• アプリケーションノート

MaxPeak™ テクノロジーを採用した CORTECS™ Premier カラムを用いたセファロスポリン類および関連原薬の迅速分析

MaxPeak™ テクノロジーを採用した CORTECS™ Premier カラムを用いたセファロスポリン類および関連原薬の迅速分析

  • Brianna R Clements
  • Paul D. Rainville
  • Waters Corporation

要約

セファロスポリン類は、感染症治療のために投与される薬であり、最悪の感染性バクテリアに有効なものもあります。したがって、セファロスポリン類の品質管理をサポートする分析法は、効率的で、精密かつ正確であることが必要です。このアプリケーションでは、MaxPeak High Performance Surface(HPS)テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムを用いてセファロスポリン類の分析法を開発し、従来のステンレススチールを用いたクロマトグラフィーのセットアップと比較します。この分析法により、直線性と再現性が高く、正確な結果が 2 分未満で得られます。

アプリケーションのメリット

  • この分析法により、一般的なセファロスポリン類について 2 分未満で結果が得られる
  • Max Peak テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムによりクロマトグラフィーが改善し、従来のステンレススチール製のシステムおよびカラムと比較して、ピーク高さが最大 40% 増加
  • この分析法は、実際の薬物サンプルを定量することができ、セファロスポリン類の品質管理分野に適用できる

はじめに

セファロスポリン類は、感染症治療のために投与される薬です1。 セファロスポリン系の薬には 5 世代あり、その一部は、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)による感染症に有効な唯一の薬剤です。セファロスポリン類は重要な医薬品であるため、その品質管理試験は正確かつ効率的であることが必要です。このアプリケーションでは、セファロスポリン類の分離および定量のための新規 MaxPeak High Performance Surfaces(HPS)テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムを使用する迅速 RPLC 分析法を開発します。さらに、標準のステンレススチールを用いる分析法と比較した場合の Premier カラムテクノロジーによるセファロスポリン類分析の改善点について実証します。

ステンレススチール製ハードウェアは、セファロスポリン類などのカルボン酸を含む分析種と相互作用し、クロマトグラフィー性能が低下することがわかっています2。ステンレススチール製のシステムは、特に RPLC で一般的に使用される酸性移動相の存在下で、時間が経って腐食するにつれて、これらの相互作用がより明らかになります。ウォーターズコーポレーションは最近、新規の MaxPeak HPS テクノロジーを採用した Premier 製品ラインをリリースしました。MaxPeak HPS テクノロジーは、これらの望ましくない金属と分析種の相互作用を防ぐことにより、これらの課題のいくつかを軽減することがわかっています3,4,5

今回、RPLC-UV と MaxPeak HPS テクノロジーを組み合わせることにより、従来のステンレススチールを用いる分析法と比較して、セファロスポリン類分析のためのクロマトグラフィーが改善されています。直線性と再現性に優れ、正確であることが示されている迅速な分析法を開発しました。

実験方法

サンプルの分離法の説明

セファピリン、セファクロル、セファレキシンは Sigma Aldrich(ウィスコンシン州ミルウォーキー)から購入しました。すべてのセファロスポリン類は、100% 水を希釈液として用いて、1 mg/mL になるように個別のストック溶液として調製しました。次に、ストック標準溶液を濃度 20 µg/mL になるように希釈して合わせ、セファロスポリン類混合標準試料を作製しました。ストック溶液は 2 ℃ ~ 8 ℃ で保存し、室温に平衡化させてから分析に使用しました。

直線性サンプルの説明

セファレキシンの検量線用ストック標準溶液は、濃度 1 mg/mL になるように調製し、100% 水を使用して 10 ml メスフラスコ中に希釈しました。次に、1 µg/mL ~ 100 µg/mL のストック溶液からさまざまなキャリブレーション標準試料を調製しました。ストック溶液は 2 ℃ ~ 8 ℃ で保存し、室温に平衡化させてから分析に使用しました。

分析条件

LC 条件

この試験では、2 種類の装置セットアップを使用しました。MaxPeak HPS テクノロジーを紹介するために ACQUITY™ Premier をセットアップし、従来の ACQUITY UPLC ステンレススチール製セットアップを使用して、Premier セットアップと比較しました。各システムは、コンポーネントが異なるだけで、同じ装置条件を使用して実行しました。 

