モノクローナル抗体のプロセス開発支援を目的とした宿主細胞タンパク質の同定およびモニタリングのための効率的な LC/MS ワークフロー
要約
このアプリケーションノートでは、モノクローナル抗体中の宿主細胞タンパク質(HCP)の LC-MS 分析用の 2 種類の分析ワークフロー(HCP 探索および HCP モニタリング)を紹介します。HCP 探索ワークフローは、消化済みタンパク質の分析スケール UPLC ™ 分離に基づき、ベンチトップ型 Xevo™ G3 QTof システムを使用して、NIST モノクローナル抗体(mAb)レファレンス物質中の HCP を 5 ppm まで同定することで実証されました。HCP モニタリングアッセイは、基本的に MS 専門家でないユーザーでもルーチン業務でハイパフォーマンスを発揮できるように設計されたプラットフォームである BioAccord™ UPLC-MS システム、およびデータ取り込みおよび解析用の規制対応の waters_connect™ ソフトウェアも使用して行いました。
アプリケーションのメリット
- UPLC-QTof MS を使用した探索 HCP アッセイにより、NIST mAb レファレンス物質 8671 中の HCP を 5 ppm という低濃度まで検出可能
- MS 専門家でないユーザーにとって理想的なプラットフォームで開発された HCP モニタリングアッセイにより、NIST mAb 消化物にスパイクしたタンパク質消化物標準試料について、同じ検出限界(5 ppm)を達成可能
- 探索 HCP ワークフローおよびモニタリング HCP ワークフローの両方に、ACQUITY™ Premier UPLC システムおよび Premier CSH™ カラムケミストリーを用いた分析スケールの分離が組み込まれており、これによってペプチドベースの分析の全体的な頑健性が向上
はじめに
宿主細胞タンパク質(HCP)は、バイオ医薬品製造時の発現システムに由来する内因性のプロセス関連不純物です。これらの不純物は、微量レベル(0.1 ~ 100 ppm)であっても、患者に望ましくない免疫反応を引き起こす可能性があり、医薬品の安全性、有効性、安定性を低下させる可能性があります。
これらの理由により、規制当局は製造者に、製品の精製中に HCP 不純物を除去および管理することを実証し、臨床試験で許容される低 HCP レベルを確保することを要求しています。これには、HCP のアイデンティティーを確立できる分析、および個別および/または凝集した HCP の定量ができるアッセイが必要です。開発初期には、複雑なプロテオミクスのようなワークフローを使用し、LC-MS に関する深い専門知識を持つオペレーターが必要な、Waters™ Cyclic™ IMS システムや SYNAPT™ HDMS システムなどの高性能質量分析システムが HCP 探索に使用されます。医薬品開発が進むにつれて、はるかに簡単で、よりルーチン的な免疫アッセイワークフローや LC-MS ワークフローを使用して、分子のプロセス開発を進め、大量生産に持ち込むことが必要です。
バイオ医薬品業界では従来、総 HCP 濃度の測定に ELISA アッセイが用いられてきましたが、ここ数年で、質量分析ベースの HCP 分析がその強力な代替策として登場しました。これにより、より広範な(プロテオームレベルの)HCP に対応するとともに、個々の HCP のレベルを測定することによりリスクを低減することができます1-11。
NIST mAb レファレンス物質 8671 の HCP の組成は、さまざまなサンプル濃縮プロトコルを使用して十分調査されています5-8。 今回、ウォーターズコーポレーションの新規の組換えトリプシンである RapiZyme を使用した NIST mAb HCP の酵素消化に、Eli Lilly によって初めて導入されたモノクローナル抗体(mAb)除去プロトコルを適用しました5,12。
このアプリケーションノートでは、QTof または Tof MS と分析スケールの UPLC 分離の組み合わせを使用した、HCP のルーチン分析用分析法の最適化に焦点を当てています。今回、1)NIST mAb レファレンス物質を使用した未知の HCP の(ID を使用した)探索とその後の定量、2)濃度既知のタンパク質消化物標準試料をスパイクした NIST mAb RM 消化物をサンプルバックグラウンドとして使用した既知の HCP のモニタリング、の 2 種類のワークフローについて説明します。
最初に説明するワークフローは、長時間(90 分間)のペプチドグラジエント分離を使用して MSE モード(DIA)で行った HCP 探索アッセイに基づいています。HCP の同定は、Progenesis QI for Proteomics(QIP)4.2 ソフトウェアを用いたデータ解析後の、プロテオームレベルのデータベース検索によって行われます。MSE の結果は、同定されたペプチドプリカーサー、観測された荷電状態、頂点での保持時間を含むスペクトルライブラリーにまとめることができます。一般的なサードパーティ製プロテオミクスソフトウェアである Byonic(Protein Metrics)も使用して探索 HCP データを解析したところ、ベンダーに依存しないソフトウェアとのデータ適合性が実証されました。さらに、Progenesis QIP の HCP 割り当てを独立して検証する目的にも役立ちました。
