• アプリケーションノート

EU および英国の飲料水規制に基づいた水マトリックスのためのダイレクト注入 UPLC-MS/MS メソッドにおける PFAS カバー率および感度の拡大

EU および英国の飲料水規制に基づいた水マトリックスのためのダイレクト注入 UPLC-MS/MS メソッドにおける PFAS カバー率および感度の拡大

  • Jenny Davies
  • Stuart Adams
  • Simon Hird
  • Kari L. Organtini
  • Kenneth J. Rosnack
  • Waters Corporation

要約

このアプリケーションノートでは、英国飲料水監察局(Drinking Water Inspectorate、DWI)による 47 種のペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS)のリストと、2020 EU 飲料水指令(DWD)に含まれている 20 種の PFAS を含む、計 48 種の分析種の要件を満たすダイレクト注入法について説明します。この研究は、UniSpray™ イオンソースを使用する XEVO™ TQ Absolute タンデム四重極質量分析計に接続した ACQUITY™ Premier UPLC システムを用いて行いました。注入量 50 µL を用いて、48 種の分析種すべてについて、ng/L 以下という分析法の検出限界(MDL)が達成されました。飲料水、地表水、河川水について、3 日間にわたって分析したバリデーションバッチを用いて、分析法の頑健性が示されました。

アプリケーションのメリット

UniSpray イオンソースを搭載した XEVO TQ Absolute でダイレクト注入を行うと、以下が可能になります。
  • EU DWD 規制と英国 DWI 規制の両方をカバーする PFAS の幅広いパネルの検出および定量に適したダイレクト注入法
  • サンプル容量と前処理にかかる時間の低減による生産性の向上
  • 感度の向上により、PFAS に関する一般的な飲料水の規制要件を超える、濃度 ng/L 以下の検出限界を達成

はじめに

PFAS は、世界中の環境で検出されており、通称「永久に残る化学物質」として知られています。PFAS は、幅広い消費者向け製品や製造プロセスに由来します。その最も一般的な使用法として、さまざまな製品の耐水性コーティングや泡消火剤などがあります。PFAS は使用範囲が広く毒性、また生体蓄積の可能性があることから、制限されるようになりました。

EU の飲料水については、人による消費を目的とした水質に関する指令(EU)2020/2184 で 20 種の PFAS が指定されています1。 この指令により、指定された 20 種の PFAS の合計に対して 0.1 µg/L という質に基づくパラメトリック値(限界)が定められています。この値は、個々の PFAS 分析種に求められる定量限界である 5 ng/L 以下に対応しています。最終的に飲料水の供給に使用される原水源に関し、イングランドおよびウェールズの英国飲料水監察局(DWI)は、水道会社による 47 種の PFAS のモニタリングの要件をレターで概説しています2。 このケースでは、最大 PFAS 限度はまだ決定されていません。本ドキュメントでは、DWI 2021 年 1 月に発表された飲料水の PFOS および PFOA に関するガイダンスを参照しています。このガイダンスでは、水道会社は層別化リスクベースアプローチを使用して、それぞれの分析種を濃度 0.01 µg/L まで試験し、トリガーレベルを大きく下回る十分な定量値に留める必要があると述べられています3。 ここでは、原水源は、飲料水と同等以上の許容濃度を有するという前提に立っています。

