証するため、Agilent 1290 クロマトグラフ装置を使用して、6 種類のプローブのパネルを 4 種類の異なる C18 カラムで分離しました。2 種類の ACQUITY Premier カラムと 2 種類の他社製ステンレススチール製カラムを、DAD 検出を用いてグラジエントモードで試験しました。図 1 に分離の代表的なクロマトグラムを、図 2 にピーク形状の違いを強調する X 軸を拡大したクロマトグラムを示します。
試験混合物中の金属に吸着しにくい化合物のパフォーマンスは同等でしたが、クロマトグラフィーの分析によると、ヒドロコルチゾン(成分 3)およびデキサメタゾンリン酸エステルナトリウム(成分 4)については、MaxPeak Premier カラムによってテーリングが大幅に減少し、ピーク面積が大幅に増加していることがわかります。他社製カラムと比較して、リン酸化化合物の USP テーリングが約 0.2 単位減少し、デキサメタゾンリン酸エステルナトリウムについては、ピーク面積が約 30% も顕著に増加しました。MaxPeak Premier カラムを使用するだけで、これらの分析種やその他の金属に吸着しやすい分析種について顕著な利点がもたらされます。
MaxPeak Premier カラムの利点をさらに実証するために、上記の分離を ACQUITY UPLC H-Class システムでより大きい粒子径にスケールアップしました。分析法移管にはグラジエント遅延の調整は含めませんでしたが、粒子径の変更に応じた流量とグラジエント時間の変更を取り入れました。カラム寸法は 2.1 × 50 mm に維持しました。図 3 に、粒子径 2 ~ 3 μm のカラムである XBridge Premier BEH C18 および A 社製 HPH-C18 カラムでの ACQUITY UPLC H-Class を使用したサンプル混合物の分離を示します。図 4 に、ベースラインを拡大した同じクロマトグラムを示し、ピーク形状の違いをさらに表示しています。
粒子径が 2.5 μm の固定相でも MaxPeak Premier カラムの方で良好なリン酸化化合物のピーク形状が得られ、中性プローブと塩基性プローブのパフォーマンスが維持されています。塩基性プローブであるメトプロロールは、ACQUITY UPLC の低システム拡散およびベース粒子との二次的相互作用により、ピーク形状がいずれの材質でも不良になっています。拡散が少ないシステムは、拡散が多いシステムよりもピークの乱れの影響を受けやすくなります。それは拡散が多いシステムでは、ピークが人為的に広がり、二次的な相互作用がマスクされるからです。先ほどと同様、他社製ステンレススチール製カラムを使用した場合、デキサメタゾンリン酸エステルのピーク面積が約 30% 減少していました。 MaxPeak Premier カラムの利点は、LC システムや粒子径に関係なく発揮されますが、MaxPeak Premier システムと組み合わせた場合に最も大きな効果が得られます。
2 種類の試験条件下で、2 種類のリン酸化された有効医薬品成分を含む 6 種類の化合物を計 6 種類のカラムで分離しました。Agilent 1290 クロマトグラフ装置に、粒子径 2 μm 以下のカラム 4 種類(MaxPeak Premier LC カラム 2 種類、従来の LC カラム 2 種類)を取り付けました。MaxPeak Premier カラムはピークテーリングの減少を示し、従来のスチール製カラムと比較してリン酸化化合物のピーク面積が約 30% 大きくなっていました。この分離を、ACQUITY UPLC H-Class を使用して、2 種類の 2 ~ 3 μm のカラム(XBridge Premier BEH C18 および他社製 C18)に移管しました。粒子径のより大きなカラムでも同様の結果が得られました。これは、MaxPeak Premier カラムにより、全体的な分離品質が向上することを意味します。粒子径やクロマトグラフィーシステムに関係なく、MaxPeak Premier カラムはリン酸化化合物の分離と分析に大きな利点をもたらします。また、他の酸性分析種へのアプリケーションにも有用であると考えられます。
720007197JA、2021 年 3 月