• アプリケーションノート

2414 RI 検出器と組み合わせた Arc HPLC を使用した食品および飲料中の 5 種類の糖の分析における XBridge™ BEH Amide カラムの評価

2414 RI 検出器と組み合わせた Arc HPLC を使用した食品および飲料中の 5 種類の糖の分析における XBridge™ BEH Amide カラムの評価

  • Kim Van Tran
  • Euan Ross
  • Peter Hancock
  • Waters Corporation

要約

食品や飲料中の単糖(フルクトース、グルコース)および二糖(ショ糖、マルトース、ラクトース)などの糖は、ルーチンに検査されています。この検査により、製品開発と再配合がサポートされるとともに、ラベル表示が確認され、製品の一貫性、安全性、信頼性が確保されます。

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、食品や飲料中の糖の分析に使用される一般的な手法です。HPLC により、単糖と二糖の分離が可能になり、サンプル中に存在する糖とその量に関する情報が得られます。

このアプリケーションノートの目的は、5 種類の糖の分析において、シンプルなアイソクラティックメソッドを使用して、粒子径とカラム長の異なる 2 種類の XBridge BEH Amide カラムの性能を比較することです。Waters™ カラムカリキュレーターツールを使用して、以前に公開されたメソッドを 4.6 mm × 250 mm、3.5 µm カラムから 4.6 mm × 150 mm、2.5 µm カラムに移管しました。その結果、実行時間が大幅に短縮し、移動相の消費量が削減できました。直線性、USP ピーク分離度、保持時間とピーク面積の精度などの分析法の性能基準を、各カラムについて比較しています。2414 RI 検出器と組み合わせた Arc™ HPLC を使用して、両方の XBridge BEH Amide カラムにおけるアイソクラティックメソッドの性能を評価しました。

アプリケーションのメリット

  • XBridge BEH Amide カラムを使用することで、フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトースの保持および分離が実現するシンプルなアイソクラティックメソッドが可能になる
  • XBridge BEH Amide カラム、Arc HPLC、2414 検出器の組み合わせにより、さまざまな食品および飲料サンプル中に存在する糖のプロファイリングおよび定量が可能になる
  • Arc HPLC で XBridge BEH Amide XP カラムを使用した試験により、分析時間と溶媒消費量が削減できる可能性を実証

はじめに

糖は、天然に存在し、さまざまな機能を付与するために食品や飲料に添加されています。糖は、甘さだけでなく食感を提供し、増量剤、保存剤として機能するとともに、発酵における酵母の基質にもなります1

食品や飲料中の単糖(フルクトースとグルコース)、二糖(ショ糖、マルトース、ラクトース)などの糖は、製品の開発と再配合をサポートし、ラベル表示を確認し、製品の一貫性、安全性、真正性を確保するために、ルーチンに試験されています。

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、食品や飲料中の糖の分析に使用される一般的な手法です。HPLC により、単糖と二糖の分離が可能になり、サンプル中に存在する糖とその量に関する情報が得られます。数種類の食品および飲料の HPLC 分析の前に行う必要のあるサンプル前処理は通常わずかであり、製品が仕様範囲内にあり、ラベル表示と一致していることを確保するための正確で信頼性が高く、効率的なアプローチになっています。

単糖および二糖は一般的に使用される逆相 C18 カラムに保持されず、化合物の構造中に強い発色団がないため、これらの糖の分析にはいくつかの課題があります。ただし、これらの課題は、示差屈折率(RI)検出器などの紫外可視光(UV-Vis)に代わる検出器や、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)などの代替となるクロマトグラフィー分離手法を使用することにより、解決することができます。

このアプリケーションノートでは、5 種類の糖の保持および分離において、粒子径とカラム長が異なる 2 種類の XBridge BEH Amide カラムを使用するシンプルなアイソクラティックメソッドを実証および比較します。分析は、2414 示差屈折率(RI)検出器を装着した Arc HPLC システムを用いて行いました。

実験方法

材料と試薬

フルクトース、グルコース、スクロース、マルトース、ラクトースは Sigma Aldrich から入手しました。

アセトニトリルとメタノール(HPLC グレード)は Honeywell Research Chemicals から入手しました。
トリエチルアミンは Sigma Aldrich から入手しました。
水は PureLab flex ELGA システム(LabWater、米国)で作製しました。
糖を含む製品は地元の小売店(マサチューセッツ)から購入しました。

サンプル前処理

キャリブレーション標準試料の調製

糖の標準試料は、水中に濃度 100 mg/mL になるように調製し、4 ℃ で保管しました。糖の混合標準試料は、50:50 アセトニトリル:水中に 5 mg/mL になるように調製しました。検量線の範囲は 0.08 ~ 5 mg/mL でした。

