• アプリケーションノート

Andrew+™ ピペッティングロボットおよび OneLab™ ソフトウェアを使用した細菌エンドトキシン試験

Andrew+™ ピペッティングロボットおよび OneLab™ ソフトウェアを使用した細菌エンドトキシン試験

  • Robert D’Ordine
  • Associates of Cape Cod Inc.
  • Waters Corporation

要約

Andrew+ および OneLab の設定により、Pyrochrome® 速度論的発色アッセイが実行できることを実証します。

はじめに

発熱性物質試験は、すべての注入用医薬品や医療機器の安全性を確保するための要件です1。例えば、ワクチンやバイオ医薬品は、最終製剤中のエンドトキシンの有無について試験する必要があります。Pyrochrome などのエンドトキシン検出アッセイによりこれが可能になります2。このカブトガニ血球抽出物(LAL)ベースのアッセイ3,4 は、ナノグラム以下の量(10-9 g/mL)のエンドトキシンを検出できる、酵素カスケード反応を利用した極めて高感度の分析法です。96 ウェルマイクロプレートベースの発色性 LAL アッセイには、多数のピペッティングステップを要するかなり複雑なプロセスが必要です。検量線の作成、ポジティブプロダクトコントロール(PPC)の調製、サンプルの配置、試薬の分注には時間と手間がかかりますが、これらはこのアッセイの正常な使用における重要なステップです。検量線、PPC、サンプル前処理、およびプレート上のアッセイの配置に使用するリキッドハンドリングステップの自動化により、このようなアッセイの効率が大幅に向上します。プロセスの自動化により、分析者は時間のかかる繰り返し作業から解放され、生産性が向上し、分析作業の質が改善されるとともに、実行の一貫性が得られます。さらに、OneLab イベントログによる追加のメリットにより、監査に完全対応できるプロセスが確保され、今後の分析や調査が簡素化します。

LAL エンドトキシンアッセイの実行に関する注意事項:上記のように、このアッセイでは、0.005 EU/mL(EU:エンドトキシン単位)の範囲(ナノグラム以下(10-9 g/mL))までの微量のエンドトキシンが検出できます。IFU に示されているように、アッセイの実行に使用するすべての器具は、潜在的な干渉について試験する必要があります。このアッセイを実行するには、優れたラボテクニックと清浄な環境が必要です。これらの要件に対処するため、結果は固定エンクロージャー内の Andrew+ を使用して収集しました。 

今回、標準のピペットおよびドミノを使用し、Andrew+ と OneLab を用いて基本的な Pyrochrome プロトコルを実行して得られた結果の例を示します。ドミノとは、チューブ、プレート、チップ、試薬、およびその他の器具用のモジュール式ホルダーであり、デッキ上でさまざまな組み合わせで構成することができます。図 1 に、ロボットの物理的な構成および付随するドミノを示します。

図 1.  細菌エンドトキシン試験のための Andrew+ ロボットの構成
このテクニカルノートに記載した Pyrochrome の結果を得るための実験を行うのに使用した構成。使用した電子 Bluetooth 接続ピペットは、300 µL マルチチャンネルピペットおよび 300 µL シングルチャンネルピペットでした。LRW は LAL 試薬水です。

結果および考察

Andrew+ システムのこの初期評価では、現在使用可能なドミノを使用して基本的な Pyrochrome プロトコルを実行するための OneLab プロトコルの作成に取り組みました。このプロトコルは、一貫して検量線を作成し、サンプルおよび PPC の前処理を行う Andrew+ および OneLab の機能を評価するように設計されており、4 日間にわたる複数の分析によって実施しました。Pyrochrome アッセイの重要な要素の 1 つは、検量線の作成です。プレートごとに新しい検量線を作成しました。これらの希釈液は、500 EU/mL のストックから出発して段階希釈 30 µL:270 µL で作成したもので、これを用いて濃度 50、5、0.5、0.05、0.005 EU/mL の 5 点検量線を作成しました。各プレートに標準試料を 3 回繰り返しでロードしました。各プレートの検量線の開始時間データ(各サンプルで 0.03 OD 閾値と交差するまでの時間)を分析するため、両対数プロットを作成し、変換データについて線形回帰を行いました。これにより、14 回の分析それぞれについて傾き、切片、R 値を得ました。これらの結果を図 2 にまとめています。14 回の分析にわたる傾きと切片の分散はそれぞれ 4.1% と 1.2% でした。R 値はいずれも優れており、最小値は 0.995 でした(要件は R ≥ 0.980)。これらの結果はすべて、IFU に示されている Pyrochrome アッセイの実行基準の範囲内に収まっています。