PFAS のルーチン分析では、分析種の事前濃縮は不要であると考えられており、PFAS のルーチン分析を行っているラボでのダイレクト注入法の需要がますます増加しています。シンプルなサンプル前処理法により、汚染やエラーが発生する可能性が低減するだけでなく、分析時間が短縮し、大量のサンプルに関する要件を満たすことができます。これにより、サンプルのスループットが向上し、分析のコストを削減することができます。サンプルを事前濃縮しないでこのような低濃度での検出を実現するために、ACQUITY Premier UPLC を UniSpray イオン源を備えた Xevo TQ Absolute と組み合わせました。UniSpray イオン源により、感度がさらに向上します。その詳細は、以前に発表した文献に記載されています4。 UniSpray は大気圧イオン化手法であり、これによって、カラム溶出液がキャピラリーから出るときに噴霧化され、高電圧に保たれているインパクターピンに向けられます。このプロセスでは、エレクトロスプレーイオン化(ESI)の場合より小さな液滴が生じるため、気相イオンの生成が増加し、イオン化効率が向上します。通常 PFAS では、向上の程度は化合物によって異なりますが、レスポンスとシグナル対ノイズ比が向上し、この種のイオン化メカニズムが特に有益であることがわかっています。EU とイングランド・ウェールズの両方における、飲料水に関する現行の規制限界に準拠し、将来的にこれらの限界が引き下げられた場合にも分析法が確実に対処できるようにするため、すべての種類の水について、リストに記載されているすべての PFAS の検出限界(MDL) 1 ng/L の達成を目標に設定しました。

実験方法

バックグラウンド汚染

PFAS は多くの製品に含まれているため、バックグラウンド汚染が PFAS の分析に取り組む際の最大の課題の 1 つになっています。サンプルの採取および前処理から分析までの各段階で、きめ細かい対応をすることが極めて重要です。Waters PFAS キットを取り付けると、クロマトグラフィーシステムおよび溶媒からのバックグラウンド干渉が低減します。このキットは、PFAS を使用しないコンポーネントで構成されており、従来の PTFE コーティングされた溶媒ラインなどが PEEK チューブに置き換えられています。分析ピークとの共溶出による残留バックグラウンド干渉を遅らせるのに役立つ、アイソレーターカラムも付属しています。キットとカラムの取り付けは簡単であり、短時間で完了できます5。汚染を防止するために PFAS をモニターするためのベストプラクティスの詳細な説明は、Waters™ ホワイトペーパーに記載されています6

さまざまな種類の飲料水(軟水および硬水)の被験サンプルとして、飲料水の供給に使用されている 2 種類の原水のサンプルを英国各地で採取し、分析するまで 5 ℃ で保管しました。図 1 に示すワークフローを使用して、分析用にサンプルを前処理しました。結果は、試薬水中に調製したブラケットキャリブレーションを使用し、内部標準のレスポンスを使用して定量化しました。最終的な抽出液中の内部標準の濃度は、分析種によって 5 ~ 50 ng/L の範囲でした。使用したすべての標準試料は、Wellington Laboratories 社から入手しました。このアプリケーションで使用する 48 種の PFAS および 25 種の内部標準に関する情報は、付録 A にあります。

飲料水および環境用水のサンプルの前処理ワークフロー 図 1.飲料水および環境用水のサンプルの前処理ワークフロー。

LC 条件

LC システム:

Waters PFAS キットおよび Atlantis™ Premier BEH™ C18 AX 5 µm、2.1 × 50 mm アイソレーターカラム(製品番号:186009407)を取り付けた BSM および FTN サンプルマネージャー搭載 ACQUITY Premier UPLC

バイアル:

ポリプロピレン製 12 × 32 mm スクリューネックバイアル、700 µL(製品番号:186005219)、スリット入り PTFE/シリコーンセプタム付き(製品番号:186000305)

カラム:

ACQUITY Premier CSH™ C18、1.7 µm、2.1 mm × 100 mm(製品番号:186009461)

カラム温度:

40 ℃

サンプル温度:

15 ℃

注入量:

50 μL

流量:

0.350 mL

移動相 A:

2 mM 酢酸アンモニウム水溶液:メタノール(95:5、v/v)

移動相 B:

2 mM 酢酸アンモニウム含有メタノール

パージ溶媒およびシール洗浄:

50:50 メタノール:水

洗浄溶媒:

90:10 メタノール:水

グラジエントテーブル

グラジエントテーブル

MS 条件

MS システム:

Xevo TQ Absolute

イオン化モード:

UniSpray、ネガティブイオン化モード

取り込み範囲:

MRM

インパクター電圧:

0.9 kV

脱溶媒温度:

400 ℃

脱溶媒ガス流量:

900 L/時間

コーンガス流量:

150 L/時間

イオン源温度:

110 ℃

MRM トランジション

各化合物の MRM パラメーターは付録 A に記載されています。

データ管理

インフォマティクス:

定量のための waters_connect™

結果および考察

分析法の最適化

幅広い機能性(炭素鎖長を含む)を持つ PFAS を同時に分析する場合、すべての分析種に対して最大のパフォーマンスを得るために、パラメーターのバランスを慎重に調整する必要があります。パフォーマンスに大きな影響を及ぼす可能性のある要因は、サンプルの組成と脱溶媒温度の 2 つです。以下のセクションでは、分析法を最適化するためのさまざまな側面について説明します。

分析用サンプルの前処理の最適化

長鎖 PFAS は水への溶解度が低いため、分析種が沈殿したり容器の側面に付着したりすることがあります。分析種の回収率を評価するため、2 種類のメソッドを使用してサンプルを前処理しました。いずれのメソッドでも、ネイティブな分析種を水サンプルにスパイクし、均質化しました。メソッド 1 では、サンプル前処理のために水のアリコートを遠心分離チューブに移しました。メソッド 2 では、水サンプルを移さず、保存に用いたと同じ容器中で前処理しました。両方のメソッドを使用して前処理したサンプルの、軟水の飲料水の 6 回繰り返しの濃度を使用して計算した平均回収率を図 2 に示します。メソッド 1 を使用してサンプルを前処理した場合、鎖長が長いほど分析種の回収率が低下することがわかりました。一方、これと比較して、サンプルを移さないメソッド 2 を使用して前処理したサンプルからの分析種の回収では、このような問題は生じませんでした。サンプル採取容器に有機溶媒を添加すると、分析種の溶解度が高まり、容器の側面から分析種が洗い流されて、回収率が向上することが確認されました。この方法でサンプルを前処理すると、48 種の分析種すべてについて、83 ~ 124% の回収率が得られました。

メソッド 1(青色)およびメソッド 2(オレンジ色)により、軟水の飲料水から調製した 6 回繰り返しサンプルからの平均回収率(%) 図 2.メソッド 1(青色)およびメソッド 2(オレンジ色)により、軟水の飲料水から調製した 6 回繰り返しサンプルからの平均回収率(%)。

サンプル組成がピーク形状に与える影響

サンプルの組成と前処理により、レスポンスとクロマトグラフィーの両方が大きく改善します。長鎖 PFAS(C10 以上のカルボン酸およびスルホン酸)の水への溶解度低下を、PFHxDA および PFODA(それぞれ C16 および C18)について示しています。これらの化合物では、最終的な有機溶媒含量が高くなるように希釈することで改善が見られます。ただし、有機溶媒含量を 50% を上回るまで増やすと、短鎖 PFAS のピーク形状が悪化し、サンプルをさらに希釈すると、必要な低濃度での検出が困難になります。

バランスを取って 50% 有機溶媒のサンプル組成(アセトニトリル:メタノール:水が 25:25:50(v/v/v))を、溶解度が最良ですべての分析種についてのパフォーマンスが最適な混合液として選択しました。ギ酸を濃度 0.1% になるようにサンプルに添加すると、早く溶出する分析種のピーク形状に改善が見られました。

別の重要な詳細事項として、十分時間をかけてサンプルをボルテックス混合することが、特に長鎖 PFAS の場合に、再現性のある結果を得るのに不可欠です。PFAS の溶解度のデータでは、PFAS の炭素鎖長が増加するにつれて、水への溶解度が減少することが示されています6。したがって、これらの長鎖の分析種は、沈殿して容器の側面に付着する傾向を示す可能性があります。サンプル前処理においてボルテックス混合して分析種を確実に溶解させることで、分析種の再現性が大幅に向上します。