2 番目のワークフローは、さまざまな精製段階にわたって収集したモノクローナル抗体(mAb)サンプルから得られた既知の HCP のターゲットモニタリングにより一般的に用いられています。30 分間のペプチド分離の MSE データ取り込みを使用する、ハイスループットの HCP モニタリングアッセイを、設置面積が小さく、使いやすい BioAccord UPLC システムで開発しました。データ解析は、ターゲット分析種モニタリング用に特別に設計された、waters_connect の精密質量スクリーニングワークフローを使用して行いました。この HCP モニタリング解析メソッドは、規制対応のソフトウェアである waters_connect に内蔵されており、さまざまな精製プロトコルを使用してバイオ医薬品精製から得られた多くのサンプル(10 ~ 50)にわたって同定されたすべての HCP の定量およびモニタリングに用いることができます。このアプリケーションノートでは、上記の HCP ワークフローを、NIST モノクローナル抗体中の HCP およびスパイクした MIX-5 タンパク質消化物標準試料の同定とモニタリングに適用しました。
実験方法
サンプル前処理
マウスの細胞培養中で産生した高純度 mAb(NIST mAb 候補レファレンス物質 LRM 8671、濃度 10 mg/mL)を Millipore Sigma(ミズーリ州セントルイス)から購入しました。以前に公開された消化プロトコルの改良バージョンを使用し、高存在量の mAb 分子種を除タンパクによって除去するように設計されたプロトコルを使用して、NIST mAb を消化しました5。 500 µL Protein LoBind Eppendorf チューブ(カタログ番号 022431064)中で、200 µL の NIST mAb を 20 µL の 1 M Tris HCl バッファー(1 M CaCl2 含有)および 10 µL の 4 µM RapiZyme トリプシン(ウォーターズ製品番号:186010107)と混合し、37 ℃ で一晩(約 16 時間)消化しました。以前説明したように、この消化プロトコルでは、mAb の変性、還元、アルキル化をしなくて済み、HCP の消化の方がより安定な NIST mAb の消化よりも優先され、ネイティブ(非変性)立体構造が保たれます5。 16 時間の酵素消化後、未消化の mAb を 4 mM DTT とともに加熱還元(90 ℃、15 分)して変性させ、沈殿させました。サンプルを 12,000 g で 5 分間遠心分離し、上清(約 200 µL の消化物)を回収して、1 µL のギ酸(Millipore Sigma)で酸性化しました。
HCP 探索アッセイは、Xevo G3 QTof で LC-MSE モードにて行い、NIST mAb 消化物に、4 種のタンパク質消化物標準試料(MIX-4:ADH(アルコール脱水素酵素)、BSA(ウシ血清アルブミン)、ENL(酵母エノラーゼ)、PHO(ウサギホスホリラーゼ b))を消化後スパイクしました。
HCP モニタリングアッセイは、BioAccord LC-MS システムで LC-MSE モードにて行い、NIST mAb に 5 種のタンパク質消化物(MIX-5:ADH、BSA、ENL、PHO および CLP-B(大腸菌シャペロン消化物)をさまざまな濃度レベルになるようにスパイクしました(図 6 の挿入図参照)。
LC-MS グレードのアセトニトリル(ACN)は Thermo Fisher Scientific(マサチューセッツ州ウォルサム)から購入しました。LC-MS グレードの水およびメタノールは Honeywell(ノースカロライナ州シャーロット)から購入しました。
LC 条件
LC システム: |
ACQUITY™ UPLC Premier BSM |
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カラム: |
ACQUITY Premier CSH 2.1 × 150 mm、1.7 μm C18 粒子を充塡(製品番号:186009462) |
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カラム温度: |
60 ℃ |
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流速: |
200 µL/分 |
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移動相: |
溶媒 A:0.1% ギ酸含有 LC-MS グレード水 溶媒 B:0.1% ギ酸含有 LC-MS グレードアセトニトリル(ACN) |
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注入量: |
50 µL(HCP 探索アッセイ)、20 µL(HCP モニタリングアッセイ) 100 µL 注入ループを使用する固定ループ注入 |
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洗浄溶媒: |
パージ溶媒:50% メタノール サンプルマネージャー洗浄溶媒:50% メタノール |
