Alliance™ iS HPLC System を用いた USP モノグラフに準拠したアトルバスタチンの分析
要約
アトルバスタチンの USP モノグラフは、ピーク面積/保持時間の精度、ピークのテーリングおよび分離度に関して、アトルバスタチンのアッセイ分析の厳格な規準に準拠することを求めています。具体的には、モノグラフでは、複数回の注入(3 ~ 6 回の注入)の相対標準偏差(RSD)が、アトルバスタチンのピーク面積および保持時間について 0.6% 未満であることを求めています。この試験では、定められた USP モノグラフの基準を満たすために、複数の戦略を実施しました。実施した対策には、移動相のボトルに低蒸発性キャップを使用すること、バイアルキャップにスリットなしセプタムを使用すること、オートサンプラー内でサンプルを 10 ℃ に制御した温度に維持することを含めました。Alliance iS HPLC System を使用するに当たってこれらに注意しました。その結果、アトルバスタチンとその類縁化合物の両方において、非常に一貫したピーク面積と保持時間が得られました。注目すべきことに、6 回の繰り返し注入におけるアトルバスタチンのピーク面積と保持時間の %RSD は、それぞれ 0.4 および 0.1 でした。
アプリケーションのメリット
- Alliance iS HPLC System の利用により、アトルバスタチンのピーク面積と保持時間に高度な一貫性が得られた
- 流量、サンプル温度、カラム温度の制御が優れている
- 低蒸発性の ACQUITY™ APC リザーバーキャップにより、揮発性溶媒を移動相に使用する場合の蒸発のリスクが軽減される
はじめに
アトルバスタチンは、広く処方されているスタチン系医薬品であり、コレステロール値を下げ、心血管系疾患のリスクを低減するために使用されています1,2。この医薬品の安全性と有効性を確保するには、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などの手法を使用して、アトルバスタチンおよび類縁化合物を分析する必要があります3,4。 HPLC を使用したアトルバスタチンのアッセイ分析の USP モノグラフでは、移動相やサンプル前処理を含む、分析法のすべての側面を慎重に管理することを求めています5。 このモノグラフの条件では、システム適合性基準を満たすことが困難です。サンプルや移動相中の揮発性成分が分析中に蒸発して、ピーク面積や保持時間の変化を引き起こす可能性があります。これにより、カラムおよび装置が適切に機能していても、分析法がシステムに適合しない可能性があります。このような問題をもたらす条件とは、高揮発性のサンプル希釈液(1:1:2 アセトニトリル:テトラヒドロフラン(THF):水)や揮発性成分を含む移動相(THF を 12% 含有)の使用、長い分析時間(2 時間)などです。
以前、これらの条件がシステム適合性基準への適合に及ぼす影響を評価するために、徹底的な調査が行われています6。 本試験では、2 つの対策を実施することで、サンプル前処理および移動相組成の影響を効果的に制御できることが明らかになりました。まず、繰り返し注入に、単一のバイアルを使用するのではなく、複数のバイアルを使用する必要があります。第 2 に、移動相リザーバーに低蒸発性リザーバーキャップを使用することが有益であることがわかりました。これらの対策は、サンプル前処理や移動相組成の影響を軽減して、分析の制御および再現性の向上に寄与します。この試験では、Alliance iS HPLC System を使用した、USP モノグラフに準拠したアトルバスタチンの分析について実証します。図 1 に、本試験で使用したアトルバスタチンおよびその類縁化合物の化学構造を示します。
実験方法
混合試料および標準試料の調製
サンプル前処理は、USP モノグラフに従って行いました5。 アトルバスタチンおよびアトルバスタチン類縁化合物 B のレファレンス標準試料はいずれも USP(メリーランド州ロックビル)から購入しました。希釈液は、アセトニトリル、安定剤を含まないテトラヒドロフラン、水を 1:1:2 の比で混合して調製しました。すべてのサンプルを分析の直前に調製しました。システム適合性標準試料は、アトルバスタチンカルシウムおよびアトルバスタチン類縁化合物 B を希釈液中に最終濃度 0.05 mg/mL および 0.06 mg/mL になるように溶解して調製しました。一定量(300 µL)の標準試料を、キャップがスリット入りとスリットなしのマキシマムリカバリーバイアルに分注しました。
結果および考察
USP アッセイの結果
USP モノグラフに準拠したアトルバスタチンのアッセイ分析用の HPLC メソッドでは、2 時間を超える非常に長い実行時間を要し、移動相とサンプル希釈液の両方に揮発性有機溶媒を使用する必要があります。これらの溶媒の揮発性が、2 つの理由で分析の再現性に影響します。まず、移動相成分の蒸発速度の違いが、分析種の溶出や保持時間に影響する可能性があります。第 2 に、サンプル希釈液からの有機溶媒の蒸発が分析種の濃度および溶解度に影響する可能性があり、そのいずれもがシステム適合性要件に影響する可能性があります(表 1)。したがって、以前に推奨されたステップに従って、これらの蒸発の問題を軽減し、分析法のばらつきを低減することが重要です6。 これらのステップには、溶媒ボトルに低蒸発性キャップを使用すること、スリットなしキャップでそれぞれキャップした別々のバイアルから繰り返し注入を行うことなどが含まれます。サンプルをオートサンプラー内で 10 ℃ という低温に維持することでも、希釈液の蒸発を制御しました。これらのステップを使用することで、アトルバスタチンの USP アッセイを成功させることができました。具体的には、この分析では、ピーク面積および保持時間の %RSD などにおいて USP 基準が満たされていました(表 1)。図 2 に、繰り返し注入のクロマトグラムの重ね描きを示します。Alliance iS HPLC System では注入精度を向上させるためにインライン計量デバイスが採用されていることを、ここで付け加えます。このデバイスは、取り込み中に流路をフラッシュ洗浄することで、気泡形成を最小限に抑えます7。