エレクトロスプレーと UniSpray を使用した場合の PFAS のレスポンスの比較

エレクトロスプレーと UniSpray の直接的な比較を、両方のイオン化手法を使用した、10 ng/L の試薬水サンプルの 20 回反復注入による分析によって行いました。UniSpray を使用した場合、48 種の分析種すべてでレスポンスの改善が見られ、シグナルが平均 2 ~ 7 倍増大しました。このようなパフォーマンスの向上は、GenX や PFHxDA など、通常は感度の面で問題の多い化合物で特に顕著です。図 3 に、両方のイオン化法を使用して分析したこれらの分析種のクロマトグラムを示します。UniSpray イオン源を使用したことで、GenX および PFHxDA では、レスポンスが 7 倍増大し、シグナル対ノイズ比(S/N)がさらに 4 倍向上していることがわかります。詳細情報および背景情報は、ウォーターズのアプリケーションノート 720007413 を参照してください7

試薬水中 10 ng/L の GenX と PFHxDA で見られた、エレクトロスプレー(オレンジ色)と UniSpray(緑色)でのシグナル対ノイズ比およびピークレスポンスの比較 図 3.試薬水中 10 ng/L の GenX と PFHxDA で見られた、エレクトロスプレー(オレンジ色)と UniSpray(緑色)でのシグナル対ノイズ比およびピークレスポンスの比較。

不安定な化合物に対する感度の改善

化合物の MRM パラメーターは、System Console の waters_connect MRM 最適化ツールを使用して最適化しました。この機能により、ダイレクト注入による各化合物のフラグメントイオン、コーン電圧、コリジョンエネルギーが自動的に決まります。このプロセスは迅速かつシンプルであり、分析法開発にかかる時間を大幅に短縮することができます。

脱溶媒温度を最適化すると、レスポンスが大幅に向上する場合があります。通常、不安定な PFAS には低い脱溶媒温度が適しています。この点は GenX および HFPO-TA に該当し、いずれもイオン源内フラグメンテーションを受けやすくなります。4 種類の分析種についての異なる脱溶媒温度でのクロマトグラムの重ね描きを図 4 に示します。GenX と HFPO-TA の最適な脱溶媒温度は 350 ℃ ですが、より安定な他の分析種にはより高い温度が適しています。48 種の PFAS すべてに対応するため、全体としての分析法の感度を最大限にできる最適な温度として、400 ℃ を選択しました。

脱溶媒温度 350 ℃(紫色)、400 ℃(オレンジ色)、450 ℃(ピンク色)、500 ℃(青緑色)での HFPO-TA、PFHxDA、ADONA、GenX 図 4.脱溶媒温度 350 ℃(紫色)、400 ℃(オレンジ色)、450 ℃(ピンク色)、500 ℃(青緑色)での HFPO-TA、PFHxDA、ADONA、GenX。

装置および分析法のパフォーマンス

内部標準を加えた試薬水によるブラケットキャリブレーションを、試験全体にわたって使用しました。キャリブレーションは通常、0.5 ng/L ~ 50 ng/L の範囲であり、完全な詳細を表 1 に記載しています。すべての分析種について、R2 値 0.99 超および残差 20% 未満が得られました。20 サンプルの間でブラケット化した検量線の例を図 5 に示します。

PFOS、PFOA、N-EtFOSAA のブラケット検量線および偏差プロット 図 5.PFOS、PFOA、N-EtFOSAA のブラケット検量線および偏差プロット。