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MS 条件(探索 HCP アッセイ):
MS システム: |
Xevo G3 QTof 質量分析計 |
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イオン化モード: |
ESI+ |
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キャピラリー電圧: |
2.8 kV |
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コーン電圧: |
25 V |
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イオン源オフセット: |
60 V |
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イオン源温度: |
120 ℃ |
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脱溶媒温度: |
450 ℃ |
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コーンガス流量: |
50 L/時間 |
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脱溶媒ガス流量: |
500 L/時間 |
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ToF 質量範囲: |
400 ~ 2000(MSE 取り込み) |
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取り込み速度: |
0.5 秒 |
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低エネルギー CE: |
6 V |
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高エネルギー CE ランプ: |
15 ~ 45 V |
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データ取り込みソフトウェア: |
UNIFI™ 3.0.0.21 |
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データ解析ソフトウェア: |
Progenesis QI for Proteomics v 4.2 Protein Metrics Byonic v 5.2.31 |
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MS 条件(モニタリング HCP アッセイ):
MS システム: |
BioAccord LC-MS システム |
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イオン化モード: |
ESI+ |
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キャピラリー電圧: |
1.5 kV |
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コーン電圧: |
40 V |
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イオン源オフセット: |
30 V |
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イオン源温度: |
120 ℃ |
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脱溶媒温度: |
450 ℃ |
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ToF 質量範囲: |
50 ~ 2000(MSE 取り込み) |
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取り込み速度: |
0.5 秒 |
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低エネルギー CV: |
40 V |
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高エネルギー CV ランプ: |
60 ~ 80 V |
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データ取り込みソフトウェア: |
UNIFI 2.1.2.4 |
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データ解析ソフトウェア: |
UNIFI 2.1.2.4 |
グラジエントテーブル:HCP 探索アッセイ
グラジエントテーブル:HCP モニタリングアッセイ
HCP 探索アッセイ(A)および HCP モニタリングアッセイ(B)に使用したグラジエント条件。
