ペプチドおよびペプチドマッピングの分離における逆相カラムの性能
要約
2 ~ 3 µm の粒子を含むペプチド分離用の 8 種類の Waters™ 逆相カラムについて、十分実証済みのペプチド標準試料を使用して、性能を比較しました。ギ酸(FA)移動相添加剤を含む有機溶媒濃度が増加するグラジエントを使用したところ、異なるカラムケミストリーの間で選択性とピークキャパシティの違いが観察されました。MaxPeak™ Premier High Performance Surfaces(HPS)カラムと、同じ逆相カラム粒子を充塡した非修飾のステンレススチール製カラムを使用した場合の選択性は同等です。抽出イオンクロマトグラム(XIC)では、異なる MaxPeak Premier カラムの間で異なる選択性が見られ、脱アミド化型のスペクトルは、非修飾型からよく分離しているほどきれいです。
アプリケーションのメリット
Waters 逆相カラムでは、ペプチド分離で有効な性能が得られます。
はじめに
逆相クロマトグラフィーは、同様の組成を有するペプチドの分離に最もよく使用されるツールの 1 つです。最近の米国薬局方(USP)の調査によると、500 種類を超える C18(つまり USP「L1」分類)が存在します。2017 年に、10 種類のウォーターズの逆相カラムの性能が並べて比較され、ペプチドマッピング分離に関して各カラムケミストリーの特性がまとめられました1。
MaxPeak Premier 逆相カラムには、分析種とカラムハードウェア表面の間の望ましくない相互作用を最小限に抑えるように設計された MaxPeak High Performance Surfaces(HPS)ハードウェアが採用されています2。 このアプリケーションノートでは、8 種類のウォーターズの逆相カラム(MaxPeak Premier カラムおよび非修飾のステンレススチール製カラムの両方)の性能を比較し、選択性、ピークキャパシティ、ピーク形状の違いを示しています。
実験方法
LC 条件
LC システム: |
ACQUITY™ UPLC™ I-Class PLUS |
検出: |
TUV @ 214 nm、ACQUITY BioAccord MS 検出 |
カラム: |
XSelect™ Premier Peptide CSH™ C18、130 Å、2.5 µm、2.1 × 150 mm(製品番号:186009906) XSelect Peptide CSH C18、2.5 µm、2.1 × 150 mm(製品番号:186006943) XBridge™ Premier Peptide BEH™ C18、130 Å、2.5 µm、2.1 × 150 mm カラム(製品番号:186009835) XBridge Peptide BEH C18、130 Å、2.5 µm、2.1 × 150 mm(製品番号:186008981) XBridge Premier Peptide BEH C18、300 Å、2.5 µm、2.1 × 150 mm(製品番号:186009894) XSelect Premier Peptide HSS T3、2.5 µm、2.1 × 150 mm(製品番号:186009840) CORTECS™ Premier C18+、2.7 µm、2.1 × 150 mm(製品番号:186010457) CORTECS C18+、2.7 µm、2.1 × 150 mm(製品番号 186007368) |
カラム温度: |
60 ˚C |
サンプル温度: |
10 ˚C |
注入量: |
15 µL、10 µL |
流速: |
0.2 mL/分 |
移動相: |
A:0.1 % ギ酸水溶液 B:0.1 % ギ酸アセトニトリル溶液 |
MassPREP ペプチド混合液のグラジエントテーブル
mAb トリプシン消化標準試料のグラジエントテーブル
ACQUITY RDa 検出器の設定
モード: |
フラグメンテーションによるフルスキャン |
質量範囲: |
m/z 50 ~ 2000 |
極性: |
ポジティブ |
サンプリングレート: |
5 Hz |
コーン電圧: |
30 V |
フラグメンテーションコーン電圧: |
60 ~ 120 V |
キャピラリー電圧: |
1.20 kV |
脱溶媒温度: |
350 ℃ |
データ管理
LC/MS ソフトウェア: |
waters_connect™ |
結果および考察
カラムケミストリーが異なる 8 種類のウォーターズの逆相カラムを用いて、十分に特性解析された MassPREP ペプチド標準試料混合液を分離したところ(表 1)、以前報告されているように、評価対象のペプチドについて異なる選択性が見られました1。
ペプチドの分離における選択性は、同じカラム粒子(つまり同じケミストリー)が充塡された MaxPeak Premier カラムと非修飾のステンレススチールカラムの間で非常に類似しています(図 1a)。0.1% FA 移動相添加剤を含む有機溶媒濃度が増加するグラジエントでは、以前の結果と同様に、CSH C18 130 Å カラムのピークキャパシティが最も高く、CORTECS C18+ カラム(図 1b)がこれに続きました。これはおそらく、C18 粒子に含まれる正電荷が少量であることによると思われます。
