• アプリケーションノート

液体クロマトグラフィーでの温度感受性による分離におけるカラムコンパートメントの温度調節およびプレヒーティングの重要性

液体クロマトグラフィーでの温度感受性による分離におけるカラムコンパートメントの温度調節およびプレヒーティングの重要性

  • Zhimin Li
  • Paula Hong
  • Patricia R. McConville
  • Waters Corporation

要約

液体クロマトグラフィーにおいては、カラムコンパートメントの温度調節および移動相プレヒーティングのメカニズムを理解し、クロマトグラフィー分離に及ぼす影響を理解することが重要です。このアプリケーションノートでは、カラムコンパートメント設計の違いが、LC 装置ベンダー各社でのクリティカルペアの温度感受性化合物の分離能と選択性に及ぼす影響について説明します。分析法開発および分析法移管の際の、カラムコンパートメント温度調節の設計および移動相プレヒーティングに関する一般的な考慮事項についても記載しています。 

アプリケーションのメリット

  • カラムコンパートメントの選択肢の拡張により、ルーチン分析および分析法開発に最適なプラットホームとして ACQUITY Arc および ACQUITY Arc Bio システムを強化
  • ACQUITY Arc CMA は、分析法移管および分析法開発に有用なアクティブプレヒーティングと拡張カラム切り替え機能を提供

はじめに

分離温度は、保持時間、選択性、ピーク形状に影響を及ぼす可能性があるため、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)において重要な役割を果たします。温度は LC 分析法の開発時および移管時に管理すべき重要な要素の 1 つですが、多くの場合、カラム温度調節および移動相プレヒーティング、およびそれらがクロマトグラフィーに及ぼす影響についての理解が不完全なままになっています。 

今日の分析装置市場では、ほとんどの LC システムに、専用のカラムコンパートメントまたはさまざまなタイプのカラムコンパートメントの選択肢が提供されています。一般的に、カラムコンパートメントにはブロックヒータータイプと空気循環タイプの 2 種類があります1,2。 温度調節機構の違いにより、熱伝導効率、温度平衡、およびカラム内の温度勾配の生成に違いが生じる可能性があります。ほとんどの LC ベンダーは、十分な移動相のプレヒーティングを行うために、溶媒をカラムに導入する前に、設定した分析法の温度まで移動相を加熱するプレヒーターを提供しています。移動相プレヒーティングはパッシブの場合もアクティブの場合もあります。パッシブプレヒーターは、カラムコンパートメント内の温度制御された表面に直接固体接触する、指定長さのキャピラリーです。アクティブプレヒーターは、内部ヒーターエレメントを使用して溶離液の温度をアクティブに制御します。これらの変数はすべて、温度感受性の分離の移管性に影響を及ぼす可能性があります。 

この点を説明するために、ACQUITY Arc および ACQUITY Arc Bio ファミリーのカラムコンパートメントの新しい拡張形である ACQUITY カラムマネージャ(CMA)で構成した ACQUITY Arc システムで、温度感受性の高い分離を実施しました3。 また、カラム温度調節とプレヒーターの設計が異なるさまざまなベンダーの LC システムでも同じ実験を行いました。LC での分離に影響を及ぼす可能性のある装置パラメーターは多くありますが、このアプリケーションノートでは、カラムコンパートメント特性および移動相のプレヒーティングの影響に焦点を当てます。 

実験方法

サンプルの説明

Waters 鎮痛剤混合物標準品(製品番号 186006350)を 90% 水/10% アセトニトリルに添加し、濃度が 50 μg/mL になるように調製しました。 

分析条件

LC 条件

LC システム:

CMA 付きACQUITY Arc

カラム温度:

35 ℃、40 ℃、45 ℃、50 ℃、55 ℃、60 ℃

各温度での平衡化時間:

30 分

アクティブプレヒーター:

プレヒーティングあり – プレヒーティング有効

プレヒーティングなし – プレヒーティング無効

検出:

2998 フォトダイオードアレイ(PDA)検出器

波長:

245 nm

カラム:

XBridge BEH C18 カラム、130 Å、3.5 µm、4.6 mm × 150 mm(製品番号:186003034)

注入量:

5 µL

流速:

1 mL/ 分

移動相 A:

0.1% ギ酸水溶液

移動相 B:

0.1% ギ酸アセトニトリル溶液

グラジエント:

15 ~ 30% B/7 分

データ管理

クロマトグラフィーソフトウェア:

Empower FR3

結果および考察

以前の研究により、鎮痛剤混合物の分離は温度感受性であることが分かっています4。図 1 では、CMA で構成した ACQUITY Arc システムで、設定したカラムコンパートメント温度での鎮痛剤混合物の分離を、アクティブプレヒーターを有効または無効にした場合で比較しています。このサンプル混合物では、成分 6(フェナセチン)および成分 7(サリチル酸)が、分離能と選択性において温度の影響を強く受けるクリティカルペアとなっています。このペアをプローブとして使用し、カラムコンパートメントの温度調節およびプレヒーティングが LC 分離に及ぼす影響を試験しました。 

プレヒーティングの影響

図 1 に示すように、移動相のプレヒーティングありの場合となしの場合で、クリティカルペアの選択性と分離能に非常に大きな違いが認められました(カラムコンパートメントは図 1 に示す温度に設定しました)。一般的な傾向として、プレヒーティングなしの高温での分離プロファイル(図 1B の 45 ℃ を参照)は、プレヒーティングありの低温での分離プロファイルと類似していました(図 1A の 35 ℃ を参照)。プレヒーティングなしでは、カラムに入る移動相がカラムオーブンの設定温度に完全に平衡化されていないため、カラムコンパートメントの設定温度より低い温度で分離が行われます。すべての鎮痛剤混合物のピークが、温度の上昇とともに短い保持時間にシフトしていますが、プレヒーティングありでの保持時間シフトの程度の方が、プレヒーティングなしの保持時間シフトよりも大きくなっています。 

図 1. CMA 付きの ACQUITY Arc システムで取り込まれた鎮痛剤混合物の分離に対する温度の影響。(A)アクティブプレヒーター有効(プレヒーティングあり)、(B)アクティブプレヒーター無効(プレヒーティングなし)。 

図 2 に、アクティブプレヒーターが有効(プレヒーティングあり)およびアクティブプレヒーターが無効(プレヒーティングなし)の状態で、温度によって変化するピーク 6 の保持時間を示します。プレヒーターが有効の場合、温度による保持時間の変化の勾配は、プレヒーティングなしの場合の勾配よりも大きくなっています。これにより、プレヒーティングなしよりもプレヒーティングありの方が、分析カラムの移動相が設定温度に速く到達したことが示されています。プレヒーターを無効にすると、カラム壁とカラム内の移動相の流れの温度が一致せず、カラム内で温度勾配が生じる可能性があります。 

図 2. CMA 付きの ACQUITY Arc システムで、アクティブプレヒーターが有効(プレヒーティングあり)および無効(プレヒーティングなし)の場合の、ピーク 6 の温度による保持時間の変化 

カラムコンパートメントの温度調節の影響

溶媒プレヒーティングに加え、カラム温度調節の設計も分離に影響を及ぼす可能性があります。この試験では、異なるタイプのカラムコンパートメント温度調節機構を備えた 4 つの UHPLC システムを選択しました(表 1)。そのうち、ACQUITY Arc システム(アクティブプレヒーター付き)とベンダー X(パッシブプレヒーター付き)はブロックヒータータイプです。ベンダー Y(パッシブプレヒーター付き)およびベンダー Z(プレヒーターなし)は空気循環タイプです。一般に、ブロックヒータータイプの場合、カラムは熱源に直接接触するため、効率的でリアルタイムにカラム壁が加熱されます。空気循環タイプは空気浴の概念に基づいています。金属と比較して空気は熱伝導が悪いため、空気浴は、リアルタイムでカラム温度を制御する効果は低くなります。ただし、空気循環タイプのカラムコンパートメント内の空気を循環させると、カラムの加熱が効果的になります2。 