子供向けのオーガニックミックスジュース、オレンジジュース、スポーツドリンク、脱脂乳を、50:50 アセトニトリル:水中に 4 回繰り返しで 1:4 希釈しました。次に、サンプルを 1 分間ボルテックスし、4,000 rpm で 5 分間遠心分離してから、0.2 µm PVDF シリンジフィルターでろ過しました。

パンのサンプルについては、3 g を量り取り、25 mL の 50:50 アセトニトリル:水に溶解しました。次に、サンプルを 1 分間ボルテックスし、4,000 rpm で 5 分間遠心分離してから、0.2 µm PVDF フィルターでろ過しました。

カラム 1 には 15 µL のサンプルを注入し、カラム 2 には 9 µL のサンプルを注入しました。

飲料サンプルを検量線の濃度範囲内に収めるには、さらに希釈する必要がありました。糖の種類と量は食品・飲料製品ごとに異なるため、サンプル希釈ステップを最適化して、サンプルが溶媒標準検量線の濃度範囲内に収まるようにする必要があります。 

LC 条件

LC システム:

Arc HPLC システム

検出:

RI 検出器(サンプリングレート:10 ポイント/秒)

検出器温度:

35 ℃

バイアル:

LCGC 品質証明透明ガラス 12 × 32 mm スクリューネックマキシマムリカバリーバイアル、PTFE/シリコンセプタム付キャップ

ボリューム 1.5 mL(製品番号:186007201C)

フィルター:

シリンジフィルター 0.2 µm PVDF(製品番号:WAT200806)

カラム:

XBridge BEH Amide カラム、130 Å、3.5 µm、4.6 mm × 250 mm(製品番号:186004870)(カラム 1)

XBridge BEH Amide カラム、130 Å、2.5 µm、4.6 mm × 150 mm(製品番号:186006726)(カラム 2)

カラム温度:

35 ℃

サンプル温度:

25 ℃

注入量:

15 μL および 9 μL。

流速:

1.0 mL/分および 1.4 mL/分

移動相:

0.2% トリエチルアミン含有 75:25 アセトニトリル:水

サンプル希釈液:

50:50 アセトニトリル:水

シール洗浄溶媒:

5:95 アセトニトリル:水

ニードル洗浄溶媒:

5:95 アセトニトリル:水

パージ溶媒:

50:50 アセトニトリル:水

結果および考察

この短い試験の目的は、5 種類の一般的な糖の分析において、粒子径と粒子長の異なる 2 種類の XBridge BEH Amide カラムを比較することでした。同じ HPLC システム、移動相、サンプルを使用して、両方のカラムの性能を比較しました。Waters カラムカリキュレーター(図 1)を使用して、以前に発表されたメソッド条件を、4.6 × 250 mm、3.5 µm カラム(カラム 1)から 4.6 × 150 mm、2.5 µm カラム(カラム 2)に移管しました2-3

図 1.  Waters カラムカリキュレーターでスケーリングしたメソッド移管の例

粒子径の小さい固定相を使用する最新の LC カラムにより、クロマトグラフィー効率が向上します。小さい粒子径の利点を活用するには、カラムサイズが、使用する LC システムの拡散容量に適している必要があります。粒子径が小さくなると背圧が高くなるため、システムは、小さい粒子径で最適な性能を得るのに適した流速で実行できる必要があります。小さい粒子径にスケーリングしたメソッドでは流速が 1.4 mL/分と高くなりますが、予想される背圧は、Arc HPLC のシステム圧力限界(9,500 psi)の範囲内に十分収まります。アイソクラティックメソッドを実行する場合、カラム長を粒子径で除算すること(L/dp)により、カラムの最大分離能が推定できます4。 カラム 1 の L/dp 比は 71,400 で、カラム 2 の L/dp 比は 60,000 であるため、糖の間の分離は低下します。カラム 2 の推定分析時間は 6.86 分で、約 57% の短縮になります。分析時間の短縮により、カラム 2 の流速を大きくしても、移動相の消費量が 1 回の注入あたり最大 6 mL 減少します。

図 2 に、各カラムに注入した同じ溶媒標準品の比較を示します。カラムカリキュレーターツールが示しているように、カラム 1 で最初のピーク(フルクトース)が 6.9 分に溶出するのに対して、カラム 2 を使用する場合、保持時間 6 分に最後のピーク(ラクトース)が溶出しており、分析時間を大幅に短縮することができます。 

