バイオアナリシスでの分析法開発におけるペプチド固相抽出(SPE)の自動化
要約
バイオアナリシスにおいては、頑健で信頼できるサンプル前処理および化合物抽出のための作業のパラメーターを定義するために、慎重な分析法開発が必要になります。Andrew+™ ピペッティングロボットによる自動 SPE サンプル前処理の開発により、ユーザーはより複雑なタスクに焦点を合わせることができます。
アプリケーションのメリット
- Andrew+ ピペッティングロボットを使用した自動化により、Oasis™ ペプチド分析法開発用 96 ウェル µElution プレートを使用したミックスモード SPE 吸着剤の選択プロセスが簡素化され、迅速で信頼性と再現性が高い分析法が実現し、最適な分析種回収が達成されます。Waters™ Xevo™ タンデム四重極および Waters™ ACQUITY™ Premier UPLC™ システムを統合することにより、ペプチド定量用のエンドツーエンドの頑健なソリューションを実現
- µElution プレート型式での SPE ワークフロー用に簡単に適用できる OneLab™ プロトコルにより、高いサンプルスループットが可能に
- Andrew+ ピペッティングロボットでは、ラボ環境で一般的に使用される実験器具を用いることで、セットアップや実行が便利に
はじめに
生体サンプルの LC-MS/MS 分析においては、ターゲット分析種の定量に悪影響を与える可能性があるマトリックス化合物を取り除くために、大がかりなサンプルクリーンアップが必要になります。ペプチドベースおよびタンパク質ベースの医薬品には、それぞれに固有の分析法開発における課題があり、対処するためには時間と労力がかかります。
本アプリケーションノートでは、血漿サンプルからのペプチドの、再現性のある頑健な抽出法を開発するための、Oasis ペプチド分析法開発用 96 ウェル µElution プレートを使用した自動 SPE(固相抽出)プロトコルについて説明しています。96 ウェルプレート型式には、2 つの Oasis ミックスモードイオン交換ケミストリーがそれぞれ 6 行含まれています。これはミックスモード陰イオン交換体(MAX)であり pKa > 2 ~ 8 のペプチドに最適です。弱陽イオン交換体(WCX)は通常 pKa > 10 のペプチドに用いられます。サンプル前処理法の開発は、単一の SPE プロトコルを使用して迅速で簡単に達成できます。
結果および考察
SPE 吸着剤選択法の開発におけるすべてのステップは、OneLab ソフトウェアでスクリプトを作成し、Andrew+ ピペッティングロボットによって自動化されます。これには、SPE のサンプル希釈、ローディング、平衡化、洗浄、溶出、レファレンスサンプルのポスト添加、および真空のコントロールが含まれます。この例の SPE 抽出サンプルは、LC-MS/MS によって定量しました。Andrew+ ピペッティングロボットを使用する SPE 吸着剤選択プロトコルの自動化により、最小限の手動介入によってプロセス全体が迅速、再現可能、頑健になります。さらに、アプローチを自動化することにより、複数の変数(例えば、洗浄溶媒や溶出溶媒のさまざまな組成、より良い回収のための真空設定の変更など)を論理的かつ再現可能な方法で試験できるようになります。血漿サンプルからのペプチドの固相抽出の PST-SPE ワークフローが図 2 に示されています。
SPE 試薬
前処理: |
4% リン酸水溶液(v/v)。 |
洗浄 1: |
5% 水酸化アンモニウム水溶液(v/v)。 |
洗浄 2: |
20% アセトニトリル水溶液(v/v)。 |
溶出: |
1% トリフルオロ酢酸を含む 75/25% アセトニトリル/水(v/v)。 |
このプロトコルでは、Oasis ペプチド分析法開発用 96 ウェル µElution プレートを使用する吸着剤選択法の自動化を、添加したヒト血漿サンプルからの 4 つの分析種(ロイプロリド、ゴセレリン、プラムリンチド、ビバリルジン)の抽出を用いて実証しています。通常は、ペプチドの特性に応じて、2 種類の Oasis ミックスモード吸着剤ケミストリー WCX および MAX のいずれかに固有の良好な分析種回収が行われます。この場合、平均 Pi が 8.00 を超えるロイプロリド、ゴセレリン、プラムリンチドは、WCX 吸着剤を使用して良好な回収率が得られた一方で、平均 Pi が 3.91 のビバリルジン では MAX 吸着剤を使用して良好な回収率が得られました(図 3)。