精度

分析法の精度を判定するため、保持時間の安定性とレスポンスの併行精度の面で、4 種類の水それぞれのアリコートに濃度 10 ng/L になるようにスパイクし、均質化して、3 日間毎日、6 回繰り返しのサブサンプルを調製して分析しました。すべての分析種の保持時間が、3 日間の分析にわたって安定していることがわかりました(SD 0.03 分以下)。すべての測定で得られた平均濃度からの併行精度から、2 種の分析種を除くすべての分析種の %RSD が 15% 未満であり、PFOS および PFOA はすべての種類の水で 7% 未満であることがわかります。河川水中の PFBA の併行精度は悪化していました(18 %RSD)。これは 3 日間で異なるボトルのメタノールを使用したために、サンプル前処理に使用したメタノール中のこの分析種の濃度が増加し、結果のばらつきが大きくなったためであると考えられます。PFODA はいずれの飲料水でも外れ値であり、河川水での併行精度は 20 %RSD を超えていました。これは、PFODA の水への溶解度が低いため、サブサンプルでばらつきが発生したことに関連していると考えられます。3 日間にわたるすべての分析種の併行精度(%RSD)の値を図 6 に示しています。

軟水飲料水(青色)、硬水飲料水(オレンジ色)、河川水(緑色)、および地表水(灰色)に 10 ng/L(n=6)になるようにスパイクした PFAS の、3 日間にわたる分析結果の併行精度(% RSD) 図 6.軟水飲料水(青色)、硬水飲料水(オレンジ色)、河川水(緑色)、および地表水(灰色)に 10 ng/L(n=6)になるようにスパイクした PFAS の、3 日間にわたる分析結果の併行精度(% RSD)。

感度

分析法の感度を評価するために、試薬水中に 2 ng/L になるようにスパイクしたサンプルの 20 回繰り返し注入を使用して、分析法の検出限界(MDL)試験を実施しました。MDL は、以下に示す EPA 821-R-16-0068 の式を使用して計算しました。

MDL = SD x tn-1

SD = 繰り返しの標準偏差、tn-1 = n-1 サンプルの Student の t 値

スパイクレベルの 1/10 の最小濃度(0.2 ng/L)をデータセットに適用したところ、48 種の化合物すべてについて ng/L 以下の MDL が得られました8。これははじめの目標を上回っており、この分析法が 2020 EU DWD で定められている現行の規制要件への準拠について確認するのに適していることを示しています。MDL 値の完全なリストを表 1 に示しています。これらの濃度が実際の水サンプルで達成できることを確認するために、さまざまな種類の水に 0.2 ng/L の濃度になるようにスパイクを行って分析しました。図 7 に FOSA、PFNA、PFUnDA、PFTrDS のクロマトグラムを示しています。良好なクロマトグラフィーとブランク濃度を上回る有意なレスポンスが確認され、これらの濃度で定量が可能であることがわかります。

試薬水中 2 ng/L の標準試料の 20 回繰り返し注入の標準偏差を用いて算出した、すべての分析種の分析法の検出限界(MDL) 表 1.試薬水中 2 ng/L の標準試料の 20 回繰り返し注入の標準偏差を用いて算出した、すべての分析種の分析法の検出限界(MDL)。
河川水に FOSA と PFNA(緑色)および地表水に PFUnDA と PFTrDS(オレンジ色)をそれぞれ 0.2 ng/L になるようにスパイクしたサンプルの重ね描きクロマトグラム 図 7.河川水に FOSA と PFNA(緑色)および地表水に PFUnDA と PFTrDS(オレンジ色)をそれぞれ 0.2 ng/L になるようにスパイクしたサンプルの重ね描きクロマトグラム。

低濃度の分岐型および直鎖型の PFAS を分離および定量する性能を図 8 に示します。0.73 ng/L の直鎖型 PFOS と 0.20 ng/L の分岐型 PFOS を含む試薬水サンプルのクロマトグラムから、直鎖型と分岐型が相互に明確に分離されており、定量可能であることがわかります。

分岐型 PFOS および直鎖型 PFOS をそれぞれ 0.20 ng/L および 0.73 ng/Lの濃度になるようにスパイクした試薬水サンプルでのそれぞれの PFOS の検出 図 8.分岐型 PFOS および直鎖型 PFOS をそれぞれ 0.20 ng/L および 0.73 ng/Lの濃度になるようにスパイクした試薬水サンプルでのそれぞれの PFOS の検出。