結果および考察
HCP 探索ワークフロー
このアプリケーションノートでは、HCP の LC-MS 分析について、2 種類の独立したワークフローを提案しています。HCP 分析の最初の作業の 1 つは HCP の同定です。その理由は、バイオ医薬品タンパク質はそれぞれ、精製するために採用された精製プロトコルに関連する固有の HCP 組成を有すると予想されるためです。
図 1 のフローチャートに示すように、HCP 探索アッセイは、(それまで未知であった)HCP 混入物をそれぞれ同定する役割を果たします。この特定の情報を提供できるのは LC-MS アッセイのみであり、リガンド結合アッセイ(ELISA)では個々のプロセス関連混入物を同定できません。さらに、HCP 探索アッセイでは、各 HCP の定量情報が得られます。すべての HCP を指定したしきい値(通常、10 ppm レベル等、非常に存在量が多いバイオ医薬品タンパク質に対する値として表されます)まで同定できたら、それらの HCP を、さまざまな細胞培養条件や精製プロトコルによって得られる複数のバイオ医薬品サンプルにわたってトラッキングすることができます。
市販の NIST mAb(レファレンス物質 8671)に含まれている HCP 不純物は、以前に特性解析されており、フルクトース二リン酸アルドラーゼ A が最も存在量の多いタンパク質で、その濃度範囲は 200 ~ 300 ppm でした1,2,5–9。 図 2 に、探索 HCP アッセイの実験条件下(90 分間のグラジエント、約 50 µg の高サンプルロード量)で行った NIST mAb 消化物の分離について記録されたベースピーククロマトグラムを示します。この 1 次元 UPLC-MSE アッセイにより、高存在量のアルドラーゼに加えて、濃度範囲 40 ~ 5 ppm の 6 種の低存在量 HCP を同定できました(表 I)。
2 種のペプチドプリカーサー(1 つは β2-ミクログロブリン由来(測定濃度 13 ppm)、もう 1 つは低親和性 IgG ガンマ Fc 受容体タンパク質由来(測定濃度 19 ppm))の抽出質量クロマトグラムを図 3 に示します。Premier CSH カラムは、カラムがオーバーロードになる条件でも良好なクロマトグラフィー分離を維持できるように設計されており、大量の mAb 消化物(オンカラムで 50 µg)をロードしても、すべての低存在量 HCP ペプチドについて左右対称のピーク形状(ピーク高さの 10% 位置のピーク幅が約 20 秒)が得られます。
NIST mAb 消化物は、3 回繰り返しで分析し、2 種類のソフトウェアプラットフォーム(Progenesis QIP および Byonic(Protein Metrics))を使用して、各データセットをマウスプロテオームデータベース(タンパク質のエントリー 16,644 種)に対して検索しました。消化物の 1 回の分析について取得した Progenesis QIP の結果を含むスクリーンショットを図 4 に示します。同じ注入について、Byonic ソフトウェアでも同定されたタンパク質を、アスタリスク記号(*)で示しています。これら 2 種類の検索エンジンは非常に異なるタンパク質同定アルゴリズムで動作しますが、これらによって得られた HCP の同定結果は非常に良く一致しており、両方の検索エンジンで 7 種の低存在量 NIST mAb HCP が同定されました(表 I)。
NIST mAb HCP およびスパイクした MIX-4 タンパク質は、「Hi3」アプローチで定量しました13。 「Hi3」タンパク質定量は、ESI-MS イオン化後に最適な MS1 レスポンスが得られる、各タンパク質由来の上位 3 種のペプチドの検出に基づいています。次に、検出されたすべての NIST mAb HCP の濃度を算出するために、これら 3 種の最もよくイオン化するペプチドの ESI-MS レスポンスを合計して、既知濃度のスパイクしたタンパク質(この場合 42 ppm になるようにスパイクした PHO タンパク質(表 I))のレスポンスと比較しました。
Progenesis および Byonic の結果を使用して、3 回繰り返し注入のうち 2 回で同定した HCP の完全なリストを表 I に示します。全体で 7 種の NIST mAb HCP が同定および定量されました。測定できた最低濃度はアデニル酸キナーゼ 2 の 4 ppm であり、1 次元探索 HCP アッセイに、低 ppm 範囲(最低約 5 ppm まで)の未知 HCP を一貫して同定する能力があることが示されました。
HCP モニタリングワークフロー
図 1 の別のフローチャートで示されている HCP モニタリングアッセイでは、多数のサンプル(20 ~ 50 サンプル)にわたって複数の HCP ペプチドをハイスループットで検出し、規制対応の条件下で動作することが可能です。
図 1 のフローチャートに示すように、HCP 探索アッセイの結果は、ペプチド配列、プリカーサー m/z、荷電状態、保持時間が含まれる HCP ペプチドライブラリーをコンパイルするのに役立ちます。HCP モニタリングアッセイは、さまざまな mAb 産生スキームにわたる HCP ペプチドのサブセットのターゲットモニタリング用に設計されています。MIX-5 をスパイクしたペプチドの HCP モニタリングデータセットを使用してモニタリングアッセイを開発し、さまざまなレベルの HCP 由来ペプチドを含むデータセットを模倣しました。