スリットなしセプタムとスリット入りセプタムの比較
異なる種類のバイアルキャップが蒸発に及ぼす影響を評価するために、スリットなしバイアルキャップからの繰り返し注入のシステム適合性の結果を、スリット入りキャップで得られた結果と比較しました。そのため、スリットなしセプタムでキャップした同じバイアルから吸引して、6 回繰り返し注入を行いました。この実験の結果により、スリットなしセプタム付きの別々のバイアルの場合と比較して、ピーク面積のばらつきがはるかに大きいことがわかりました。例えば、表 2 に示すように、スリット入りセプタムでキャップした同じバイアルからの 6 回繰り返し注入のピーク面積の %RSD は 1.0 でした。この値は、スリットなしセプタムからの注入で認められた偏差よりはるかに大きな偏差です。これらの結果は、揮発性のサンプル希釈液を扱う場合、スリットなしセプタムでキャップした別々のバイアルを使用することが非常に有用な方法であることを示しています。
どの実験でも大きな保持時間のシフトは見られませんでした。これは、移動相ボトルに低蒸発性キャップ(ACQUITY APC)を使用したためと考えられます。これらのキャップは、ボトルからの溶媒の蒸発を低減するように特別に設計されており、移動相ボトル内に蓄積した圧力を解放するアウトレット解放バルブが備わっています。表 2 に、この実験で得られた結果のサマリーを示します。
図 3 に、30 時間の分析時間にわたるアトルバスタチンおよびその類縁化合物 B のピーク面積の傾向を示します。データによると、スリット入りセプタムキャップを使用すると、両方の分析種のピーク面積が徐々に増加しています。これはおそらく、蒸発によって分析種の濃度が高くなったためと考えられます。一方、スリットなしのバイアルキャップを使用した場合は、ピーク面積に明確な傾向は認められず、蒸発は起きていないことが示唆されました。スリットなしキャップ付きの別々のバイアルからの 6 回注入のピーク面積の分布は、スリット入りキャップ付きバイアルで観測された値と比較して、y 軸に関して有意により小さい値になっていることが注目されます。
結論
- これらの結果は、Alliance iS HPLC System を用いたアトルバスタチンのアッセイ分析では、一貫したピーク面積、保持時間、USP テーリング、分離度が得られることを実証している
- 低蒸発性の ACQUITY APC リザーバーキャップにより、移動相中の揮発性有機溶媒の蒸発が最小限に抑えられ、非常に一貫した保持時間が得られる
- それぞれスリットなしのセプタムでキャップした複数のバイアルを使用することは、揮発性の希釈液に溶解したサンプルに有利であることが証明された
参考文献
- T. Funatsu, H. Kakuta, H. Tanaka, Y. Arai, K. Suzuki, K. Miyata, [Atorvastatin (Lipitor): A Review of its Pharmacological and Clinical Profile], Nihon Yakurigaku Zasshi 117(1) (2001) 65–76.
- R. Chou, A. Cantor, T. Dana, J. Wagner, A.Y. Ahmed, R. Fu, M. Ferencik, Statin Use for the Primary Prevention of Cardiovascular Disease in Adults: Updated Evidence Report and Systematic Review for the US Preventive Services Task Force, JAMA 328(8) (2022) 754–771.
- N. Jain, R. Raghuwanshi, D. Jain, Development and Validation of RP-HPLC Method for Simultaneous Estimation of Atorvastatin Calcium and Fenofibrate in Tablet Dosage Forms, Indian J Pharm Sci 70(2) (2008) 263–5.
- A.C. Kogawa, A.E.D.T. Pires, H.R.N. Salgado, Atorvastatin: A Review of Analytical Methods for Pharmaceutical Quality Control and Monitoring, J. AOAC Int. 102(3) (2019) 801–809.
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- Y.D. N. Wong, E. Pedanou, and P. Hong, Strategies for Improving Injection Precision with Challenging USP Monographs, Waters Poster PSTR135120473, 2023.
720008031JA、2023 年 8 月