結論

新たな規制による、対象の PFAS リストの拡張に対処するために、分析範囲が広くより感度の高い分析法が求められています。今回行った研究では、UniSpray イオンソースを取り付けた Xevo TQ Absolute で事前濃縮ステップを使用しないダイレクト注入を使用して、現行の規制への準拠を確認するのに必要な感度が得られることが示されました。英国各地からのさまざまな種類の飲料水および原水を用いて行った分析法の性能試験により、すべての分析種が一貫して保持されて再現性のある結果が得られる、規制要件を満たす頑健な分析法であることが実証されました。

最適化された分析法の結論:

  • 48 種すべての分析種で ng/L 以下の MDL が得られ、この分析法が EU 飲料水指令 2020/2184 を含む現行の規制への準拠を確認するのに適していることが示されました。
  • UniSpray イオン源を使用したことで、ESI と比較してピーク面積レスポンスおよび S/N 比が改善され、感度が向上したことが示されました。
  • PFAS キットと特別なアイソレーターカラムの使用により、システム全体のバックグラウンドが低減し、微量レベルの PFAS の検出が可能になります。

参考文献

  1. Directive (EU) 2020/2184 of the European Parliament and of the Council of 16 December 2020 on the Quality of Water Intended for Human Consumption (recast) [Online] https://eur-lex.europa.eu/eli/dir/2020/2184/oj.
  2. Drinking Water Inspectorate (DWI) Information Letter, Requirements for Poly and Perfluorinated Alkyl Substances (PFAS) Monitoring by Water Companies in England and Wales 05/2021 [Online] https://dwi-content.s3.eu-west-2.amazonaws.com/wp-content/uploads/2021/10/04203217/Information-Letter-PFAS-Monitoring.pdf.
  3. Drinking Water Inspectorate (DWI), Guidance on the Water Supply (Water Quality) Regulations 20161 Specific to PFOS (perfluorooctane sulphonate) and PFOA (perfluorooctanoic acid) Concentrations in Drinking Water, January 2021 [Online] https://cdn.dwi.gov.uk/wp-content/uploads/2021/01/12110137/PFOS-PFOA-guidance-2021.pdf.
  4. S. Bajic.Waters UniSpray Ionization Source.Waters White Paper 720006009, 2017.
  5. PFAS Analysis Kit for ACQUITY UPLC Systems.Waters User Guide 715006386 v01.Mar 2020.
  6. ITRC (Interstate Technology & Regulatory Council).2022. PFAS Technical and Regulatory Guidance Document and Fact Sheets PFAS-1, Table 4-1.Washington, D.C.: Interstate Technology and Regulatory Council, PFAS Team. https://pfas-1.itrcweb.org/ Accessed 21 Sept 2023.
  7. Nicola Dreolin, Henry Foddy, Kari Organtini, Stuart Adams, Ken Rosnack, Peter Hancock.Best Practices for Monitoring PFAS Contamination in a Routine Shared-Space Commercial Laboratory, Waters White Paper 720007905.April 2023.
  8. Hannah Willmer, Kari L. Organtini, Stuart Adams.Routine Determination of Per- and Polyfluoronated Alkyl Substances (PFAS) in Drinking Water by Direct Injection Using UPLC-MS/MS to Meet the EU Drinking Water Directive 2020/2184 Requirements.Waters Application Note 720007413.Oct 2021.
  9. US Environmental Protection Agency.Definition and Procedure for the Determination of the Method Detection Limit, Revision 2.EPA 821-R-16–006.December 2016 [online] Definition and Procedure for the Determination of the Method Detection Limit, Revision 2; December 2016 (epa.gov).
  10. Organtini K, Cleland G, Rosnack K. Large Volume Direct Injection Method for the Analysis of Perfluorinated Alkyl Substances (PFAS) in Environmental Water Samples in Accordance with ASTM 7979-17.Waters Application Note 720006329.Jan 2018.

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