図 2.  2 種類の XBridge BEH Amide カラムにおける溶媒標準品(5 mg/mL)のクロマトグラムの比較

表 1 は、ピークの保持時間と USP 分離度の比較で、Empower™ CDS で計算したものです。近接して溶出するピーク間の分離を評価する場合、FDA のガイダンスに基づくと、ピーク間の分離度に通常使用される最小基準値は 2.0(Rs >2.0)です5。 カラム 1 ではすべてのピークの分離についてこれが達成されているのに対して、カラム 2 では、マルトースとラクトース(ピーク 4 および 5)の間の分離度はわずか 1.3 でした。このことから、ラクトースとマルトースの両者を含まないサンプルでのみ、カラム 2 が現実的な選択肢となります。カラム 2 ではすべての分離で USP 分離度の低下が見られました。これは、分離能(L/dp)の低下の結果として予想されたものです。 

表 1.  2 種類の XBridge BEH Amide カラムでの保持時間とピーク分離度の比較

検量線:直線性

被験糖の多点検量線は、50:50 水:アセトニトリルで連続希釈することにより、2 回繰り返しで調製しました。キャリブレーション範囲は 0.08 mg/mL ~ 5.0 mg/mL でした。いずれのカラムも、優れた直線性を示しました(R2 >0.999)。図 3 に試験した両方のカラムの検量線を示します。

図 3.  4.6 × 250 mm、3.5 µm カラム(1)および 4.6 × 150 mm、2.5 µm カラム(2)で得られた被験糖の検量線

面積および保持時間の再現性

5 mg/mL 標準試料を 6 回繰り返しで各カラムに注入し、試験した 5 種類の糖それぞれの保持時間と面積の再現性を評価しました。表 2 に、この評価の結果をまとめています。

表 2.  2 種類の XBridge BEH Amide カラムで得られた保持時間(n=6)とピーク面積(n=6)の % RSD の比較 

製品中の糖の分析

サンプルを 4 回繰り返しで前処理し、各サンプル中の糖の測定量を表 3 に示します。 

表 3.  カラム 1 およびカラム 2 を使用して被験サンプル中に検出した糖の量 

各糖の計算量を合わせて合計量とし、製品ラベルに記載されている糖の量(1 人前の g 数)と比較しました。パンのサンプル以外のサンプルはすべて、検量線の濃度範囲に収めるために、さらに希釈する必要がありました。この短い評価では、サンプルの注入量を減らしてこれに対応しました。オフラインでのサンプル希釈の最適化により、標準試料とサンプルに同じ注入量を使用しても、サンプルのオンカラムの量が溶媒標準品の検量線の濃度範囲内に収まるようにすることができます。希釈係数を Empower CDS ソフトウェアのサンプルリストに追加することで、データ解析時に希釈前のサンプル濃度を自動的に計算できます。各カラムで得られた被験サンプルのクロマトグラムの例を図 4 に示します。

図 4.  カラム 1 およびカラム 2 で得られた被験サンプルのクロマトグラムの例。ピークの溶出順は、1.フルクトース、2.グルコース、3.スクロース、4.マルトース、5.ラクトースです。 

結論

このアプリケーションノートの目的は、5 種類の糖の分析において、粒子径とカラム長の異なる 2 種類の XBridge BEH Amide カラムの性能を比較することでした。Waters カラムカリキュレーターツールを使用して、メソッドを 4.6 × 250 mm、3.5 µm カラムから 4.6 × 150 mm、2.5 µm カラムに正常に移管しました。2414 示差屈折率検出器と組み合わせた Arc HPLC を使用して、両方のカラムにシンプルなアイソクラティックメソッドを実行しました。4.6 × 150 mm、2.5 µm カラムにメソッドをスケーリングして移管した結果、実行時間が大幅に短縮し、移動相の消費量が削減できました。このメソッドにより、5 種類の糖について、両方のカラムにおいて優れた直線性、保持時間およびピーク面積の精度が得られることが示されました。XBridge BEH Amide カラム、Arc HPLC、2414 検出器の組み合わせにより、さまざまな食品および飲料サンプル中に存在する糖のプロファイリングおよび定量が可能であることが実証されました。

参考文献

  1. Sugars.Institute of Food Science & Technology (IFST).2017. https://www.ifst.org/lovefoodlovescience/resources/sugars.
  2. Columns Calculator Version 2.0.
  3. XBridge Amide HPLC Columns Applications Notebook.Waters Corporation. 720003438. 2010; p16.
  4. Beginners Guide to UPLC: The Promise of Small Particles.Waters Corporation.
  5. FDA Center for Drug Evaluation and Research.(November 1994).Reviewer Guidance, Validation of Chromatographic Methods https://www.fda.gov/media/75643/download<
    https://www.fda.gov/media/75643/download>.

720007835JA、2022 年 12 月

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