• アプリケーションノート

厳密に設計された GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムを使用した生体高分子種のサイズ排除クロマトグラフィー

厳密に設計された GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムを使用した生体高分子種のサイズ排除クロマトグラフィー

  • Abraham S. Finny
  • Lavelay Kizekai
  • Kristine Camacho
  • Oksana T'choul
  • Justin McLaughlin
  • Steven Byrd
  • MingCheng Xu
  • Balasubrahmanyam Addepalli
  • Matthew A. Lauber
  • Waters Corporation

要約

このアプリケーションノートでは、生体高分子の特性解析におけるサイズ排除クロマトグラフィーに GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムを用いることの利点について説明します。SEC 分析法が頑健であることを示すには、再現性が高く、吸着が最小限で、分析種の二次的相互作用が少ないことが求められます。これらの効果は、カラムのハードウェアおよび充塡剤の特性に起因すると考えられます。このアプリケーションノートでは、平均のポア直径が 1000 Å の新規のポリエチレンオキシド(HO-PEO)結合したエチレン架橋型 3 µm 粒子を充塡し、MaxPeak™ High-Performance Surfaces(HPS)を採用した GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムを紹介します。このポアと粒子径は、高分子分析用に特別にカスタマイズされたものです。これらのカラムは、標準的な移動相を使用して、バッチ間とカラム間の両方のレベルで、優れたバイオイナート性と高い分離能、回収率、再現性を示しています。これらの点すべてにおいて、市販の粒子径 5 µm、ポアサイズ 1000 Å のカラムと比較して、一段階上の性能と信頼性が得られます。これらのカラムで実現される分離能により、細胞治療薬や遺伝子治療薬中に存在するプロセス関連および製品関連の不純物がより迅速に測定できます。これによって製薬業界では、より有効で安全かつよりグローバルに利用できる医薬品を目指して、迅速に進歩を遂げることが可能になります。

アプリケーションのメリット

  • 化学的バイオイナート性を改善し、高い効率を実現する新規のエチレン架橋型 HO-PEO 結合 3 µm 粒子
  • 高分子量のタンパク質複合体や核酸など、生体高分子の優れた分離
  • 2 種類の分子(タンパク質および核酸)をベースにしたサンプルの品質管理バッチ試験によって、再現性を確認済み
  • クロマトグラフィー性能の向上で、より高いシグナル、よりシャープなピーク、より多い理論段数を実現
  • カラムマトリックスへの吸着が最小限に抑えられ、二次的相互作用が大幅に低減するため、より多くの移動相組成で、より頑健な結果を容易に達成

はじめに

サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(ゲル浸透クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー、立体排除クロマトグラフィー、または単にゲルクロマトグラフィーとも呼ばれる)は、充塡剤の平均ポアサイズに従って、高分子の相対サイズまたは流体力学的ボリュームに基づいて分析種を分離するクロマトグラフィー手法です1。 この手法は、長年にわたって広く受け入れられて、十分に確立された分離手法になり、原薬の重要品質特性の特性解析において重要な役割を果たしてきました2。 一方、タンパク質複合体、mRNA、脂質ナノ粒子などの細胞治療薬や遺伝子治療薬の分析には、大きいポアボリューム、バイオイナート性が向上した粒子表面ケミストリー、二次的相互作用の全体的な低減が必要です。さらに、細胞治療薬や遺伝子治療薬の分析試験には新たなレベルのスループットが必要とされているため、より効率的で粒子径の小さい充塡剤を使用した SEC カラムを開発することが重要です。

生体高分子は、集中した静電パッチやアクセス可能な疎水性残基の領域が存在するため、従来の充塡剤やカラムハードウェア表面と望ましくない二次的相互作用が起こりやすいことが知られています。これらの二次的相互作用により、溶出時間のシフト、回収率の低下、ピーク形状の不良、ピークテーリングが発生することがあります3。静電的相互作用は、塩濃度の増加により最小限に抑えることができますが、高塩濃度は、質量分析などのダウンストリームの検出手法や、場合によっては分子複合体をインタクトに保つ上で問題につながる可能性があります。同様に、有機溶媒を SEC 移動相に添加して疎水性相互作用を低減することもできますが、これにより(特に 5% を超える有機溶媒濃度が必要な場合)、複雑に折りたたまれている生体分子が変性するリスクがあります。