装置セットアップ

グラジエントテーブル

データ管理

クロマトグラフィーソフトウェア

Empower™ 3 ソフトウェアビルド 3471

結果および考察

分離法の結果

この分析法では、3 種類の一般的なセファロスポリン類が再現性よく分離され、保持されます。10 回の注入後、すべてのセファロスポリン類の面積および保持時間の %RSD が <5% でした(表 1 および表 2)。以下の 10 回の注入のクロマトグラムの重ね描きにより、分析法の性能が明確に示されています(図 1a)。 

表 1.  セファロスポリン類混合標準試料の面積カウントの %RSD などを含む表 
表 2.  セファロスポリン類混合標準試料の保持時間の %RSD などを含む表
図 1a.  セファロスポリン類混合標準試料の 10 回の注入の重ね描きクロマトグラム 

直線性の結果

セファレキシンについて直線性を測定したところ、この分析法の定量的適合性が実証されました。収集した直線性のデータは、品質管理試験に使用できることを裏付けています(図 2)。 

図 2.  1 µg/mL ~ 100 µg/mL のセファレキシンの 9 点検量線。この曲線の R2 値は > 0.999 でした。 

システム比較の結果

この分析法をステンレススチール製システムに移管したところ、MaxPeak HPS テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムのセファロスポリン類分析における改善点が明らかになりました。それぞれの装置セットアップで同じ標準試料を使用して、セファロスポリン類混合標準試料の注入を 10 回行いました。下の図 3a および 3b において、両方のシステムで分析法を正常に実行できます。

図 3a.CORTECS Premier C18+ カラムを装着した ACQUITY Premier システムでのセファロスポリン類混合標準試料の 10 回中 5 回の注入のクロマトグラム。
図 3b.CORTECS C18+ カラムを装着した ACQUITY I-Class システムでのセファロスポリン類混合標準試料の 10 回中 5 回の注入のクロマトグラム。 

図 3a および図 3b のクロマトグラフィーデータの詳細を、それぞれ表 3 および表 4 に示しています。MaxPeak HPS テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムのメリットが、明確に示されています。2 種類のシステムのうち、Premier では高さシグナルが最大 40% 増加しています。このテクノロジーにより、セファロスポリン類分析において、従来のステンレススチール製のセットアップと比較して、保持、分離、ピークの対称性が明らかに改善しています。 

表 3.  図 3a のクロマトグラフィーデータ 
表 4.  図 3b のクロマトグラフィーデータ 

サンプルの定量結果

この分析法の定量への応用を実証するために、セファレキシン薬物サンプルを濃度 50 µg/mL で調製しました。このサンプルを分析すると、49.27 µg/mL と定量され、回収率は 98% でした(図 4)。

図 4.  この分析法の定量における可能性を示す、セファレキシン薬物サンプルのクロマトグラム 

結論

MaxPeak HPS テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムでは、従来のステンレススチール製のクロマトグラフィー装置およびカラムと比較して、セファロスポリン類の分析が改善されました。作成された分析法は効率的であり、1 回の注入あたり 2 分未満で、再現性のある分析結果が得られます。さらに、この分析法には直線性があり、セファロスポリン類の正確な定量分析に使用できる可能性があります。結論として、MaxPeak HPS テクノロジーを採用した CORTECS Premier カラムにより、従来のステンレススチール製のクロマトグラフィーセットアップと比較して、セファロスポリン類の分析が向上します。

参考文献

  1. Bui T, Preuss CV.Cephalosporins [Internet].PubMed.Treasure Island (FL): StatPearls Publishing; 2020 [cited 2022 Sep 1].Available from: https://www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK551517/.
  2. Walter T, Trudeau M, Simeone J, Rainville P, Patel A, Lauber M, Kellett J, DeLano M, Brennan K, Boissel C, Birdsall R, Berthelette K. Low Adsorption UPLC Systems and Columns Based on MaxPeak High Performance Surfaces: The ACQUITY Premier Solution.Waters Corporation; Available from: 720007128, 2021 May.
  3. Layton C, Rainville P. Improvements in Chromatographic Performance for Stability Indicating Methods of Antiviral Drugs With MaxPeak Premier Technology. Waters Application Note; 720007487, 2022 Jan.
  4. Shah D, Smith K, Yang J, Hancock P. Analysis of Fourteen Organic Acids in Various Beverages Using the ACQUITY UPLC H-Class PLUS and ACQUITY QDa Mass Detector.Waters Application Note; 720007289, 2021 Aug.
  5. Waters Corporation.CORTECS Columns, Applications Notebook.Available from: 720004739, 2012.

720007750JA、2023 年 1 月

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