また、正電荷の程度が少ないこれらのカラムでは保持性が一般に低くなります。NISTmAb™ トリプシン消化物を分離したところ、同様に 8 種類のウォーターズのカラムケミストリーの間でペプチド選択性の違いが見られます(図 2)。
選択性の違いについて詳しく説明するため、BioAccord LC-MS システムおよび waters_connect で収集した MS データを使用して、XSelect Premier Peptide CSH C18 カラムおよび XBridge Premier Peptide BEH C18 130 Å カラムでピークを同定しました(図 3a)。同じ色の矢印は同じペプチドを表します。XSelect Premier CSH C18 130 Å カラムでは、XBridge BEH C18 130 Å カラムで収集されたデータと比較して、全体的にペプチドの保持性が低いことに注意してください。さらに、色付き矢印が付いた同定済みペプチドの一部の間隔が 2 つのカラムで異なりますが(例、青色と紫色の対および赤色と緑色の対)、15 種類のペプチドの全体的な保持時間はこれら 2 つのカラムでよく相関しており、カラムの選択性がやや類似していることを示しています(図 3b)。
近年、重要品質特性(CQA)をモニターするためのマルチ特性メソッド(MAM)として、ペプチドマッピングが使用されています3,4。 図 4 および図 5 に、例として、2 種類の NISTmAb トリプシンペプチド(重鎖 T26 および重鎖 T37)およびその脱アミド化型の XIC を 5 種類の Premier カラムについて示しています。非修飾型のピークおよびその脱アミド化型のピークのスペクトルを右側に示しています。重鎖 T26 の場合、非修飾型のピークおよび脱アミド化型のピーク 1 は、Premier Peptide CSH C18 カラムおよび CORTECS Premier C18+ カラムでより良く分離されています(図 4)。重鎖 T37 の場合、非修飾型のピークおよび脱アミド化型のピーク 1 は、Premier Peptide CSH C18 130 Å カラムおよび Premier Peptide BEH C18 130 Å カラムでより良く分離されています(図 5)。さらに、脱アミド型では約 +1Da の質量シフトが見られることがわかっています。図の右側の緑色のボックスで示されているように、脱アミド化型のスペクトルは、非修飾型からよく分離しているほどきれいです。
結論
ペプチド分離用の 8 種類のウォーターズ逆相カラムの性能を比較したところ、異なるカラムケミストリーにおいて選択性およびピークキャパシティの違いが観察されました。MaxPeak Premier HPS カラムハードウェアを使用しても、ペプチド分離の選択性が大きく変化することはありませんでしたが、ペプチドが高度にリン酸化されていたら、異なる結果になった可能性があります。XIC から、NISTmAb トリプシンペプチドとその脱アミド型がよく分離されているほど、脱アミド型のスペクトルがきれいであることがわかります。
全体として、試験したすべてのカラムにおいて、ペプチド分析のための有効な分離が得られました。異なるカラムケミストリーの特性1により、異なる選択性がもたらされます。このことは、分離が困難なペプチドサンプルを分離するメソッドの開発に有用である可能性があります1。
参考文献
- Koza S.M., Chambers E.E. Selecting a Reversed Phase Column for the Peptide Mapping Analysis of a Biotherapeutic Protein.Waters Application Note.720005924EN.2017.
- Birdsall R.E., Kellett J., Ippoliti S., Ranbaduge N., Lauber M.A., Yu Y.Q., Chen W. Reducing Metal-Ion Mediated Adsorption of Acidic Peptides in RPLC-Based Assays Using Hybrid Silica Chromatographic Surfaces.Journal of Chromatography B 1179 (2021) 122700.
- Mouchahoir T., and Schiel J.E. Development of an LC-MS/MS peptide mapping protocol for the NISTmAb.Analytical and Bioanalytical Chemistry (2018) 410:2111–2126.
- Guan X., Eris T., Zhang L., Ren D., Ricci M.S., Thiel T., Goudar C.T. A High-Resolution Multi-Attribute Method for Product Characterization, Process Characterization, and Quality Control of Therapeutic Proteins.Analytical Biochemistry 643 (2022) 114575.
720008035JA、2023 年 9 月