• アプリケーションノート

Alliance™ iS HPLC System による高速液体クロマトグラフィーを用いたナファゾリン塩酸塩とマレイン酸フェニラミンおよびそれらの類縁物質の同時測定

Alliance™ iS HPLC System による高速液体クロマトグラフィーを用いたナファゾリン塩酸塩とマレイン酸フェニラミンおよびそれらの類縁物質の同時測定

  • Fadi L. Alkhateeb
  • Margaret Maziarz
  • Paul D. Rainville
  • Waters Corporation

要約

この試験では、2 つの有効成分(ナファゾリン塩酸塩およびマレイン酸フェニラミン点眼液)およびそれらの類縁物質を同時に測定できる液体クロマトグラフィー分析法を開発しました。この分析法により、XSelect™ CSH C18 カラムを使用する、温度 40 ℃、流速 2.0 mL/分 の 1 回の分析で、20 分以内に分析種の完全な分離が得られました。この試験の一環として、システム適合性、範囲、正確性(回収率)、日内精度、日間精度の包括的評価を実施しました。この分析法は、作業濃度の API 濃度に関して 80 ~ 120% の範囲で直線性であり、相関係数(R2)0.997 超を示しました。この分析法は、実用的なアプリケーションとして、市販の点眼液および点鼻液のルーチン分析に、添加剤からの大きな干渉を受けることなく、正常に使用できました。

アプリケーションのメリット

XSelect CSH C18 カラムを Alliance iS HPLC System と組み合わせて使用したこのシングル HPLC 分析法は、医薬品有効成分(API)のナファゾリン塩酸塩およびマレイン酸フェニラミンのアッセイおよび有機不純物の分析のためのいくつかの別個の分析法に取って代わる可能性があります。

はじめに

ナファゾリンは、充血除去剤および血管収縮剤として作用して、眼の発赤や腫れを軽減する医薬品の有効成分です。一方、マレイン酸フェニラミンは、かぜ、インフルエンザ、アレルギー、その他の呼吸器系疾患による一時的な症状を緩和するために一般的に使用される抗ヒスタミン剤です。これら 2 つの医薬品有効成分(API)は、花粉症などのアレルギー性結膜炎の症状を緩和する点眼液にしばしば配合されています[1, 2]。医薬品の組成、用量、純度に関する規制要件を確実に遵守するには、このような医薬品の内容物を品質保証(QA)および品質管理(QC)の目的で分析することがきわめて重要です。

近年、米国薬局方(USP)では、モノグラフ中の古くなった分析法を更新するための最新化の取り組みを行っています。このイニシアチブの目的は、公的基準を更新し、公衆衛生を守る規制機関の取り組みを強化することです。同定、アッセイ、有機不純物などのモノグラフのメインセクションに焦点を当てています。

最新化プロセスの重要な要素は、分析手順から有害な溶媒や試薬を排除することです。現在、業界では別々のクロマトグラフィー分析法を使用して、医薬品製剤中の各 API を分析しています。このアプローチは、効果的ではあるものの、有機溶媒に由来する有害な廃液が大量に生じる場合があります。

有害な廃液を最小限に抑えるための 1 つの解決策として、単一のクロマトグラフィー分析法を使用して、複数の有効成分およびその類縁物質を分析することが挙げられます。この試験では、2 種類の API(ナファゾリン塩酸塩とマレイン酸フェニラミン)およびその類縁物質の分析のために、3 つの USP クロマトグラフィー分析法を組み合わせて作成した 1 つの LC 分析法について説明します。

これらの分析種の名前と化学式を表 1 に詳細に示します。

表 1.  この試験で使用した API および類縁物質の名前と分子式

実験方法

マレイン酸フェニラミンおよびその類縁物質(2-ベンジルピリジン、4-ベンジルピリジン)は、米国薬局方(USP)(米国メリーランド州ロックビル)より提供されました。ナファゾリン HCl およびその類縁物質(1-ナフチル酢酸、類縁物質A)もそれぞれ USP より提供されました。ストック標準溶液を希釈液(90:10 移動相 A/移動相 B)中に調製し、続いてこれを希釈して、フェニラミン/ナファゾリン(500/40 µg/mL)および類縁物質(5 µg/mL)を含む分離用混合液を作製しました。すべての溶液を、冷凍庫(-20 ℃)内の PP 容器中で保管しました。0.025%(v/v)マレイン酸フェニラミンおよび 0.3%(v/v)ナファゾリン HCl を含む市販の点眼液は、最寄りの薬局で購入しました。

