TQ-XS タンデム四重極質量分析計を用いた高感度バイオアナリシス
要約
Xevo TQ-XS タンデム四重極質量分析計を用いた、再現性のある高感度 UPLC-MS/MS バイオアナリシス分析法を実証します。除タンパクによる簡単なサンプル前処理を、ミダゾラムおよびイミプラミンが 250 ag(0.2 pg/mL)までのオンカラムでの検出に使用しました。この検出限界は、3 つの別個の UPLC-MS/MS システムにわたって再現性があることも示されました。
アプリケーションのメリット
- 頑健で再現性があり、高感度のバイオアナリシス
- 簡単なサンプル前処理
- 最新の UPLC テクノロジーと合わせた、市場をリードするタンデム四重極質量分析計の使用
はじめに
バイオアナリシスは、創薬および開発プロセスの重要な部分になっており、新しい化学物質の薬物動態および用量反応に関する情報が得られます。より倫理面を重視する試験でのより薬効の高い薬剤候補の低用量化、およびサンプルサイズの縮小(3R(削減、代替、改善))と合わせて、液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)法の感度がますます重要になっています。このような感度向上の要件と並んで、組織内で、または受託分析機関に、ラボ間で分析法をシームレスに移管するニーズがあります。このため、MS 感度だけでなく、装置間の再現性も重要です。
このアプリケーションノートでは、UPLC-MS/MS システムの一部として Xevo TQ Absolute タンデム四重極質量分析計を用いて、バイオアナリシス試験において頑健で再現性の高い高感度を達成することを実証しています。マトリックスサンプル(ラット血漿)から、基本的な汎用サンプル前処理手法(除タンパク処理)を用いて、ミダゾラムおよびイミプラミンの 250 ag(0.25 フェムトグラム)もの低い感度限度値がオンカラムで検出されました。両化合物について決定された定量限界 0.2 g/mL で、このレベルの感度が再現性高く頑健であることが実証されました。
実験方法
コントロールのラット血漿を用いて、検量線、およびさまざまな濃度のミダゾラムとイミプラミンの両方が含まれている品質管理(QC)サンプルを作製しました。各化合物の 1 mg/mL メタノール溶液を希釈して、50:50 メタノール:水中に 10 ng/mL の混合ストック溶液(Sigma Aldrich(英国)から購入)を調製しました。これらの溶液は、検量線および QC サンプルを作成するためにスパイク溶液として使用しました。検量線(0.2 ~ 100 pg/mL)を新たに作成し、12 の QC サンプル(4 × 0.2 pg/mL、4 × 0.4 pg/mL、4 × 1.0 pg/mL)を調製して Xevo TQ Absolute を用いて分析しました。これらのサンプルは、除タンパクを用いて以下のように前処理しました。300 µL のアセトニトリルを用い、ボルテックスして 100 µL のサンプルを沈殿させました。25,000 g で遠心分離した後、脱イオン水を使用して上清を 1:1 に希釈しました。次に、この希釈液 10 µL を UPLC-MS/MS システムに注入しました。サンプルは、ACQUITY UPLC 2.1 × 50 mm BEH C18 1.7 µm カラムで、0.1% ギ酸含有 10 mM アンモニウム水溶液を移動相 A、0.1% ギ酸含有アセトニトリルを移動相 B として、1.9 分にわたる逆相グラジエントを使用して分離しました。移動相溶離液は、マルチプルリアクションモニタリングモード(MRM)で動作させたポジティブイオン ESI 質量分析計によりモニターしました。
LC 条件
LC システム: |
ACQUITY UPLC I-Class PLUS システム |
検出: |
Xevo TQ Absolute |
バイアル: |
1 mL 96 ウェルプレート |
カラム: |
ACQUITY UPLC BEH C18 カラム、130 Å、1.7 μm、2.1 mm × 50 mm、1 本入り |
カラム温度: |
55 ℃ |
サンプル温度: |
10 ℃ |
注入量: |
10 µL |
流速: |
0.45 mL/分 |
移動相 A: |
0.1% ギ酸水溶液10 mM ギ酸アンモニウム含有 |
移動相 B: |
0.1% ギ酸アセトニトリル溶液 |
グラジエントテーブル
MS 条件
MS システム: |
Xevo TQ Absolute |
イオン化モード: |
ESI+ |
取り込み範囲: |
MRM トランジション: ミダゾラム - 326.1 > 291.0(CV = 60、CE = 26) イミプラミン - 281.1 > 86.0(CV = 30、CE = 16) |
キャピラリー電圧: |
0.5 kV |
コリジョンエネルギー: |
上記を参照 |
コーン電圧: |
上記を参照 |
データ管理
クロマトグラフィーソフトウェア: |
MassLynx™ v4.2 |
MS ソフトウェア: |
MassLynx v4.2 |
インフォマティクス: |
TargetLynx™ XS v4.2 |
結果および考察
この分析法の感度と再現性を評価するため、ACQUITY UPLC I-Class および Xevo TQ Absolute で構成される UPLC-MS/MS システムを使用して、検量線および QC サンプルを正常に分析しました。バッチと注入順序は以下の通りで、検量線(0.2、0.4、1、5、10、50、100 pg/mL)およびその前後の血漿サンプルのブランク試料に続いて、QC サンプル(n = 4 @ 0.2、0.4、1.0 pg/mL)を濃度の昇順で注入し、その前後に血漿サンプルのブランク試料を注入しました。2 つのターゲット分析種は、逆相クロマトグラフィーシステムで十分に保持され、ベースライン分離されました。ミダゾラムおよびイミプラミンの保持時間は、それぞれ 1.1 分および 1.5 分でした。両分析種の検量線は、ミダゾラムとイミプラミンの両方について 0.2 ~ 100 pg/mL の全範囲にわたって直線的であり、r2 値は 1/x 重み付けで 0.99 を超えていました。検出限界は、両分析種について 0.2 pg/mL と決定され、最低レベルのキャリブレーターおよび 4 つの QC サンプルすべてが、すべての場合にこの濃度で検出可能でした(図 1 を参照)。0.2、0.4、1.0 pg/mL の両分析種の精度(%CV)を計算して両分析種の定量限界を決定しました。すべての QC レベルの平均濃度計算値は、両方の分析種について公称値の 15% 以内で正確でした。定量下限値(LLOQ)はイミプラミンおよびミダゾラムについて 0.2 pg/mL と決定され、いずれも精度は 11% 未満でした。図 2 に濃度レベル 0.2、0.4、1.0 pg/mL のイミプラミンとミダゾラムで観察された変動係数を示します。
結論
ACQUITY UPLC I-Class PLUS システムと組み合わせた Xevo TQ Absolue タンデム四重極質量分析計を使用する、ラット血漿中のミダゾラムおよびイミプラミンの定量のための高感度 UPLC-MS/MS バイオアナリシス分析法を実証しました。この分析法は、感度が非常に高いレベル(オンカラムで 250 ag)であることが示されました。また定量限界、直線性、精度も計算し、この分析法が極めて感度が高く、直線性および再現性があることが示されました。
720007563JA、2022 年 3 月