AOAC 分析法移管:Arc™ HPLC および UV-Vis 検出器を使用した、エキナセアが含まれている栄養補助食品および食用成分中のフェノール性化合物の測定
要約
エキナセアが含まれている栄養補助食品や食用成分では、カフタル酸、クロロゲン酸、シナリン、エキナコシド、チコリ酸などのフェノール化合物が一般的に検出されます。このアプリケーションノートの分析法は、AOAC 公定分析法 2018.08 の直接分析法移管です1。 この公定分析法には、分析法の正常なセットアップの評価に使用する最低限の推奨性能特性が記載されています。紫外線/可視光(UV/Vis)検出を搭載した Arc HPLC システムを、CORTECS™ T3 分析カラムおよび Empower™ 3 クロマトグラフィーデータシステム(CDS)ソフトウェアと組み合わせて使用することにより、エキナセアの茶、カプセル、液体中のフェノール化合物の測定用 AOAC 分析法の要件を満たす分析法移管が実証されました。
アプリケーションのメリット
- Arc HPLC を使用することで、移管された分析法の分析時間が短くなり、流速が低減され、溶媒消費量が減少し、ラボの効率が向上
- CORTECS T3 カラムにより、近接して溶出する化合物の分離、分析法の再現性、正確性が向上し、AOAC 分析法の最小推奨性能特性を上回る
- Waters™ カラムカリキュレーターツールを使用した、シンプルなグラジエント液体クロマトグラフィー(LC)分析法の移管
はじめに
エキナセア栄養補助食品には、カフタル酸、クロロゲン酸、シナリン、エキナコシド、チコリ酸などのフェノール化合物が一般的に含まれており、ほとんどの場合、風邪やインフルエンザなどの上気道感染症の予防と治療に、および免疫賦活剤として使用されます2。エキナセアは、成人および小児に対して最も頻繁に使用される天然物の非ビタミン/非ミネラル性栄養補助食品でした3。 さまざまなエキナセア製品は、その使用がますます好評になり、成長し続けています。AOAC は、標準分析法性能要件(SPMR)および AOAC 公定分析法 2018.08、「エキナセアが含まれている栄養補助食品および食用成分中のフェノール化合物の HPLC-UV 分析、ファーストアクション 2018 年」(Phenolic Compounds in Dietary Supplements and Dietary Ingredients Containing Echinacea HPLC-UV First Action 2018)を発表しました。この SPMR には、分析法の評価に使用する最低推奨性能特性が記載されています。このアプリケーションノートでは、UV-Vis 検出、CORTECS T3 カラム、Empower 3 CDS ソフトウェアと組み合わせた Arc HPLC システムへの AOAC 分析法 2018.08 の移管が実証されています。
実験方法
材料と試薬
標準化合物
カフタル酸、クロロゲン酸、シナリン、エキナコシドは Cayman Chemical から入手しました。チコリ酸標準試料は Fisher Scientific から入手しました。
試薬
アセトニトリルとメタノール(HPLC グレード)は Honeywell Research Chemicals から入手しました。
リン酸 LiChropur™ (85%)は Supelco から入手しました。
水は PureLab flex ELGA システム(LabWater United States of America)から入手しました。
フェノール化合物が含まれている製品は、地元の小売店(マサチューセッツ州)から購入しました。
サンプル前処理
キャリブレーション標準試料の調製:個々の標準試料は、60:40(V/V)メタノール:水中に 1000 µg/mL に調製し、-20 ℃ で保管しました。
標準試料のキャリブレーション濃度範囲は以下のとおりです。
サンプル前処理:AOAC 分析法に記載されているとおり
LC 条件
LC システム: |
Arc HPLC システム |
検出: |
PDA 単一波長(330 nm) 2998 PDA スペクトル 200 ~ 600 nm |
バイアル: |
LCGC 品質証明透明ガラス、マキシマムリカバリー、キャップおよびプレスリット PTFE/シリコーンセプタム付き、1.5 mL(製品番号:186000327C) |
フィルター: |
シリンジフィルター 0.2 µm PTFE(製品番号:WAT200556) |
カラム: |
CORTECS T3 カラム、120 Å、2.7 µm、3 mm × 100 mm(製品番号:186008489) |
カラム温度: |
25 ℃ |
サンプル温度: |
5 ℃ |
注入量: |
3 µL(茶およびカプセル)、2 µL(濃縮液サンプル) |
流速: |
1.18 mL/分 |
移動相:A: |
0.1% リン酸水溶液 |
移動相 B: |
アセトニトリル |
サンプル希釈液: |
60:40 メタノール:水 |
分析法移管からのグラジエント
結果および考察