LC 条件

LC システム:

チューナブル UV 検出器を搭載した Alliance iS HPLC System

検出:

TUV(デュアル波長、260 および 280 nm)

カラム:

5 µm、4.6 × 150 mm XSelect CSH C18 カラム

pH 範囲:2 ~ 10

カラム温度:

40 ℃

サンプル温度:

5 ℃

注入量:

8 µL

流速:

2.0 mL/分

移動相 A:

0.05%(v/v)トリエチルアミンおよび 0.05%(v/v)リン酸水溶液(pH 未調整)

移動相 B:

0.05%(v/v)リン酸含有アセトニトリル

グラジエントプロファイル:

グラジエントプロファイル:最初は 5% 有機溶媒、95% 水系溶媒で 6 分間ホールド、続いて 7 分間で 5 ~ 95% 有機溶媒のリニアグラジエント。

データ管理

クロマトグラフィーソフトウェア:

Empower™ 3 クロマトグラフィーデータシステム

結果および考察

分析システムの機能を検証するには、システム適合性試験(SST)を実施することが重要でした。SST は、クロマトグラフィーシステムの効率と再現性を検証し、特定の分析に対する適合性を確認するための標準的な手順です。このことを実証するため、システムに SST 作業用標準試料(500/40 µg/mL のマレイン酸フェニラミン/ナファゾリン HCl)を 12 回繰り返し注入しました。その結果、表 2 に示すように、ナファゾリンとフェニラミンのピーク面積の相対標準偏差(%RSD)は、12 回の連続注入について 0.1 未満でした。これら 2 つのピークの保持時間の %RSD は、フェニラミンで 0.02、ナファゾリンで 0.14 でした。これらの結果は、開発した分析法とシステムが、保持時間とピーク面積に関する再現性が優れていることを示しています。

表 2.  作業用標準溶液を 12 回繰り返し注入して得られたシステム適合性試験の結果

API の直線性

クロマトグラフィー分析法の直線性を評価することは、幅広い濃度にわたって分析種を正確で確実に定量するためにきわめて重要です。検量線は通常、未知サンプル中の分析種の濃度を決定するために、同じ分析種をさまざまな濃度で試験することによって確立します。この試験では、ターゲット濃度 500/40 µg/mL の 80% ~ 120% の濃度範囲内のマレイン酸フェニラミン/ナファゾリン HCl を含む混合液を 5 つ調製することにより、直線性を評価しました。次に、各溶液をクロマトグラフィーシステムに 2 回繰り返し注入し、レスポンス面積を記録しました。濃度に対してピーク面積をプロットすることにより直線的な検量線が得られ、回帰式を計算したところ、図 1 に示すように、0.997 を上回る強い相関係数(R2)が得られました。

図 1.  フェニラミン API およびナファゾリン API の直線性。ターゲット濃度の 80% ~ 120% の濃度範囲内の 5 レベルの作業用標準試料を注入して検量線を作成しました。

類縁物質

API のピークから類縁物質のピークを分離する分析法の機能は、薬物の安全性、有効性、安定性を確保するために非常に重要です。有効成分の類縁物質からの分離における開発済み分析法の機能を評価するため、ナファゾリン塩酸塩/マレイン酸フェニラミンおよびその類縁物質を含む標準分離混合液に分析法を実行することは興味深いことでした。得られた結果から、図 2 および表 3 に示すように、この分析法により、混合液中のすべての化合物を効果的に分離することができ、USP 分離度は最低でも 2.4 でした。

図 2.  濃度レベルが API の 5% になるように類縁物質をスパイクした作業用サンプル。最終溶液には、500 µg/mL フェニラミン(25 µg/mL のその類縁物質である Phe Imp A、Phe Imp B)および 40 µg/mL ナファゾリン(2 µg/mL Naph Imp A および Naph Imp B)が含まれていました。260 nm での単波長 UV 吸収。
表 3.  分離用混合物中に含まれる化合物のピークすべての USP 分離度の値(図 3)

