• アプリケーションノート

Alliance™ iS HPLC System を用いた原薬および錠剤中のアスピリンおよび類縁物質の信頼性の高い分析

Alliance™ iS HPLC System を用いた原薬および錠剤中のアスピリンおよび類縁物質の信頼性の高い分析

  • Margaret Maziarz
  • Paul D. Rainville
  • Stephanie Harden
  • Waters Corporation

要約

医薬品の品質と安全性を確保するには、頑健で信頼性の高い分析法が不可欠です。この試験では、アスピリンの有効成分(API)および 6 種類の関連類縁物質の分析のための、単一の高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析法について説明します。分析は、XSelect™ HSS T3 カラムを搭載した Alliance iS HPLC System で行います。システム適合性、直線性、正確性、日内および日間分析法性能を評価したところ、優れた結果が得られ、USP 要件(USP43-NF38、アスピリン錠)も満たしていました。またこの試験では、原薬および錠剤中のアスピリンアッセイおよび類縁物質の含有量の信頼性が高く正確な測定にこの分析法を適用できることを実証します。 

アプリケーションのメリット

  • 原薬および錠剤中のアスピリンアッセイおよび類縁物質(不純物)を同時に測定するための、信頼性が高く迅速な分析法(7.6 分以内)
  • Alliance iS HPLC System で、精度、再現性、直線性、正確性の高い、優れている日内および日間分析法性能を実証

はじめに

医薬品メーカーは、現行の医薬品製造管理および品質管理基準(CGMP)の規制への準拠を確保するため、医薬品のアイデンティティー、強度、質、純度を実証する必要があります1。 そのためには、品質管理(QC)ラボにおけるルーチン使用において、信頼性が高く正確な結果が得られる頑健な分析法を確立する必要があります。 

アスピリンは一般に、軽度の痛み、疼痛、発熱の緩和および心臓発作や軽度の脳卒中の防止に使用されます。アスピリンは経口投与用の錠剤として入手でき、1 錠あたり 81 ~ 650 mg のアスピリンが含まれています2。 アセチルサリチル酸のヨーロッパ薬局方に記載された、アスピリンおよびその 6 種類の類縁物質を同時に分離するための分析法が 1 つ見つかりました3。 アスピリン錠の米国薬局方(USP)モノグラフでは、その手順に不純物が 1 種類のみ指定されています4

今回、アスピリン API および関連類縁物質の分析のための分析法を開発し、アスピリンサンプルを Alliance iS HPLC System で分析しました。試験では、システム適合性、直線性、正確性、日内および日間性能などの重要な分析法の性能特性を評価しました。得られた結果を分析し、アスピリン錠の USP モノグラフに記載されている合否基準と比較しました4。 この分析法は優れた日内および日間性能を示し、ピーク面積および保持時間の相対標準偏差(RSD)がそれぞれ 0.25% 以下および 0.03% 以下で、USP 基準を満たしていました。さらに、この分析法は、原薬および錠剤中のアスピリンアッセイおよび類縁物質(不純物)含有量の測定に適していることがわかりました。 

 

実験方法

標準溶液

類縁物質およびアスピリン API を含む個別のストック標準溶液を、希釈溶媒(0.1% ギ酸含有 60:40 水/アセトニトリル)中にそれぞれ 1.0 および 5.0 mg/mL になるように調製しました。API のストック溶液を希釈溶媒で 0.1 mg/mL になるように希釈し、類縁物質が 10% になるようにスパイクして混合標準溶液を作製しました。欧州薬局方が指定するアスピリンおよび 6 種類の類縁物質を表 1 に示します3

表 1.  アスピリンおよび類縁物質(不純物)の化学情報 

アスピリンサンプル溶液

粉砕した錠剤(アスピリンを 81 mg 含む)を希釈溶媒(0.1% ギ酸含有 60:40 水/アセトニトリル)中で 10 分間超音波処理し、アスピリンを 1.6 mg/mL になるように溶解しました。抽出後、サンプル試験溶液を 3,000 rpm で 10 分間遠心分離し、アスピリンアッセイ用に 0.1 mg/mL に希釈しました。類縁物質試験では、錠剤および原薬を、希釈溶媒(0.1% ギ酸含有 60:40 水/アセトニトリル)中 0.5 mg/mL になるように調製しました。
溶液は、0.2 µm ナイロンシリンジ(Waters 製品番号:WAT200524)を通してろ過してから分析しました。 

分析条件

LC システム:

Alliance iS HPLC System(TUV 検出器搭載)

バイアル:

LCMS マキシマムリカバリー 2 mL(製品番号:600000749CV)

カラム:

XSelect HSS T3、4.6 × 150 mm、3.5 µm(製品番号:186004786)

カラム温度:

40 ℃

サンプル温度:

10 ℃

注入量:

15 µL

移動相:

A:0.1% ギ酸水溶液

B:0.1% ギ酸アセトニトリル溶液

洗浄溶媒:

パージ/サンプル洗浄溶媒:60:40 水/アセトニトリル

シール洗浄溶媒:90:10 水/アセトニトリル

検出:

237 nm

グラジエントテーブル

ソフトウェア

クロマトグラフィーデータソフトウェア(CDS):

Empower™ 3.6.1

データ取り込みおよび分析は Empower ソフトウェアを使用して行いました。サマリーレポートは Empower プロジェクトで使用可能なレポートテンプレートを使用して生成しました。 

結果および考察

開発した分析法を Alliance HPLC iS System で実行したところ、アスピリン API および 6 種類の関連類縁物質を 7.6 分以内で正常に分離することができ、最小 USP 分離度(USP Rs) ≥ 4.8、ピークテーリング 1.0 ~ 1.2、保持係数(k*) ≥ 2.1 でした(図 1)。 