HCP モニタリング実験をシミュレーションするために、4 種類のタンパク質消化物(ADH、BSA、ENL、PHO)を 4 つの NIST mAb 消化物に 4 種類の濃度レベルになるようにスパイクし、4 つのサンプルすべてに 1 種のタンパク質消化物(CLP-B)を一定レベル(120 ppm)になるようにスパイクしました。既知濃度になるようにスパイクした複数のタンパク質消化物のモニタリングを使用して、さまざまな精製プロトコルの実施後に異なる濃度の HCP を含むと考えられる、mAb 精製から得られる代表的なサンプルをシミュレーションしました。
LC-MS データは、BioAccord LC-MS システムで 30 分間のグラジエントを使用して、MSE モードで取り込みました。MIX-5 をスパイクした NIST mAb 消化物のデータセット(各サンプルの 5 回繰り返しを含む 25 回の分析で構成)を、waters_connect からアクセスできる UNIFI アプリケーションの精密質量スクリーニングワークフローを使用して解析しました。waters_connect プラットフォームでのデータ取り込みと解析は、すべての業界要件を満たしており、GMP ラボ環境内でルーチンで実行できます11,12。
ESI-MS で最もよく応答する 43 種のペプチド(ADH、BSA、ENL、PHO タンパク質それぞれから上位 10 種のペプチドと、CLP-B タンパク質消化物標準試料からの 3 種のペプチドで構成)のリストが、これらのペプチドをターゲット定量用に指定する、データ解析メソッドの一部である Component Table(成分テーブル)に自動的にインポートされました。このリストには、各ペプチドの最も存在量の多いプリカーサーの荷電状態のみが含まれていました。43 種のスパイクしたペプチドすべてについて抽出質量クロマトグラムが生成され、対応するクロマトグラフィーピークが自動的に波形解析され、ピーク面積に従ってランク付けされました。Hi3 タンパク質の定量用に、各タンパク質から最も存在量の多いペプチド(ピーク面積カウントに基づく)を選択しました13。 4 種のスパイクしたタンパク質(ADH、BSA、ENL、PHO)の濃度を、すべてのサンプルに一定レベル(120 ppm)でスパイクした CLP-B タンパク質消化物に照らして測定しました。
4 種のスパイクしたタンパク質はそれぞれ、図 5 のパネル A ~ E からわかるように、すべてのスパイクしたサンプルにわたって、対応する最低のスパイクレベルまで簡単にトラッキングできます。この図では、各タンパク質由来の単一のペプチドのモニタリングによる、スパイクしたタンパク質それぞれのトレンドプロットを示しています:ADH 由来のペプチド VVGLSTLPEIYEK(プリカーサー 724.41、+2、パネル 5A)、BSA 由来のペプチド LVNELTEFAK(プリカーサー 582.32、+2、パネル 5B)、CLP B 由来のペプチド LPQVEGTGGDVQPSQDLVR(プリカーサー 665.68、+3、パネル 5C)、ENL 由来のペプチド TAGIQIVADDLTVTNPK(プリカーサー 585.99、+3、パネル 5D)、PHO 由来のペプチド VAAAFPGDVDR(プリカーサー 559.29、+2、パネル 5E)。HCP モニタリングアッセイでは、NIST mAb 消化物中のすべてのスパイクしたタンパク質を明確に検出でき、ADH の場合には、HCP 探索アッセイ(5 ppm)と一致する検出限界を達成することができます(パネル 5A を参照)。
結論
- HCP 分析用に 2 種類の分析スケールの LC-MS ワークフローを開発しました:1)開発中に未知の HCP を同定および定量するための探索 HCP ワークフロー、2)GMP 環境で通常既知の HCP を定量し、バイオ医薬品の製造および品質分析をサポートするためのモニタリング HCP ワークフロー。
- Xevo G3 QTof 装置でのデータインディペンデント LC-MSE 取り込みで、HCP 探索アッセイ(LLOQ 5 ppm)を用いて、2 種のスパイクしたレファレンスタンパク質と NIST mAb レファレンス物質由来の 7 種類の内因性 HCP を同定および定量しました。
- HCP モニタリングアッセイでは、BioAccord LC-MS システムおよび waters_connect の精密質量スクリーニングワークフローを使用して、同じ LLOQ(5 ppm)で NIST mAb 消化物サンプル中の 4 種のスパイクしたタンパク質(MIX-4)を定量しました。
- いずれのアッセイも規制対応のインフォマティクスで行ったため、QC や製造などの規制対象環境で、あるいは内部のデータインテグリティに懸念がある場合に使用できます。
- 今回説明したいずれのワークフローでも、内径 2.1 mm の頑健な分析スケールの分離を使用しており、HRMS と組み合わせたナノスケール LC を使用することで、ワークフローの再現性と頑健性の問題を回避できます。
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