表 1. 4 つの UHPLC システムのカラムコンパートメントのタイプとプレヒーティング機能のリスト 

ACQUITY Arc システムとベンダー X(いずれも同様の U 型設計のブロックヒーターを備えているタイプ)では、クリティカルペアについて、それぞれプレヒーティングあり(図 3A)とプレヒーティングなし(図 3B)で、同様の選択性と分離能が得られました。プレヒーターのタイプ(アクティブとパッシブの違い)によって、クリティカルペアの分離プロファイルに大きな影響はありませんでした。 

図 3. ブロックヒータータイプ(ACQUITY Arc およびベンダー X)における鎮痛剤混合物中のクリティカルペアの高温での分離プロファイル(分離能の値はラベルで示す):
(A)プレヒーティングあり。ACQUITY Arc ではアクティブプレヒーターを有効にしました。ベンダー X ではパッシブプレヒーターが流路中にありました。
(B)プレヒーティングなし。ACQUITY Arc ではアクティブプレヒーターを無効にしました。ベンダー X ではパッシブプレヒーターを流路から取り外しました。 

一方、移動相をプレヒーティングしない場合、ブロックヒータータイプでのクリティカルペアの選択性と分離能(図 4A、ACQUITY Arc およびベンダー X)は、空気循環タイプの場合(図 4B、ベンダー Y およびベンダー Z)と大きく異なっていました。ブロックヒータータイプでは、高温でのクリティカルペアの分離プロファイル(図 4A、45 ℃ を参照)は、空気循環タイプでの低温での分離と類似しています(図 4B、35 ℃ を参照)。 

図 4.(A)ブロックヒータータイプ(ACQUITY Arc およびベンダー X)および(B)空気循環タイプ(ベンダー Y および Z システム)で移動相のプレヒーティングなしでの、鎮痛剤混合物中のクリティカルペアの高温での分離プロファイル 

ただし、移動相をプレヒーティングした場合、クリティカルペアの分離プロファイルは、ブロックヒータータイプ(ACQUITY Arc システム)と空気循環タイプ(ベンダー Y)で同様の挙動を示しました(図 5)。この観察結果は、移動相をプレヒーティングすることで、異なる温度調節設計によるカラム内の温度平衡化の違いを最低限に抑えることができることを示しています。 

図 5. ブロックヒータータイプの ACQUITY Arc、および空気循環タイプのベンダー Y でプレヒーティングありでの、鎮痛剤混合物中のクリティカルペアの高温での分離プロファイル(分離能の値はラベルで示す)

結論

このアプリケーションノートでは、CMA 付きの ACQUITY Arc システムおよびさまざまなベンダーの異なる温度調節設計を持つ LC システムで、温度感受性の高い分離の試験を実施しました。本研究により、温度調節のタイプや移動相プレヒーティングを含むカラムコンパートメントの特性が、温度感受性の分離に大きく影響することが示されました。異なる LC システム間で分析法を開発または移管する場合の一般的な考慮事項は次のとおりです。

  • 新しい分析法を開発するときは、必ずプレヒーターを使用すること
  • プレヒーターなしの分析法をすでに開発している場合は、同じタイプのカラムコンパートメント温度調節の使用が推奨される

参考文献

  1. Zhu PL, Dolan J. What is the True Temperature, LCGC, Volume 14, Number 11, Nov 1996. 
  2. Heidorn M. The Role of Temperature and Column Thermostatting in Liquid Chromatography, Thermo Fisher Scientific, Germany, White Paper 71499, 2016.
  3. Instrument Specifications, ACQUITY Arc System, https://www.waters.com/webassets/cms/library/docs/720005400en.pdf.
  4. Hong P, McConville P. Method Transfer from Vendor X 1100 Series LC System to the ACQUITY UPLC H-Class System: The Effect of Temperature, Waters Tech Brief, Nov. 2014, 720005204en

720007137JA、2021 年 2 月

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