システム適合性試験

混合標準溶液を 5 回繰り返し注入してシステム適合性を評価し、USP モノグラフに指定されているアスピリン錠の適合性要件が満たされていることを確認しました。アッセイおよび不純物の手順について記載されている USP 適合性要件には、以下が含まれます4

  • アッセイ:ピークテーリングが 2.0 以下(NMT)、相対標準偏差(RSD)が 2.0 以下
  • 不純物:サリチル酸とアスピリンのピーク間の分離度が 2.0 以上(NLT)で、サリチル酸の RSD が 4.0% 以上

この分析法はシステム適合性要件を満たしており、ピーク面積と保持時間(RT)の RSD はそれぞれ 0.07 ~ 1.43% および 0.02 ~ 0.03% の範囲でした(図 1B)。さらに、アッセイおよび不純物の手順の USP 適合性要件も満たしていました。 

図 1.  Alliance iS HPLC System で実行したアスピリン API および類縁物質の繰り返し注入(n = 5)。XSelect HSS T3 カラムを使用したクロマトグラフィー分離(A)およびシステム適合性結果(B)。

日内および日間性能

日内および日間性能の実証により、この分析法を Alliance iS HPLC System で実行することで一貫性のある結果が得られることが保証されます。これは、医薬品の品質管理および安全性において非常に重要です。
Alliance iS HPLC System の日内分析法性能を、1 日の分析において、混合標準溶液を 4 種類のセットで 5 回繰り返し注入して評価しました。結果を、アスピリン錠の USP 適合性要件に照らして評価しました4。 日内分析法性能は優れており、アスピリンアッセイおよび不純物手順について定義された USP 適合性要件を満たしていました(表 2)。4 セットのデータにわたるアスピリンのピーク面積および保持時間の RSD は、それぞれ 0.03 ~ 0.08% および 0.02 ~ 0.03% でした。サリチル酸(不純物 C)のピーク面積の RSD は 0.07 ~ 0.25% の範囲でした。

表 2.  アスピリン錠の USP モノグラフで定義されている USP 適合性基準に照らして評価した日内分析法性能4

Alliance iS HPLC System で実行した分析法の日間性能について、混合標準溶液を 1 日目、2 日目、5 日目を含む異なる日にわたって分析しました。この分析法は優れた性能を示し、試験を行った数日間にわたって同等の結果が得られて、すべての USP 適合性基準を満たしていました(表 3)。

表 3.  アスピリン錠の USP モノグラフで定義されている USP 適合性基準に照らして異なる日に評価した日間分析法性能4

直線性および範囲

アスピリン API のキャリブレーションプロットを、サンプル調製物中の API の作業濃度 0.1 mg/mL に関して 80 ~ 120% の範囲で作成しました。各レベルでの濃度対ピーク面積の検量線は、相関係数(R2)が 0.999 以上でした(図 2)。さらに、X の計算値または濃度の偏差(%)は -0.35 ~ 0.81% の範囲でした。

図 2.  作業濃度 0.1 mg/mL および % 偏差に関する範囲 80 ~ 120% のアスピリン API の検量線。237 nm の UV。

アスピリンアッセイ

アッセイ試験では、アスピリン 81 mg を含む錠剤を、希釈溶媒(0.1% ギ酸含有 60:40 水/アセトニトリル)中に 0.1 mg/mL になるように調製しました。回収率(%)を計算するため、検量線に対してサンプル溶液を定量しました。6 サンプルを分析して得られた回収率は 93.4 ~ 93.6% の範囲であり(図 3)、アスピリンの表示量の 90.0 以上(NLT)、110.0% 以下(NMT)という USP 合否基準を満たしていました4

図 3.  錠剤中のアスピリンアッセイの測定。アッセイ結果は、アスピリン表示量の 90.0 ~ 110.0% というアスピリン錠の USP 基準を満たしていました4

類縁物質

類縁物質の含有量(% 不純物)は、各類縁物質のピーク面積を、アスピリン API のピーク面積と比較することにより測定しました(図 4)。

分析により、アスピリン錠のサンプル中に 2 種類の不純物(それぞれ 0.91% および 0.05% の不純物 C および D)が存在すること、および原薬サンプル中に 0.15% のレベルの不純物 C が存在することが明らかになりました(図 5)。結果は、サリチル酸(不純物 C)の USP 合否基準(0.3% 以下)およびコーティング錠の USP 合否基準(3.0% 以下)を満たしていました4

図 4.  類縁物質の分析用のサンプル溶液。237 nm の UV。
図 5.  アスピリン錠および原薬中の類縁物質(% 不純物)の結果。237 nm の UV。

結論

アスピリンおよび 6 種類の関連類縁物質すべてに対応する単一の LC 分析法を開発して Alliance iS HPLC System で実行した結果、原薬および錠剤中のアスピリン API および 6 種類の関連類縁物質(不純物)の含有量の同時測定に適した優れた性能を有することが実証されました。システム適合性結果は、アスピリンアッセイおよび不純物分析手順の基準を満たしていました。直線性、正確性、日内および日間性能が優れていることが実証されました。これらの結果により、Alliance iS HPLC は、ルーチン分析試験に適した、頑健で信頼性が高く、再現性のある性能を発揮することが実証されました。

参考文献

  1. Current Good Manufacturing Practice (CGMP) Regulations | FDA.
  2. https://medlineplus.gov/druginfo/meds/a682878.html
  3. Ph.Eur.Monograph.Acetylsalicyclic Acid. The European Pharmacopeia 10.0.01/2017:0309.
  4. USP monograph for Aspirin Tablets.United States Pharmacopeia USP 43-NF 38, official 1st May 2020.

720007994JA、2023 年 8 月

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