図 2.  Andrew+ によって生成された Pyrochrome の検量線
このデータセット(14 回の分析)は、同じロットの試薬およびレファレンス標準試料のエンドトキシンを使用して 4 日間で得られたものです。各プレートの検量線は、独立した希釈セットから作成して使用しました。これらの線形近似は、各プレートの両対数プロットです。これらの検量線に用いた標準試料は 50、5、0.5、0.05、0.005 EU/mL です。上のプロットには、プロットされた 14 本のラインそれぞれの開始時間データがすべて含まれています(x 軸の値ごとに計 42 ポイント)。下の表に、結果として得られた 14 の傾きと切片の平均を示します。

検量線の評価に加えて、サンプルおよび 2 種類の PPC をこれらの実験に含めました。サンプルは、約 0.5 EU/mL になるように水で手動で調製し、デッキにロードしました。Andrew+ を用いてサンプルと 5 EU/mL の標準試料を合わせ(検量線作成と同様に 10 倍希釈、30 µL:270 µL)、2 種類の PPC を作成しました。PPC は約 1.0 EU/mL になると想定しました。サンプルおよび PPC をそれぞれ、各プレートの 10 のウェルにロードしました。14 枚のプレートにわたるデータを検討し、図 3 にまとめました。この場合、各サンプルおよび PPC について、各プレートの平均計算値を示しています。分散の計算値は、部分的には両対数プロットから逆算したため、サンプル(24.6%)および PPC(16.3%)について大きくなっています。さらに、サンプルはそれぞれの日に手作業で作成しています。すべてのプレートにわたるサンプルについての実際の平均計算値は 0.57 EU/mL でした。この値は、14 枚のプレートすべてにわたる予想値の 14% 以内でした。PPC の値 1.04 EU/mL は、14 枚のプレートにわたる予想値の 4% 以内でした。すべてのプレートにおける PPC の平均回収率は 93.5% で、規定の要件 50 ~ 200% を十分満たしています。
ここに示した実験で収集したデータはすべて、同じロットの試薬および器具を使用して得たものです。エンドトキシンのサンプルはすべて、同じロットのレファレンス標準試料のエンドトキシンに由来しています。

図 3.  Pyrochrome のサンプルおよびポジティブプロダクトコントロール(PPC)の結果のサマリー
このサンプルおよび PPC のデータセットは、同じロットの試薬およびレファレンス標準試料のエンドトキシンを使用して 4 日間にわたる 14 回の分析で得られたものです。1 枚のプレートからのサンプルまたは PPC の分析はそれぞれ 10 回の結果に基づいています。各プレートは、単一のサンプルおよび標準試料希釈液から得た 2 種類の PPC の独立した希釈セットから作成して使用しました。これらの結果は、図 2 に記載した個々の線形近似からの逆算値です。散布図のラインは各セットの平均値です。

結論

上記のように、14 枚のプレートから導出された傾きと切片の結果は分散が小さく、それぞれの場合において、線形近似の R 値は 0.995 以上です。これらの結果は、このアッセイを手作業で行った過去のデータに基づく分散の範囲の実測値と一致しています。

14 枚のプレートにわたるサンプルの分散は約 24.6% であり、全体的な平均の結果は予想値の 14% 以内でした。PPC はすべて規定範囲の 50 ~ 200% 内に収まり、アッセイの要件と一致しており、すべてのプレートにわたる平均値は予想値の 4% 以内でした。これらの結果全体を通して、Andrew+ は、使用説明書に概説されている期待される要件の範囲内で Pyrochrome アッセイを実行できることが実証されています。
同様の LAL ベースのエンドトキシン試験分析法を実施するためのカスタム自動化プロセスについて記載している論文が多数あります5,6。 いずれのプロセスも、一貫性と汚染に対する感度について同様の問題を克服する必要がありますが、Andrew+ が最も簡単で利用しやすいことが実証されています。 

参考文献

  1. Bacterial Endotoxins Test, United States Pharmacopoeia <85>.
  2.  Pyrochrome Instructions for use https://www.acciusa.com/tools-and-resources/package-insert-sheets/.
  3. Lindsay, G. K., P. F. Roslansky, and T. Novitsky.1989. Single-Step, Chromogenic Limulus Amebocyte Lysate Assay for Endotoxin J. Clinic.Microbiol.27:947–951.
  4. Prior, R.B., 1990.The Limulus amoebocyte lysate test.In Clinical Applications of the Limulus Amoebocyte Lysate Test (p. 27).CRC Press Boca Raton, FL.
  5. Tsuji KI, Martin PA, Bussey DM.1984 Automation of chromogenic substrate Limulus amebocyte lysate assay method for endotoxin by robotic system.Applied and environmental microbiology.Sep 1;48(3):550-5.
  6. Jorgensen, J.H. and Alexander, G.A., 1981.Automation of the Limulus amoebocyte lysate test by using the Abbott MS-2 microbiology system.Applied and environmental microbiology, 41(6):1316–1320.

720007998JA、2023 年 8 月

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