液体クロマトグラフィーメソッドの条件を CORTECS T3 カラムに移管し、Waters カラムカリキュレーター 2.0 ツール4 を使用して、カラムサイズ、グラジエントのカラム容量、システムのデュエルボリューム、注入量に関して適切にスケーリングしました。AOAC 分析法でのカラムでは、粒子径 5 µm の C18 逆相カラムを使用しますが、最新の Arc HPLC システムを使用すると、粒子径 2.7 µm の CORTECS T3 を使用できます。粒子径を小さくすることのメリットにより、カラム長を短くして、必要なクロマトグラフィー性能を保持できます。その結果、分析時間が短縮され、移動相の消費量が削減されます。図 1 に、元のグラジエントを CORTECS T3 カラムに移管するのに使用するカラムカリキュレーターツールが示されています。
最低濃度のキャリブレーション標準試料 #7 のシグナル/ノイズ比、分離度、テーリング係数は、Empower CDS ソフトウェアを使用して決定しました。今回試験したすべてのフェノール化合物の分離度は 2.8 以上でした。この分析法の検出限界(LOD)および定量限界(LOQ)はキャリブレーション標準試料 #7 を下回っていました。キャリブレーション標準試料 #7 のフェノール化合物の、CORTECS T3 カラムで得られた分離を示すクロマトグラムが、図 2 に示されています。
検量線:直線性、面積の精度、保持時間
フェノール化合物のマルチポイント検量線を、AOAC 分析法のサンプル前処理セクションの記載通りに作成しました。この検量線は、図 3 に示されているように良好な直線性(R2 ≥ 0.995)を示しました。
システム適合性
AOAC 分析法では、キャリブレーション標準試料 #4 を 5 回繰り返して注入することによってシステム適合性を判定することを推奨します。キャリブレーション標準試料 #4 のクロマトグラムが、5 回の繰り返し注入で得られた %RSD とともに、図 4 に示されています。各フェノール化合物の面積の %RSD はすべて 0.7% 未満であり、十分に公定分析法で説明されている SMPR の限度内でした。
フェノール化合物製品の分析
サンプルは 3 回繰り返して前処理し、各フェノール化合物の量は、エキナセアのカプセルと茶のパーセント重量によって計算しました。液体のエキナセアの場合、結果をパーセント容量で計算しました。フェノール化合物含有製品の分析での定量結果が %RSD とともに、表 1 に示されています。
フェノール化合物含有製品の分析の代表的なクロマトグラムが、図 5 に示されています。
結論
このアプリケーションノートでは、粒子径 2.7 µm の CORTECS T3 カラムを使用した Arc HPLC システムへの AOAC 分析法 2018.08 の分析法移管が説明されています。ソリッドコアカラムテクノロジーの使用により、カフタル酸とクロロゲン酸の分離、およびシナリンとエキナコシドの分離の改善が可能になりました。CORTECS T3 カラムを使用することによって達成される分離効率の向上により、対象化合物ピークの波形解析が簡単になるだけでなく、対象化合物と被験サンプル中に存在する他のマトリックス共抽出物の間の分離の向上が実現します。この例は、茶サンプルのクロマトグラムで観察できます。分離の改善と合わせて、分析時間が 18 分からわずか 7 分弱に短縮され、分析時間の短縮だけでなく、移動相の使用量も削減されました。グラジエントメソッドの条件および注入量は、Waters カラムカリキュレーターを使用して適切にスケーリングされました。Arc HPLC および CORTECS T3 カラムへの分析法の移管により、優れた分離度、再現性、正確性、直線性が示され、分析法について SMPR で設定されている要件に適合しました。全体として、Arc HPLC および CORTECS T3 カラムに移管した分析法の利点には、分析時間の短縮、流速の低減、溶媒消費量の減少、フェノール化合物の分離の向上などがあります。
参考文献
- AOAC Official Method 2018.08 Phenolic Compounds in Dietary Supplements and Dietary Ingredients Containing Echinacea HPLC-UV First Action 2018.
- David S, Cunningham R. Echinacea for the prevention and treatment of upper respiratory tract infections: a systematic review and meta-analysis.Complementary Therapies in Medicine.2019; 44:18–26.
- Barnes PM, Bloom B, Nahin RL.National Center for Health Statistics.[accessed August 25, 2011]; Vital Health Stat. 2008 Series No.12, http://www.cdc.gov/nchs/data/nhsr/nhsr012.pdf.
- Column Calculator Version 2.0 Release Notes (waters.com).
720007726JA、2022 年 9 月