このアプリケーションノートでは、GTxResolve Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムの採用によって得られるクロマトグラフィーの向上に焦点を当てます。性能の改善点としては、現在利用可能な 5 µm シリカ粒子または同様のポアサイズのカラムと比較して、分離能の向上、効率、シグナルの改善、バッチ間およびカラム間の再現性、最小限の吸着、二次的相互作用がほぼない点が挙げられます。

実験方法

サンプル前処理

2 倍濃度の PBS バッファー(20 mM リン酸、276 mM NaCl、5.4 mM KCl(pH 7.4)):2 パックの Sigma リン酸バッファー生理食塩水(Sigma 製品番号:P-3813)を 1 L の 18.2 MΩ 水に溶解し、0.2 µm フィルターでろ過しました。

200 mM リン酸ナトリウムバッファー(pH 6.8):28.39 g の無水二塩基性リン酸ナトリウムを 1 L の 18.2 MΩ 水に溶解し、濃塩酸を用いて pH を 6.8 に調整しました。

タンパク質標準試料混合物:Waters™ BEH™ 450 SEC タンパク質標準試料混合物(製品番号:186006842)をタンパク質標準試料として使用しました。この標準試料は、0.1 mg/mL チログロブリンダイマー、3 mg/mL チログロブリンモノマー、2 mg/mL IgG、5 mg/mL BSA、2 mg/mL ミオグロビン、0.1 mg/mL ウラシルで構成される 5 成分のタンパク質の混合物です。凍結乾燥した標準試料を、使用前に 1 mL の 200 mM リン酸ナトリウム(pH 6.8)バッファーに再溶解しました。

dsDNA 50 ~ 1350 ラダー:Waters dsDNA 50 ~ 1350 ラダー(製品番号:186010778)、50 bp ~ 1,350 bp の 17 種の二本鎖 DNA 分子種の凍結乾燥混合物を DNA 標準試料として使用しました。この凍結乾燥標準試料を、100 µL の 2x PBS バッファーに再溶解しました。

トラスツズマブエムタンシン(Kadcyla™(トラスツズマブ エムタンシン))(抗体薬物複合体):5 mg/mL、20 mg/mL のストック溶液から 18.2 MΩ 水を使用して希釈しました。

NIST モノクローナル抗体標準試料(NISTmAb):2 mg/mL、10 mg/mL ストックからヒスチジンバッファー(12.5 mM ヒスチジン含有 12.5 mM ヒスチジン-HCl)を使用して希釈しました。

再現性試験のための LC 条件

LC システム:

ACQUITY™ UPLC ™ H-Class Bio システム(クオータナリーソルベントマネージャーおよび高 pH キットを搭載した ACQUITY Premier システムと同等)

検出:

ACQUITY TUV 検出器

波長:

260/280 nm

バイアル:

ポリプロピレン 12 × 32 mm スクリューネックバイアル(ポリエチレン製セプタムレスキャップ付き)、容量 300 µL(製品番号:186004112)

カラム:

GTxResolve Premier SEC 1000 Å 3 µm 4.6 × 150 mm カラム(製品番号:186010735)、GTxResolve Premier SEC 1000 Å 3 µm 4.6 × 300 mm カラム(製品番号:186010736)

カラム温度:

35 ℃

サンプル温度:

6 ℃

注入量:

3.5 µL または 20 µL(タンパク質混合物)、5 µL(dsDNA 50 ~ 1350 ラダー)

流速:

150 mm のカラムでは 0.1 mL/分、300 mm のカラムでは 0.2 mL/分

移動相 A:

2X PBS バッファー(20 mM リン酸、276 mM NaCl、5.4 mM KCl(pH 7.4))

移動相 B:

18.2 MΩ・cm 水

移動相 C:

カラム保管溶液(10% アセトニトリル含有 25 mM リン酸ナトリウム + 100 mM KCl 溶液)

移動相 D:

18.2 MΩ・cm 水

グラジエント:

以下の表を参照してください。

二次的相互作用試験用 LC 条件

LC システム:

ACQUITY™ UPLC ™ H-Class Bio システム(クオータナリーソルベントマネージャーおよび高 pH キットを搭載した ACQUITY Premier システムと同等)

検出:

ACQUITY TUV 検出器

波長:

260/280 nm

バイアル:

ポリプロピレン 12 × 32 mm スクリューネックバイアル(製品番号:186002639)(ポリエチレン製セプタムレスキャップ付き)、容量 300 µL(製品番号 186004112)

カラム:

GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm、4.6 × 150 mm カラム(製品番号:186010735)

カラム温度:

35 ℃

サンプル温度:

6 ℃

注入量:

2 µL(タンパク質混合物)、1 µL(NISTmAb、Kadcyla)

流速:

0.25 mL/分

移動相 A:

200 mM リン酸ナトリウム、pH 6.8

移動相 B:

1 M NaCl

移動相 C:

50:50 アセトニトリル:18.2 MΩ 水(v/v)

移動相 D:

18.2 MΩ・cm 水

グラジエント:

アイソクラティック分析。さまざまな試験条件の移動相組成については、下の表を参照してください。

グラジエントテーブル

結果および考察

GTxResolve Premier SEC 1000 Å 3 µm 粒子およびカラム構造

図 1 に、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムハードウェア表面と充塡剤結合の設計上の特徴を示します。クロマトグラフィーにおいて、生体分子は、通常の金属製カラムハードウェア中の正に荷電した金属酸化物層と相互作用し、これがサンプルロスや不正確な定量につながります。これを防ぐため、MaxPeak™ HPS High Performance Surfaces を使用して分析種を吸着性相互作用から保護しています。この新規のハードウェアは、エチレン架橋型ハイブリッド粒子組成に似ており、親水性修飾された有機/無機ハイブリッド層で構成されています。非特異的吸着を低減することは、再現性のある正確な回収率を確保するのに役立つため、すべての不純物分析や規制準拠に不可欠です。

この新規の GTxResolve™ Premier SEC カラムのもう 1 つの設計上および性能上のブレークスルーは、この種では初となる 3 µm の高強度シリカ 1000 Å 粒子です。この粒子のケミストリーは、先駆的なポリエチレンオキシド結合およびエチレン架橋型ハイブリッドクロスリンクで修飾されています。このパーティクルテクノロジーを、独自の親水性および低イオン性と組み合わせることで、新たなレベルのバイオイナート性が得られます。 

図 1.  GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムの構造。(A)生体分子と SEC カラムハードウェアの間の二次的相互作用を最小限に抑え、親水性を示す MaxPeak™ High Performance Surface HPS。(B)GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm 粒子のハイブリッド架橋 HO-PEO 結合の概略図。

分離能向上による再現性の高い分離

分析開発、プロセス開発、製剤化、CMC、リリース試験ラボのいずれの作業においても、すべての分析者にとって、高い分離能と再現性のある分離性能は不可欠です。これにより、分析法開発やバリデーション中の予期しない動作が最小限に抑えられ、取り込まれたデータの全体的な信頼性が向上します。この点を念頭に置いて、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムを、バッチ間およびカラム間での再現性について評価しました。重要な点として、試験は、高分子量タンパク質と、徐々にサイズが大きくなる核酸分析種のラダーを用いて行いました。

(1)タンパク質分析種

まず、(サイズの小さい方から)ミオグロビン、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、チログロブリンモノマー、チログロブリンダイマーを含むタンパク質混合物を使用して、カラムの SEC 性能を試験しました(表 1)。4.6 × 150 mm および 4.6 × 300 mm の寸法のセットについて、3 バッチと 3 本のカラムで得られた結果を図 2 に示します。この図では、市販の 5 µm 1000 Å シリカ粒子カラムとも性能を比較しています。全般的に、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムでは、5 µm カラム(0.09 AU)と比較して、より高いシグナル(0.12 AU)が見られました。さらに、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムでは、IgG と BSA のピークの間の分離が大幅に向上しました。GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムの性能が優れていることは、理論段数が多いことからもわかります。比較対象の 5 µm シリカカラムでは理論段数が 9K(すべてのピークの平均)であったのに対し、150 mm GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムでは 19 K でした。GTxResolve Premier SEC 1000 Å カラムでは、粒子径が小さい(3 µm)ため、300 mm カラムの流速を倍にすると(0.2 mL/分)、高い理論段数が維持されるだけでなく、理論段数がさらに増加しました。3 µm GTxResolve Premier SEC 1000 Å カラムと 5 µm シリカ粒子カラムの分離性能の比較を表 2 に示します。