日内精度および日間精度

精度とは、同じ均一なサンプルから採取した複数のサンプルに手順を繰り返し適用した場合の、個々の測定結果における一致の度合いを指します。システム適合性のセクションですでに説明したように、システム適合性混合液の注入を 12 回繰り返して行うことにより、分析法の日内精度を評価しました。日間精度については、同じサンプルを異なる 2 日にわたって分析しました(1 日目に 12 回の繰り返し注入、2 日目にさらに 5 回の繰り返し注入)。結果から、17 回の繰り返し注入におけるフェニラミンのピーク面積の %RSD と保持時間の %RSD は、それぞれ 0.15 と 0.58 であることがわかりました。ナファゾリンについても同様の結果が得られ、ピーク面積の %RSD 値と保持時間はそれぞれ 0.03 と 0.59 でした。これらの結果から、この分析法ではターゲット化合物の検出精度が良好で、%RSD は 0.6% 未満であり、分析法が十分な精度を有していることが確認されました。12 回および 17 回の注入の重ね描きクロマトグラムを図 3 に示します。

図 3.  システム適合性試験(SST)溶液の代表的な分離:A. 同日に行った溶液の 12 回繰り返し注入。B. 同じ溶液の 2 日間にわたる 17 回注入の重ね描き。SST 溶液には 500/40 µg/mL のマレイン酸フェニラミン/ナファゾリン HCl が含まれていました。条件は「実験方法」セクションに記載した条件と同じです(UV@280 nm)。

点眼液および点鼻液の分析

次に、市販の点眼液および点鼻液から採取したサンプルの分析にこの分析法を適用しました。サンプルは次のように調製しました:眼のアレルギー緩和用製剤 1、2、および 3 については、作業濃度 500 µg/mL マレイン酸フェニラミン/40 µg/mL ナファゾリン HCl になるように、発赤および冷感用点眼薬 4、5、6 については作業濃度 40 µg/mL ナファゾリン HCl になるように、溶液を希釈液(90:10 移動相 A/移動相 B)で希釈しました。結果により、開発された分析法は、両方の API(フェニラミン(PHE)およびナファゾリン(NAP))について、アッセイの回収率が 90 ~ 110% 以内という USP モノグラフの基準を満たしていることが示されました[3–5]。4 種類の製剤の代表的な分離を図 4 に示します。

図 4.  フェニラミン(PHE)およびナファゾリンの API を含む市販の点鼻液(製剤 1、2、3)、およびナファゾリン API のみを含む溶液(製剤 4、5、6)の代表的な分離

結論

  • ナファゾリン塩酸塩およびマレイン酸フェニラミンの点眼液および点鼻液のための 3 つの USP モノグラフを組み合わせことにより、有効成分およびその類縁物質の分析向けのシングル LC 分析法を開発しました。
  • Alliance iS HPLC System により、シングル HPLC 分析法を使用して、複数の API およびその類縁物質を、迅速で確実に分離できるようになりました。

参考文献

  1. A. Uncini, G. De Nicola, A. Di Muzio, G. Rancitelli, L. Colangelo, D. Gambi, P.E. Gallenga, Topical naphazoline in treatment of myopathic ptosis, Acta Neurol Scand 87(4) (1993) 322–4.
  2. L. Quan, H. He, Treatment with olopatadine and naphazoline hydrochloride reduces allergic conjunctivitis in mice through alterations in inflammation, NGF and VEGF, Mol Med Rep 13(4) (2016) 3319–3325.
  3.  USP Monograph, Naphazoline Hydrochloride Nasal Solution, USP40-NF35, The United States Pharmacopeia Convention, official December 2017.
  4.  USP Monograph, Naphazoline Hydrochloride Ophthalmic Solution, USP40-NF35, The United States Pharmacopeia Convention, official December 2017.
  5. USP Monograph, Naphazoline Hydrochloride and Pheniramine Maleate Ophthalmic Solution, USP40-NF35, The United States Pharmacopeia.

720007876JA、2023 年 3 月

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