手動から自動プロセスへの分析法移管の再現性と頑健性を実証するため、このプロトコルを手動で行った場合と Andrew+ ピペッティングロボットを使用して自動的に行った場合の両方で実行しました。手動サンプル処理と自動プロセスで生成された結果が表 2 に示されています。表 2 からは、このプロトコルが Andrew+ ピペッティングロボットで簡単に高い信頼度で適用できることが実証されています。繰り返し(n = 4)間の狭い %RSD(5% 未満)は、Andrew+ ピペッティングロボットのピペット操作の精度の高さを示しています。手動プロセスと自動の差が 10% 未満(最大 5.4%)であることで、ロボットへの分析法移管が信頼できることが示されています。
自動制御による真空で IKA VACSTAR ポンプに接続された状態の Microplate Vacuum+ 抽出マニホールドにより、階段状にコントロールされた圧力(圧力グラジエント)が OneLab ソフトウェア内で提供されます。これは、良好な回収率を得るための吸着および溶出の比率/時間が非常に重要なペプチド SPE において特に有用です。これを実証するため、サンプルロードおよび溶出のステップでの段階的増加(例えば、20 秒間 950 mbar + 30 秒間 800 mbar + 10 秒間 700 mbar 減圧)の代わりに単一の真空設定(60 秒間 700 mbar 減圧)を使用した実験が行われました。プロトコル一式は、OneLab プロトコルライブラリーの「Peptide SPE Method Development」(ペプチド SPE 分析法開発)にあります。表 3 に示されている結果により、単一の設定(非グラジエント)圧力では、自動制御グラジエント圧力と比べて、回収率が低くなり、ばらつきの多いデータになることが実証されています。
結論
本書では、Andrew+ ピペッティングロボットにより、ペプチド医薬品用 SPE メソッドを簡単に自動化および実行する能力が実証されています。
- 最適な SPE 吸着剤を使用したすべてのペプチドで、優れた回収率が達成できました。
- 繰り返し(n = 4)間の狭い %RSD(5% 未満)により、ピペッティングの精度が示されています。
- 手動処理と自動処理の差が 10% 未満(最大 5.4%)であることにより、Andrew+ システムへの分析法移管が信頼できることが示されています。
- 自動制御された真空で、より良好な分析法コントロールが可能になった結果、回収率が改善し、繰り返し実験の間のばらつきが低減されます。
- OneLab ソフトウェアは非常に使いやすく、経験のないユーザーでもスクリプトを簡単に作成してラボのプロトコルを実行できます。OneLab ソフトウェアはコンプライアンス対応であり、同じラボの同僚や他のラボの共同研究者など、世界中のあらゆる場所でプロトコルを安全に共有できます。
- Andrew+ ピペッティングロボットと OneLab ソフトウェアでのペプチド SPE 用の新しく開発されたスクリプトの連動により、複数のユーザーおよびラボをまたいだ簡単な分析法移管が可能になります。
参考文献
- Oasis Peptide Bioanalysis Reference Card.Waters Literature 720006298, 2018.
- OneLab protocol: Peptide SPE Method Development.
- Dunning CM, Lame M, Wrona MD, Haynes K. Development of a SPE LC-MS/MS Method Utilizing QuanRecovery Sample Plates With MaxPeak Performance Surfaces for the Bioanalytical Quantification of Pramlintide from Serum.Waters Application Note 720006527, 2019.
720007591JA、2022 年 4 月