表 1.  BEH 450 SEC タンパク質標準試料混合物の成分
図 2.  1000 Å SEC カラムで得られた BEH450 SEC 被験タンパク質混合物のクロマトグラム。GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm 4.6 × 150 mm カラムで観察された(A)バッチ間再現性および(B)カラム間再現性(同じバッチのカラム)。(C)5 µm 1000 Å シリカカラムで得られた SEC クロマトグラムの例。(D)同じ直径(4.6 × 300 mm)のより長いカラムで得られた分離性能の比較も示します。ピーク 1 ~ 6 はそれぞれチログロブリンのダイマー、モノマー、IgG、BSA、ミオグロビン、ウラシルに対応します。すべてのピークにわたる USP 理論段数の平均を、バッチごとに示しています。

表 2:タンパク質混合物の成分間の分離度の比較。 

 *GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムバッチ、N/D - 分離が未検出。

(2)核酸分析種

負に荷電した核酸は、タンパク質と比較して、カラム表面に非特異的吸着しやすいです。充塡剤の正味電荷にも非常に影響を受けやすいです。残念ながら、以前の充塡剤のバッチには、静電特性や塩濃度依存性における差異(核酸分析種の静電反発力および/または静電引力の差異)がよく見られました。そのため、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムを dsDNA(50 ~ 1350 ラダーなど)に対して試験することが重要でした。タンパク質の分離の場合と同様に、バッチ間およびカラム間の再現性を調査しました。前述と同様に、比較対象の 5 µm 1000 Å シリカ粒子カラムのクロマトグラフィー性能を再度評価しました。図 3 に示すように、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムテクノロジーを表すすべてのバッチおよびすべてのカラムで、一貫したクロマトグラフィープロファイルが得られました。766 ~ 400 bp の溶出ウィンドウで 8 つの分子種が部分的に分離されていることを示す微細構造。一方、1350、916、350、300、100、50 bp の分子種などの他のすべての分子種について、ほぼベースライン分離が得られました。この種の分離能は、比較対象の 5 µm シリカ粒子カラムでは不可能でした。分離効率も、分離されたピークの USP 理論段数の平均値からわかります。この値は、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムでは 20 K、5 µm シリカカラムでは 11 K です。この新しいカラムの分離能向上には、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムのポアサイズ分布の最適化と独自の充塡剤が寄与しています。これにより、分子サイズに基づくより効果的な分離ができるようになります。つまり、3 µm の充塡剤で得られるはずの速度論的効率の予測量が達成されていることが確認されました。 

図 3.  1000 Å SEC カラムで得られた dsDNA 50 ~ 1350 ラダーのクロマトグラム。GTxResolveTM Premier SEC 1000 Å 3 µm 4.6 × 150 mm カラムでの SEC クロマトグラムの(A)バッチ間再現性および(B)カラム間再現性(同じバッチのカラム)。(C)比較対象の 5 µm シリカカラムで得られた DNA ラダーの SEC クロマトグラムの例。dsDNA 50 ~ 1350 DNA ラダー(製品番号:186010778)には、1350、916、766、700、650、600、550、500、450、400、350、300、250、200、150、100、50 bp の分子種が含まれます。ピーク 1 ~ 6 はそれぞれ 1350、916、350、300、100、50 bp に対応し、これらを USP 理論段数の計算に使用しました

