• アプリケーションノート

Xevo™ G3 QTof システムを用いた mPEG-OH の分子量分布の決定

Xevo™ G3 QTof システムを用いた mPEG-OH の分子量分布の決定

  • Sangeetha Vadivel
  • Sumit Bobhate
  • Dr. Padmakar Wagh
  • Waters Corporation

要約

Xevo G3 QTof システムを使用して、メトキシでキャップされたポリエチレングリコール(mPEG-OH)サンプル用の分析法開発を簡素化し、ポリマーの分子量分布(MWD)を決定すること。

はじめに

多分散性が非常に低い PEG は応用の範囲が広いため、バイオ医薬品業界では最近、その取得に対する関心が高まっています。PEG の重要な特性の 1 つは分子量であり、これによって材料の特性が決まります。PEG バイオ医薬品の MWD の測定には、高分解能質量分析(HRMS)が適切な方法であることが証明されています。エレクトロスプレーイオン化(ESI)によって生じたポリマー高分子イオンは、互いに重なり合った荷電状態の分布を示すという性質があるため、ESI による PEG サンプルの分析は非常に困難です。このような性質により、ポリマーのデータ解析が複雑になって、分子量の分布と荷電状態の分布の間で重なり合ったピークが生成されることが多いため、デコンボリューションプログラムによる対処が必要になります。PEG の分析上の課題に対処するため、ACQUITY UPLC ™ I-Class PLUS システムに Xevo G3 QTof 質量分析計プラットホームを接続し、waters_connect™ UNIFI™ ソフトウェアと組み合わせて使用して、mPEG-OH サンプルの MWD および多分散性を分析しました。UPLC-HRMS システムおよび最新のソフトウェアを使用する利点として、データを分離して簡素化し、信頼性の高い解釈が可能になる点が挙げられます。

この最適化されたアプローチは、この分析で分子量測定値を決定し、mPEG-OH サンプルの 3 つの異なる範囲(30k Da、40k Da、50k Da)の荷電状態の分布を低減するのに効率的であることが示されています。

図 1A.  チャージストリッピング剤である TEA を添加する前(1A)および後(1B)の mPEG-OH(30k Da)のマススペクトル
図 1B.  チャージストリッピング剤である TEA の添加

実験方法

PEG サンプルについて、ポストカラム添加でアイソクラティック条件を使用して、3 分以内に分子量分布および多分散性を決定するための UPLC-MS 分析法が、ESI ポジティブモードで得られました。サンプルの分析の前に、ポジティブモードのキャリブレーション溶液を使用して装置をキャリブレーションしました。装置パラメーター、クロマトグラフィー条件、およびイオン源の設定は、代表的な PEG サンプルを使用して最適化しました。サンプルは、移動相(A)0.1% TFA 水溶液および(B)0.1% TFA アセトニトリル溶液を使用して、ACQUITY UPLC BEH 300Å C4 2.1 × 50 mm、1.7 µm カラムから流速 0.1 mL/分で溶出しACQUITY UPLC BEH 300Å C4 2.1 × 50 mm、1.7 µm カラムから流速 0.1 mL/分で溶出しポストカラム添加したチャージストリッピング剤であるトリエチルアミン(TEA)と混合しました。Xevo G3 QTof 質量分析計のオンボード送液システムを使用して、50:50 アセトニトリル:水中に調製した 2% TEA を注入しました。TEA 濃度の適切な送液は、ソフトウェアによってコントロールされるイベントセットアップを調整することによって制御しました。図 1 に、TEA あり/なしでのチャージストリッピングの効果を示します。得られた生データは、自動ワークフローで定義したステップが組み込まれた waters_connect UNIFI プラットホームを使用して解析しました。MWD の決定において、デコンボリューションパラメーターとカスタムフィールドを定義することにより、効率的でアクセスしやすいアプローチが容易に行えます。

エチレングリコール(44 Da)のさまざまなモノマー繰り返し単位および PEG のさまざまな重合度に対応する質量分布が、デコンボリューションしたスペクトルで容易に確認できました。TEA 溶液の濃度を増加させたことにより、十分に分布した mPEG-OH の荷電状態が得られました。各荷電状態は、サンプルの分子量分布に対応しています。図 2 に、30k Da の mPEG-OH サンプルの代表的な多価のデコンボリューションしたマススペクトルを示します。

この実験データを、waters_connect UNIFI ソフトウェアを使用してさらに解析し、mPEG-OH サンプルの数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、多分散性(PDI または Đ)を決定しました。Mw/Mn の値は通常、ポリマーの多分散性の指標として使用します。表 1 に、3 種類のサンプルすべてについて Mn、Mw、PDI の計算結果を示します。分布の狭い単官能性直鎖 mPEG は通常、Mw/Mn 値が約 1.02 ~ 1.05 です。mPEG-OH サンプルの多分散性の計算値は、ほぼ 1.00(PDI 約 1.0009 ~ 1.0018)に近く、重合度に関する純度がかなり高いことを明確に示しています。

表 1.  3 種類のサンプルすべての Mn、Mw、PDI の計算
図 2.  TEA のポストカラム添加後(2A)およびデコンボリューション後(2B)の 30k Da mPEG-OH のマススペクトル。waters_connect UNIFI ソフトウェアを使用してマススペクトルを解析し、Mn、Mw、PDI を取得しました(2C)。
図 2.  TEA のポストカラム添加後(2A)およびデコンボリューション後(2B)の 30k Da mPEG-OH のマススペクトル。waters_connect UNIFI ソフトウェアを使用してマススペクトルを解析し、Mn、Mw、PDI を取得しました(2C)。
図 2.  TEA のポストカラム添加後(2A)およびデコンボリューション後(2B)の 30k Da mPEG-OH のマススペクトル。waters_connect UNIFI ソフトウェアを使用してマススペクトルを解析し、Mn、Mw、PDI を取得しました(2C)。

結論

今回のデータにより、PEG サンプルのルーチン分析のための、waters_connect UNIFI ソフトウェアを使用する、ACQUITY UPLC I-Class PLUS システムに接続された Xevo G3 QTof プラットホームの有用性の向上を実証する迅速分析法が得られました。

  • このワークフローの組み合わせが、この複雑なサンプル分析アプローチに適していることが示されました
  • Xevo G3 QTof プラットホームでは、迅速分析法ソリューションに加えて、スペクトルの複雑さの低減による、デコンボリューションしたマススペクトル分布パターンの改善も見られました
  • waters_connect UNIFI プラットホームにより、Mn、Mw、PDI の値の効率的な決定が可能になりました

720007958JA、2023 年 6 月

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