吸着が最小限で二次的相互作用が少ない

NISTmAb などのモノクローナル抗体や Kadcyla(トラスツズマブエムタンシン)などの抗体薬物複合体は、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムでの使用を意図した分析種ではありませんが、二次的相互作用を非常に受けやすいことが知られています。Goyon、Fekete らは 2017 年に、これらの種類のプローブ分子を使用した試験を提唱しています4。カラムおよびこれらの分析種の移動相添加剤の滴定に対する依存性は、引き続き SEC カラム開発の指針となる情報に富んだツールとなっています3。 今回、ワイドポア SEC 充塡剤ではありますが、このアプローチを再度適用しています。GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムでは、静電気吸着イベントおよび疎水性吸着イベントの両方で、二次的相互作用が極めてわずかでした。これは、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムにおける USP テーリングの平均変化率(静電的相互作用および疎水性相互作用について、それぞれ 6% および 11%)に基づいています。一方、5 µm シリカカラムでは、それぞれの二次的相互作用により USP テーリングが 21% および 31% 変化しました(表 3)。添加剤のレベルとは無関係にガウスピークが得られ、低塩濃度(0 mM)と高塩濃度(200 mM)の間でピークテーリングの変化の程度はわずか(6%)でした。移動相に ACN を添加すると、Kadcyla(トラスツズマブエムタンシン)のピークの位置がわずかに変化しましたが、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムでは、全体的な形状がよく維持されていました。対照的に、比較対象の 5 µm 1000 Å シリカ粒子カラムでは、疎水性相互作用のアッセイにおいて、Kadcyla(トラスツズマブエムタンシン)ADC について、大きなピークテーリングとより広いピーク幅(1.5 分)が見られました。一方、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムでは、同じ分析種についてピーク幅が 0.4 分未満でした。このように、この比較対象のカラムでは、移動相添加剤によって、テーリング係数が大きく変化しました。これは特に、Kadcyla(トラスズマブエムタンシン)の分離にアセトニトリルを添加した場合に顕著でした。 

図 4.  二次的相互作用の評価。(A)GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムで、塩(0 ~ 200 mM NaCl)(i)および ACN(ii)の量を増加させて移動相を滴定した際に見られた静電的相互作用。(B)ステンレススチール製ハードウェアを使用した 5 µm シリカ 1000 Å カラムを使用して、同一の条件で得られた静電的相互作用(i)および疎水性相互作用(ii)の結果。

表 3.  二次的相互作用に対する滴定に応答したピークテーリングの割合の変化。

*GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムバッチ

結論

このアプリケーションノートでは、GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å 3 µm カラムの利点と、タンパク質と核酸の両方を含む生体高分子の分離の向上およびより高いシグナルが得られるカラムの性能に焦点を当てました。新規の粒子および MaxPeak™ HPS ハードウェアにより、吸着によるサンプルロスが最小限に抑えられると同時に、高い分離効率と再現性のあるクロマトグラムが得られました。これらの機能により、現在使用可能な 5 µm シリカ 1000 Å SEC カラムの優れた代替のカラムになります。このような改善は、mRNA、ウイルスベクター、脂質ナノ粒子などの新規の原薬の特性解析を改善するのに重要になります。この GTxResolve™ Premier SEC 1000 Å カラムにより SEC 性能が向上し、IND 申請書の作成や効能および安全性に関するリリース試験に至るまでの道筋において、不純物プロファイルを記録し、重要品質特性を解析することが可能になります。

GTxResolve、MaxPeak、ACQUITY および UPLC は Waters Technologies Corporation の商標です。Kadcyla は Genentech, Inc の商標です。その他すべての商標は、それぞれの所有者に帰属します。

参考文献

  1. H. G. Barth and B. E. Boyes, “Size Exclusion Chromatography,” Anal Chem, vol.62, no.12, pp.268–303, Jun. 1990, doi: 10.1021/ac00211a020.
  2. P. Hong, S. Koza, and E. S. P. Bouvier, “A review size-exclusion chromatography for the analysis of protein biotherapeutics and their aggregates,” Journal of Liquid Chromatography and Related Technologies, vol.35, no.20. Taylor & Francis Group, pp.2923–2950, Jan. 01, 2012.doi: 10.1080/10826076.2012.743724.
  3. S. Fekete, L. Kizekai, Y. T. Sarisozen, N. Lawrence, S. Shiner, and M. Lauber, “Investigating the secondary interactions of packing materials for size-exclusion chromatography of therapeutic proteins,” J Chromatogr A, vol.1676, p. 463262, Aug. 2022, doi: 10.1016/J.CHROMA.2022.463262.
  4.  A. Goyon, A. Beck, O. Colas, K. Sandra, D. Guillarme, and S. Fekete, “Evaluation of size exclusion chromatography columns packed with sub-3µm particles for the analysis of biopharmaceutical proteins.”J Chromatogr A, vol.1498, pp.80-89, May.2017, doi:https://doi.org/10.1016/j.chroma.2016.11.056.

720008289JA、2024 年 4 月

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